絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【ひ】

ピーター ミルワード著 (Peter Milward) 安西 徹雄訳
「シェイクスピア劇の名台詞」
 (しぇいくすぴあのめいせりふ)
講談社学術文庫



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*329頁
*発行 1986年
*カバーデザイン・椙村嘉一

*カバー文
シェイクスピアが語りかけているものは何か。彼の遺した作品を愛・史劇・悲劇に分類し、その核心の立体的解明を試みたのが本書構成の要訣である。即ち各台詞の冒頭で有名な一節を読み、次に場面、情況を理解し、改めて台詞全体を味読する。かくて台詞がもつ劇中での意味を訊ね、シェイクスピアの思想にまで鑑賞を進め、更に原文の熟読によって、台詞がいかにダイナミックで、かつ繊細な魅力に満ちているかがおのずから体得できる。


ビアス 中西 秀男訳 (なかにしひでお)
「ビアス怪談集」
 (びあすかいだんしゅう)


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*175頁 / 発行 昭和52年
*カバー装画・丹阿弥丹波子

*カバー文
悪魔の辞典で知られるビアスは ― 短編小説を組み立てさせれば、彼程鋭い技巧家は少い、評家がポウの再来と云うのは確かにこの点でも当っている。その上彼が好んで描くのはやはりポウと同じように無気味な超自然の世界である ― と芥川龍之介をして言わしめた。ビアスの短編中、怪奇と幻想に満ちた妖異談を選び、名だたる難文を見事な新訳にしておくる。

*目次
右足の中指 / 宿なしの幼な子 / 月あかりの道 / 壁のかなた / 死人谷の夜の怪異 / ハルピン・フレイザーの死 / シロップの壺 / 見知らぬ男 / 適切な環境 / あん畜生 / マカーガー峡谷の秘密 / 猛烈な格闘 / カーコサの一住民 / アウル・クリーク橋の一事件 / 訳者ノート / 注


日浦 勇 (ひうらいさむ)
「海をわたる蝶」
(うみをわたるちょう)
講談社学術文庫


*カバー写真・ツマグロヒョウモン(宮武頼夫氏撮影)
 カバーデザイン・蟹江征治
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*288頁 / 発行 2005年

*カバー文
私たちの周りで美しく舞いながら飛ぶ蝶。
人間と蝶の間には、密接で深い、意外な関係が存在する。一分間に数千匹が山を越え移動するイチモンジセセリ。
日本列島をさまよいながら生きるウラナミシジミ。
外国から海を越えてくる蝶、また、海面で昼寝をする蝶。
なぜ旅をするのか、どのくらいの距離を動くのかなど、本書は、謎に満ちた蝶の不思議な生態を解き明かす。

*目次
はじめに
第一章 豊作を告げる蝶
 1 蝶の大群 / 2 旅立ちの背景 / 3 イチモンジセセリの歴史と水田
第二章 さまよいながら生きる
 1 ウラナミシジミを追って / 2 越冬の生態 / 3 津軽海峡を越えた / 4 種の全体像
第三章 モンシロチョウの歴史
 1 アメリカ開拓史 / 2 モンシロチョウは土着種か / 3 海をわたるモンシロチョウ
第四章 迷蝶
 1 日本に迷入する蝶 / 2 迷入の機構 / 3 迷入から定着へ ―― タテハモドキの場合
第五章 供給地の実態 ―― フィリピン群島の旅から
 1 迷蝶のふるさと / 2 ミンダナオ島 / 3 オープン・ランド / 5 林の中で / 4 ミンドロ海峡
第六章 都市化と蝶相の変遷
 1 村の蝶と町の蝶 / 2 自然変貌の三段階 / 3 都市に生きる蝶
第七章 蝶の地理学
 1 蝶の戸籍調べ / 2 海をわたらぬ蝶 / 3 地理的分布と棲息環境
第八章 氷河時代
 1 草原の歴史 / 2 森の蝶と草原の蝶 / 3 いずこへ
用語解説 / あとがき / 解説 宮武頼夫 / 索引


檜垣 立哉 (ひがきたつや)
「西田幾多郎の生命哲学」
(にしだきたろうのせいめいてつがく)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*352頁 / 発行 2011年

*カバー文
純粋経験、自覚、場所、絶対無、行為的直観、絶対矛盾的自己同一……。一見、難解なことばにみずからの思索を託しながら、西田が終生追い求めたひとつの問題とは何だったのか。ほぼ同時代を生きたベルクソンとの交錯に着目し、ひいてはドゥルーズら現代思想につながる「生命の哲学」として西田哲学を再評価し、注目され続ける、俊秀の記念碑的力作。

*目次
学術文庫版への序文
序 西田幾多郎とは誰か
第一章 「純粋経験」 ―― 「有機体的一者」への希求
第二章 「自覚」という装置 ―― 「無限」のなかでの「自己限定」
第三章 「場所」の論理 ―― 「関係」の多層的な「階乗」
第四章 「絶対無」の展開 ―― 「非連続」の理論的導入
第五章 「行為的直観」 ―― 「ポイエンス」の世界
第六章 「絶対矛盾的自己同一」 ―― 「生成」のためのロジック
補章 1.西田幾太郎と大正生命主義 / 2.生命と微分 ― 西田と九鬼をめぐるひとつの考察

解説にかえて 対談 小泉義之・檜垣立哉 西田から「哲学」を再開するために
現代新書版あとがき
学術文庫版へのあとがき


東 君平 (ひがし くんぺい)
「100杯目の水割り」
 (ひゃっぱいめのみずわり)


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*202頁
*発行 昭和54年
*カバー装幀・本信公久

*カバー文
この本に登場するゲストは20人。うんと有名な人、それほど有名でない人、まったく有名でない普通の人などさまざまである。これらの人物の印象を、ある時はほのぼのと、ある時は苦味をきかせて辛辣に、独得のユーモアとペーソスをまじえた軽妙な文章のなかに綴る、秀れた人間観察者、東君平の異色の人物探訪記。


樋口 清之 (ひぐちきよゆき)
「日本女性の生活史」
 (にほんじょせいのせいかつし)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・辻村益朗
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*249頁 / 発行 昭和52年

*カバー文
歴史の中で女性は、ただ被害者であり、被抑圧者にすぎなかったのだろうか。“被害者としての女性史”という流行のイデオロギーに疑問を感じる著者は、過去の女性の生き方をありのままに見つめる。そこにおのずから結ばれた像は、各時代を支えた女性の大きな役割であり、深い愛情と勇気に満ちた行動、そして娘・妻・母として生きる喜びと哀しみの姿であった。豊かな学殖を縦糸に、暖かな目指しの横糸で織り上げた、日本女性史の名著である。

*目次
まえがき
はしがき 女性生活史の意義
第一章 女性生活のあけぼの
第二章 飛鳥奈良時代の女性生活
第三章 王朝時代の女性生活
第四章 中世の女性生活
第五章 江戸時代の女性生活
第六章 明治大正時代の女性生活
むすび
 解説 丸茂武重


久生 十蘭著・小林 真二翻刻 (ひさおじゅうらん こばやししんじ)
「久生十蘭『従軍日記』」
(ひさおじゅうらんじゅうぐんにっき)


*カバーデザイン・鈴木成一デザイン室
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*532頁 / 発行 2012年

*カバー文
変幻自在の文体と技巧で「小説の魔術師」の異名を取り、今なお“ジュウラニアン”と呼ばれる熱狂的なファンを持つ直木賞作家・久生十蘭(ひさおじゅうらん)。彼が海軍報道班員として南方に派遣された昭和十八年の日記が、没後五十年目に発見された。己の心情を吐露することを拒み続けた作家の素顔が見える従軍記。

*目次
 昔の大人の普通の日記 橋本治
第一章 日本・爪哇 (自昭和十八年二月二十四日 至昭和十八年四月二十二日)
第二章 サランガン湖畔 (自昭和十八年四月二十二日 至昭和十八年六月一日)
第三章 出発まで (自昭和十八年六月二日 至昭和十八年七月十二日)
第四章 チモール島クーパン警備隊 (自昭和十八年七月十三日 至昭和十八年八月四日)
第五章 アンボン島第一砲台 (自昭和十八年八月四日 至昭和十八年八月十二日)
第六章 ハロンの航空隊 (自昭和十八年八月十三日 至昭和十八年八月二十日)
第七章 ニュウギニアにて (自昭和十八年八月二十日 至昭和十八年九月一日)
第八章 第九三四海軍航空隊 (自昭和十八年九月一日 至昭和十八年九月九日)
 解題 ── もっと深く本書を楽しむために 小林真二
 著作権継承者として 三ツ谷洋子
 久生十蘭略年譜


日野 啓三 (ひのけいぞう)
「夢の島」
(ゆめのしま)
講談社文芸文庫


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*221頁 / 発行 1988年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
巨大な都市のゴミの捨て場所 ―― 夢の島。バイクを疾駆させ、主人公を惹きつける若い女。ゴミの集積地が、“魅惑の場所”に鮮やかに逆転する ―― 時代の最尖端での光芒を放つ、日野文学の最高傑作。芸術選奨受賞作。

*目次
夢の島
 あとがき
 著者から読者へ
 解説 三浦雅士
 作家案内 日高昭二
 著書目録


姫野 カオルコ (ひめのかおるこ)
「ああ、懐かしの少女漫画」
(ああなつかしのしょうじょまんが)


*カバーデザイン・池田進吾(67)
 カバー装画
 姫野カオルコ(人物)
 牧美也子(花 / 『なかよし』カバーより)
 人物画説明
 右半分 / 主人公(貧乏)、
 左半分 / 敵役(金持ち)
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*330頁 / 発行 2011年

*カバー文
“カオルコ少女”が5〜10歳の頃夢中になった、昭和40年代の少女漫画。『なかよし』『りぼん』『マーガレット』、舟木一夫モノや、王道の恋愛&スポーツ、初めて見たヌード……驚異の記憶力と共に、鮮やかに甦(よみがえ)る漫画たち。知らない人でもなぜか懐かしく笑える、不思議なノスタルジック・エッセイ。〈文庫オリジナル〉

*目次
1 ― 楳図かずお
2 ― 一条ゆかり
3 ― そんな少女漫画、見たこともない。そんな漫画家、聞いたこともない
4 ― 赤松セツ子
5 ― コーヒーブレーク 「お姉さま」ということば
6 ― はまえりこ(前半)
7 ― はまえりこ(後半)
8 ― コーヒーブレーク チャコちゃんシリーズ
9 ― 石原豪人
10 ― 浜慎二
11 ― 牧美也子
12 ― コーヒーブレーク 和泉雅子の貞操
13 ― 松井由美子
14 ― コーヒーブレーク 悪魔くん、恋知り初めさせし前髪の
15 ― 長谷川一
16 ― 西谷祥子
17 ― コーヒーブレーク ショーケンの貞操
18 ― 松田明姫
19 ― 巴里夫
20 ― コーヒーブレーク 「おたよりちょうだい」の向こう側
21 ― 平田真貴子
22 ― 今村洋子&今村ゆたか(姉弟)
23 ― 忠津陽子&大和和紀(いとこ同士)
24 ― 矢代まさこ
25 ― コーヒーブレーク 死をよぶピエロ
26 ― 木原としえ・大島弓子・山岸涼子
27 ― 少女漫画における目の系譜
28 ― 松尾美保子
 あとがき


平井 富雄 (ひらいとみお)
「禅と精神医学」
 (ぜんとせいしんいがく)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・志賀紀子
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*290頁 / 発行 1990年

*カバー文
瑩山(けいざん)禅師の『坐禅用心記』には、禅門のなかに潜む心の健康法の秘密と、悟りにいたる人間の心が、明らかな科学の言葉で語られている。禅瞑想のもつ科学性を病める心の治療に用いることこそ、仏の説く慈悲ではないかという考えのもとに、著者は精神医学の立場から脳波学的研究によりこれを証明しようとした。本書はまさに現代日本の医学と禅との結実の書といえる。国際的にも高く評価された注目の書。

*目次
「学術文庫」版まえがき
はじめに(原本)
 T
1 坐禅とは何か
2 「身心脱落」 ― 執着しない心
3 「曾て名を知らず」 ― 仏性とは何か
4 「全身独露」 ― 生と死
5 「虚空終に内外無し」 ― 心の防衛機制
6 「唯心と唯身と異と同とを説かず」 ― 心とからだ
7 「身露れて相分る」 ― 仏心にある現代的知性
8 「心は海水の如く、身は波浪の如し」 ― 生命感情回復のあがき
9 「光明終に円照す」 ― 健康な不安、プラスのストレス
10 「三昧王三昧」 ― 三昧の心理
11 「家に還って穏坐するに似たり」 ― 無意識の世界
12 「座禅は是れ、己を明らむるなり」 ― 悟りと無意識
13 「心思うこと無く、身事とすること無かるべし」 ― 心身の健康法
14 「默照体験」 の科学 ― 坐禅と脳波
15 「須らく善悪の思を休すべし」 ― 強迫観念
 U
16 「妄縁尽くる時、妄心随って滅す」 ― 脱俗の心
17 「般若の智慧」 ― 知恵と知的生活
18 「浄心の因縁たりと雖も……」 ― 能動的注意集中と受動的注意集中
19 「調心の至要」 ― 快楽追求本能
20 「調身の要術」 ― 他力本願の健康法
21 「皆ものに仏性あり」 ― 一人よがりの倨傲
22 「調息の法」 ― 息の構造と心とからだと
23 「念息不調の病」 ― 悟りは幻覚(=禅病)ではない
24 「心を鼻端丹田に安ず」 ― 禅病の予防
25 「多き時皆乱心の因縁なり」 ― 禅病にかかりやすいタイプ
26 「散心乱念」 ― ハート・ショック
27 「探道の心」 ― 甘くない「安楽の法門」
28 「?慢我慢法慢」 ― 知的我利我利亡者
29 「只管打坐」 ― 「煩悩を断じ」の逆説
30 「説くこと莫れ」 ― 坐禅の科学性
31 「意尽き理窮る処」 ― 真の現実性とは
32 「聖凡の格式を超え迷悟の性量を出ず」
33 「心地無相の戒」 ― 瞑想の科学的意義
 V
34 「坐禅せんと欲せば……」 ― 坐禅と自律訓練法
35 「心意識を放捨し……」 ― こだわりを脱却する
36 「端坐すべし」 ― 坐禅の実践
37 「如何が思量せん」 ― こだわりの精神病理
38 「不思量底を思量す」 ― 宇宙的無意識と不思量
39 脳波にみる座禅時の意識転換
40 道元禅師と瑩山禅師の違い
41 坐禅と意識の変化
42 「坐を起って経行すべし」 ― 禅瞑想と睡眠
43 ノイローゼとコンプレックス
44 「心若し散乱する時は……」 ― コンプレックスからの解放と悟り
45 「至?至?」 ― 瑩山禅師の死生観
あとがき
〈付録〉坐禅用心記


平岡 正明 (ひらおかまさあき)
「志ん生的、文楽的」 (しんしょうてき、ぶんらくてき)


*カバーデザイン・坂野公一(Welle design)
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*608頁 / 発行 2010年

*帯文
革命的落語家の熱地点
平岡正明
死すとも
躍動リズムの
平岡落語論
死せず!

*カバー文
ご用とお急ぎの方、騙されたと思ってページをめくってごらん。損はさせない。八代目文楽の語りの向こうに江戸の崩壊を見、五代目志ん生の噺の彼方に黄塵万丈の大陸風景を幻視する平岡正明の落語論は躍動(グルーヴ)し、疾走する。そのスピードにただ身を任せ、リズムに酔え! こんな本が読めるなんて、嬉しいねぇ。

*目次
頭蓋骨の中の桂文楽
水に落ちた幇間はぶちのめすべし
文楽の「つるつる」
志ん生の「つるつる」
新内「なめくじと志ん生」
新内「あばらかべっそん」
遠くちらちら火の手が見える
松のや露八論
満洲における志ん生、圓生、森繁
白蛾のミステリー
「野ざらし」マンハッタン
穴どろ三人衆
そらからの「穴どろ」と志ん生の「富久」
「悋気の火の玉」論より証拠藁人形
文楽と志ん生の「締め込み」くらべ
「寝床」の文楽と志ん生
「松山鏡」および「厩火事」の民話
「芝浜」の文楽ヴァージョンはあったのか
落語の波止場と不心中
文楽「船徳」と志ん生「お初徳兵衛」
「後の船徳」名人圓喬論
「船徳」と「唐茄子屋政談」
長屋騒動にお奉行さまが出てくると
「大仏餅」批判
談志「ねずみ穴」 夢の中でも兄きは悪い
湯がぬるい、屁がくせえ
志ん生怪談の一石「もう半分」
文楽「花瓶」と志ん生「火焔太鼓」
「藁人形」と「黄金餅」の通し一本
巨匠が源内と言いまちがえた理由
「居残り佐平次」と村岡伊平治
戦後落語の黒い背骨
志ん生「らくだ」と老舎「駱駝祥子」
あとがき
解説 田中優子


平岡 正明 (ひらおかまさあき)
「山口百恵は菩薩である」 
(やまぐちももえはぼさつである)


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*351頁
*発行 1983年

*カバー文
山口百恵は少女時代の貧しさのデテールを一曲ごとに昇華し……ついに優雅な美しさに達した。その秘密は、なんの虚飾もなしに自分をみつめ、歌ってきたからである。……自分の煩悩を歌に昇華させた山口百恵は、他人の煩悩にも鋭敏に反応するだろう。他人の煩悩を自分の悲劇にくり込んで山口百恵はさらに大きくなるだろう。すなわち菩薩である。


平川 祐弘 (ひらかわすけひろ)
「夏目漱石 非西洋の苦闘」
(なつめそうせき ひせいようのくとう)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・多田進
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*468頁 / 発行 1991年

*カバー文
二十世紀の初頭、圧倒的な西洋の衝撃のもと、後進国日本から留学生夏目漱石は、使命感と西洋文明社会の重圧感を背負って苦闘した。イギリスでの漱石の留学生活の淋しさ、懐しさ、腹立たしさの疵跡を克明にたどり、彼の精神構造を浮き彫りにする。西洋を学びつつも西洋本位の枠組にとらわれなかった非西洋人漱石 ―― その漱石の苦闘を通して、世界史的視点から近代日本の精神と文化を語った好著。

*目次
第一部 クレイグ先生と藤野先生 ―― 漱石と魯迅、その外国体験の明暗
まえおき
第一章 夏目漱石とクレイグ先生
第二章 魯迅と藤野先生
第三章 魯迅と漱石先生
第二部 漱石のあばたづら、鼻、白いシャツ ―― 執筆衝動の裏にひそむもの
第三部 詩の相会うところ、言葉の相結ぶところ ―― 漱石における俳諧とシェイクスピア
第一章 シェイクスピアと俳諧
第二章 日本美の自己主張
第三章 クレオパトラと藤尾
第四部 クレイグ先生ふたたび ―― 漱石の小品とルーカスの随筆
 一九七六年版あとがき
 講談社学術文庫版へのあとがき
 解説 劉岸偉


平田 オリザ (ひらたおりざ)
「十六歳のオリザの冒険をしるす本」
(じゅうろくさいのおりざのぼうけんとしるすほん)


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*450頁
*発行 2010年
*カバーデザイン・スージー&ジョンソン

*カバー文
世界一周自転車旅行を計画した少年オリザは、1979年5月、いよいよ二年間の休学届を高校に提出し、世界へ向かって旅立った。親子関係、友情、異性、民族、貧困、人生、芸術……さまざまな問題にぶつかり、時に悩みながら記録した、劇作家・平田オリザの処女作にして、色褪せることのない傑作冒険旅行記!


平野 威馬雄 (ひらのいまお)
「レミは生きている」
 (れみはいきている)


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*224頁
*発行 1979年
*カバー装画 / さしえ・和田誠

*カバー文
西洋人との子として生まれたイマオは、小さい時から「あいのこ」と差別されその劣等感から万引きまでして母を困らせた。何年に1度しか会えない父は、イマオを「家なき子」のレミにたとえて“かわいいレミちゃん”と可愛がってくれた ― 混血の日本人として生まれた作者が今なお多い混血児の幸せを願って綴る告白的自伝小説。サンケイ児童出版文化賞受賞。

*解説頁・西本鶏介


広石 廉二 (ひろいしれんじ)
「解説遠藤周作のすべて」
 (かいせつえんどうしゅうさくのすべて)
遠藤周作文庫



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*324頁 / 発行 1976年
「遠藤周作文庫」=全54巻・別巻1(サイト内リンク)

*カバー文
昭和六年、福岡県に生まれた著者が、慶應義塾大学仏文学科在学中に遠藤周作文学に触れ、卒業後、日活撮影所の企画課長として「わたしが・棄てた・女」の映画化を図り、一九六九年浦山桐郎監督による映画「私が棄てた女」の制作に成功。この頃より遠藤周作研究に一段と傾斜して行く。本書はその成果として、「解説」のほか、「年譜」「初出誌・著書目録」を収めて、遠藤周作を知る上で必携。

*目次
《遠藤周作》との出会い
留学生活と夏休みの《テレーズ旅行》
『白い人・黄色い人』 ― 魂の領域への志向
『海と毒薬』 ― 神なき人間の悲惨
『おバカさん』 ― ガストンの生き方
『サド伝』と二度目の渡欧
『ヘチマくん』 ― 愛することの意味
『狐狸庵閑話』 ― 狐狸庵山人の虚像と実像
『わたしが・棄てた・女』 ― 真の聖女とは何か
『留学』 ― 日本とヨーロッパの距離
『沈黙』 ― 踏絵を踏む足の痛み
『母なるもの』 ― 哀しみの聖母像
『イエスの生涯』と『死海のほとり』 ― 同伴者としてのイエス像
遠藤周作年譜
遠藤周作初出誌・著書目録


広岡 敬一 (ひろおかけいいち)
「ストリップ慕情浅草・吉原ロマネスク」
 (すとりっぷぼじょう)


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*240頁 / 発行 1993年

*カバー文
浅草ストリップを、こよなく愛した男のフォト・エッセイ。六区じゅうに元気ハツラツお色気を発散した踊り子たち、その舞台をもりあげるコメディアン、心優しき花魁に魅せられて半世紀。心意気の浅草・吉原っ子たちは、恋に夢に情に精一杯生きてきた。時にはほろりとさせる人間模様を、慕情ゆたかに綴る。

*目次
 プロローグ
T ストリップ黄金時代
 1 浅草時代のビートたけし
 2 輝ける浅草、華やかなりし頃
 3 踊り子とコメディアンの恋のゆくえ
 4 社長・松倉さんのストリッパー操縦法
 5 狭山淳さんが受け継ぐ浅草の空気
U 浅草・吉原ロマネスク
 1 俥屋のマーちゃん立志伝
 2 ブーデは愛される“ぐれん隊”
 3 夢みるストリッパーの同窓会
 4 名物男・キヨシの生活と意見
V バロン薩摩の恋
 1 恋と名誉と冒険『半生の夢』
 2 踊り子に捧げた真紅のバラ
 3 愛は永遠にトレ・ビアン
 4 伊達男・バロン薩摩のロマンスの成就
W 味わう浅草っ子の店
 1 すし「末広」の握りの味
 2 格調高い「並木の藪」のそばの食べかた
 3 下町の本格料理店「マスノ」の悩み
 4 洋食屋「ヨシカミ」の味の秘訣
X 三社祭の男と女
 1 浅草っ子の心意気、三社祭
 2 “早手のコバちゃん”の祭囃子
 3 下町の名医が打ちなす心の太鼓
 エピローグ
 文庫版へのあとがき
 解説 浅香光代
  本文レイアウト 鈴木一誌


広瀬 仁紀 (ひろせにき)
「薩南の鷹 ― 人斬り半次郎異伝」 (さつなんのたか ― ひときりはんじろういでん)


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*349頁
*発行 昭和62年
*カバーデザイン・安彦勝博 / 書・康唯子

*カバー文
幕末動乱のとき、薩摩にすごい奴がいた。示現流の名手、その名は中村半次郎。人斬りの異名を京洛にとどろかせて京童をふるえあがらせた、後の桐野利秋である。この剽悍剛毅な快男児は西郷隆盛に殉じて城山の露と消えた。その短くも激烈な生の軌跡を、祇園名妓との恋物語を織りなして描く渾身の歴史長編。

*解説頁・清原康正


広津 和郎 (ひろつかずお)
「年月のあしおと」(正続) 
(ねんげつのあしおと)


*カバー絵・著者自筆
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*正編461頁・続編467頁 / 発行 昭和56年

*カバー文
正編
― 広津和郎の松川裁判批判は、いまだに私達の記憶に新しい。本書はこの作家の幼年時代から、時代の象徴ともなった「神経症時代」執筆の頃、そして父柳浪の死までを描く、自伝的回想の記である。鏡花・荷風・藤村・秋声・龍之介……明治・大正・昭和の日本の近代文学史を彩り形成した人々の風貌を生々と伝え、いわば、もう一つの「文壇史」である。野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。
続編
五・一五、二・二六、満州・日華事変、太平洋戦争そして敗戦、この長い冬の時代を生きた大正リベラリスト作家の様々な思い出 ― 。「怒れるトルストイ」など評論にもユニークな業績を残した著者の、柔軟な心と曇りない目に支えられた示談的文壇回顧録は、とりもなおさず同時代への卓抜な証言でもある。全二巻。


広津 和郎 (ひろつかずお)
「続 年月のあしおと(上下)」
(ぞくねんげつのあしおと)
講談社文芸文庫




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*上289頁 / 下279頁
*発行 1999年
*デザイン・菊地信義

*カバー文

野間文芸賞受賞作『年月のあしおと』の続篇。父柳浪のことから筆をおこし、五・一五、二・二六、太平洋戦争へと傾斜する暗鬱な時代を背景に、昭和初年前後から敗戦までの苦悩を生きた作家たちとの交流やX子とのことなど著者の辛い記憶を鮮やかに描く自伝的文壇回想記。八十五項上下二巻。上巻には「菊池寛の率直さ」「愛国心とニヒリズム」ほか四十七項までを収録。


本郷菊富士ホテルの出逢いで始まったX子との関係は泥沼のような生活を強いた。真杉静枝の誘いで脱出にも似た台湾旅行から起こす下巻は、敗戦の日、八月十五日の感情で終る。戦時下の暗鬱と苦悩のなか、志賀直哉、青野季吉、中野重治らとの交流を通じ、自らの辛い日常、作家たちの風貌を鮮明に描く自伝的文壇回想記。野間文芸賞受賞「年月のあしおと」の続篇。上下二巻完結。


広津 桃子 (ひろつももこ)
「石蕗の花 ― 網野菊さんと私」
(つわのはな あみのきくさんとわたし)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*225頁 / 発行 1994年

*カバー文
祖父広津柳浪、父和郎、そして桃子。一人きりの兄が病没し、嫁がず、孕まず、“家”が消滅する宿命を担う湘南での日々。名作『一期一会』を残し、孤独な老齢を靭く生きる網野菊へのひとかたならぬ親愛と深い交響の中で生まれる静謐な感動。文学者三代の末、広津桃子の女流文学賞受賞の名品。

*目次
T
石蕗の花
紅椿
米食いねずみ
U
志賀直哉先生と網野さん
同級生
花の縁切寺
一周忌のことなど
宣徳赤絵 ―― 志賀康子夫人の面影
ともしび
 解説 竹西寛子
 作家案内 藤本寿彦
 著書目録 藤本寿彦