絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【あ】

阿井 文瓶 (あいぶんぺい)
「伏龍 海底の少年特攻兵」
(ふくりゅう)


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*352頁
*発行 2012年
*カバー写真・中村淳 / カバーデザイン・岡孝治

*カバー文
潜水服に酸素ボンベを背負って海底に潜み、竹竿の先に装着した機雷でアメリカの上陸用舟艇を迎え撃つ ── 本土決戦に備え結成された伏龍特攻隊に配属されたのは、まだ15〜16歳の少年たちだった。不完全な装備と急を要する日程が、訓練中の彼らを次々と死に追いやる。そして終戦目前、部隊を震撼させる事件が起きた。

*解説頁・安西忠昭


青木 玉 (あおきたま)
「底のない袋」
(そんこのないふくろ)


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*240頁
*発行 2007年
*カバー装画・竹内浩一 / カバーデザイン・野崎麻理

*カバー文
夢の中で誰かに見せられた「底のない袋」。その袋に「面白そうだと思うものは何でもみんな抱え込むのだ。底がないからそのうち自然に遺(のこ)したいものだけが残ってゆく。楽しみという底なし袋にとび込むものは何だろう」と好奇心いっぱいに日々の暮しを見つめ、思い出を振り返った珠玉のエッセイ集。(解説・阿川佐和子)


青野 聡 (あおのそう)
「母よ」
(ははよ)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*229頁 / 発行 2000年

*カバー文
母よ、あなたの素顔を見たい、どのような顔をしていたのでしょう。現存している写真はたったの一枚、「ひんやりとした感じの、きれいな人だったのよ」と少年のぼくに語ってくれた姉 ── 実母への切実な想いと、別居している理英との間に生まれた保育園にかよう男の子の成長ぶりを、清澄なことばで綴った秀作。第四十三回読売文学賞受賞。

*目次
母よ、どこにいるのですか、あなたはいま
母よ、あなたの素顔を見たい
母よ、柿が落ちる季節になりました
母よ、あの夜訪ねてきたのはあなたでしたか
母よ、足の下で霜柱が“あさっさん”と鳴きます
 著者から読者へ
 解説 島田雅彦
 年譜 藤本寿彦
 著書目録 藤本寿彦


赤江 瀑 (あかえばく)
「獣林寺妖変」
 (じゅうりんじようへん)


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*250頁 / 発行 1982年
*カバーデザイン・人形制作 辻村ジュザブロー

*カバー文
関ヶ原合戦のおり千数百名の軍兵の血を吸って落城した伏見桃山城。その床板を使った洛北・獣林寺の血天井を学術調査中、ルミノール鑑定にひときわ青く燃えたって発見された、新しい血の斑痕……歌舞伎の魔に挑み、燃え朽ちていった魂の咆哮を描く表題作の他、阿片的魅力の代表作三篇を収めた伝奇ロマン集。

*目次
獣林寺妖変
ニジンスキーの手
禽獣の門
殺し蜜狂い蜜
 解説・松田修 / ファンレター・辻村弘子


赤坂 憲雄 (あかさかのりお)
「子守り唄の誕生」
(こもりうたのたんじょう)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*234頁 / 発行 2006年

*カバー文
寝させ唄でも遊ばせ唄でもない、日本独特の子守り唄。甘やかな郷愁とは対極の暗さを漂わせる一群の守り子唄はどこから来たのか。年端もいかぬ子守り少女たちのモノローグ。おどま盆ぎり盆ぎり、と口ずさまれる背景はいかなるものか。五木の子守唄として採集された七十余りの詞章を検討し、近代化の過程で忘れられていった精神史の風景を掘り起こす。

*目次
はじめに
第一章 守り子唄への道
第二章 五木の子守唄とは何か
第三章 守り子たちの日々
第四章 流れ者の譜(うた)
第五章 守り子の父は誰か
第六章 宇目の唄げんか
あとがき
参考文献
学術文庫版あとがきにかえて ── 十二年の後に
解説 高畑勲


赤坂 憲雄 (あかさかのりお)
「東北学 / 忘れられた東北」
(とうほくがく)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*304頁 / 発行 2009年

*カバー文
南 / 北の種族=文化が相交わる境としての東北。いまだ自らの歴史や文化の核たるものが語られていない東北。稲作中心史観に養われた南からのまなざしを斥けたとき、そこには縄文的なものと弥生的なものが重層的に織りなされ北方へとつながる深い相貌が見えてくる。柳田民俗学の限界を乗り越えて「いくつもの日本」を発見するための方法的出発の書。

*目次
学術文庫版まえがき
プロローグ 東北へ / 東北から
1 歴史を笑え、と幼い詩人に祖父は教えた
2 サイの河原に、早池峰を仰ぐ児らがいた
3 ナマハゲの鬼は男鹿の山から来た、という
4 日時計の向こうに、縄文の夕陽が沈んだ
5 大同二年に、窟の奥で悪路王は死んだ
6 その晩、鮭の大助は月光川をのぼる
7 山に生かされた者らよ、と石の環が囁く
8 鉱山で、山の神の代官たちが福音を説いた
9 ネブタ囃しに、遠く異族の血が燃えて騒ぐ
10 不意に、埋もれた記憶が黄昏の底に甦る
11 北からの呼び声に、いま岩谷の扉が開かれる
12 箕を携えた姫が、大同の庭に降り立った
13 さらば芭蕉、と囁きかける川風を聴いた
14 雪の野づらに、木地屋の夢が紡がれる
15 たちのぼる煙の下に、山の人生が転がっていた
16 なめとこ山の夜、熊たちの祭りがはじまる
断章 呟きの声、とりあえずの終わりに
エピローグ あすの東北学のために
解説 三浦佑之


赤星 水竹居 (あかほしすいちくきょ=赤星 陸治 あかほしりくじ)
「虚子俳話録」
 (きょしはいわろく)
講談社学術文庫



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*カバーデザイン・志賀紀子

*187頁 / 発行 1987年

*カバー文
折にふれ虚子側近の著者が記録した貴重な俳話集。さりげないことばの中に師の面影をほうふつさせ、虚子俳句の真髄をとらえて見せた。虚子自身をして面白いと感嘆させた名著。「佳句は一生に一句あれば沢山です」「死後百年の名を楽しまんよりは、寧ろ生前一日を楽しむに如かず」「長くなるのは、結局分ってないからです」など、琴線にふれる珠玉の名言が随処にちりばめられている。俳句を通して人間虚子を知る好個の書である。

*目次
『東京だより』『続東京だより』の復刊を喜んで……富安風生

虚子俳話録
虚子先生と私
解説……清崎敏郎


阿川 弘之 (あがわひろゆき)
「青葉の翳り ― 阿川弘之自選短篇集」
(あおばのかげり)
講談社文芸文庫


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*261頁 / 発行 1999年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
戦時中に青春を過した主人公は、学徒動員で海軍に入隊。戦友の多くが死んでいったなかで、現在も生きているのはほんの偶然の結果だという感覚に支配されている。戦後社会との違和に直面しながらも、生活者として中年にいたった現在を描く代表作「青葉の翳り」。他に「霊三題」「鱸とおこぜ」「野藤」「スパニエル幻想」「空港風景」「さくらの寺」と短篇的趣向の名品を収録。

*目次
青葉の翳り / 霊三題 / 鱸とおこぜ / 野藤 / スパニエル幻想 / 空港風景 / さくらの寺 / 解説 富岡幸一郎 / 年譜 岡田陸 / 著書目録 岡田陸


阿川 弘之 (あがわひろゆき)
「舷燈」 (げんとう)


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*214頁
*発行 昭和50年
*カバー装画・榎戸真喜

*カバー文
どなる、なぐる ― くいちがいや衝突のおこるたびに、自分の望み通りの妻にしようとして“暴君”となる夫。反撥しながらも結局は夫に従う妻。この一見専制君主的夫婦関係の中に、戦争という苛烈な時代に青春を喪った男のニヒリズムと、多くの亡き戦友への鎮魂の情を鋭く焼きつけ、夫婦像の典型を描いた長篇。

*解説頁・福田宏年


阿川 弘之 (あがわひろゆき)
「論語知らずの論語読み」
(ろんごしらずのろんごよみ)
講談社文芸文庫



*デザイン・菊地信義
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*384頁 / 発行 2010年

*カバー文
二千数百年前の中国の古典『論語』。余りにも有名であるけれど、きちんと読んだ人は、どのくらいいるだろう。ならば、孔子にならい、我流の読み方をしてみようと、阿川弘之が、悪友・遠藤周作、三浦朱門、吉行淳之介、北杜夫等との珍談奇行の交友録をまじえて、世相風俗万般をにがりのきいた独特のユーモアで綴った快エッセイ。論語を知らない人も、ちょっと論語を楽しめる一冊。

*目次
序説 / 学而篇 / 為政篇 / 八いつ篇 / 里仁篇 / 公冶長篇 / 雍也篇 / 述而篇 / 泰伯篇 / 子罕篇 / 郷党篇 / 先進篇 / 顔淵篇 / 子路篇 / 憲問篇 / 衛霊公篇 / 季氏篇 / 陽貨篇 / 微子篇 / 子張篇 / 堯曰篇

 著者から読者へ / 解説 高島俊男 / 年譜 岡田睦 / 著書目録 岡田睦


秋元 松代 (あきもとまつよ)
「常陸坊海尊・かさぶた式部考 現代日本の戯曲」
(ひたちぼうかいそん・かさぶたしきぶこう)
講談社文芸文庫


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*260頁 / 発行 1996年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
海尊と名乗る法師が村々を懴悔し流浪するという東北の貴人伝説を背景に、学童疎開し孤児となった啓太の罪の生涯を描く田村俊子賞、芸術祭賞受賞「常陸坊海尊」、和泉式部に纒る伝説を題材に、九州の炭坑事故で冒された豊市、その母と嫁に、式部の後裔という魔性の尼僧を絡め社会の底辺に生きる人々の深い哀しみを描く毎日芸術賞受賞「かさぶた式部考」、方言を駆使し民衆の苦悩に迫る戯曲二篇。

*巻末頁
解説 川村二郎
作家案内 松岡和子
著者目録


芥川 龍之介 (あくたがわりゅうのすけ)
「大川の水・追憶・本所両国」
(おおかわのみず・ついおく・ほんじょりょうごく)
講談社文芸文庫 現代日本のエッセイ


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*302頁 / 発行 1991年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
昭和二年七月二十四日、芥川龍之介自殺。「ぼんやりした不安」を抱え、歪みの只中に向って移行する激動の〈時〉をうけとめた死は、大正文学の終焉を印した。初期「大川の水」「松江印象記」、遺稿「機関車を見ながら」の他「漱石山房の冬」「追憶」「本所両国」「江口渙氏のこと」「学校友だち」「身のまわり」など、知の作家芥川龍之介の内奥の柔らかな心を抽出したエッセイ五十九篇。

*巻末頁
人と作品 高橋英夫 / 年譜 藤本寿彦 / 著書目録


芥川 龍之介 (あくたがわりゅうのすけ)
「文芸的な、余りに文芸的な」 
(ぶんげいてきなあまりにもぶんげいてきな)


*カバー装画・伊藤憲治
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*203頁 / 発行 昭和47年

*カバー文
著者最晩年の思想と心情のすべてを吐露した長編評論、正続あわせて五十余章。鴎外・漱石をはじめとする明治の大作家、および同世代の作家たちについての鋭い批評。時代の文芸思潮への犀利な考察など、芥川の文学観・芸術観の到達点を示す。ほかに、「芸術その他」「文芸雑談」「小説作法十則」など評論五編を収録。

*目次
文芸的な、余りに文芸的な
続文芸的な、余りに文芸的な
補遺(文芸的な、余りに文芸的な)
芸術その他
小説作法十則
文芸雑談
大正八年の文芸界
大正九年の文芸界
 語注 / 解説 高田瑞穂 / 年譜


阿部 昭 (あべあきら)
「無縁の生活・人生の一日」
(むえんのせいかつ・じんせいのいちにち)
講談社文芸文庫


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*354頁 / 発行 1992年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
日常の深底に澱む不透明で苛酷な世界。人生の悲哀を呑みこんだ苦いユーモアと豊かな情感とに支えられる阿部昭の小説空間。「自転車」「猫」「窓」「散歩」「手紙」「童話」「道」ほかの短篇で繋ぐ『無縁の生活』、「人生の一日」「水のほとりで」「天使がみたもの」などを収める芸術選奨新人賞受賞『人生の一日』。二つの作品集から二十篇を収録。

*目次
無縁の生活
 自転車 / 敵 / 猫 / 散歩 / 窓 / 言葉 / 終末 / 手紙 / 初心 / 閣下 / 星 / 童話 / 天邪鬼 / 幽霊 / 道 / 災難
人生の一日
 人生の一日 / 水のほとりで / 天使が見たもの / ささやかな結末
 解説 松本道介 / 作家案内 古屋健三 / 著書目録


網野 菊 (あみのきく)
「一期一会・さくらの花」
(いちごいちえ・さくらのはな)
講談社文芸文庫


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*352頁 / 発行 1993年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
生みの母の出現に激しく揺れる少女の心を描く「二月」。
病死した妹への鎮魂の賦「さくらの花」(芸術選奨受賞)。
四国巡礼の途次入水した八世市川団蔵の死に、人生老残の哀しみを見る「一期一会」(読売文学賞・芸術院賞)。
生涯にわたって志賀直哉を人生の師として仰ぎ精進をし、地味ながらもたおやかな文学精神を持した女流作家の処女短編「二月」と深い感銘の代表作、計八編を収録。

*目次
二月 / 光子 / 憑きもの / 金の棺 / 三階の客 / 一期一会 / ひとり暮し / さくらの花 / 解説 竹西寛子 / 作家案内 藤本寿彦 / 著者目録


網野 善彦 (あみのよしひこ)
「中世再考 列島の地域と社会」 (ちゅうせいさいこう)
講談社学術文庫



*カバー・一遍上人絵伝「片瀬の館」(部分)(遊行寺所蔵) カバーデザイン・蟹江征治
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*272頁 / 発行 2000年

*カバー文
日本中世史の諸説に様々な疑問を提出した小論集。「平民の自由」「民衆の生活史」「東国と西国」「百姓」「海民」など、著者が現在も徹底して追及し、多くの成果をあげている、数多くの研究主題の原点が提示されている。
常民文化研究所で著者に強い影響を与えた民俗学者、宮本常一に関する論考も収録。

*目次
学術文庫版まえがき
 序にかえて
日本中世史研究の現在・インタビュー
T
日本中世の自由について
中世民衆生活の様相
徳政雑考 アウエハント『鯰絵―民俗的想像力の世界』にふれて
U
東国と西国 地域史研究の一視点
南北朝内乱の社会史的意義
V
地名と中世史研究
地名と名字
W
民具学と漁業史―宮本常一氏と日本常民文化研究所
『忘れられた日本人』をめぐって
:梶田翁の話によせて
 原本あとがき / 初出一覧 / 解説 山本幸司


嵐山 光三郎 (あらしやまこうざぶろう)
「文士温泉放蕩録 ざぶん」
(ぶんしおんせんほうとうろく)


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*431頁 / 発行 2001年
*カバーデザイン・南伸坊

*カバー文
日本の近代文学は湯ぶねの中から生まれた。東に締め切りから逃げてくる先生あれば、西に世を忍び不倫に走る作家あり。温泉は時に彼らを癒し、時に虜にする。夏目漱石、森鴎外から川端康成まで。知られざるエピソードを混じえながら、古き良き時代の温泉とそこに遊ぶ文士たちの交流を描く、異色温泉小説。

*解説頁・池内紀


荒俣 宏 (あらまたひろし)
「ヨーロッパホラー&ファンタジー・ガイド 魔女と妖精の旅」
講談社プラスアルファ文庫



*カバー写真・イタリア・パレルモにあるカプチン会地下納骨堂の〈生きている死少女〉
 デザイン・鈴木成一デザイン室
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*332頁 / 発行 2002年

*カバー文
ホラーとファンタジーの故郷に、ようこそ!
『ハリー・ポッター』や『指輪物語』など話題の幻想ファンタジー小説や西洋オカルト思想、妖精妖怪研究、魔女と古代信仰、風水とレイライン……ヨーロッパの神秘と怪奇の起源を訪ねる旅。
吸血鬼ドラキュラのトランシルヴァニア、怪物ゴーレム伝説のプラハ、ルートウィヒ2世の楽園ミュンヘン、パラゴーニアのお化け屋敷、幽霊ツアーのロンドン……。

*目次
 文庫版まえがき ヨーロッパの深くて古くて不思議な旅へ
1 地下牢の恐怖 シヨン・スイス
2 青ひげ城の幼児虐殺 チフォージュ・フランス
3 怪物ゴーレム伝説 プラハ・チェコ
4 郵便夫の「霊廟」 オートリ―ヴ・フランス
5 魂を吹きこむ人形師 ヌシャテル・スイス
6 パラゴーニアのお化け屋敷 バゲーリア・イタリア
7 謎の町レンヌ レンヌ=ル=シャトー・フランス
8 巨石が示すレイライン カルナック・フランス
9 「狂王」の脳内遊園地 シェンヘン・ドイツ
10 生きている死少女 タルクィニア・イタリア
11 うめく「蝋人形」 フィレンツェ・イタリア
12 天国と地獄に通じる庭園 ジェノア・イタリア
13 自分のための死の部屋 ロリオル=シュル=ドローム・フランス
14 パリの地下の巨大迷宮 パリ・フランス
15 吸血鬼ドラキュラ トランシルバニア・ルーマニア
16 ロンドンの幽霊ツアー ロンドン・イギリス


有明 夏夫 (ありあけなつお)
「蔵屋敷の怪事件 ― なにわの源蔵事件帳」 (くらやしきのかいじけん なにわのげんぞうじけんちょう)


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*276頁 / 発行 昭和63年
*カバー装画・小宮山逢邦

*カバー文
大阪中之島の大倉庫で、ある夜奇妙な出来事がおきた。海坊主の親方ことなにわの源蔵が現場にかけつけて確認できた痕跡は三つ。番犬の火傷、鉄砲をうったような音、そして米つぶほどの丸薬であった。それらはなにを物語っているのか?
 ユニークな風貌で型破りの名探偵が活躍する、明治期の大阪捕物帖シリーズ。

*目次
人力車は往く / 石油のような男 / 蔵屋敷の怪事件 / 艶女衣裳競べ / エレキ恐るべし / 解説 武蔵野次郎


アルフレッド・ウエゲナー著 / 竹内 均 全訳・解説 (たけうちひとし)
「大陸と海洋の起源」 (たいりくとかいようのきげん)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・志賀紀子
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*403頁 / 発行 1990年

*カバー文
一九一〇年のある日、世界地図を眺めていたウエゲナーは、大西洋をはさんだ両大陸の海岸線がジグソーパズルのようにピタリと照応するのに気づいた。「大陸移動説」の着想が生まれた瞬間である。その後幾多の曲折を経て、「移動説」は現代地球科学の基礎理論として重要な地位を占めるに至った。本書はウエゲナーの原テキストを竹内博士が全訳し、各章ごとに詳細な補足・解説をほどこした“決定版”である。

*目次
訳者はしがき
原著序文
第一章 歴史的背景
 ◆大陸移動説の先駆者とウエゲナー
第二章 大陸移動説の本性及びそれと地質時代を通じての地球の表面地形の変化に関するこれまでの説明との関係
 ◆山脈の形成
第三章 測地学的議論
 ◆大陸移動のスピード
第四章 地球物理学的議論
 ◆プレートテクトニクス理論
第五章 地質学的議論
 ◆大陸の接合の証拠
第六章 古生物及び生物学的議論
 ◆陸橋説と大陸移動説
第七章 古気候学的議論
 ◆氷河と石炭帯
第八章 大陸移動と極移動の基礎
 ◆極移動とその影響
第九章 移動の原動力
 ◆ウエゲナーの弱点
第十章 シアルに関する補助的な観察
 ◆褶曲・断層・地溝の生成因
第十一章 海底に関する補助的観察
 ◆海底と海溝の問題
付録
アルフレッド・ウエゲナー … 竹内均
文献
人名索引
事項索引


アルベルト・アインシュタイン著 中村 誠太郎・南部 陽一郎・市井 三郎訳
「晩年に想う」
 (ばんねんにおもう)


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*336頁
*発行 昭和46年

*カバー文
創造と通念との相剋に苛まれた不世出の物理学者アインシュタインの哲学観、晩年の論理の展開、全身像を示す。プラグマティックな理想主義を基底に世界政府、世界平和を唱導、ザイオニズムそして特殊相対性理論から場の一般論への研究解説等、ナチスが政権を握る頃から1950年の激動の中での論文、講演、書簡を収録。


安房 直子 (あわなおこ)
「南の島の魔法の話」 (みなみのしまのまほうのはなし)


*カバー装画・味戸ケイコ
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*229頁 / 発行 昭和55年

*カバー文
電灯が消えてまっくら闇の中におかされた青年が、ろうそくの妖精の声がさそわれて翻訳中の美しくふしぎな物語の世界に入っていく「南の島の魔法の話」。愛の悲哀を叙情的に展開した日本児童文学者協会新人賞受賞作「さんしょっ子」や、「島」「きつねの窓」など、鋭い洞察力と鮮やかなイメージで人生の真実をえがいたファンタジー童話12編を収録。

*目次
島 / ある雪の夜の話 / きつねの窓 / 沼のほとり / さんしょっ子 / 南の島の魔法の話 / 青い花 / 木の葉の魚 / 夕日の国 / きつねの夕食会 / もぐらのほったふかい井戸 / 誰も知らない時間 / 解説 西本鶏介 / 安房直子著書目録


安西 水丸 (あんざいみずまる)
「青インクの東京地図」 (あおいんくのとうきょうちず)


*カバー・安西水丸
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*200頁 / 発行 1990年

*カバー文
なつかしく、ゆるやかな風にふかれて歩く東京の町エッセイ。さまざまな顔をした東京を、一人あてもなく歩いてみれば、思わぬたたずまいに出会い、尽きぬ詩情がこみあげてくる。路次に漂う市井の哀感が青春の日々に重なり、人々との邂逅が色鮮やかに浮かびあがる。さまざまな漂泊の想いを軽妙に綴る。

*目次
冬の町 (深川・冬木町あたり)
キュビズムの町 (赤坂)
私鉄沿線 (戸越銀座あたり)
木芽おこしの雨 (新橋・烏森あたり)
地蔵の町 (巣鴨)
男と女の町 (歌舞伎町あたり)
京成サブのこと (青戸・柴又あたり)
西部国境警備隊 (八王子千人町)
雨の降る町 (錦糸町・猿江あたり)
蝉しぐれ (九段・神田神保町あたり)
雑踏のなかで (上野あたり)
古きよき町 (銀座)
ゆめのあと (府中・分倍河原)
晩秋 (浅草・三ノ輪あたり)
川の流れる町 (町屋・千住あたり)
 あとがき
 文庫版へのあとがき
 解説 稲越功一


安東 次男 (あんどうつぐお)
「芭蕉連句評釈(上下)」
(ばしょうれんくひょうしゃく)
講談社学術文庫




*カバー装画・安東菜々
 デザイン・志賀紀子
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*上409頁・下351頁 / 発行 上1993年・下1994年

*カバー文

貞享元年(一六八四)冬名古屋で、元禄三年(一六九〇)晩秋京都で、同七年(一六九四)初春江戸で、三たび新風を宣言した、世に言う“蕉風三変”の記念すべき三歌仙(「狂句こがらしの巻」五吟・「鳶の羽の巻」四吟・「梅(むめ)が香(か)の巻」両吟)に「霽(しぐれ)の巻」「雁(かり)がねの巻」を加えた五巻の連句評釈を収録。綿密な考証と溢れる想像力で古典詩歌の解釈法に新たな展望を拓き、平成二年度芸術選奨を受けた画期的評釈。(全二巻)

芭蕉の代表的歌仙十巻をえらんで、連句付け合いのドラマと言葉の重層性をあざやかに解き明かす ── 古典評釈を以て詩となす壮大なこころみ、全二巻。本下巻には、元禄三年(一六九〇)、郷里伊賀上野から湖南の膳所(ぜぜ)へ出、京に入った「奥の細道」後の俳諧師が周到にくわだてた第二次の新風「花見の巻」(ひさご)「灰汁桶(あくおけ)の巻」(猿蓑)のほかに、「炭売の巻」「霜月の巻」(冬の日)、「空豆の巻」(炭俵)を併せ収める。

*目次

はしがき
狂句(きょうく)こがらしの巻(「冬の日」)
 芭蕉・野水・荷兮・重五・杜国・正平
霽(しぐれ)の巻(「冬の日」)
 杜国・重五・野水・芭蕉・荷兮・正平
雁(かり)がねの巻(「阿羅野(あらの)」)
 越人・芭蕉
鳶(とび)の羽(は)の巻(「猿蓑」)
 去来・芭蕉・凡兆・史那
梅(むめ)が香(か)の巻(「炭俵」)
 芭蕉・野坡
掲・収載一覧
解説 杉本秀太郎

炭売の巻(「冬の日」)
 重五・荷兮・杜国・野水・芭蕉・羽笠
霜月の巻(「冬の日」)
 荷兮・芭蕉・重五・杜国・羽笠・野水
花見の巻(「ひさご」)
 芭蕉・珍碩・曲水
灰汁桶(あくおけ)の巻(「猿蓑」)
 凡兆・芭蕉・野水・去来
空豆の巻(「炭俵」)
 孤屋・芭蕉・岱水・利牛



安東 次男 (あんどうつぐお)
「花づとめ」
(はなづとめ)
講談社文芸文庫



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*313頁 / 発行 2003年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
現代詩の前衛にして、加藤楸邨を師と仰ぐ俳人。また、芭蕉、蕪村、定家の独創的評釈で知られる古典探究者。昭和46年から48年、芭蕉の連句評釈に心魂を傾ける傍ら、二巡りする四季に寄せて万葉から現代俳句まで、秘愛の歌へのオマージュを「季節のうた」として書き続けた。俗解を斥け、鍛えぬかれた言葉で読み解く百三篇の短章は、正に“秋水一閃”の達人の技を思わせる。

*巻末頁
 解説 齋藤慎爾 / 年譜 齋藤慎爾 / 著書目録 齋藤慎爾

中公文庫版(サイト内リンク)


安東 次男 (あんどうつぐお)
「藤原定家 ― 拾遺愚草抄出義解」
(ふじわらのていか じゅういぐそうしょうしゅつぎげ)
講談社学術文庫



*東大寺僧坊跡桜紅葉
 写真 牧直視
 カバーデザイン 志賀紀子
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*251頁 / 発行 1992年

*カバー文
歌を歌として読むのに、作者の名前や背景などは第一義のことではない。遣われた詞のどこが、なぜ、面白いかというだけで充分である……。有心、幽玄の新古今時代を代表する天才的歌人・定家。古来、難解とされてきたその厖大な和歌から八十首を選び、注釈がおのずと伝記を包摂する独自の方法で義解をほどこす。歌をその制作現場に戻して、一つ一つの言葉とその発想を分析し、味読する白眉の定家論。

*目次
「学術文庫」版まえがき
初学百首 (養和元年、二十歳)
殷富門院大輔百首 (文治二年、二十五歳) / 閑居百首 (仝)
重奉和早卒百首 (文治五年、二十八歳) / 良経第雪十首 (仝)
一字百首 (建久元年、二十九歳) / 一句百首 (仝)
花月百首 (建久元年、二十九歳)
十題百首 (建久二年、三十歳)
無常歌一首 (建久四年、三十二歳)
六百番歌合 (建久四年、三十二歳)
韻歌百二十八首 (建久七年、三十五歳)
仁和寺宮五十首 (建久九年、三十七歳)
後鳥羽院初度百首 (正治二年、三十九歳)
千五百番歌合 (建仁元年、四十歳)
水無瀬殿恋十五首歌合 (建仁二年、四十一歳) / 最勝四天王院名所障子歌 (建永二年、四十六歳)
内裏詩歌合 (建保二年、五十三歳) / 後仁和寺宮花鳥 (仝)
内裏名所百首 (建保三年、五十四歳)
仙洞百首 (建保四年、五十五歳) / 内裏歌合 (仝)
庚申百首 (建保五年、五十六歳) / 恋十首 (建保五年以前) / 三宮十五首 (建保五年以前)
韻字四季歌 (建保五年、五十六歳)
文集題百首 (建保六年、五十七歳) / 仁和寺宮五十首 (仝)
日吉社歌合 (承久元年、五十八歳) / 四季題百首 (承久二年、五十九歳)
関白左大臣家百首 (貞永元年、七十一歳)
抄出附言 / 解説 久保田淳 / 定家略年譜 / 定家和歌索引


安東 次男 (あんどうつぐお)
「与謝蕪村」 
(よさのぶそん)


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*321頁 / 発行 昭和54年

*カバー文
蕪村の新体の詩「澱河歌」は、淀川を艶なる女体の横たわる姿と見立てたところに生れた……記念碑的な評論「『澱河歌』の周辺」以下、大胆な発想と一字一音一句をもゆるがせにしない鑑賞眼でこの画俳の詩句の真髄を鮮かに解きあかす。詩心をもって詩心を探り、詩空間に遊ぶ喜びも堪能させる鑑賞と評論の書。

*目次
「澱河歌」の周辺
「春風馬堤曲」新釈
「北寿老仙をいたむ」のわかりにくさ
鑑賞篇
 鮎くれてよらで過行夜半の門 ほか二十三句
文人の句 ― 桃李の道(一)
竹渓訪隠 ― 桃李の道(二)
画俳 ― 桃李の道(三)
碑にほとりせん
鑑賞篇 補遺
 なには女や京を寒がる御忌詣 ほか十四句
季題考
 春水開眼 / 薺の花 / 父と娘 / 出会 / 秋まつりの魚
真贋
蕪村との出会
蕪村余瀝
蕪村小伝(年譜)
 発表一覧
 蕪村詩句索引


安藤 鶴夫 (あんどうつるお)
「歳月 安藤鶴夫随筆集」
(さいげつ)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*232頁 / 発行 2003年

*カバー文
八代目竹本都太夫を父に持つ著者は、新聞記者を経て文筆生活に入った。東京浅草に生まれ、久保田万太郎に心酔し、卓越した鑑賞眼で寄席・下町の世界を描く。伝統芸に対する鋭い批評、折々に記した下町の風物詩や身辺雑記を情感溢れる語り口で綴った随筆集『雪まろげ』『わたしの寄席』『わたしの東京』『雨の日』『年年歳歳』から表題作ほか二十五篇を精選収録。

*目次
 T
東京のまつり / 新年・自戒 / 向島百花園 / 銀座 / 都電・牛込見附 ― 赤羽橋 / 江戸ッ子のくやしさ / そば・青春 / 納豆 / わたしの東京 / 歳月
 U
燕雄昇天 / 五代目・古今亭志ん生 / 八代目・桂文楽 / 三木助とメロン
 V
柳雨の日 / 長谷川伸というひと / 薔薇館 / 雨の日 / 秋天 / まつりの日 / 青春をささえたもの / 代返 / 我が母は…… / 朝夕 / そして

 解説 槌田満文
 年譜 槌田満文
 著書目録 槌田満文


安野 光雅 (あんのみつまさ)
「黄金街道」
 (おうごんかいどう)


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*172頁
*発行 1994年
*カバーデザイン・安野光雅

*カバー文
喧噪の上野駅から銀座を抜けて麻布まで──。今はない街並をなつかしみながら、路地に秘められた人々の歴史をひもときながら画帖を片手に歩くたのしみを、スケッチとエスプリに富んだエッセイで構成する安野光雅の東京画36景。ただごとではないルートの謎ときは、さいごのページを読むまでのおたのしみ!!

*ヒント 落語「黄金餅」を参照。


安野 光雅 (あんのみつまさ)
「『即興詩人』の旅」
(そっこうしじんのたび)
講談社+α文庫


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*200頁
*発行 2009年
*デザイン・鈴木成一デザイン室

*カバー文
画家が「無人島に持っていく一冊」と公言してはばからない森鴎外訳の『即興詩人』。童話作家アンデルセンの自伝的名作を、百年前に日本に紹介した鴎外の雅文体の美しさに魅せられ、波乱万丈のラヴ・ストーリーに胸躍らせて、物語の舞台のイタリア各地を巡った紀行画文集。“声に出して読みたい”原文をたっぷりと引用しながら、ローマから始まる『即興詩人』のストーリーと、画家の紀行文と美しいスケッチと。一冊で3回楽しめる本です!