絶版文庫書誌集成
中公文庫
【や】

安岡 章太郎 (やすおかしょうたろう)
「舌出し天使」
 (しただしてんし)


(画像はクリックで拡大します)

*167頁
*発行 昭和49年
*カバー・沖けんじ画

*カバー文
戦後の“失われた世代”ともいうべき一人の男の敗亡の青春が描かれる。愛のない同棲、不義理と借金、ズルズルと破滅への道を辿る若者に、独特の感受性を投影させた長篇小説。

*解説頁・日野啓三


矢田 挿雲 (やたそううん)
「江戸から東京へ(一) 麹町・神田・日本橋・京橋・本郷・下谷」(旧版)
 (えどからちょうきょうへ)


(画像はクリックで拡大します)

*367頁
*発行 1975年
*カバー・絵本隅田川両岸一覧 葛飾北斎画 享和元年刊 三俣の白魚(部分)

*カバー文
旧市街に残る古蹟、町並みに沿って、築城当時の江戸から説きおこし、地理・歴史・風俗・伝説の各方面にわたり、江戸・明治の歴史の流れを物語る。綿密な考証を加えた豊富なエピソードを軽妙な筆でつづり、東京に残る江戸の面影を生き生きと描く、興味あふれる東京歴史散歩。

*解説頁・朝倉治彦


矢田 挿雲 (やだそううん)
「江戸から東京へ (四) 本所(上)」(旧版) (えどからとうきょうへ)


(画像はクリックで拡大します)

*317頁
*発行 昭和50年
*カバー・絵本隅田川両岸一覧 葛飾北斎画 享和元年刊 新柳橋の白雨(部分)

*カバー文
鼠小僧、加藤千蔭、京伝と京山、竹本義太夫、待乳山楯之丞など回向院をめぐる史話、吉良屋敷にのこる赤穂浪士義挙の跡、おいてけ堀、足洗え屋敷、斬られ地蔵などの面妖陰暗の伝説など、狸の本所は両国を中心に江戸を探る興味あふれる歴史散歩。


矢田 挿雲 (やだそううん)
「江戸から東京へ (五) 本所(下)」 (旧版)
 (えどからとうきょうへ)


(画像はクリックで拡大します)

*333頁
*発行 昭和50年
*カバー・絵本隅田川両岸一覧 葛飾北斎画 享和元年刊 駒形の夕日栄(部分)

*カバー文
本所番場に仮宅した蘭方医伊東玄朴の活躍を始め、シーボルト事件、プーチャチン・ペルリらのあいつぐ外国使節の来朝、吉田松陰の密航、唐人お吉、ジョン万次郎の話など、風雲急を告げる幕末の世相と庶民の日常を巧みに描く東京歴史散歩。


矢田 挿雲 (やだそううん)
「江戸から東京へ (六) 向島・深川 (上)」(旧版)
 (えどからとうきょうへ)


(画像はクリックで拡大します)

*342頁 / 発行 昭和50年
*カバー装画・絵本隅田川両岸一覧 葛飾北斎画 享和元年刊 向島の時雨(部分)

*カバー文
向島の花暦、三囲神社縁起、長命寺と言問団子、百花園の堂摺連、小松島の由来、水神の森、柳北の四顧開花楼、富岡八幡宮、永代橋墜落の椿事、芭蕉庵の跡、御材木蔵など、墨田河畔は向島・深川を中心に、興味あふれる瀟洒な江戸趣味を展開する。


矢田 挿雲 (やだそううん)
「江戸から東京へ (七) 深川(下)」 (えどからとうきょうへ)


(画像はクリックで拡大します)

*325頁 / 発行 昭和50年
*カバー装画・絵本隅田川両岸一覧 葛飾北斎画 享和元年刊 広小路の群衆(部分)

*カバー文
花柳気質の粋をもって任じた羽織芸者、いなせな鳥追娘、娘義太夫の流行を初め、梅暦の春水と田舎源氏の種彦、寺門静軒の江戸払いなど、天保の改革に揺らぐ辰巳の里を中心に深川江戸ッ子の風俗と生活を物語る。


矢野 仁一 (やのじんいち)
「アヘン戦争と香港」
(あへんせんそうとほんこん)


*カバー画・英艦より砲撃を受ける清国のジャンク
 (ダンカン銅版画・東洋文庫蔵)
(画像はクリックで拡大します)

*372頁 / 発行 1990年

*カバー文
一八四〇年、清国総督の林則除はアヘンを没収焼棄した。これに端を発したアヘン戦争は二年後、イギリスへの香港島の割譲、莫大な戦費賠償をとりきめた南京条約をもって終結する。東洋史の耆宿が、この戦争をイギリスの不正きわまる暴力行為と断じ、植民地侵略の実情を克明に追究する。香港返還を間近にひかえた今日、改めて注目される歴史的名著。

*目次
 序
一 イギリスの対支貿易の起源
二 広東貿易時代以前の対英関係
三 広東貿易時代の対英関係
四 マカートニー卿の支那派遣
五 マカートニー卿の使命の成果
六 アマースト卿の派遣とその使命の成果
七 東インド会社独占権廃止前の広東貿易
八 イギリス初代貿易監督官ナピアー卿の使命とその失敗
九 ナピアー卿広東退去後支那・イギリスの紛乱せる関係
一〇 支那のアヘン問題
一一 支那のアヘン取締りとイギリスのアヘン貿易
一二 林則除のアヘン害毒浄絶方針
一三 林則除のアヘン禁圧詩s
一四 アヘン戦争前景
一五 イギリス政府のアヘン賠償要求
一六 アヘン戦争
一七 川鼻仮条約の顛末
一八 広東戦争と広東和約
一九 広東和約とイギリスの福建・浙江・溝蘇侵擾
二〇 南京和議始末
二一 南京条約とアヘン賠償金の不正当、アヘン密貿易公行
二二 南京条約の結果及び効果
 付録 欽差大臣黜斥後の林則除 / 南京条約 / 南京条約追加条約 / 五港通商章程 / アヘン戦争関連年表
 解説 宮崎市定


矢野 誠一 (やのせいいち)
「女興行師 吉本せい ― 浪花演藝史譚」 (おんなこうぎょうしよしもとせい)


*カバー・石井康博
(画像はクリックで拡大します)


*254頁 / 発行 1992年

*カバー文
大正二年、“吉本興行部”の看板のもと寄席興行に乗り出し、大阪演芸界を席捲した稀代の名プロデューサー吉本せい。桂春団治、エンタツ・アチャコら吉本を担う芸人たち、さらに昨今の「ヨシモト」専属タレントたち……。吉本興業の基礎をつくった女社長せいの六十年の生涯を辿り、浪花演芸の源流を探る。

*目次
序章 家庭
一 第二文芸館
二 桂春団治と安来節
三 万歳と小市民
四 エンタツ・アチャコ
五 落語との訣別
六 崩壊
終章 南区心斎橋筋二丁目
 あとがき
 『女興行師 吉本せい』余滴
 解説 大笹吉雄


矢野 竜渓 (やのりゅうけい)
「安田善次郎伝」
 (やすだぜんじろうでん)


(画像はクリックで拡大します)

*333頁 / 発行 昭和54年
*カバー表のスケッチは『中央公論』五十周年記念号(昭和十年十月)の表紙裏に掲載された安田銀行広告から転載。筆者不詳。カバー裏は同じく安田銀行のマーク。

*カバー文
安田講堂攻防戦の際に、その寄付者安田善次郎の名を想起した人が何人あるだろうか。加賀藩一下士の家に生れ安田財閥の総帥として凶手に斃れるまでの波瀾の生涯を、友人矢野竜渓が情理を尽して綴る伝記文学の傑作!

*巻末頁
安田家の家系
安田善次郎年譜


山折 哲雄 (やまおりてつお)
「さまよえる日本宗教」
(さまよえるにほんしゅうきょう)


*カバー写真・鬼海弘雄
 カバーデザイン・間村俊一
(画像はクリックで拡大します)


*290頁 / 発行 2013年

*カバー文
いま日本人の宗教はどこを向いているのか。果たして世界に向かって、きちんと面を挙げているのだろうか ―― 。歴史をさかのぼって日本宗教の過去と現在を再点検し、「さまよえる日本宗教」の諸問題群を摘出したうえで、そのあり得べき着地点を探る力作評論集。

*目次
第一章 無教会派の今昔
 内村鑑三 ―― 武士道とキリスト教
 南原繁 ―― 政教分離の日本パターン
第二章 漂流する日本宗教
 さらば「宗教」 ―― 歴史的宗教の賞味期限
 「内部告発」の倫理 ―― 正義の名による裏切り行為
 「靖国」参拝のジレンマ ―― 国民宗教とは何か
 ルース・ベネディクトの「日本人の行動パターン」
第三章 歴史と民俗
 柳田国男 ―― ロマンの誕生
 折口信夫 ―― 天然の無頼派
 網野善彦 ―― アンチテーゼの魅力
第四章 歴史と宗教
 天皇陵と八幡宮
 妖星 ―― 後鳥羽
 狐と珠と舎利 ―― 王権の根元
 『阿弥陀の胸割』と『百合若大臣』
第五章 科学と宗教
 カオスとコスモス
 「禁欲」について
 「超越」の毒素
 私のDNA幻想

 あとがき
 初出一覧
 解説 ―― 土に還る、星の言葉 濱田陽


山口 瞳 (やまぐちしょうすけ)
「旦那の意見」 (だんなのいけん)


*カバー画・山藤章二
(画像はクリックで拡大します)

*325頁 / 発行 2004年

*カバー文
この頃、電車で席を譲らなくても気が咎めなくなった。志ん生晩年のかすれ声に涙を流す。角栄に義憤を感じつつも父の面影を重ねる。――『男性自身』で大好評を博した著者が「最初の随筆集」と断じてはばからぬ、珠玉の自選名文集。

*目次
谷保村の酒
 相撲場で / 旦那の意見 / 温習会の思い出 / 軍隊で会った人たち / これだけの庭 / 違いがわかるかな / 山登り / 水難 / 年齢 / キャッチャーで一番 / 井戸掘り / 投手坂上のオナラ / 在りし日の歌 / 谷保村の酒 / 三多摩の次郎左衛門 / 裸体画 / 夏は来ぬ / わたくしの母

創意の人
 流行作家 / 梶葉院 / きみたちは、スターになれない! / ある文化人批判 / 月の十日ごろ / 女の文章 / 女を書ける女流作家 / 私小説と歳月 / 二十年ぶり / 吉行さんの名刺 / 東京土着民 / 高橋義孝先生の酒 / 秋の夜の酒 / 三枝博音先生のこと / 私の好きな歌 / 「さんせう太夫」 / 内田百闖ャ論 / 孤独な現実主義者 / 創意の人

下駄と背広(私小説的田中角栄論)
 下駄と背広

あとがき
解説 山口正介


山崎 光夫 (やまざきみつお)
「北里柴三郎 ― 雷と呼ばれた男(上下)」
(きたざとしばさぶろう ドンネルとよばれたおとこ)




(画像はクリックで拡大します)

*上282頁・下340頁 / 発行 2007年
*上カバー写真・北里柴三郎愛用の顕微業 / 北里研究所ロゴマーク(提供・社団法人北里研究所)
 カバーデザイン・中央公論新社デザイン室
*下カバー写真・嫌気性細菌培養装置 / 北里研究所ロゴマーク(提供・社団法人北里研究所)
 カバーデザイン・中央公論新社デザイン室

*カバー文

第一回ノーベル賞を受賞するはずだった男、北里柴三郎。その波瀾に満ちた生涯は、医学を志した時から始まった。「肥後もっこす」そのままに、医学に情熱を傾ける柴三郎は渡欧後、世界的細菌学者コッホの下で破傷風菌の発見・培養と血清療法の確立に成功する。日本が生んだ世界的医学者の生涯を描く。


帰国した柴三郎は、福沢諭吉の支援を得て、困難を乗り越え、伝染病研究所の設立を果たす。そんなとき、香港でペストが大流行との報が。多数の感染者を出す生死をかけた調査でペスト菌を発見する柴三郎。その一方、東大閥との争いも激化。政治の思惑にも巻き込まれ、北里は「伝研」を失うことになるが。

*目次

第一章 立志の道 / 第二章 ベルリンの光

第三章 疾風の機(とき) / 第四章 怒濤の秋(とき)
あとがき / 文庫あとがき / 主要参考文献 / 北里柴三郎略年譜 / 解説 大村智


山崎 光夫 (やまざきみつお)
「藪の中の家 芥川自死の謎を解く」
(やぶのなかのいえ)


*カバー写真・(提供 財団法人日本文学館)
 田端の家の書斎・芥川龍之介と比呂志
 カバー・中央公論新社デザイン室
(画像はクリックで拡大します)

*312頁 / 発行 2008年

*カバー文
昭和二年七月二十四日未明、芥川龍之介は睡眠薬により、自らの死を選んだ……。しかし、致死量に至る睡眠薬の入手は、芥川の治療のために出された処方によれば困難である ── 主治医の日記、龍之介の書簡などから、自死の真相に迫る、渾身のノンフィクション。第十七回新田次郎文学賞受賞作。

*目次
第一章 三人のS先生
第二章 紫檀の机
第三章 芥川主治医日記
第四章 死へのスプリング・ボード
 文庫版あとがき
 解説 千葉俊二


山田 耕筰 (やまだこうさく)
「自伝 若き日の狂詩曲」 
(じでんわかきひのきょうしきょく)


*カバー 鈴木成一デザイン室
(画像はクリックで拡大します)

*424頁 / 発行 1996年

*カバー文
幼年時代、義兄ガントレットに西洋音楽の手ほどきをうけた耕作は、やがて東京音楽学校に入学、岩崎小弥太の後援をうけ、日本人で初めてベルリンの王立音楽院に入学する…。童謡・オペラの作曲を始め、わが国交響楽運動の創始者として、近代音楽史に輝かしい足跡を残した、山田耕筰の破天荒な青春記。

*目次
 序
 新しい刊行に際して
小さな歌の狂人
 『主われを愛す』 / 築地居留地 / 海辺の夢 / 耶蘇学校 / 白い花の青い棘 / 愛しき母 / 生きるために / エドワァド・ガントレット / 関西学院 / 母の死
上野の杜
 ひらかれた門 / 善友悪友 / 修公のチェロ / 悲しきトロムペット / ユンケル先生 / 道化の仮面 / 一人五役 / 恋すべからず / 泰子の章 / 歌劇『誓の星』 / 渡欧
ベルリンの青春
 王立音楽院 / 悲報 / 「まあ! お母さん」 / 皇帝のはげまし / 二つの誘惑 / 白夜の輪舞 / 暗い日々
私の名はペテロ
 ドレェスデン綺話 / 絵画と音楽 / デカダン修業 / 楽劇『堕ちたる天使』 / テアとの婚約 / 処女上演 / 祖国を憶う
シベリアの旅
 歌曲集の出版 / 別れの日 / モスコオ / 雪の夜の幻想 / 鐘は鳴る / 三等旅行 / 馬鹿! 旦那 / 旅愁点々 / 『銭皆無』 / 待っていた事件 / 東京へ

解説に代えて 團伊球磨
略年譜
母なるものの姉 出久根達郎

*親本 一九八五年四月、かのう書房刊行『はるかなり青春のしらべ』。題名は一九五一年二月刊行の講談社版に依る


山田 洋次 (やまだようじ)
「映画館がはねて」 (こやがはねて)


*カバー画・早川良雄
(画像はクリックで拡大します)

*255頁 / 発行 1989年

*カバー文
「映画館がはねて、星空を仰ぎながら家路につく観客の胸が幸福な気分でつつまれ、さっき観た一場面を思い返して、思わず一人笑いしてしまうような作品ができることを念じつつ」『男はつらいよ』40作を制作した映画監督の爽やかなエッセイ。

*目次
 まえがき
T 美しい女
   ミセス・コウ / 村上先生 / ふみさん / 山村さん / H夫人 / バイエルの君 / 麻布のおばさん / 教授令嬢 / 美人姉妹 / 京都のひと / 洋子ちゃん / エミ子さん / SKDの娘たち

U 修業時代
  想い出すこと / ピーナツ売りの少年 / 寅さんのあこがれ / 寅さんの原型 / 落語に学ぶ / 修業 / 本直し作家 / 橋本忍さん / 夕張の思い出 / 夜間中学

V 寅さんと共に想う
  地方訛り / ある「サンキュウ」 / 飯田蝶子さん / 勇敢な少年 / あっぱれな親不幸「山崎屋」 / 母とわたし / 毎日映画コンクール特別賞を受けて / 労働者諸君 / 脇役の力 / 私とハルピン / 青春紀行 / はじめてであった本 / いわさきちひろの絵によせて / 父親 / 夕張を恋うる / ある大学生の回想 / 昭和二十年前後のこと / 寅さんはなぜ新幹線に乗らないか / 私の転機 / 寅さんと勤労

W ズームレンズ
  望郷 / パーティー / 廃業 / チリ紙 / 泥棒 / ガードシステム / コンちゃん / 七五調 / キャンドルサービス / クラリネット / 佐山俊二さん / 喜劇役者 / マッちゃん / 衣裳松クン / 玉チャン / 休憩中 / タコ社長 / 先生 / ある若者 / ドイツの免許証 / 王様のドライブ / 青年の自立 / コピー / 投書 / ベンツと自転車 / 映画ライブラリー / あのねのおっさん / エノケン / アカデミー賞 / AFM / 暗い春 / 批評家 / 寅次郎的故事 / 中国と日本 / 進歩
 文庫のあとがき


山室 軍平 (やまむろぐんぺい)
「社会廓清論」 (しゃかいかくせいろん)


(画像はクリックで拡大します)

*345頁 / 発行 1977年

*カバー文
大正三年、わが国の公娼制度を糾弾告発し、世間良心の奮起をうながした警世の名著。
遊女の由来より説き起して救世軍の廃娼運動の受難にいたる求道者の具体的な研究と実践がここにある。

*目次
 序
第一章 現存の奴隷制度
第二章 娼妓百人研究
第三章 公娼廃すべし
第四章 公娼廃止善後策
第五章 芸妓論
第六章 海外醜業婦
第七章 基督教と風俗問題
 〔附録〕
第一 娼妓自由廃業を奨励する理由(旧稿)
第二 洲崎暴行事件の顛末
 解説 山室武甫


山本 茂 (やまもとしげる)
「物語の女 ― モデルたちの歩いた道」
(ものがたりのおんな)


*カバー・東谷武美
(画像はクリックで拡大します)


*343頁 / 発行 1990年

*カバー文
若き日の作家の情熱をかきたてた女性たち。『オリンポスの果実』『浅草紅団』『聖家族』『人生劇場』等の名作のなかに永遠のヒロインとして生きつづける13人の足跡を辿り、独自の取材を通じて、物語に秘められた愛と人生を語る。

*目次
伊藤整『雪明りの路』
 西洋菓子の匂いのする少女 重田根見子
川端康成『浅草紅団』
 カジノ・フォーリーの名花 梅園龍子
高見順『如何なる星の下に』
 浅草の可憐な踊子 小柳雅子
大手拓次『藍色の蟇』
 バラ色のシミューズ 山本安英
室生犀星『抒情小曲集』
 海老茶の袴への片恋 土室きわ
堀辰雄『聖家族』
 美しく誇り高き才女 細木絹子
立原道造『優しき歌』
 短き過ぎし愛の日々 水戸部アサイ
伊東静雄『わがひとに与ふる哀歌』
 憧れやまぬ恩師の娘 酒井百合子
尾崎士郎『人生劇場』
 柳水亭の薄幸な女 お袖
森敦『月山』
 生気放つ若き寡婦 渡部文子
阿川弘之『雪の墓標』
 明日なき男たちの“青春” 深井蕗子
武田麟太郎『銀座八丁』
 情に溺れゆく女 マダム・あき子
田中英光『オリンポスの果実』
 小鹿のようなハイ・ジャンパー 熊本秋子
 あとがき
 遠き日の夢 ―― 文庫版あとがき


山本 笑月 (やまもとしょうげつ)
「明治世相百話」 (めいじせそうひゃくわ)


(画像はクリックで拡大します)

*297頁 / 発行 昭和58年
*カバー・山王の祭(日本堂の砂目石版画より)

*カバー文
明治から大正へ三十余年、新聞人のとらえた庶民の文化と世相の歩み。明治の大火事、わんぱく遊び列伝、絵双六の話、名代の団子しらべ、日本一の愛猫家物語など、風俗文化、芸能、娯楽、名物、書画骨董、もろもろ見聞の宝庫。

*目次
文化
演芸界
風俗
趣味・娯楽
名所・名物
書画・骨董
文人・墨客
 『明治世相百話』の後に 長谷川如是閑
 父の思い出 山本幸子


山本 夏彦 / 山本 七平 (やまもとなつひこ/やまもとしちへい)
「意地悪は死なず」 (いじわるはしなず)


(画像はクリックで拡大します)

*260頁 / 発行 1991年

*カバー文
ますます冴える、絶妙の毒舌と飛切りのエスプリ。流行、正義、テレビ人間・活字人間、意地悪、選挙、友などなど、世相万般を楽しく、そして辛辣に語り合う。変幻自在の夏彦、硬骨の七平―。面目躍如の辛口大対談。

*目次
流行がすべてである
「三日三月三年」という
何よりも正義を愛す
テレビ人間と活字人間
意地悪は死なず
助平を論じてエロスに及ぶ
投票すれども選挙はせず
君見ずや管鮑貧時の交り
あとがき


山本 夏彦 / 山本 七平 (やまもとなつひこ・やまもとしちへい)
「夏彦・七平の十八番づくし ― 私は人生のアルバイト」 (なつひこしちへいのじゅうはちばんづくし)


*カバー・竹久夢二作 ポチ袋意匠
(画像はクリックで拡大します)

*250頁 / 発行 1990年

*カバー文
軽妙にして気骨稜々、そして変幻自在、辛口の夏彦。八宗兼学、学は古今東西に通じる、硬骨の七平 ― 。
二つの特異な個性が出会い、新聞、言葉、賞、忠臣蔵、女、恋と愛、欲ばりとやきもち等、人間・世相万般を爼上に載せ、本音で縦横無尽に語り合う。“絶妙の毒舌と飛切りのエスプリ”という、極上のスパイスが利いた、初の異色対談。

*目次
 序文 山本七平 / 新聞はお読みでしょうか / 欲ばりとやきもち / 死んだ人生きてる人 / 忠臣蔵変痴気論 / 恋と言い愛と言う / 私は時々女になる / 好きな言葉嫌いな言葉 / 広告はひとをだまさない / 「賞」は異なもの / あとがき 山本夏彦


山本 若菜 (やまもとわかな)
「松竹大船撮影所前松尾食堂」 (しょうちくおおふなさつえいじょまえまつおしょくどう)


(画像はクリックで拡大します)

*233頁 / 発行 2000年

*カバー文
『東京物語』『二十四の瞳』―数々の日本映画の名作を生み出した松竹大船撮影所前に、映画人や俳優たちが集う名物食堂があった。戦中戦後、映画全盛期、そして映画産業が黄昏をむかえるまで、現場の息吹を感じながら、撮影現場に暖かな食事をはこんだ女主人「若菜さん」が愛をこめて描く人間模様。

*目次
大船撮影所と松尾食堂開店
 開店の騒ぎ、電話でのとまどい / 小津組の深夜食とお雑炊 / 島津おやじと三人の助監督 / 松竹男優三羽烏 / 五所平之助監督と渋谷実監督 / 田中絹代さんと川崎弘子さん / 福田蘭童さんの手首 / 堀内敬三、万域目正両先生 / 撮影は待つことと覚えたり / 徳川夢声先生と「なのりそ」 / 逃げ込まれた城戸所長 / 大船映画は花盛り / 父のスター評判話 / 『暁に祈る』の大ヒット

戦争と大船映画
 忘れられない『白鷺』と狩谷太郎 / ラブコール! 恋の始まり / 木下恵介監督の第一回作品『花咲く港』 / 吉村公三郎監督に赤紙 / 監督資格認定試験 / 戦争中の食べものと縫いもの / 好きになれなかった織田作さん / 狩谷所長と京都へ / 狩谷所長退陣と父の死

戦後の大船撮影所
 松尾食堂再開と新人監督の競作 / 戦後の食糧事情 / 撮影所支給の食券 / 「赤八会」のメンバー / 浅草のスターたちと『泥馬クラブ』 / 奇蹟の人形 / 春本の字解きとしゃれ献立表 / 「ゼイタクはステキです」 / 川島雄三さんという人

映画全盛期のころ
 「羽左」さんと美空ひばりさん / 岡田英次さんと河村黎吉さん / 岸恵子さんのデビュー / 大船撮影所の三奇人 / 黒沢明監督とぬるい味噌汁 / 渋谷先生のわがまま / レッドパージの波紋 / 『カルメン故郷に帰る』と『善魔』 / 今村昌平さんの押しの強さ / 木下先生の手紙と撮影所の火事 / 集金と税金に泣かされる / 「パーゾロ」の人たち、泥棒騒動 / 純金のバッジ / 日活旋風と『二十四の瞳』 / アルバム「思い出のジェームス・ディーン」 / やくざといくじなし / 競売寸前の松尾食堂 / 『忘れえぬ慕情』と東西会議 / お歳暮とお年玉

黄昏の映画とともに
 ああ、大船映画もシャンピまで / 森園忠監督と檀の結婚 / 二代目三羽烏 / ヌーベルバーグの人たち / 葵の結婚と「猿蟹合戦の猿」 / 改築と「ネズミの間」 / 改築後の不景気と景気回復 / 山田洋次監督と渥美清さん / 黄昏産業の映画 / 田中康義監督と篝の結婚 / 「寅さんシリーズ」の人たち / スターさんの献立

 おわりに
 解説 田中康義

*注=「なのりそ」の「な」は異体字


安田 武 (やすだたけし)
「昭和 東京 私史」 (しょうわとうきょうしし)



(画像はクリックで拡大します)

*295頁 / 発行 1987年
*カバー画・深沢索一「京橋」(『新東京百景』より)

*カバー文
戦前昭和は遠くなり、いま昭和は過ぎゆく。特に世界経済の一大中心地となった東京の変貌はすさまじい。少年から青年へ成長してゆく自分の姿を通して、激動する時代の庶民生活を確かな眼で捉える。

*目次
 花電車 / 巣鴨 / 西洋館 / 幼稚園 / 文化住宅 / 三美人 / お弁当 / 同級生 / 昭和4年 / 野球放送 / 他57篇
 解説 高田宏