絶版文庫書誌集成

角川文庫 【よ】

横溝 正史 (よこみぞせいし)
「山名耕作の不思議な生活」
 (やまなこうさくのふしぎなせいかつ)


*カバー・杉本一文
(画像はクリックで拡大します)


*300頁 / 発行 1977年

*カバー文
 千住の船着き場から約五丁。広い市場の通りを抜けて家並みもまばらな田舎くさい町の片隅に、10度ばかり往来に傾いたみすぼらしい家がある。その家には、天井がわりに設えた奇妙な棚があった。これこそ、あの有名な奇人山名耕作の住まいである。
 実際、彼は風変わりな男だった。洗いざらしの浴衣によれよれの帯を締めたその装いは、至極この部屋に調和する。だが、頭をきれいに刈り込み、顔もきれいにそり、爪にはマニキュアを施す凄じさ。その彼が恋愛をしているらしく、私は大変興味を持った……。
 探偵小説一筋に五十年、横溝文学の原点を探る初期短編傑作選(昭和編)!

*目次
山名耕作の不思議な生活 / 鈴木と河越の話 / ネクタイ奇譚 / 夫婦書簡文 / あ・てる・てえる・ふいるむ / 角男(つのおとこ) / 川越耕作の不思議な旅館 / 双生児 / 片腕 / ある女装冒険者の話 / 秋の挿話 / 二人の未亡人 / カリオストロ夫人 / 丹夫人の化粧台 / 解説 中島河太郎


吉田 拓郎 (よしだたくろう)
「気ままな絵日記」 
(きままなえにっき)


(画像はクリックで拡大します)

*193頁 / 発行 昭和58年

*カバー文
広島の楽器店に就職して、ごく普通のサラリーマン人生を送るはずだった男が、ひょんなことから時代の荒波にのみこまれ、気がついたら"フォーク界のプリンス"と騒がれるスーパースターになっていた。人生、何が起るかわからないから、面白い。一九七二年、人気の頂点に立った時の吉田拓郎が水彩画タッチでつづった青春譜、この本は当時ベスト・セラーとなった吉田拓郎のファースト・エッセイ集である。

*解説頁・中川五郎


吉行 淳之介 (よしゆきじゅんのすけ)
「樹に千びきの毛蟲」 
(きにせんびきのけむし)


(画像はクリックで拡大します)

*197頁 / 発行 昭和52年
*カバー・和田誠

*カバー文
 風変わりなタイトル、一見さりげなくむしろ明るい文章で書かれたこの本の背後に、あなたは作者のどのような顔を想像されるだろうか。
 ここには、作者の過去の見聞のスケッチや、知人友人肉親の思い出、国語や読書の感想、身辺、仕事、遊びについての意見など、断章風のエッセイが多数収められている。そしてこれらの執筆の時期、作者は心身共に最悪の状態であったという。
 人生の深刻な問題も、マジメ半分面白半分に、つまりハーフ・シリアスに語る。そこに、ほんものの、時として苦いユーモアが、うまれる。心弱く思い屈したようなときに読めば、この一冊はあなたを慰め、優しく力づけてくれるだろう。

*解説頁・平岡篤頼


吉行 淳之介 (よしゆきじゅんのすけ)
「唇と歯」 
(くちびるとは)


*カバー装画・風間寛
(画像はクリックで拡大します)

*406頁 / 発行 昭和54年

*カバー文
 その女は形のよい唇をもっている。男たちにはその唇自体が、何かを語りかけているようにも見える。
 赤い唇の裏側には、白い歯がある。美しいものと、その背後にかくされた兇暴なもの。魅力的な女のなかに悪女が棲んでいる。
 ヒロイン須磨子には少女時代に輪姦されたという過去がある。上京して、今は地下にあるバーの共同経営者になったが、彼女の計画は銀座に一流の店をもつことである。彼女には幾代とせき子という姉妹もいる。
 須磨子と姉妹の周辺には何人もの男たちが出入りする。男と女、女と女の虚々実々の駆引き。都会の夜を舞台に、野心と欲望に彩られた凄絶なドラマが展開してゆく――。
 吉行淳之介エンタテインメント小説の傑作長編。

*解説頁・野呂邦暢