絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【い】

飯田 龍太 (いいだりゅうた)
「俳句・風土・人生」
 (はいくふうどじんせい)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・島田拓史
(画像はクリックで拡大します)


*317頁 / 発行 昭和63年

*カバー文
飯田龍太は、甲州・境川村の家郷を拠点に、俳誌「雲母」の主宰のかたわら、現俳壇をリードする健筆家として、随想や評論を主とした多彩な作家活動をつづけている。自句自解、山麓の四季、俳句の風土、俳句の秘密、俳句交遊の5つで構成した本書は、自然の風光のなかでつづられた滋味溢れる俳句の世界を現出している。句作においては詩的な飛躍、散文では大地を這うような龍太作品の魅力をあますところなく収めた実作者必携の好著。

*目次
はじめに
一 自句自解
二 山麓の四季
三 俳句の風土
四 俳句の秘密
五 俳句交遊
 定住と自然 上田三四二
 初出一覧


飯島 吉晴 (いいじまよしはる)
「竃神と厠神 異界と此の世の境」
(かまどがみとかわやがみ)
講談社学術文庫


*カバー写真 / 宮城県桃生郡河北町(現石巻市)の竃神(撮影:萩原秀三郎)
 カバーデザイン 蟹江征治
(画像はクリックで拡大します)

*336頁 / 発行 2007年

*カバー文
土間の柱に異形の面を取り付け、火難よけや家の守護神として祀られた竃神。偶像化はされず、精霊的な存在として河童譚や出産の習俗などと深く結びついた厠神。日本家屋の暗所に祀られたこれらの神々は、生死や新旧を転換する強力な霊威をもち、此の世と霊界との出入口に宿った。昔話や儀礼、禁忌など伝承を博捜し、家つきの神の意味と役割を探る。

*目次
はじめに ―― 序にかえて
 T
第一章 竃神の象徴性 ―― 生と死の媒介者
第二章 金工と錬金術
第三章 家と火 ―― 竃・イロリの火を中心に
第四章 産屋の火 ―― 火の媒介機能を中心に
第五章 イロリをめぐる習俗―裸回りの深層
 U
第一章 厠考 ―― 異界としての厠
第二章 厠と化粧 ―― 変身のフォークロア
第三章 黄金と糞便のフォークロア
 V
第一章 オタナサマ信仰の周辺 ―― 東北地方の家の神信仰を中心に
第二章 オタナサマの性格
第三章 年徳神と疱瘡神
 W
第一章 庚申信仰試論 ―― 転換の論理としての庚申
第二章 橋の民俗
第三章 柿の民俗
第四章 狐の民俗 ―― 「狐に化かされた話」を中心に
第五章 狐火とミカワリ婆さん

あとがき(原本) / 学術文庫版あとがき / 初出一覧


池田 満寿夫 (いけだますお)
「私自身のアメリカ」
 (わたしじしんのあめりか)


(画像はクリックで拡大します)

*359頁
*発行 昭和50年
*カバー装画・池田満寿夫

*カバー文
美への限りなき旅路を歩む国際的な画家池田満寿夫が、そのユニークな発想でイメージ豊かに描き出す素顔のアメリカ! ニューヨークに在住し、愛妻リラン夫人との生活を核に、アメリカの友人たちとの間でおりなされる日常の「アメリカ」は、「日本」との慣習の差異をつぶさに語りかけ、生活の根底を見直させる。

*解説頁・「アメリカ合衆国と池田満寿夫」加藤周一


池田 満寿夫+広中 平祐 (いけだますお+ひろなかへいすけ)
「数学とエロチシズム」 (すうがくとえろちしずむ)


*カバーデザイン・勝井三雄
(画像はクリックで拡大します)

*218頁 / 発行 昭和54年

*カバー文
科学と芸術。一見、相反する性格を持つ分野だが、実存に左右されない自由な発送が必要なのは、共通しているという。文化勲章受章の数学者広中平祐、美とエロスの追求者池田満寿夫。世界を活躍の場とする両者が、数学的思考について、美とエロスについて語る。異色の組合せを得て展開する華麗な知的饗宴の世界。

*目次
1 数学とエロチシズム
2 数学者と芸術家の世界
3 数学と芸術の次元
4 数学の論理とイメージ
5 アメリカの特異点
6 イマジネーションと破滅


池田 弥三郎 (いけだやさぶろう)
「おとこ・おんなの民俗誌」 
(おとこおんなのみんぞくし)


*カバー写真・井上青龍撮影
(画像はクリックで拡大します)

*217頁 / 発行 1974年

*カバー文
一夜妻・よばい・色好み・ふんどし・赤不浄・中棒・密通・遊女・ぼんがま等々性に関する言葉の行為、結婚の形態や古来からの慣習などの由来や変遷、地域的相違を、民俗採訪や多くの古典・文献をもとに論証。民俗学の性や結婚の分野を論じながら、興味本位に流れるのを避け、積極的に学問への道をさぐった好著。

*目次
一 おまつり / 二 一生一度のほててんご / 三 寝殿 / 四 一夜妻 / 五 一時女郎 / 六 夜妻・朝妻 / 七 神の嫁の選定 / 八 初夜の権利 / 九 浮気のさび / 十 東枕の窓の下 / 十一 よばい / 十二 かよう男 / 十三 男を待つ文字 / 十四 鐘に恨みは / 十五 女のよばい / 十六 色好み / 十七 うわなりねたみ / 十八 いなみ妻 / 十九 遊女の発生 / 二十 情死 / 二十一 心中死まで(1) / 二十二 心中死まで(2) / 二十三 密通 / 二十四 妻敵討ち / 二十五 伊勢の留守 / 二十六 ぼんがま / 二十七 性教育 / 二十八 ふんどし / 二十九 田の巫女 / 三十 赤不浄 / 三十一 私生児 / 三十二 くなどの神 / 三十三 中棒 / 三十四 くぼの名は / 三十五 女に笑われぬ男
 あとがき


池田 彌三郎 (いけだやさぶろう)
「世俗の詩・民衆の歌 池田彌三郎エッセイ選」
(せぞくのし・みんしゅうのうた)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*296頁 / 発行 2007年

*カバー文
折口信夫の高弟にして、日本芸能研究の重鎮である著者の歌と言葉をめぐる軽妙なエッセイの数々 ── 。
小学生時代と重なる大正期、そのとき、口ずさんだ童謡や唱歌を記憶のなかから甦らせ、都市の風俗と言語生活の変遷をたどり、宝塚少女歌劇から戦後の歌謡曲まで、そこに息づく庶民の心を読み解く。軍歌の一方的排斥に異を唱え、歌詞のなかの言葉遣いへの辛辣な評現も著者ならでは。

*目次
 T 聴いて歌って
幼時の歌のことなど / 少年のころの歌から / 震災のあとの歌 / タカラヅカのことなど / レコードの歌 / 星のうた / わからない歌 / くち三味線 / 歌詞の口語化 / 格調が高いということ / 式の歌など / 行進曲の記憶
 U 世俗の詩・民衆の歌
世俗の詩・民衆の歌 / 冬の夜 / わたしの言語生活 / わたしの中のことば / 電車の中で / 夏は来ぬ / 活動写真 / 小春・小春日 / 雨だれぽっつりさん / ゆううつ / 窓ガラス・旅ガラス / 異人さん
 参考資料 / 解説 武藤康史 / 年譜 武藤康史 / 著書目録 武藤康史


池波 正太郎著 山口 正介編 (いけなみしょうたろう やまぐちしょうすけ)
「池波正太郎の映画日記 1978・2〜1984・12」
 (いけなみしょうたろうのえいがにっき)


(画像はクリックで拡大します)

*458頁
*発行 1995年

*カバーカット・池波正太郎(映画監督たち。本文巻末に名前入り)
*カバーデザイン・多田進


*カバー文
スクリーンに男と女がめぐり合い、時が流れる。あふれる生活感と隙のない脚本、心うつ見事な演出。さまざまな感懐を胸に、銀座に酒飯して帰る……。どのような映画でも、楽しむ術を知っていた池波正太郎が、息づまる執筆の間に堪能した映画と、面白い身近の出来事をつづった、興趣尽きない好読物。全一巻。

*解説頁・「試写室の池波正太郎」山口 正介


池波 正太郎 (いけなみしょうたろう)
「娼婦の眼」 
(しょうふのめ)


(画像はクリックで拡大します)

*339頁
*発行 昭和56年

*カバー文
〔真暗闇〕〔絶対喋らない〕変った2条件を出す客に気に入られたすみ江。自分と過ごした翌日に奇妙に勝てる力士に夢中になる加津子。妹の結婚で微妙に心がさわぐ万里子……。金の力を信じて男を頼らず、胸を張って自分を高く売る娼婦たちの逞しくしかも優雅に生きる姿をユーモアも交えて描く、著者には珍しい現代小説。

*目次
娼婦の眼 / 今夜の口紅 / 娼婦万里子の旅 / 娼婦すみ江の声 / 娼婦の揺り椅子 / 娼婦たみ子の一年 / 巨人と娼婦 / 乳房と髭 / 昼と夜 / ピンからキリまで / 解説 黒岩竜太


池波 正太郎 (いけなみしょうたろう)
「緑のオリンピア」 
(みどりのおりんぴあ)


*カバー・著者
(画像はクリックで拡大します)


*251頁 / 発行 昭和62年

*カバー文
スポーツ好きの妖精に見守られて、一人の若者が、心身のエネルギーの全てで、三段跳びの練習に打ち込んでいた。尊敬する大先輩にコーチを受け、オリンピック出場をめざす鋭い緊張の日々に、若者は、スポーツの何たるかを深く自覚して行く。繊細で男らしい青春を爽やかに描く表題作他、瑞々しい初期作品集。

*目次
はじめに……。
眼(め)
緑のオリンピア
木葉微塵
のどぼとけ
ひとのふんどし
 解説 常盤新平


生島 治郎 (いくしまじろう)
「浪漫疾風録」
(ろうまんしっぷうろく)


(画像はクリックで拡大します)

*301頁 / 発行 1996年
*カバーデザイン・熊谷博人

*カバー文
みんなが奇体なエネルギイに充ちていた。いつでも走ろうとし、走ってはころんでいた。編集者を経て作家に、「EQMM」誌創刊の頃より激動のミステリー戦国時代の裏も表も知り尽くした筆者ならではのエピソードがいっぱい。推理小説ファン必読、実名表記による、疾風怒濤のミステリー・グラフィティ。

*目次
地獄へようこそ / 悪戦苦闘 / 汗みどろの日々 / 粋で貧乏で / 色やら恋やら / 走り出す人々 / ミステリ戦国時代 / さらば編集者 / あとがき / 解説 郷原宏

*「EQMM」=1956年早川書房が創刊した日本版『エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン』。


井口 海仙 (いぐちかいせん)
「茶道名言集」
(ちゃどうめいげんしゅう)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・山岸義明デザイン室
(画像はクリックで拡大します)

*232頁
*発行 2003年

*カバー文
わび・さび、数寄、一期一会 ―― 。“茶の精神”は現代に生きる我々の日常生活にも息づいている。本書は、茶道書の古典から名人の言葉や逸話を豊富に集めて解説を施した。千利休をはじめ、村田珠光、武野紹鴎、そして岡倉天心まで、茶に生きた人々は茶に何を見出し、何を求めたのか。そこに現れる、茶道の心とは何か。平易な言葉でつづる茶道入門。

*目次
茶の美 / 茶の歴史 / 茶人のこころ / 名器と名物 / 茶に生きた人たち / あとがき


石川 英輔 (いしかわえいすけ)
「SF西遊記」 (えすえふさいゆうき)


(画像はクリックで拡大します)

*421頁
*発行 昭和56年
*カバー装画・田沢茂

*カバー文
荒唐無稽、奇想天外な古典名作「西遊記」、ここに蘇る……。グリドラクータ星において全銀河系を治めるサーキ・ムニを訪ねて、超光速船白馬号に乗って宇宙を旅する三蔵法師陳玄奬とサイボーグ猿孫悟空、スーパーアンドロイド猪八戒、半魚人沙悟浄のユーモラスな難行珍道中を描くSFパロディー傑作長編。

*解説頁・柴野拓美


石川 英輔 (いしかわえいすけ)
「SF水滸伝」
 (えすえふすいこでん)


(画像はクリックで拡大します)

*402頁
*発行 昭和57年
*カバー装画・田沢茂

*カバー文
波瀾万丈の古典名作のSFパロディー。平等革命で高度に自動化した天球星社会は、現実には官僚の個人的裁量で左右され、賄賂が決め手という腐敗社会に変貌していた。そこに現われた9人の闘士。〈水滸百八〉の謎、〈九天玄女〉によって語られるその真相、〈闇の霊〉との対話 ― 物語は勇壮に展開していく……。

*解説頁・柴野拓美


石川 英輔 (いしかわえいすけ)
「ニッポンのサイズ 身体ではかる尺貫法」


*カバーデザイン・石垣貴子
(画像はクリックで拡大します)

*224頁 / 発行 2012年

*カバー文
手のひらのサイズを元にした「尺」、米の消費量を元にした「石」など、現代ではなじみが薄くなった尺貫法も、実は身体のパーツを元に作られた合理的な単位だった。江戸庶民の生活に根ざした単位をめぐる合理的な暮らしのヒントが満載! 豊富な図版と、便利な換算表を収めた、おなじみ江戸博士のサイズ解釈便利帳。

*目次
第一章 一メートルとは?
第二章 二〇〇〇年前に決まった曲尺
第三章 鯨尺の歴史
第四章 一升という量
第五章 米一石という量
第六章 銭と泉と匁
第七章 重さをはかる
第八章 手拭いの幅
第九章 畳という単位
第一〇章 一坪という面積
第一一章 一里という距離
第一二章 風呂敷の規格
第一三章 一町歩と一ヘクタール
第一四章 さまざまな一斤
第一五章 一刻という時間
第一六章 一ヶ月とは?
第一七章 一年とは?
第一八章 伝統と生きる
 挿図の出典 / あとがき


石川 淳 (いしかわじゅん)
「安吾のいる風景・敗荷落日」
(あんごのいるふうけい・はいからくじつ)
講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ


(画像はクリックで拡大します)

*294頁
*発行 1991年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
昭和三十四年、荷風散人逝く。享年七十九歳。時に夷斎石川淳、六十歳、「一箇の老人が死んだ」に始まる苛烈極まる追悼文「敗荷落日」を記す。融通無碍の精神と和漢洋に亘る該博な知識とに裏打された奔放自在な想像力、一貫する鋭い反逆精神。「安吾のいる風景」「三好達治」「京伝頓死」「秋成私論」「本居宣長」ほか中期評論エッセイ二十四篇。


石毛 直道 (いしがなおみち)
「リビア砂漠探検記」 (りびあさばくたんけんき)


(画像はクリックで拡大します)

*366頁
*発行 昭和54年
*カバー写真・石毛直道

*カバー文
陸の極地、リビア砂漠。この本はここに生きるベドウィン族の詳細な生活誌である。特に遊牧民が、石油ブームやモータリゼーションの波をうけ、定着の生活へその伝統的生活様式を変えてゆく状況が如実に描かれている。著者は単独で危険を冒し商いする人々のキャラバンに潜り込み、無人の岩と砂の3200キロの砂漠縦断を敢行。ここに稀有の紀行が生れた。


石田 英一郎 (いしだえいいちろう)
「桃太郎の母 ― ある文化史的研究」 (ももたろうのはは)


(画像はクリックで拡大します)

*312頁
*発行 昭和47年
*カバー装画・伊藤明デザイン室

*カバー文
日本民俗学の成果を比較民俗学的研究と結合することにより、歴史家の捨ててかえりみなかった昔話の中から、人類太古の大地母神の信仰を掘り出し、人類文化史の重要な一側面に解明の光を投じている。「月と不死」「隠された太陽」「桑原考」「天馬の道」「穀母と穀神」を併録。

*解説頁・増田義郎


石田 波郷 (いしだはきょう)
「江東歳時記・清瀬村(抄) 石田波郷随想集」
(こうとうさいじき・きよせむら)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*277頁
*発行 2000年

*カバー文
五十崎故郷、水原秋桜子に師事した若き日の想い出「古郷忌」、従軍中結核で死と向き合った日々を綴る「一冊の芭蕉全集」などを、想いの深い療養地の名で纏めた『清瀬村(抄)』。戦後焦土と化した江東を句集『雨覆』に読んだ著者が、その後の東京の下町、葛飾・亀戸・深川等の生命力溢れる春夏秋冬を俳句と散文で鮮やかに描き出した風物詩『江東歳時記』。“昭和俳壇の俊才”石田波郷の瑞々しい随想集。


石田 瑞麿 (いしだみずまろ)
「日本人と地獄」
(にほんじんとじごく)
講談社学術文庫


*カバー図版
 雲火霧処「地獄草紙」より
 (東京国立博物館蔵)
 カバーデザイン・蟹江征治
(画像はクリックで拡大します)

*336頁 / 発行 2013年

*カバー文
古代インドに発祥する「地獄」は、この風土でどのような変容をとげたのか? 仏教典籍、『霊異記』、冥界めぐり譚、絵草紙、和歌・川柳や能・狂言などを広く渉猟して、地獄の構造とイメージを読み解く。また、火山・温泉や飢饉・災害など、現世にある地獄を史料に探る。天上の極楽浄土の対極には、地下の恐怖世界が広がっている。読む「地獄事典」。

*目次
序章
 八大地獄と小地獄 / 八大地獄の構造 / 堕獄の業因 / 地獄の寿命と苦相 / 八寒地獄について / 閻魔王と獄卒
第一章 地獄概念のあけぼの
 初期の地獄理解 / 地獄概念の変容 / 平安初期の著述にみる地獄 / 仏名会と地獄屏風 / 種々の地獄絵 / 地獄絵と和歌 / 地獄理解の高まりと浄土信仰 / 『観経』と地獄理解 / 『九品往生義』にみる地獄理解 / 十斎日
第二章 『往生要集』の成立とその後
 等活地獄について / 黒縄地獄について / 衆合地獄について / 叫喚・大叫喚の二地獄について / 焦熱・大焦熱の二地獄について / 阿鼻叫喚について / 八寒地獄について / 源信につづく人たち / 『十王経』の成立と閻魔王 / 本覚門と地獄
第三章 堕獄の人
 堕獄の罪 / 冥官、小野篁のこと / 藤原永手のこと / 源融のための諷誦 / 藤原敏行の場合 / 醍醐天皇の堕獄 / 平将門の堕獄 / 道命の誦経を聞いて救われた男 / 立山地獄に堕ちた女 / 法蔵のこと / 僧蓮円の母の堕獄 / 紫式部の場合 / 源義家の場合 / 地獄に堕ちた僧 / 法然について / 結城入道の堕獄 / 堕獄の阻止 / 破地獄文
第四章 冥界に行ってきた人
 『本朝法華験記』にみる二人の人物 / 三善清行のこと / 天台座主忠尋のこと / 大納言雅俊のこと / 神人貞房のこと / 源信の弟子のこと / 細工人能定のこと / 勘解由相公有国の父のこと / 慈心房尊恵のこと / 『考養集』にみえる堕獄の女 / 能恵の蘇生 / 藤原定家の伝える蘇生譚 / 無住の伝える蘇生譚 / 「よみがへりの草紙」のこと / 満米の地獄めぐり / 妙達の地獄めぐり / 円能の地獄めぐり / 「天狗の内裏」 / 「十一段本」の地獄めぐり / 『桂泉観世音之御本地』 / 『善悪因果集』の沙門地獄
第五章 地獄絵
 地獄草紙 / 益田家本地獄草紙 / 安住院本地獄草紙 / 原家本地獄草紙 / 『北野天神縁起』 / 『春日権現験記』 / 『融通念仏縁起』 / 聖衆来迎寺の六道絵
第六章 この世の地獄 ―― 辺地獄(孤地獄)
 立山地獄のこと / 雲仙地獄 / その他の辺地獄 / 火山噴火と飢饉
第七章 地獄と文芸
 『聞書集』の文 / 『無名草子』と『海道記』 / 謡曲 / 狂言 / 歌謡 / 浮世草子 / 川柳・狂歌 / 『おたふく女郎粉引歌』 / 『元禄太平記』 / 『宝夢録』にみる将軍綱吉の地獄入り / 将軍家斉死去のおりの戯れ文 / 『根南志具佐』にみる地獄 / 倶生神の触れがき / 「五尺之躰借用証文」 / 地獄の否定
あとがき


石牟礼 道子 (いしむれみちこ)
「天の魚 ― 続・苦海浄土」 (てんのうお)


*カバー装画・丹阿弥丹波子
(画像はクリックで拡大します)

*444頁 / 発行 昭和55年

*カバー文
「苦海浄土」に続き、生死のあわいにある人々へむけて綴った鎮魂の記。
豊穣なる不知火海から、天の水と天の魚を奪い、やがて二十数年に亙って人間の命を破壊しさった、世紀の受難というべき、水俣公害。
“東京の空の美しゅうございました……”誰でも望む言葉であって、誰でも云えない言葉になった。80年代に必読の一冊。

*目次
 序詩
第一章 死都の雪
第二章 舟非人(ふなかんじん)
第三章 鳩
第四章 花非人(はなかんじん)
第五章 潮の日録
第六章 みやこに春はめぐれども
第七章 供護者たち

 『天の魚』覚え書き 見田宗介


泉 麻人 (いずみあさと)
「僕の昭和歌謡曲史」
(ぼくのしょうわかようきょくし)


*カバーデザイン・坂本志保
 カバーイラスト・ソリマチアキラ
(画像はクリックで拡大します)

*342頁 / 発行 2003年

*カバー文
坂本九、舟木一夫、弘田三枝子、ザ・ピーナッツ、三田明、加山雄三、オックス、ピンキーとキラーズ、吉田拓郎、南沙織、平山三紀、郷ひろみ、太田裕美、山口百恵、キャンディーズ、田原俊彦、中森明菜、そして美空ひばり………名曲、ヒット曲で綴る、想い出の胸キュンエッセイ。映画監督・金子修介氏とのマニア対談付。

*目次
上を向いて歩こう 坂本九 / ハイそれまでヨ 植木等 / 高校三年生 舟木一夫 / ヴァケーション 弘田三枝子 / 東京五輪音頭 三波春夫 / 愛と死をみつめて 青山和子 / 怪傑ハリマオの歌 三橋美智也 / 若い季節 ザ・ピーナッツ / お座敷小唄 和田弘とマヒナスターズ、松平直樹、松尾和子 / ごめんねチコちゃん 三田明 / 回転禁止の青春さ 美樹克彦 / チェッ チェッ チェッ 橋幸夫

♪マニアのためのボーナストラック♪ この歌についても一言いいたい! 昭和30年代後半

君といつまでも 加山雄三 / いとしのマックス 荒木一郎 / ブルー・シャトウ ジャッキー吉川とブルー・コメッツ / 君だけに愛を ザ・タイガース / スワンの涙 オックス / 恋の季節 ピンキーとキラーズ / ブルー・ライト・ヨコハマ いしだあゆみ / 夜明けのスキャット 由紀さおり

♪マニアのためのボーナストラック♪ この歌についても一言いいたい! 昭和40年代前半

青春の歌 吉田拓郎 / カレーライス 遠藤賢司 / 17才 南沙織 / 悪魔がにくい 平田隆夫とセルスターズ / 真夏の出来事 平山三紀 / 男の子女の子 郷ひろみ / 魅せられた夜 沢田研二 / わたしの彼は左きき 麻丘めぐみ / 学生街の喫茶店 ガロ / 12月の雨 荒井由実

♪マニアのためのボーナストラック♪ この歌についても一言いいたい! 昭和40年代後半

恋の暴走 西城秀樹 / 木綿のハンカチーフ 太田裕美 / あなただけを あおい輝彦 / 横須賀ストーリー 山口百恵 / 暑中お見舞い申し上げます キャンディーズ / UFO ピンク・レディー / 勝手にシンドバッド サザンオールスターズ / サンタモニカの風 桜田淳子

♪マニアのためのボーナストラック♪ この歌についても一言いいたい! 昭和50年代前半

ハッとして! Good 田原俊彦 / 春先小紅 矢野顕子 / ハイティーン・ブギ 近藤真彦 / ギザギザハートの子守唄 チェッカーズ / 雨音はショパンの調べ 小林麻美 / なんてったってアイドル 小泉今日子 / DESIRE 中森明菜 / クリスマス・イブ 山下達郎 / ABC 少年隊 / 川の流れのように 美空ひばり…

♪マニアのためのボーナストラック♪ この歌についても一言いいたい! 昭和50年代後半

あとがき
特別対談「僕たちは歌謡曲が好きだ!!」ゲスト・金子修介


*関連文庫(サイト内リンク)

阿久悠 「歌謡曲の時代 ― 歌もよう人もよう」 新潮文庫
忌野清志郎 「忌野旅日記」 新潮文庫
小沢昭一・大倉徹也 「小沢昭一的 流行歌・昭和のこころ」 新潮文庫
北中正和 「にほんのうた ― 戦後歌謡曲史」 新潮文庫
小室等 「さて、コーヒーの話だが…… ― 小室等のコーヒーブレイクエッセイ」 旺文社文庫
塩田潮 「東京は燃えたか ― 黄金の’60年代」 講談社文庫
なぎら健壱 「日本フォーク私的大全」 ちくま文庫
平岡正明 「山口百恵は菩薩である」 講談社文庫
文藝春秋編 「裕次郎とその時代」 文春文庫ビジュアル版
本田靖春 「『戦後』美空ひばりとその時代」 講談社文庫
吉田拓郎 「気ままな絵日記」 角川文庫
阿久悠 「テレビ、このやっかいな同居人」 朝日文庫
キンマサタカ トライアングル 「本当は怖い昭和30年代」 双葉文庫
3 amigos family studio 「ブルーライトヨコハマ」 徳間文庫
チェッカーズ 「The Checkers チェッカーズ写真集」 集英社文庫 コバルト・シリーズ
ヒーロー倶楽部・編 「君は、ハリマオを覚えているか ― われらのヒーロー・グラフィティ 1953-1969」 PHP文庫
宮本治雄 「戦後ヒーロー・ヒロイン伝説」 朝日文庫
G.B.編 「80年代ガキ大全」 宝島SUGOI文庫
長田暁二 「歌謡曲おもしろこぼれ話」 現代教養文庫
永六輔 「芸人たちの芸能史」 文春文庫 


磯田 光一 (いそだこういち)
「永井荷風」
(ながいかふう)


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*388頁 / 発行 1989年

*カバー文
「人間は互に不可解の孤立に過ぎない」 ── 。矯激な個人主義に徹した“近代人”永井荷風。文献の博渉、尖鋭な地誌的考察を踏まえた斬新な手法。“磯田美学”をみずから乗り越えた著者の最高の達成。第一回サントリー学芸賞受賞の名著。

*目次
第一章 父と子と
第二章 もう一つの西洋
第三章 隅田川考
第四章 冷笑の構造
第五章 『腕くらべ』の新橋
第六章 駒代とはだれか
第七章 偏奇館の雨
第八章 銀座復興
第九章 墨東の秋
第十章 偏奇館炎上
第十一章 ああ戦後……
 後註 / あとがき
 著者に代わって読者へ 秋山駿 / 解説 吉本隆明 / 作家案内 藤本寿彦 / 著者目録


礒山 雅 (いそやまただし)
「モーツァルト=翼を得た時間」
(mozart)
講談社学術文庫



*カバー写真・《魔笛》台本(18世紀)より
 「パパゲーノ(」Bibliotheue de lOpera/Bridgeman/PPS)
 カバーデザイン・蟹江征治
(画像はクリックで拡大します)

*288頁 / 発行 2008年

*カバー文
「時間を追い越し、時間が追いつけないほど足早に走って、高く飛翔してゆく」モーツァルトの本質とは何か。『フィガロの結婚』の革新性、「愛の讃歌」としての『コシ・ファン・トゥッテ』、「協奏曲」の冒険、『魔笛』『レクイエム』における「死と救済」……その「音楽美」をさまざまな角度から探り、モーツァルト演奏の愉しみ方を考える、贅沢な音楽論。

*目次
第T章 音楽の時間を翔る鳥 ―― 動き続ける永遠
第U章 父、レーオポルト ―― 管理との闘い
第V章 モーツァルトとヨーゼフ二世 ―― ウィーンにおける一〇年
第W章 《フィガロの結婚》 ―― 「与える」方向での人間化
第X章 美を発見する天才 ―― 輝ける《ドン・ジョヴァンニ》
第Y章 《コシ・ファン・トゥッテ》 ―― モーツァルトの愛の讃歌
第Z章 「協奏曲」 ―― 開かれた会話の音楽
第[章 死と救済 ―― 《魔笛》と《レクイエム》をめぐって
第\章 変わらざるモーツァルト ―― 情報の洪水のなかで
第]章 モーツァルト演奏は、大胆に ―― 《クラヴィーア・ソナタ イ短調》の演奏史
第]T章 「切実な」モーツァルトをめざして ―― ワルター、古楽器、アーノンクールなど
第]U章 モーツァルトの美意識を探る ―― 管楽器の用法から
学術文庫版へのあとがき / 楽曲索引


逸名作家 / 池上 俊一訳 (いけがみしゅんいち)
「西洋中世奇譚集成 東方の驚異」
(せいようちゅうせいきたんしゅうせい とうほうのきょうい)
講談社学術文庫



(画像はクリックで拡大します)

*168頁 / 発行 2009年
*カバー図版・TO図 / カバーデザイン・蟹江征治

*カバー文
謎のキリスト教王国を支配する「インド」の王中の王ヨハネ=プレスター・ジョンから西方の皇帝宛の書簡と、東方大遠征の途次にアレクサンドロス大王がアリストテレスに送った手紙。そこに描かれる乳と蜜の流れる東方の楽園には、黄金と象牙と宝石が溢れる壮麗な王宮が煌めく。一方で鰐皮の蟹、犬頭人など奇怪な動植物や人種が跋扈する。東方幻想に中世人の想像界の深奥を読み解く。

*目次
はじめに 「インド」の幻想
T アレクサンドロス大王からアリストテレス宛の手紙〔ラテン語〕
U 司祭ヨハネの手紙(1)〔ラテン語ヴァージョン〕
V 司祭ヨハネの手紙(2)〔古フランス語ヴァージョン〕
 訳註
 訳者解説
 主要参考文献

*「逸名作家」=作者の名が知られていないこと


伊藤 桂一 (いとうけいいち)
「続・悲しき戦記」 (ぞくかなしきせんき)


(画像はクリックで拡大します)

*293頁
*発行 昭和52年
*カバー装画 佐野ぬい

*カバー文
人間本来の心には敵味方の区別はない。だが、戦争は人間としての感情や自由を許さない。その不条理の中で、巨大な圧力に押し潰された兵隊達の生と死。苛烈な戦場にあっても、美しい自然に心を寄せ、人間の心情を謳う優しく柔らかい作者の眼。虚しく戦場に果てた幾多の魂への深い祈りをこめた鎮魂の短編集(全三十話)。

*解説頁・真鍋元之


伊藤 桂一 (いとうけいいち)
「ひとりぼっちの監視哨」 (ひとりぼっちのかんししょう)


*カバー装画・長尾みのる
(画像はクリックで拡大します)

*259頁 / 発行 昭和53年

*カバー文
南海の島の監視哨でたった一人の勤務を続ける上等兵と、脱走兵との心の触れ合いを描いた表題作。一軍医に敵国人に対する隔てなき人間的真情が部隊を救った「救援隊、湖畔を行く」など7編を収録。人と人との暖かいつながりに視点を置いてユーモラスな事象を描き、その底に兵隊の深い哀しみを沈潜させた戦場小説集。

*目次
分屯地への旅
当番兵の子守歌
ひとりぼっちの監視哨
逃亡兵を追って
劣等兵の恋情
湖畔の分屯隊
救護隊、湖畔を行く
 あとがき
 解説 眞鍋元之
 年譜


伊藤 貴麿訳 (いとうたかまろ)
「中国民話選」 (ちゅうごくみんわせん)


(画像はクリックで拡大します)

*305頁
*発行 昭和48年
*カバー装画 K・B・K

*カバー文
民話も時の移りによって変更されるが、これは戦前、文学革命の口火が切られて後、数百年数千年に亙り語りつがれ育まれてきたものを、北京大学で話し言葉のまま大量に採集された民話。その原質を脚色なく伝え中でも中国民衆の体臭を感じさせる谷万川編9編、林蘭編35編を収録。「大きな黒狼の話」「女は何のために嫁入りするか」「お狐様の帽子」など真の中国人の考え、習慣を知ることができる。

*解説頁・伊藤貴麿


伊東 四朗・吉田 照美・水谷 加奈 (いとうしろう・よしだてるみ・みずたにかな)
「親父熱愛(オヤジ・パッション)PART1」


(画像はクリックで拡大します)

*510頁 / 発行 2002年
*カバー写真・橘蓮二 / カバーデザイン・渡辺和男

*カバー文
笑いの職人・伊東四朗、喋りの達人・吉田照美、愛嬌たっぷりの水谷加奈。三人揃えば、ただただ爆笑。広い世間に横たわる、小さいよしなしごとをめぐって繰り広げられる珍にして妙、まっこと奥の深い「雑談」の数々を、読者もトクとご堪能あれ。文化放送の誇る人気番組の絶妙トークを活字化した文庫オリジナル。

*目次
デパートのカワウソ / 山手線(上野〜巣鴨編) / この曲を聴くとあれを思い出す / 忘れられない味 / 酒飲みの論理 / 温泉の思い出 / ヘアースタイル / 毛さまざま / やっぱりお尻は洗わなきゃ / 自転車 / オレはこいつが欲しかった! / 君よ知るや「伊東サイクル」 / クルマ歴、四十年 / 乗り物でGO! / お引っ越し / 山手線(大塚〜高田馬場編) / オレたちチャンバラ世代 / がまだしてはいよー


伊藤 整 (いとうせい)
「日本文壇史10 新文学の群生期 回想の文学」
(にほんぶんだんし)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*302頁 / 発行 1996年

*カバー文
明治三十九年、独歩は短篇集『運命』で作家の地位を確立、啄木は徴兵検査を受けた。漱石『草枕』、二葉亭『其面影』発表。明治四十年、“命のやりとりをするような”“烈しい精神”で文学をやりたい漱石は「朝日新聞」入社を決意、大学に辞表を出した。白鳥は新進作家となり、露風、白秋、牧水ら詩歌に新しい才能が出、幸徳ら社会主義者の活動が盛んになった。多岐多彩な文学の流れを遠大な構想で捉える伊藤整の史観。

*巻末頁
読者に 瀬沼茂樹
参考文献
解説 桶谷秀昭
著書目録 曽根博義
索引


伊藤 整 (いとうせい)
「日本文壇史11 自然主義の勃興期 回想の文学」
(にほんぶんだんし)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*282頁
*発行 1996年

*カバー文
西園寺が日本のアカデミー・雨声会を開催した明治四十年、新文学が明確な潮流となった。白鳥「塵埃」、青果「南小泉村」、三重吉「山彦」、虚子「風流懴法」等が出、朝日入社の漱石は「虞美人草」を連載、白秋、露風ら若き詩人達が活躍し始めた。九月、日本自然主義の方向を決定した花袋「蒲団」が発表され、藤村のモデル問題で暮れたこの時、谷崎らの青春もあった。盛衰・新生、文壇の諸相を重層的に捉える伊藤文壇史!

*巻末頁
読者に 瀬沼茂樹
参考文献
解説 小森陽一
著書目録 曽根博義
索引


伊藤 整 (いとうせい)
「日本文壇史12 自然主義の最盛期 回想の文学」
(にほんぶんだんし)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*356頁
*発行 1996年

*カバー文
鴎外が観潮楼歌会を開いた翌年明治四十一年、一月白秋ら七人が脱退し「明星」は衰退。四月、文壇注目の渾身の力作花袋『生』、藤村『春』の新聞連載開始。花袋らが病床の独歩に贈った『二十八人集』が文壇の主流・自然主義の宣言書となる。啄木が三年振りに北海道から上京。六月、独歩死す。二葉亭宿願のロシアへ向う。漱石、宙外、白鳥、眉山、長江、青果、抱月等々と新文壇の流れに日本近代文学の特性を読む!

*巻末頁
読者に 瀬沼茂樹
参考文献
解説 木原直彦
著書目録 曽根博義
索引


伊藤 整 (いとうせい)
「若い詩人の肖像」
(わかいしじんのしょうぞう)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*454頁 / 発行 1998年

*カバー文
小樽高等商業学校に入学した「私」は野望と怖れ、性の問題等に苦悩しつつ青春を過ごす。昭和三年待望の上京、北川冬彦、梶井基次郎ら「青空」同人達との交遊、そして父の危篤……。純粋で強い自我の成長過程を小林多喜二、萩原朔太郎ら多くの詩人・作家の実名と共に客観的に描く。詩集『雪明かりの路』『冬夜』誕生の時期を、筆者50歳円熟の筆で捉えた伊藤文学の方向・方法を原初的に明かす自伝的長篇小説。

*目次
一 海の見える町
二 雪の来るとき
三 卒業期
四 職業の中で
五 乙女たちの愛
六 若い詩人の肖像
七 詩人たちとの出会い
 あとがき
 解説 荒川 洋治
 年譜 曾根博義
 著書目録 曾根博義


伊藤 正義 (いとうまさよし)
「謡曲入門」 (ようきょくにゅうもん)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・蟹江征治
(画像はクリックで拡大します)

*328頁 / 発行 2011年

*カバー文
謡曲研究の第一人者が、校訂作業の折にふれて記した研究余滴。それがはからずも珠玉の文章となり、すぐれた案内となった。本書は、『謡曲雑記』としてまとめられたその各稿に、後進による解説を付し、入門書として編み直したものである。「安宅」「蟻通」「邯鄲」「自然居士」「俊寛」「天鼓」「百万」「三輪」など、代表的な曲のより深い解釈と鑑賞にいざなう。

*目次
葵上 ― あれなる大床 / 安宅 ― 遼遠東南の雲を起こし / 安宅(続) ― 最愛の夫人に別れ / 蟻通 ― 和歌の心を道として / 鵜飼 ― 伝へ聞く遊子伯陽は / 浮舟 ― 素人よこを元久といふ人 / 右近 ― 花桜葉の神と現はれ / 采女 ― あめははこぎの緑より / 鸚鵡小町 ― 百家仙洞の交はり / 女郎花 ― 女郎と書ける花の名 / 杜若 ― なほしも心の奥深き / 柏崎 ― 白虹地に満ちて列なれり / 春日龍神 ― 昼夜各参の擁護 / 葛城 ― 高天の原の岩戸の舞 / 邯鄲 ― 夢の世ぞと悟り得て / 呉服 ― 名を得たる呉服の里 / 源氏供養 ― ひとつの巻物に写し / 源太夫 ― 東海道を日夜に守る / 恋重荷 ― 心をとどめんとの御方便 / 項羽 ― 望雲騅といふ馬 / 桜川 ― 人商人に身を売りて / 自然居士 ― 舟の起こりを尋ぬるに / 自然居士(続) ― 雲居寺造営 / 自然居士(続々) ― 自然居士と申す喝食 / 俊寛 ― 頃は長月 時は重陽 / 猩々 ― みきと聞く名も理りや / 隅田川 ― 人間愁ひの花盛り / 殺生石 ― げんのうといへる道人 / 千手 ― これや東屋なるらん / 大会 ― 山は小さき土くれを生ず / 経正 ― あら名残り惜しの夜遊やな / 定家 ― 定家の執心葛となつて / 天鼓 ― 天よりまことの鼓降り下り / 融 ― 河原の院こそ塩釜の浦 / 融(続) ― 慕へども嘆けども / 融(続々) ― しもんにうつる月影 / 巴 ― うしろめたさの執心 / 難波 ― 王仁と言ひし相人 / 鵺 ― 浦曲の浮洲に流れ留まつて / 白楽天 ― 青苔衣を帯びて / 百万 ― 地獄節曲舞 哀傷の声懸 / 富士太鼓 ― しうこうが手 はんらうが涙 / 舟橋 ― 苦しみの海 / 松虫 ― 花鳥遊楽の瓊筵 / 三輪 ― 女姿とみわの神

『謡曲雑記』由来 / 解説 大谷節子 / 編集後記


伊藤 礼 (いとうれい)
「狸ビール」
(たぬきびーる)


(画像はクリックで拡大します)

*275頁
*発行 1994年
*カバーデザイン・山口馨

*カバー文
鉄砲をもつと森の暗さや乾いた草の匂いを思い出すという英文学者の、心優しい鉄砲うちの24のお話。狸はビールによく合うと狸を食べ過ぎ2週間も狸の臭いが抜けずに困った話、鴨の沖撃ち、多摩丘陵の小綬鶏と河上徹太郎氏そして猟犬達の思い出など30年熟成、ユーモア+ほろ苦ビール。講談社エッセイ賞受賞。

*解説頁・倉本四郎

稲垣 良典 (いながきりょうすけ)
「天使論序説」
(てんしろんじょせつ)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
(画像はクリックで拡大します)

*194頁 / 発行 1996年

*カバー文
天使とはなにか、天使というものは本当に実在するのだろうか。西洋の長い思想の歴史の中で、二千年以上に及ぶ長い期間、多くの優れた思想家が天使について様々な探究と思索を行なってきた。本書は、天使を神話やメルヘンの世界の想像力の対象としてのみならず思想史の流れに立ち返り、学問的研究の対象として捉えることによって、現代人の自己実現と認識が図れると説く卓越した書き下ろし天使論。

*目次
 まえがき
序章 天使とわれわれ
 天使とは何か? 思想史における天使 メルヘンから学問へ 「精神」について
第一章 天使の研究
 天使学 サルの研究 心のための場所
第二章 天使の存在
 「存在」の問題 聖書と天使の存在 天使と存在の位階秩序(ヒエラルキア) 見えないものの世界 「私」はどこにいるのか?
第三章 天使の知
 思考実験 比較認識論 感覚と知性 推理と判断 天使と認識の誤り 本有観念 「知る」ことの意味
第四章 天使の言語
 天使は語るか? 「内的な語り」 照明と訴え 天使の語りから学ぶこと 天使は人間に語るか? 天使は常に髪に語る
第五章 天使の愛
 天使と愛情 美と愛 神を愛する 神を憎む
第六章 天使の罪
 天使と罪 罪とは何か? 悪の究極にあるもの 沈黙と闇 傲慢と妬み 「神のごとく」
第七章 天使の社会
 天使の社会学 ペルソナと個体 天使社会の構造 学習社会


井上 忠司 (いのうえただし)
「『世間体』の構造 ― 社会心理史への試み」 (せけんていのこうぞう)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・蟹江征治
(画像はクリックで拡大します)

*288頁 / 発行 2007年

*カバー文
世間に対して体面・体裁をつくろい、恥ずかしくない行動をとろうとする規範意識 ―― それが世間体である。唯一絶対神をもたない日本人は、それを価値規準とし、世間なみを保つことに心を砕いてきた。世間の原義と変遷、また日本人特有の羞恥、微笑が生まれる構造を分析し、世間体を重んじる意味を再考する。世間論の嚆矢となった出色の日本文化論。

*目次
はじめに
序章 「世間体」の発見
第一章 「世間」の意味
 1 「世間」の原義 /  2 「世間」の特徴
第二章 「世間」観の変遷
 1 「浮世」と「世間」 /  2 旅と「世間」 /  3 イエと「世間」
第三章 「世間」の構造
 1 ウチとソトの観念 /  2 ミウチ ― セケン ― タニン /  3 マスコミと「世間」
第四章 「はじ」の社会心理
 1 「はじ」の文化 /  2 「はじ」のメカニズム /  3 「はじ」の類型
第五章 「笑い」の機能
 1 日本人の「笑い」 /  2 〈まなざし〉の呪縛 /  3 「笑い」の教育
第六章 「世間体」の文化再考
 1 「世間体」の今日的意義 /  2 比較文化論への視座
あとがき(原本)
学術文庫あとがき ― 補遺にかえて
参考文献


井上 ひさし (いのうえひさし)
「井上ひさし笑劇全集」 上下巻 
(いのうえひさししょうげきぜんしゅう)


(画像はクリックで拡大します)



*上巻253頁・下巻257頁
*発行 1976年
*カバー装画 / ジャック・カローのエッチング
 カバーデザイン / 内藤正人

*上巻カバー文
意表をつく発想、日本語のおもしろさをフルにいかした会話、チクリとさす諷刺、登場人物たちの緊迫した“対立”が生みだす迫真のドラマ、そして小気味よいオチ――読む者を笑いの渦に引きこむ笑劇の真髄がここにある。小説に戯曲に“笑い”を探求する井上ひさしの原点の結晶。厳選した80編のうち、37編を上巻に収録。

*てんぷくトリオに書き下ろした井上ひさしのコント集


井上 ひさし・南原 幹雄・佐藤 光信 (いのうえひさし・なんばらみきお・さとうみつのぶ)
「歌麿の世界」 (うたまろのせかい)


(画像はクリックで拡大します)

*94頁
*発行 昭和51年
*カバーデザイン・松永真

*カバー文
繊細な筆致から醸し出される絵画空間が遠く欧州の画家たちにも影響を与えた青楼画家・歌麿。私たちはその大首絵と艶麗なる春画に美の特質を発見する。が同時に、爛熟した江戸文化のただなかにあった庶民として徹し反権力の位相を貫いた生きざまにも興味を禁じえない。これはその気骨の絵師の魂の評伝画集である。


井上 光貞 (いのうえみつさだ)
「飛鳥の朝廷」
(あすかのちょうてい)
講談社学術文庫


*カバー写真
 伝飛鳥板蓋宮跡〔飛鳥宮跡〕
 (奈良県明日香村)
*カバーデザイン・蟹江征治
(画像はクリックで拡大します)

*528頁 / 発行 2004年

*カバー文
倭王武にはじまり、仏教伝来と聖徳太子の登場、大化の改新を経て白村江の戦い、壬申の乱と続いた動乱の時代。中国・朝鮮と濃密な関係にあった日本は、東アジア世界の激動の中、文化の飛躍的発展を背景に古代天皇制を確立し、統一国家への歩みを進めた。『日本書紀』など史料の精緻な分析により、史学界の泰斗が六〜七世紀の日本の姿を鮮やかに描き出す。

*目次
序章 古代国家の成立 ― 東アジア世界の一員として
第一章 雄略天皇とその時代
 一 氏と姓 / 二 東アジア諸国との交わり / 三 東漢氏のなりたち
第二章 六世紀の開幕
 一 継体天皇の出現 / 二 百済武寧王と継体朝 / 三 筑紫国造の反乱
第三章 欽明朝と国際関係
 一 継体 ― 欽明朝の謎 / 二 蘇我氏の台頭 / 三 任那滅亡
第四章 国造と屯倉
 一 古墳と屯倉 / 二 筑紫と東国 / 三 国造と県主
第五章 飛鳥仏教の成立
 一 仏教伝来 / 二 聖徳太子と蘇我馬子 / 三 三宝興隆
第六章 日出ずる国の天子
 一 旧外交の解体 / 二 官人の秩序と法 / 三 隋との国交
第七章 改新の前夜
 一 新世代の台頭 / 二 改新政権の樹立
第八章 大化の政治改革
 一 改新の発足 / 二 改新政治の展開 / 三 難波宮の完成 / 四 外交方針の破綻
第九章 百済の役
 一 有間皇子の変 / 二 阿倍比羅夫の東北経営 / 三 百済の滅亡 / 四 白村江の敗戦
第十章 近江朝廷と律令
 一 国土の防衛 / 二 初期律令国家の成立
第十一章 壬申の乱
 一 乱の前夜 / 二 両軍のたたかい / 三 近江朝廷の敗退
補章 辛亥はやはり四七一年 ― むしろ通説の正しさを証明
解説 大津透 / 年表


井上 光晴 (いのうえみつはる)
「小屋」
 (こや)


(画像はクリックで拡大します)

*181頁
*発行 1977年
*カバー装画・池田満寿夫

*カバー文
自殺した知人の遺品を遺族に届けた19歳の青年は、その村に居ついて村人や遺族の異様な光景に出会う。戦争にいって廃人同様になった父親。その妻のモノローグを通じて、戦後25年経ったいまも、戦争の傷を癒せぬ夫婦の戦慄的生活が現れる。暗い時代の深暗部を照し出した力作。他に「小泊海岸の犯罪」と「雪」を収録。

*解説頁・小笠原克

伊吹 和子 (いぶきかずこ)
「われよりほかに 谷崎潤一郎最後の十二年(上下)」
講談社文芸文庫



*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*上361頁 / 下387頁
*発行 2001年

*カバー文

京都で生まれ育った伊吹和子は二十四歳の時、下鴨の潺湲亭で当時六十六歳の谷崎潤一郎と会い、『潤一郎新訳源氏物語』の原稿の口述筆記者となる。「谷崎源氏」の仕事が終ったあとは、中央公論社の谷崎担当の編集者として引き続き口述筆記に従事し、『瘋癲老人日記』や『夢の浮橋』など、晩年の傑作の誕生の現場に親しく立ち会う。日本エッセイスト・クラブ賞受賞。

 我といふ人の心はたゞひとり
  われより外に知る人はなし (「雪後庵夜話」)
晩年の谷崎潤一郎に十二年間、口述筆記者として身近に接した伊吹和子は、著者ならでは知りえなかった谷崎の実像を整った日本語で冷静に記述する。谷崎の奇怪異様な心の奥の奥まで究め尽くし、世の通説に自信をもって異議を申し立てた労作。


井伏 鱒二 (いぶせますじ)
「点滴・釣鐘の音 現代日本のエッセイ」
(てんてき・つりがねのおと)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*298頁 / 発行 1993年

*カバー文
中学時代、朽木三助のペンネームで森鴎外に手紙を出し、“一ぱいくわした”つもりが文豪の大手腕に舌を巻く『悪戯』。宿の水道栓から滴る微妙な音へのこだわりを互いに競った太宰との思い出から、その“最期”への無念さの篭る『点滴』。『鮠つり』『掘出しもの』『猫』等。詩魂を秘めた繊細と放胆、前人未踏の文学世界を創造していった著者の昭和六年から三十年間の珠玉のエッセイ四十七篇。三浦哲郎新編

*巻末頁
人と作品 三浦哲郎
年譜 松本武夫
著書目録


井伏 鱒二 (いぶせますじ)
「晩春の旅・山の宿 現代日本のエッセイ」
(ばんしゅんのたび・やまのやど)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*340頁 / 発行 1990年

*カバー文
瀬戸内の大三島、九州・日向の高千穂への旅路。爆心地近くの広島の宿で独りきいた「平和の鐘」茜色に暮れなずむ富士山を見る御坂峠の茶屋の宿。伊豆の河津川や、栃代川、笛吹川、富士川での川釣。旅と釣がこよなく好きな作家の眼が、出会った人々、その土地土地の歴史の跡と人情の温もりをあたたかな筆づかいで活写する、懐しい旅の回想。

*目次
晩春の旅
 晩春の旅 / 案内記 / 月山日和城 / コンプラ醤油瓶
山の宿
 山の宿 / 増富の谿谷 / 御坂上 / 鳥の声 / 塩の山・差出の磯 / 小黒坂の猪 / 富士の笠雲
広島風土記
 広島風土記 / 志賀直哉と尾道 / 大三島 / 備前牛窓 / 水鶏
取材旅行
 九谷焼 / 熊野路 / 能登半島
釣宿
 川で会った人たち / 湯河原冲 / グダリ沼 / 釣宿

 人と作品 飯田龍太 / 年譜 松本武夫 / 著書目録



井伏 鱒二 (いぶせますじ)
「漂民宇三郎」
(ひょうみんうさぶろう)
講談社文芸文庫


*装幀・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*316頁 / 発行 1990年

*カバー文
天保九年、金六、宇三郎兄弟は、松前を出帆、江戸に回航途中、西風に遭い、漂流六ヶ月、天保十年米捕鯨船に救助され、ハワイ群島オワフ島に着く。兄と仲間三人を失なった宇三郎達生残りは、ロシア領カムチャツカ、オホーツク、シトカを経て、エトロフに送られ、天保十四年九月上旬、宇三郎をのぞいて、松前城下に着いた。日本文学世界文学に誇る井伏鱒二の長篇傑作。“自選全集”版未収録の芸術院賞受賞の鏤骨の名品。

*目次
漂民宇三郎
 解説 三浦哲郎
 作家案内 保昌正夫
 著者目録 松本武夫


今西 錦司 (いまにしきんじ)
「自然学の展開」
(しぜんがくのてんかい)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
(画像はクリックで拡大します)

*258頁 / 発行 1990年

*カバー文
カゲロウ、イワナ、ウマ、ニホンザル、チンパンジー、ゴリラと研究対象を展開する一方、1500有余の山頂を踏査する中で構想されたものは、今西学と総称される生物全体社会を見すえた「自然学」であった。真のナチュラリスト今西錦司が前著『自然学の提唱』に引き続き展開する本書は、地球規模の問題が多発する今日、21世紀の日本と世界を透視する確かな視座を提示する万人必読の書である。

*目次
混合樹林考 / 「自然学」の提唱に寄せて ── ニつの目の自画像 / 自然学に向かって / 自然学へ至る道 ── 自然の全体像 ── 直観の思想 / 生態学と自然学とのあいだ / 「自然学」への到達 / 『生物の世界』への回帰 / 自然学の一つの展開 ── odum 生態学に寄せて / 自然学から見たわが国の自然 ── 生態学から生物地理学への復帰 / 生物社会学のことども ── 小田柿進二著『文明のなかの生物社会』の序 / 場の共有から共感へ / プロトアイデンティティ論 / 群れ生活者たち / あとがき / 初出一覧 / 解題 伊谷純一郎


今西 錦司 (いまにしきんじ)
「私の霊長類学」
(わたしのれいちょうるいがく)
講談社学術文庫



(画像拡大不可)

*275頁
*発行 1976年

*目録文
世界に誇る日本霊長類学は人間社会の起源をもとめてニホンザルからゴリラ、チンパンジーへと研究対象、調査域を拡大してきた。本書は霊長類の支柱ともいえる名論文を収録した「今西学」の必読書である。

*解説頁・河合隼雄


今西 祐行 (いまにしゆうすけ)
「ヒロシマの歌 ほか」 (ひろしまのうた)


*カバー装画 いわさき・ちひろ
(画像はクリックで拡大します)

*203頁 / 発行 昭和51年

*カバー文
名作「肥後の石工」の著者今西祐行の短編集。広島で原爆にあい母を奪われた幼児と、その子を救った水兵との交流を通して、戦争の悲しみと平和への願いを描いた「ヒロシマの歌」ほか、「ゆみ子とつばめのお墓」「一つの花」「鐘」「ハコちゃん」「ポールさんの犬」「なたね地ぞう」「聖エレーナの島」など10編収録。

*目次
ヒロシマの歌
ゆみ子とつばめのお墓
一つの花

ハコちゃん
ポールさんの犬
風祭金太郎
むささび星
なたね地ぞう
くらがり峠
聖エレーナの島
 解説 倉澤榮吉
 あとがき


色川 武大 (いろかわたけひろ)
「生家へ」
(せいかへ)
講談社文芸文庫


(画像はクリックで拡大します)

*304頁 / 発行 2001年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
生まれ育った生家へ子どもの頃のままで帰りたい―戦時中、家の下に穴を掘り続けた退役軍人の父が、その後も無器用に居据っていたあの生家へ。世間になじめず、生きていることさえ恥ずかしく思う屈託した男が、生家に呪縛されながら居場所を求めて放浪した青春の日々を、シュールレアリスム的な夢のイメージを交えながら回想する連作11篇。

*目次
作品1 / 作品2 / 作品3 / 作品4 / 作品5 / 作品6 / 作品7 / 作品8 / 作品9 / 作品10 / 作品11 / 黒い布 / 単行本あとがき / 解説 平岡篤頼 / 年譜 / 著書目録

同書の中公文庫版(サイト内リンク)


岩川 隆 (いわかわたかし)
「どうしやうもない私 ― わが山頭火伝」
 (どうしやうもないわたし)


*カバーデザイン・亀海昌次
(画像はクリックで拡大します)

*500頁 / 発行 1992年

*カバー文
俳人・種田山頭火の人間的魅力を描ききった長編力作。迷いに生き、酒に生き、借金に生き、ひとに頼って生きた山頭火。それでいて、ひたすら素朴に、生死のなかの透明な句を一心一途につくろうとするにくめない人間でもあった。その迷いのある俗性こそが、人間らしい親密ななつかしさを呼びおこしてくれる。

*目次
はじめに / ちしゃもみ / 炎天の街 / 南無観世音 / 行乞 / 三八九 / 年齢とれば故郷 / 因縁の仲 / ちしゃなます / てふてふ / 孤寒 / 花曇り / 遍路 / 一人一草 / 虫のいのち

 追悼記 / 文庫版あとがき / 解説 ― 西村説三


岩阪 恵子 (いわさかけいこ)
「淀川にちかい町から」
(よどがわにちかいまちから)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*258頁 / 発行 1996年

*カバー文
清冽な抒情と透明な詩心を持つ新進女流詩人として出発。昭和六十一年『ミモザの林を』で野間文芸新人賞、次いで平成四年評伝『画家小出楢重の肖像』で平林たい子賞受賞。人生の機微を深く鮮やかに彫り彩る独自の散文世界を構築、『淀川にちかい町から』で芸術選奨・紫式部文学賞両賞受賞。こころ暖かく、こころ鎮まる、爽やかな散文の小説世界。

*目次
淀川にちかい町から / 質朴な日日 / 口惜しい人 / おたふく / まだまだ / 意気地なし / 子供の死 / 釘を打つ / 空に籤 / 帰郷 / 解説 秋山駿 / 年譜 岩阪恵子 / 著書目録 岩阪恵子


いわさきちひろ / 松本 猛 (まつもとたけし)
「いわさきちひろの絵と心」
(いわさきちひろのえとこころ)


*カバーデザイン・アドファイブ
(画像はクリックで拡大します)

*94頁 / 発行 昭和53年

*カバー文
やさしさとは、何だろう。弱さの裏返しとしてのやさしさではなく、世の辛酸を知りぬいて、なおやさしく強く生きることはすばらしい。多くの人に愛されてきた画家・いわさきちひろの絵には、限りない奥行きと魅力に満ちたやさしさがあるという。その美しい人と芸術を、今、遺された子が熱情をもって語る。

*目次
図版・カラー / 単色
本文・いわさきちひろの絵と心(松本猛)
 一、アトリエのいわさきちひろ
 二、子どもを描いた画家
 三、画家への道
 四、いわさきちひろの滲みと余白
 五、絵本の世界を広げる
 六、絵と人生
 いわさきちひろ絵本美術館への案内


岩田 慶治 (いわたけいじ)
「道元との対話 人類学の立場から」
(どうげんとのたいわ)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
(画像はクリックで拡大します)

*363頁 / 発行 2000年

*カバー文
アジア各地の民族の社会・文化・宗教を調査し、その多様性の底にひそむものを探究してきた著者は、『正法眼蔵』を常に傍らに置き、道元に対面してきた。北ラオス、パ・タン村のベッドに夜ごと横たわるとき、闇の中で自分と大地が一体となり、それを受けとめてくれる掌の存在を感じる……。著者独特の言葉で語る道元の真の姿。

*目次
はじめに
序章 道元との対話、
第1章 『正法眼蔵』を読むとき
第2章 道元の言葉
第3章 道元の時空
第4章 道元の宇宙
第5章 道元と現代文明
原本あとがき ── ふりかえって、今
学術文庫版あとがき ── 『正法眼蔵』とアニミズム
参考文献