絶版文庫書誌集成

文春文庫
【い】


池田 弥三郎 (いけだやさぶろう)
「手紙のたのしみ」
 (てがみのたのしみ)


*カバー・近藤和子
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*286頁 / 発行 1981年

*カバー文
うれしい知らせ、悲しいたより、ラヴレター、礼状、離縁状 ―― 語る内容はさまざまでも、手紙というものは自分を語ることにつきる、と著者はいう。三遊亭円朝、夏目漱石、森鴎外、永井荷風、谷崎潤一郎、芥川龍之介、萩原朔太郎、小泉信三、川口松太郎などの手紙が持つ深い味わいを、人生の達人が解き明かす書下ろしエッセイ。

*目次
手紙交遊録
 小島政二郎さんと川口松太郎さん
 家永三郎君との交流
 井筒俊彦君との交際
 角川源義君の思い出
 伊原宇三郎さんのイラスト付の手紙 ―― 小またの切れ上った女
 富田正文さんの教え ―― 勝海舟と福沢諭吉
礼状
 礼状について
 小泉信三さんの手紙
 厨川文夫さんの手紙
 井原宇三郎さんの礼状
 折口信夫の谷崎潤一郎宛礼状
戦中の手紙
 三十年戦争
 小林多喜二の死 ―― 志賀直哉の手紙
 二・二六事件 ―― 反乱将校の遺書
 軍事郵便 ―― 一主計将校・安藤蕃の手紙
 大東亜戦争勃発 ―― 叔父・池田大伍の手紙
 出征する子へ ―― 小泉信三の手紙
 中学生の「戦中」 ―― 『少年期』より
 戦没学生の手紙
感動をさそう手紙
 哀しき父
  小島慶太
  福沢諭吉
  三遊亭円朝
 恋いぶみ
  手紙における素人玄人
  芥川龍之介
  谷崎潤一郎
  萩原朔太郎
 夫と妻との手紙
  さまざまなケース
  外国から内地の妻へ ―― 二葉亭四迷
  戦地から銃後の妻へ ―― 森鴎外
  獄中獄外の夫と妻 ―― 宮本顕治と百合子
  離縁状
  去り、去られた夫と妻 ―― 永井荷風と妻・八重
 悲しい知らせ
  留学中の弟子への手紙 ―― 寺田寅彦
  妻、母を失った父子のやり取り ―― 岡本一平・太郎
 エピローグ ―― 夏目漱石の手紙
  あとがき


池波 正太郎 (いけなみしょうたろう)
「あるシネマディクトの旅」
(あるしねまでぃくとのたび)


*写真・吉田大朋
(パリの居酒屋〔B・O・F〕のあるじセトル・ジャンと池波正太郎)
 デザイン・関口信介
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*317頁 / 発行 2011年

*カバー文
「はじめてフランスへ行った。フランス映画を四十何年も観つづけてきていた所為か、すこしも違和感がなかった。」言葉は通じなくとも、老夫婦が営む居心地のよい居酒屋をみつけ、旬の味覚に舌鼓をうち、絵筆を動かし、仕事を忘れて悠然たる時の流れに身をまかせる。フランス紀行三作をまとめた決定版。著者直筆の挿絵多数。

*目次
あるシネマディクトの旅
 居酒屋〔B・O・F〕 / マルセイユからニースへ / リヨンからパリへ / ヴェルサイユとパリ

旅は青空 ―― 続・あるシネマディクトの旅
 パリ・レアールの変貌 / バルビゾンとヌムール / 田園と城館 / ブルゴーニュからプロヴァンスへ / アルルの雨 / ニースからマルセイユへ / プチ・ニースのオムレツ / マドリッドとトレド / グラナダの落日 / レ・ゼジーでの休養 / ロアンヌからパリへ

田園の微風 ―― 新・あるシネマディクトの旅
 パリの日曜日 / オンゼンの一夜 / ムーラン城外のピクニック / 夕暮れのシノン城 / ブルターニュからノルマンディへ / セトル・ジャンとの再会

フランスで食べたもの


池部 良 (いけべりょう)
「風が吹いたら」
(かぜがふいたら)


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*355頁
*発行 1994年

*装画・山本容子
 デザイン・坂田政則


*カバー文
このエッセイ集は少々エロチックではあるが、池部良さんが女性にいかにもてたか、という本である。登場する女性たちは、池部さんの前でいかにも自然で、女らしい。母、幼馴染み、女優、ファン、芸者。みな池部さんにやさしい。それはとりもなおさず、池部さんがユーモア溢れる爽やかな人だからでもある。 解説・山本夏彦


池部 良 (いけべりょう)
「心残りは…」
(こころのこりは)


*カバー画・村上豊
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*335頁 / 発行 2004年

*カバー文
黒沢明、木下恵介、小津安二郎、岡本喜八などの名監督の映画に出演し、高峰秀子、山口淑子、山本富士子などの美人女優、三船敏郎、高倉健などの男優と共演、日本映画界の黄金時代を築いてきた著者が、笑いあり、ハプニングありの名作映画の舞台裏と映画人たちの意外な素顔を語る。

*目次
1 大森海岸の水母 / 2 立教ボーイの憂鬱 / 3 島津保次郎監督の天神様 / 4 久我美子のお股に頭 / 5 木下恵介監督の本意は何処に / 6 心残りは煙草の煙 / 7 怪なり、左卜全さん? / 8 黒沢明監督、池部宅を訪問 / 9 天才の怠け者 / 10 三船敏郎のきまた / 11 山口淑子、舞い上がる / 12 ゲーリー・クーパーには負けた!! / 13 てにをは一つ、直してはいけない / 14 アンコールワットにて / 15 宇宙大戦争 / 16 伝説 水洗便所 / 17 山本富士子は“石臼” / 18 岡本喜八監督のダイヤモンド / あとがき / 文庫版あとがき / 解説 赤瀬川隼


池部 良 (いけべりょう)
「窓を開けると」
(まどをあけると)


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*302頁
*発行 2008年
*デザイン・花村広

*カバー文
名エッセイスト・池部良が雑誌『百歳万歳』誌上に永年連載している名物コーナーを集めた、久しぶりの作品。身辺雑記はむろんのこと、ショート・ショートの小説ばりの短篇もありの、摩訶不思議、縦横無尽、融通無碍、まさに池部ワールド全開の内容である。ファンはむろんのこと、初めての読者にとっても納得の一冊といえる。


井田 博 (いだひろし)
「日本プラモデル興亡史 子供たちの昭和史」
(にほんぷらもでるこうぼうし)


*デザイン・神崎夢現
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*253頁 / 発行 2006年

*カバー文
「のらくろ」に夢中になった昭和初期。模型飛行機作りに熱中し、ついには自ら小売店を開業した開戦直前。そして太平洋戦争中、軍役についた著者の作った模型飛行機はシンガポールの大空を舞った。終戦後、細々と再開した模型屋にプラモデルブームという神風が吹く……。日本の歩んだ道を色濃く映す昭和模型史。

*目次
 はじめに
第一章 プラモデルとの出会い
 駐留軍が連れてきたプラモデル / 世界最初のプラモデルとは? / 私が扱った最初のプラモデル / かつてマルサンというメーカーがあった / セルロイドの不買がプラモデルを生んだ? / プラモデルがやって来た日 / 商品名「プラモデル」の誕生 / 苦戦する「プラモデル」の販売 / 手に入らなかったマルサン商品 / 日模の急追 / さまざまなメーカーの参入 第一次ブームの到来 / 三共、三和の低価格プラモの登場 / キャラクターモデルの誕生 / “戦車のタミヤ”の登場 / “動く”のがプラモデル? / マブチが支えた日本のプラモデル
第二章 プラモデル前史
 私と模型飛行機の出会い / 模型飛行機の誕生 / 模型メーカーの祖、石川商店 / 競技会が模型飛行機の人気を高めた / 新たなブームと衰退と / 高まる模型熱 / スケール機の登場 / ダイヤモンド製スケール機の神話 / 「標本縮尺模型」の誕生 / 「模型飛行機展覧会」の開催と模型屋開業 / 軍お墨付きの模型飛行機 / 戦場に飛んだ模型飛行機 / 負傷、そして敗戦
第三章 プラモデルの黄金時代
 模型屋を再開 / 小倉井筒屋に模型店を開く / 模型飛行機大会の再開と模型親交会の誕生 / 出版への関わり『楽しい軍艦模型』の出版 / 模型屋の「革命」が始まった! / 溢れるプラモデル販売店 / 九州プラモデル博覧会の開催 / プラモデルが模型界の主流に / バスに乗り遅れるな! / 畏友、木村貫一氏のこと / 初めての暗雲 三共、三和の倒産 / スロット・カーブームが業界を席捲 / 悲願『モデルアート』創刊 / サンダーバード、怪獣の全盛 / イマイとタミヤの激突(!?)
第四章 プラモデル、大人の成熟した趣味へ
 プラプレーン・コンテストの開催へ / プラプレーン・コンテストの光と影 / プラモデル、大人の楽しみ方 / プラレーン・コンテストの終了と新しい時代の幕開け / ガンダムの登場 / クルマの売れる時代
第五章 プラモデル、新しい時代へ
 ミニ四駆ブームと出戻り(?)モデラー / 新しいメーカーの誕生、プラモデルのこれから
あとがき 航研機の復元
文庫版あとがき
特別対談 田宮俊作×井田博 プラモデルが映す「昭和」という時代
井田博 模型年譜 / 取材協力者および参考文献 / 解説 森永卓郎


井出 孫六 (いでまごろく)
「アトラス伝説」
 (あとらすでんせつ)


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*238頁
*発行 1981年
*カバー・坂田政則

*カバー文
明治14年、ひとりの洋画家が謎の死を遂げた。冬崖・川上万之丞、陸軍参謀本部測地課長の要職にあった。狂を発し死に走る、とされたその最期には、意外にも明治新政府の奇妙な暗黒の手がうごいていた……第72回直木賞を受賞した力作歴史小説。表題作のほかに「非英雄伝」「『太陽』の葬送」の二篇を収載した。

*解説頁・夏堀正元


文・井上 ひさし 画・山藤 章二 (いのうえひさし やまふじしょうじ)
「新東海道五十三次」 (しんとうかいどうごじゅうさんつぎ)


*カバー・山藤章二
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*220頁 / 発行 1979年

*カバー文
花のお江戸は日本橋から、京の三条大橋まで百二十四里二十四丁、昭和のピカ一戯作者とイラスト界のトップスターがコンビを組んで勝手気ままな七つ立ち。行きつ戻りつ道草かさね、古今東西の資料を駆使しながら、奔放自在奇妙きてれつ、一九先生もびっくりのディスカバー東海道。24点のイラストも抱腹絶倒の大傑作ぞろい。

*目次
第一回 噂のはやさについて
第二回 富士の白雪ゃ朝日でとける
第三回 たまぼこの東海道
第四回 一九氏との一夜
第五回 御蔭参りの蔭に御師あり
第六回 たまには道草もええじゃないか
第七回 童謡うたって海道みれば……
第八回 「くだりもの」はくだらなくない
第九回 旅に褌かかせるものか
第十回 五人組帳の裏返し
第十一回 「どす」と「です」と「だす」
最終回(あがり) 逸話の向うに見えるもの


井上 ひさし (いのうえひさし)
「完本 ベストセラーの戦後史」
(かんぽんべすとせらーのせんごし)
文春学藝ライブラリー


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*415頁 / 発行 2014年

*カバー文
『日米會話手帳』から『間違いだらけのクルマ選び』まで、日本人に愛され、広く読まれた35冊。小説、実用書、手記など、ジャンルを横断する話題の書に、戦後の復興から成長と歩調をもとにしたベストセラー作家にして稀代の本読みは、何を見出したのか? 出版史に留まらない、日本人論の傑作、ついに復刊!

*目次
日米会話手帳 昭和二十年 / 完全なる結婚 昭和二十一年 / 旋風二十年 昭和二十二年 / 愛情はふる星のごとく 昭和二十三年 / この子を残して 昭和二十四年 / 宮本武蔵 昭和二十五年 / ものの見方について 昭和二十六年 / 三等重役 昭和二十七年 / 光ほのかに 昭和二十八年 / 女性に関する十二章 昭和二十九年 / 広辞苑 昭和三十年 / 太陽の季節 昭和三十一年 / 挽歌 昭和三十二年 / 経営学入門 昭和三十三年 / 論文の書き方 昭和三十四年 / 性生活の知恵 昭和三十五年 / 英語に強くなる本 昭和三十六年 / 易(えき)入門 昭和三十七年 / 危ない会社 昭和三十八年 / 愛と死をみつめて 昭和三十九年 / おれについてこい! 昭和四十年 / 人間革命 昭和四十一年 / マクルーハンの世界 昭和四十二年 / どくとるマンボウ青春記 昭和四十三年 / 都市の論理/知的生産の技術 昭和四十四年 / 心 いかに生きたらいいか 昭和四十五年 / 日本人とユダヤ人 昭和四十六年 / 日本列島改造論 昭和四十七年 / 恍惚の人 昭和四十七年 / 日本沈没 昭和四十八年 / ノストラダムスの大予言 昭和四十九年 / 欽ドン 昭和五十年 / 四畳半襖の下張裁判・全記録 昭和五十一年 / 間違いだらけのクルマ選び 昭和五十二年 / 巻末資料 「創作ノート」


井上 靖 (いのうえやすし)
「戦国城砦群」 (せんごくじょうさいぐん)


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*348頁
*発行 1980年

*カバー文
武田家滅亡で隼人は明智に、兵太はの武士に身を投じた。旗本荒之介は隼人の恋人を奪い、兵太を情夫とした女と関わる。やがて葛藤の終末を告げる“本能寺の変”が……。

*解説頁・福田宏年


今村 武雄 (いまむらたけお)
「小泉信三伝」
 (こいずみしんぞうでん)


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*333頁
*発行 1987年
*カバー装画・安田靫彦 / AD・坂田政則

*カバー文
小泉信三は、経済学者であるとともに優れた教育者であった。詩歌を愛誦するとともにスポーツを楽しむ人であった。学殖豊かであるとともに気骨の人であった。青年を愛するとともになれなれしくさせない人であった。「日本の師」と仰がれた巨人の生涯を、弟子であり、経済学者・教育者でもある著者が心血を注いでつづる。


入江 隆則 (いりえたかのり)
「敗者の戦後」
(はいしゃのせんご)
文春学藝ライブラリー


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*477頁 / 発行 2015年

*カバー文
昭和二十年夏、敗戦。以降、国内議論を二分してきた「戦後処理」問題だが、そこには世界的視点が欠けていた。ナポレオン戦争後のフランス、第一次大戦後のドイツのケースを検証することで見えてきた問題の本質とは何か? 日本の戦後のあり方を考える上での記念碑的著作。

*目次
プロローグ ―― 戦後を評価する基準
第T部 ナポレオン戦争とその敗者フランスの戦後
 第1章 ナポレオン戦争の新しさ
 第2章 戦後処理の貴族的伝統
 第3章 正統性の不在
 第4章 堕落の開始=一九世紀
第U部 第一次世界大戦とその敗者ドイツの戦後
 第1章 大衆の欲した戦争
 第2章 国家総力戦の破局
 第3章 史上最悪の戦後?
 第4章 ワイマール版・戦後の克服
第V部 大東亜戦争とその敗者日本の戦後
 第1章 正戦論の陥穽
 第2章 日本の近代戦争の本質
 第3章 共存か対決か
 第4章 真珠湾とポツダムの間
 第5章 第三の戦後=思想改造
エピローグ ―― 勝者のジレンマと勝敗の収支決算
中公叢書版へのあとがき / 徳間文庫版へのあとがき / ちくま学芸文庫版へのあとがき
文春学藝ライブラリー版へのあとがき
参考文献


色川 武大 (いろかわたけひろ)
「虫けら太平記」
 (むしけらたいへいき)


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*315頁
*発行 1992年
*カバー・和田誠

*カバー文
太郎は親兄弟のいない天涯孤独の若者。下総の在所の村が洪水におそわれて人別帳が失われたのとある事件をきっかけに江戸へ出奔したが ― 。幕末騒乱の時代に、著者の原点である焼跡闇市のイメージを重ね合せ、その中で虫けらのようにおのれの生き様を必死に求めてもがく青春群像を描いた、遺作となった異色の長篇時代小説。


色川 武大 (いろかわたけひろ)
「離婚」
(りこん)


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*236頁 / 新装版発行 2011年
*カバーイラスト・三嶋典東 / カバーデザイン・石崎健太郎

*カバー文
「ことさら深刻ぶるのはよそうぜ」などとカッコいいせりふを吐いてぼくたち二人はおたがい納得して「離婚」したのです。ところがどこでどうなったのでしょうか、ぼくはいつのまにか、もと女房のアパートに住みついてしまって……。
男と女のふしぎな愛と倦怠の形を、味わい深い独特の筆致で描き出す直木賞受賞作品。

*目次
離婚 / 四人 / 妻の嫁入り / 少女たち / 解説 尾崎秀樹


岩川 隆 (いわかわたかし)
「海峡」
(かいきょう)


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*381頁
*発行 1985年
*カバー・徳永勝哉

*カバー文
本州と北海道を“陸続き”にする! 日本列島の近海で三本の指に入る船の難所・津軽海峡の海面下240メートルを抜けて全長53.8キロ、青函トンネルは世界最長、最大の難工事だった。着工から完成までに二十年の歳月をついやす〈穴掘り〉に生命を賭ける男たちの凄絶なドラマを克明に描き上げ、読む者に深い感動を呼ぶ長篇小説。


岩下 尚史 (いわしたひさふみ)
「直面(ヒタメン) 三島由紀夫若き日の恋」


*カバー写真・〈銀馬車〉での三島由紀夫と豊田貞子
(昭和30年頃、豊田貞子氏撮影)
 デザイン・城井文平
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*364頁 / 発行 2016年

*カバー文
多くの假面を纏い、読者の前で華麗に舞い、駆け抜けた三島由紀夫。その若き日には、一人の女性との知られざる恋愛の季節があった。『金閣寺』執筆前後の作家の全盛期を共に生き、しかし思い出を固く封印した女性が、半世紀を経て初めて恋の顛末を著者だけに語った。従来の三島像を一新する歴史的証言を文庫化。

*目次
《端書》 うちあけばなし
《一章》 「運命愛」の發端 ── 歌舞伎座樂屋・昭和二十九年七月
《二章》 女たちの時刻、午後の匂い ── 『沈める瀧』の頃
《三章》 贅澤な彼女 ── 梨園と花街とに室咲きの
《四章》 喰わずぎらいの矯し方 ── 『女神』の頃
《五章》 東京の恋人たち ── 『幸福号出帆』の頃
《六章》 書けて、書けて、仕方がないんだ ── 『永すぎた春』、『美徳のよろめき』、そして『金閣寺』の頃
《七章》 水槽の熱帯魚 ── 『施餓鬼舟』、『橋づくし』、『女方』、『鹿鳴館』の頃
《八章》 浅くはひとを思ふものかは ── 『魔法瓶』に反射するもの
《九章》 おそらく最後の証言者 ── 『鏡子の家』の女主人
《後書》 もうしわけ
《跋》
解説 中江有里


岩下 尚史 (いわしたひさふみ)
「見出された恋 『金閣寺』への船出」
(みいだされたこい)


*イラスト・最上さちこ
 デザイン・大久保明子
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*222頁 / 発行 2014年

*カバー文
舞台は約50年前の東京。赤坂の一流料亭の長女として、絹に覆われ贅沢に育った19歳の満佐子は、才気あふれる一人の文士と出逢う。本来、住む世界が違うはずの二人はなぜか強く惹かれあい、逢瀬を重ねるうちに男はある“決心”を固める ── 。若き三島由紀夫の知られざる恋を、実話をもとに絢爛たる文体で小説に仕立てた傑作。

*目次
次第 / みそめ / 稽古帰り / 瀬踏み / わたり初め / 銀馬車 / 二の酉 / 譯知(わけし)り / シャンパーニュ・ロゼ / 大停電の夜 / 夏の嵐 / 予言(かねごと) / 目黒の家 / 葡萄牙(ポルトガル) / 祇園町の宿 / 競牡丹(くらべぼたん) / 八百松(やおまつ) ─ 附 夢の場 / 熱海ホテル / 月の桂 / 願掛(がんかけ) / 特装限定版 / 水槽の中 / 鵲(かさゝぎ)の橋(はし) / アメリカンファーマシー / 残り留(のこりどめ) / あとがき


巌谷 大四 (いわやだいし)
「懐しき文士たち 大正篇」
 (なつかしきぶんしたち たいしょうへん)


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*261頁
*発行 1985年
*カバー・巌谷純介

*カバー文
“偉大なる明治”と“激動の昭和”の狭間大正。著者はこの「不遇の時代」の文士と文学に光を当てた。第一部は明治天皇と乃木大将殉死に対する作家の反応から始まり、漱石の死を経て第二部へ続く。花開いた大正文壇の成果を様々に綴りつつ、第三部は芥川龍之介の死で幕を引く。大正の挽歌であった。文壇の開落栄枯を描く三部作完結。