絶版文庫書誌集成

中公文庫
【し】


塩谷 賛 (しおやさん)
「幸田露伴」〈全四冊〉 
(こうだんろはん)


*カバー題字・西川寧
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*上276頁・中410頁・下の一358頁・下の二362頁
*発行 1977年

*カバー文

明治・大正・昭和にわたる文豪露伴の生涯を克明にたどる画期的な伝記決定版。露伴の最後の弟子である著者は、日本文学にそびえる膨大な作品群を詳細に解説し、その親しみある人間像を鮮明に描き出す。全四巻。三十歳まで。 読売文学賞受賞

明治・大正・昭和にわたる文豪露伴の生涯を克明にたどる画期的な伝記決定版。明治三十一年「花のいろいろ」から「風流魔」「天うつ浪」「努力論」に至り明治を終る。大正五年五十歳まで。全四巻。 読売文学賞受賞
下の一
大正六年五十一歳、作品では「菊の賦」から、関東大震災を経て昭和九年六十八歳、茂吉との熱海行まで。明治・大正・昭和にわたる文豪露伴の生涯を、晩年最後の弟子の著者が克明にたどる。全四巻。 読売文学賞受賞
下の二
昭和十年六十九歳、作品では「太公望」から、疎開と小石川蝸牛庵被災を経て『評釈芭蕉七部集』の完成後昭和二十二年八十一歳で没するまで。明治・大正・昭和にわたる文豪露伴の生涯を、晩年最後の弟子の著者が克明にたどる。全四巻完結。 読売文学賞受賞


椎名 麟三 (しいなりんぞう)
「美しい女」
 (うつくしいおんな)


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*253頁
*発行 昭和51年
*カバー装画・山本敬輔

*カバー文
お人よしで人と争わず、電車と運転が大好きで、いつも喜劇的な立場に立たされては、無自覚、曖昧、保守的と非難される「私」 ――  最も平凡に生きた人間を最も非凡な文学の主人公にまで高めた画期的秀作。昭和三十年度芸術選奨文部大臣賞受賞。

*解説頁・臼井吉見


椎名 麟三 (しいなりんぞう)
「私の聖書物語」 (わたしのせいしょものがたり)


*カバー・記名無し
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*184頁 / 発行 昭和48年

*カバー文
若くしてマルクス主義者、入獄、ニーチェによって転向し、ドストエフスキイによって小説家として自立した戦後文学の第一人者の、キリスト者として死すまでの精神の軌跡が、みずから「つまずきの記録」というこの「聖書物語」の中に、やさしい微笑、含羞のユーモアとともに語られる ―― 。自伝的な、体験を通して書かれた心あたたまる聖書入門。

*目次
私の聖書物語
 処女受胎 / 愛と律法 / まぼろしの門 / 人間に原罪はあるか / 海の上を歩くキリスト / ゴルゴタの丘 / キリストの手と足 / 神のユーモア / 人間性の回復 / 愛の不条理 / 生きるということ / 神と人

イエスの誕生
クリスチャンであること
モラルについて
 あとがき
 解説 佐古純一郎


獅子 文六 (ししぶんろく)
「海軍」
(かいぐん)
中公文庫BIBLIO


*カバー写真・毎日新聞社提供
 カバーデザイン・山影麻奈(EOS Co.,Ltd)
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*373頁
*発行 2001年

*カバー文
ふと彼の眼は、彼の中に黒い幻を見た。二、三間ほどもありそうな巨大な鱶は一列になり、真珠湾の方に進んでいった ―― 。昭和十六年十二月八日、特別攻撃隊の一員として、運命の真珠湾に特殊潜航艇を駆って突入した軍神横山少佐をモデルに、海軍に青春を賭した青年群像を文豪が描いた戦争文学の快作。

*解説頁・河盛好蔵
新潮文庫版(岩田豊雄名義・サイト内リンク)


獅子 文六 (ししぶんろく)
「私の食べ歩き」
(わたしのたべあるき)


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*310頁 / 発行 1999年
*カバー画・芹沢_介 「型染 小皿もよう雛形」より

*カバー文
自称グウルマンの著者が、日本・中国・西洋の美味を求める毎日を、軽妙な筆致でつづる。フランス滞在で磨きをかけた食の感性、日々の惣材にも見出すうまさ、戦中戦後の統制下にあっても衰えぬ食への執念 ── 文士や画家との交友など、著者の人柄がにじむエピソードにもあふれた、食味随筆の傑作。

*解説頁・山本益博


幣原 喜重郎 (しではらきじゅうろう)
「外交五十年」 
(がいこうごじゅうねん)


*カバー画・羽原智達
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*337頁 / 発行 1987年

*カバー文
外務大臣を歴任し、また特命全権大使として大正、昭和の困難な時代を生きた元首相の回顧録。その政策は「幣原外交」とよばれ、近代史上に重要かつ特異な位置を占めている。人と時代を忌憚なく語った貴重な外交秘史。

*目次
 序
第一部 外交50年
 朝鮮の思い出 / 樺太を拾った話 / アメリカの排日問題 / ワシントン会議 / 佐分利公使の怪死事件 / 奉直戦争と日本 / 南京事件 / 東支鉄道の紛争 / ロンドン海軍条約 / 首相代理 / 満州を売る話 / 在野外交 / 満州事変 / 二・二六、逃避行 / 憲兵隊の脅迫 / 近衛公との会談 / 組閣と憲法起草
第ニ部 回想の人物・時代
 外務省に入るまで / ロンドン赤毛布 / デニソンを憶う / サー・エドワード・グレーのこと / 外交調査会の前後 / 西園寺公の思い出 / 米内光政と山本五十六 / 鈴木貫太郎夫妻 / オランダ女皇大いに笑う / 汪栄宝との友情 / 国際連合と朝鮮 / アメリカ雑話 / アメリカ兵と理髪師
 解説 佐々木隆


芝木 好子 (しばきよしこ)
「染彩」 
(せんさい)


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*176頁
*発行 1976年
*カバー文様 立花長子作「百蝶」

*カバー文
夫に背かれて、木枯吹く武蔵野の林のなかですべての情念を染彩の"技芸"にそそいで生きる葉子 ―― 著者の感性を育んだ下町への挽歌を底流に繊細な筆致で綴る佳作。

*解説頁・磯田光一


柴田 宵曲著・小出 昌洋編 (しばたしょうきょく・こいでまさひろ)
「漱石覚え書」
(そうせきおぼえがき)


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*249頁
*発行 2009年
*カバー画・川上澄生「黒い猫」
 カバーデザイン・中央公論新社デザイン室

*カバー文
漱石、および正岡子規、芥川龍之介、内田百閧ネど漱石をとりまく文化人たちの逸話を集めた随筆集。「柴田宵曲文集」未収録の「漱石覚え書補篇」、文人ゆかりの地をめぐる「文学・東京散歩」も新たに加えた。碩学ならではの細やかな目配りとあたたかい筆致を通して、明治の豊かな文学模様に触れられる一冊。


柴田 秀利 (しばたひでとし)
「戦後マスコミ回遊記(上下)」
(せんごますこみかいゆうき)




*カバー画・柳沢信男
 カバーレイアウト・丸山邦彦(CREATIVE MIND)
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*上372頁 / 下329頁 / 発行 1995年

*カバー文

戦後日本の復興に情熱を燃やし、新聞・放送・テレビの世界を縦横に疾駆したあるマスコミ人の回想録。昭和二十一年、馬場恒吾社長を担いで第二次読売争議を終結させた著者は、多重通信システムの革命的発展という気宇壮大な構想のもと、テレビ時代の創造に全力を傾ける ── 。

ニュー・メディアの導入、原子力の平和利用、ゴルフ・ブームの演出?。正力松太郎をいただき、卓越した企画力と日米にわたる人脈を駆使して、著者は新しい時代の創造に挑み続ける。政・官・財界の大物たちが織りなす白熱の戦後史の知られざる事実を明らかにする。一快男児の回想。

*目次

敗戦、即革命の前夜
 読売争議を乗りきる
敗戦謀略の真相
 クレムリンの世界戦略
NHKのニュース解説者
 主権回復をめざして
テレビ時代の創造
 日本再建のカギ
テレビ免許第一号
 NHKとの決戦
アメリカの借欺獲得
 ニュー・メディアの導入

日本繁栄の奇蹟
 エレクトロニクスが開く世界
原子力時代の幕開き
 日米外交の危機
原子力外交の展開
 官民一体で推進
ゴルフ・ブームの演出
 カナダ・カップの日本開催
要人とのつき合い
 アイゼンハワー大統領との会談
カラー・テレビのねらい
 精密機械・化学工業の革新
ランド計画発進
 ゆとりのある生活を求めて


柴田 流星 / 江戸川 朝歌画 (しばたりゅうせい)
「残されたる江戸」 (のこされたるえど)


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*241頁 / 発行 1990年
*カバー・竹久夢二「治兵衛」(大正五年 やなぎや版)

*カバー文
夏祭り、風鈴と釣忍、薮入と閻魔、渡し舟、五月場所、苗売り、菊と紅葉、丑べに、筍めし、八百善料理、歳の市、浅草趣味、常磐津、清元、歌沢、江戸っ児の教育などなど―。
江戸の名所名物、年中行事、物売り、気質など、失われゆく江戸を明治人が愛惜をこめて綴る。明治という、江戸の面影が未だ色濃く残されている時代に纏められた資料性ゆたかな、明治版“江戸案内”。竹久夢二挿画十五葉入り。

*目次
江戸ッ児の教育 / 顔役の裔 / 三ヶ日と七草 / 揚り凧 / 薮入と閻魔 / 節分と鷽替 / 初卯と初午 / 梅と桜 / 弥助と甘い物 / 渡し船 / 汐干狩 / 山吹の名所 / 節句 / 筍めし / 藤と躑躅と牡丹 / 初松魚 / 釣りと網 / 初袷 / 五月場所 / 花菖蒲 / 稗蒔 / 苗売り / 木やり唄 / 浅草趣味 / 八百善料理 / 風鈴と釣忍 / 井戸がえ / 箱庭と灯籠 / 定斎と小使銭 / 青簾 / 夏祭り / 心太と白玉 / 川開き / 草市と盂蘭盆 / 灯籠流し / 蒲焼と蜆汁 / 丑べに / 朝顔と蓮 / 滝あみ / 虫と河鹿 / 走り鮎 / 縁日と露店 / 新内と声色 / 十五夜と二十六夜 / 細見と辻占売り / おさらい / 常磐津、清元、歌沢 / お会式 / 菊と紅葉 / 酉の市 / 鍋焼饂飩と稲荷鮨 / からッ風 / 納豆と朝湯 / 歳の市 / 大晦日 / 見附と御門 / 江戸芸者と踊子 / 人情本と浮世絵 / 見番と箱屋と継ぎ棹 / 解説 齋藤真一

*江戸川朝歌=竹久夢二の変名


柴田 錬三郎 (しばたれんざぶろう)
「デカダン作家行状記」 (でかだんさっかぎょうじょうき)


*カバー画・ビアズリー「メッサリナ」
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*290頁 / 発行 1989年

*カバー文
ニヒルな剣士“眠狂四郎”を生んだ著者が、その若き日、汚濁の時代への慣怒をこめて世相を強烈に諷刺した初期作品 ―― 虚無と頽廃に身を染めた男の反日常的な姿をうつす「デカダン作家行状記」と世情への直言にみちた「やくざな神の物語」の二作を収める。

*目次
デカダン作家行状記
 第一話〜第八話
やくざな神の物語
 第一話 賭と女
 第二話 平和な家庭
 第三話 一夜の恋
 第四話 素晴らしい名演技
 解説 尾崎秀樹


柴田 錬三郎 (しばたれんざぶろう)
「わが青春無頼帖」 (わがせいしゅんぶらいちょう)


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*242頁
*発行 2005年
*カバー画・山藤章二

*カバー文
「昭和九年三月―。私は岡山県立二中を、四年生で中退して、上京した」―ご存じ「眠狂四郎」の生みの親、柴田錬三郎が、故郷出奔から、直木賞受賞までの無頼の日々を、女性遍歴、戦争体験などを中心に回想した、柴錬の青春逸話録。


澁澤 龍彦 (しぶさわたつひこ)
「悪魔のいる文学史 ― 神秘家と狂詩人」 (あくまのいるぶんがくし)


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*308頁・発行1982年

*カバー文
その絶望と狂気ゆえに、ヨーロッパ精神史の正流からはずれた個所で光芒を放つ文学者たち ― 。彼らの狂気が、調和を根底に築かれた「文化」の偽善性を射る。埋もれた異才を発掘する異色の文学史。

*目次
エリファス・レヴィ……神秘思想と社会変革
グザヴィエ・フォルヌレ……黒いユーモア
ペトリュス・ボレル……叛逆の狂詩人
ピエール・フランソワ・ラスネール……殺人と文学
小ロマン派群像……挫折した詩人たち
エルヴェ・ド・サン・ドニ侯爵……夢の実験家
シャルル・クロス……詩と発明
ジョゼファン・ベランダとスタニスラス・ド・ガイタ侯爵……世紀末の薔薇十字団運動
モンファコン・ド・ヴィラール……精霊と人間の交渉について
シニストラリ・ダメノ……男性および女性の夢魔について
サド侯爵……その生涯の最後の恋
ザッヘル・マゾッホ……あるエピソード
アンドレ・ブルトン……シュルレアリスムと錬金術の伝統
 あとがき
 文庫版あとがき


島尾 敏雄・吉田 満 (しまおとしお・よしだみつる)
「対談 特攻体験と戦後」 (たいだんとっこうたいけんとせんご)


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*149頁
*発行 1981年

*カバー文
太平洋戦争で“特攻死”を目前に生き残った学徒兵たちは、この長い戦後をどのように生きたか。
彼らの苦悩と犠牲のうえに成り立つ日本の戦後を問い直す、異色対談。


島尾 敏雄 (しまおとしお)
「日の移ろい」 (ひのうつろい)


*カバー・平山英三
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*391頁 / 発行 1989年

*カバー文
心塞ぐ思いの日々。人びとをどこか拒否する心。ながく「私」にはりついていて、決して離れようとはしない、執拗な鬱。

日記という形式で日常を追いながら、日日の出来事とそれを感受する心の戦き、あらがいのさまを微細に観察し、記録することで、最上の文学に熟成させた名作。
谷崎潤一郎賞受賞作

*目次
日の移ろい
 昭和四十七年四月一日から同四十八年三月三十一日迄
 あとがき


島尾 敏雄 (しまおとしお)
「続 日の移ろい」 (ぞくひのうつろうい)


*カバー・平山英三
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*494頁
*発行 1989年

*カバー文
ただひたすら表現の到来を待つ長い時間の憂鬱。無為とも思える日々のうちに、なにか動くものの気配が現われてくる。それは待ちこがれた時なのだろうか ― 時代を超えて、「私」を凝視する作家の内部風景、慄然たる言葉の集積をみる。

*目次
続 日の移ろい
 昭和四十八年四月一日から同年十一月一日迄
 後書
解説 菅野昭正


島尾 敏雄 (しまおとしお)
「日を繋けて」
 (ひをつなげて)


*カバー・関宏子画
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*212頁 / 発行 昭和51年

*カバー文
神経を病む妻の暗い妄想と闘う呪わしい日々の終りなき徒労を描く名作「日を繋けて」、思いがけず終戦を迎えた日の特攻隊員と島の人びととの心の離反をとらえた「その夏の今は」ほか二篇。異なるテーマの中で、たえず存在の深淵を凝視し、自在の幻想をめぐらせて、文学の可能性を追求する島尾文学の世界。

*目次
日を繋けて
その夏の今は
接触
オールド・ノース・ブリッジの一日
 後記
 解説 奥野健男


嶋岡 晨 (しまおかしん)
「日本のアルチザン」 (にほんのあるちざん)


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*201頁 / 発行 昭和56年
*カバー・彩色光背文様(法隆寺虚空蔵菩薩)

*カバー文
一芸に生きる人間のよろこびとは何か。日の当らぬ場所で黙々と特殊な技能にはげむ舞台裏の芸術家―職人たち、剣道具師、洋舞振付師、刺青絵師、花火師、仏具彫刻師等、その人生芸術を詩人の魂で受け留める。

*目次
剣道具師 / 洋舞振付師 / 刺青絵師 / 花火師 / 昴樗ッ結師 / 仏具彫刻師 / 舞妓髪結師 / 競走馬飼育師 / あとがき / 文庫版のための付記


子母沢 寛 (しもざわかん)
「小説のタネ」 (しょうせつのたね)


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*231頁 / 発行 昭和59年

*カバー文
国定忠治・大前田栄五郎・黒駒勝蔵・会津の小鉄などの仁侠、日本左衛門・鼠小僧などの盗賊、高橋泥舟・島田虎之助などの剣客 ― 聞き書きに裏打ちされた随筆の名人の、小説よりも面白いとっておきの歴史秘話を集めた手控え帳。

*目次
近世遊侠ばなし / 本所の上方 / あれやこれや / 甲州の黒駒 / 新徴組江戸時代 / 竹居の吃安 / 幽霊槍試合 / 怨恨三十年 / 新場の小安と会津の小鉄 / 剣術開眼 / 大盗伝 / 天保六花選 / ちびだった鼠小僧 / やくざ槍寅の一生 / あとがき / 解説 尾崎秀樹


子母澤 寛 (しもざわかん)
「ふところ手帖」 
(ふところてちょう)


*カバー・中尾進・左千夫
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*225頁 / 発行 1975年

*カバー文
勝海舟、榎本武揚、男谷下総守、島田虎之助、山内容堂から座頭市まで、歴史小説の第一人者がその実像を丹念に追跡し、限りない愛惜を行間にこめて、幕末動乱の時代相とともに、独自の語り口であざやかに描出した、格調高い歴史随筆集。

*目次
兵法名人番付
才女伝
つれづれ日記
  天狗身代 / にせ歯医者伝 / 狸爺の眼鏡 / 諭吉と武揚 / 雨亭先生のこと / お妾ばなし / 奇人変人 / 割勘で
座頭市物語
湯屋の佐兵衛
徳川御家人(とくせんごけにん)
雲の切れ間
  達人家康 / 赤穂の早太郎 / 猿の尾 / そばの味 / しっぽくと引廻し / 消えた剣客 / 花のふるさと / 股肱を棄てず / 壱岐守と与力股肱 / 有村次左衛門
解説 尾崎秀樹


子母澤 寛 (しもざわかん)
「続ふところ手帖」 
(ぞくふところてちょう)


*カバー・中尾進 / 左千夫
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*226頁 / 発行 1961年

*カバー文
大前田栄五郎、笹川繁蔵、飯岡助五郎、平手造酒、黒駒勝蔵、鼠小僧次郎吉、河内山宗俊など、もはや虚構化された遊侠の俗説のチリを払いおとし、その実像を古老の聞書きと深い人間愛の眼で捉えた、『ふところ手帖』につづく歴史随筆集。

*目次
新版耳袋
 京入れ墨 / 次郎吉の渡世 / 栄五郎の生涯 / 繁蔵と造酒先生 / 喜三郎島抜け
雑事控
 盲目の剣客 / むかしの牢屋敷 / 人足寄場 / 維新の職人 / 雑事のこと / 明治の人物 / 橋の上 / 黒駒勝蔵 / 人斬り以蔵 / 宗俊ふられる / 巾着切三名人 / 日光円蔵の墓 / 藤屋の和十郎
情夫に持つなら彰義隊
 解説 尾崎秀樹


子母沢 寛 (しもざわかん)
「味覚極楽」
 (みかくごくらく)


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*254頁 / 発行 1983年

*カバー文
歴史文学の名作『新選組始末記』で知られる著者は、聞書きの名人であり、随筆の名手であった。
“味に値無し” ── 明治・大正のよき時代を生きたその道の達人たちのさりげなく味覚に托して語る人生の深奥を聞書きで綴る。

*目次
序 / しじみ貝の殻〈子爵 石黒忠直〉 / 蛤の藻潮蒸し〈資生堂主人 福原信三〉 / 冷や飯に沢庵〈増上寺大僧正 道重信教〉 / 天ぷら名人譚〈俳優 井伊蓉峰〉 / 砲煙裡の食事〈子爵 小笠原長生〉 / 「貝ふろ」の風情〈民政党総務 榊田清兵衛〉 / 鯉の麦酒だき〈伯爵 柳沢保恵〉 / 珍味伊府麺〈男爵夫人 大倉久美子〉 / 西瓜切る可からず〈銀座千疋屋主人 斎藤義政〉 / うまい物づくし〈伯爵 溝口直亮〉 / 日本一塩煎餅〈鉄道省事務官 石川毅〉 / 大鯛のぶつ切り〈俳優 尾上松助〉 / 酒、人肌の燗〈元鉄道大臣 小松健次郎〉 / 長崎のしっぽく〈南蛮趣味研究家 永見徳太郎〉 / 宝珠荘雪の宵〈伯爵 小笠原長幹〉 / あなご寿司〈筑前琵琶師 豊田旭穣〉 / 竹の子天ぷら〈実業家 三輪善兵衛〉 / 新巻の茶づけ〈東京駅長 吉田十一〉 / 新しいお釣銭〈日本橋浪華家 古藤嘉七〉 / そばの味落つ〈医学博士 竹内薫兵〉 / 奥様方の奮起〈実業家 鈴木三郎助〉 / 三重かさね弁当〈舞踊家元 花柳寿輔〉 / お茶に落雁〈赤坂虎屋 黒川光景〉 / 真の味は骨に〈印度志士 ボース〉 / しぼり汁蕎麦〈陸軍中将 堀内文次郎〉 / 高島秋帆先生〈麻布大和田 味沢貞次郎〉 / 梅干の禅味境〈医学博士 大村正夫〉 / 料理人自殺す〈伯爵 寺島誠一郎〉 / 蒲焼の長命術〈竹越三叉〉 / 料理人不平話〈宮内厨司長 秋山徳蔵〉 / 当番僧の遺繰り〈鎌倉円覚寺管長 古川堯道〉 / 四谷馬方蕎麦〈彫刻家 高村光雲翁〉 / 解説 尾崎秀樹


子母澤 寛 (しもざわかん)
「よろず覚え帖」 
(よろずおぼえちょう)


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* 264頁 / 発行 1980年

*カバー文
次郎長伝を大成した三代目伯山の苦労話にはじまり、清水次郎長や黒駒勝蔵、偽官軍で処刑された一仙斎、蛤御門の一件で責を負って自裁した周布政之助と鯨侯山内容堂との湯殿問答、相政と愛称された相模屋政五郎や新門辰五郎の侠気、松岡萬や中条金之助の苦衷、平手造酒の虚像と実像といった具合に、話は縦横に発展し、幕末の人間群像を淡彩で描き出す。しかし淡彩であることがかえってその人間の風貌なり個性をきわだたせており、あたかも好短篇を読む思いがする。それというのも作者の語り口がいかにもその話題にふさわしく、しっとりした味わいをかもしだしているからだ。(「解説」より)
著者秘蔵のネタばなし三十五話を収録する。

*解説頁・尾崎秀樹


清水 幾太郎 (しみずいくたろう)
「昨日の旅ラテン・アメリカからスペインへ」 
(きのうのたび)


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*470頁 / 発行 1990年
*カバー絵 エル・グレコ「ラオコーン群像」 ワシントン ナショナル・ギャラリー蔵

*カバー文
独立のため戦い散ったラテン・アメリカの英雄たちの跡やコント因縁のブラジルなどの諸国をまわり、かつてラテン・アメリカを植民地として領有していた母国のスペインへ。フランコの死とカルロス1世の即位という、歴史の転換点に立ち合い、フランコと人民戦線の史跡を辿り、ロヨラゆかりの地を訪ねる。現代史への深い知識と認識をもつ著者が、旅先での印象、感動、体験を率直に綴った、魅力あふれる歴史紀行。

*目次
リオ・デ・ジャネイロを目指して / アステカの暦について / ジーンズとポンチョ / 独立の英雄たち / けったいな国 / 混血のすすめ / 十三人の巨人の前で / フランコのいないスペイン / カルロス一世即位の日 / 「スペイン問題」と流血 / マドリッドと内灘 / 束ねられた矢 / カルメンの国 / 人民戦線のまぼろし / 安保で学んだこと / ロヨラの聖イグナシオ / 孤独の意志 / フランコVS.ヒトラー / あとがき / 解説 野山喜正 / 地図・高野橋 康


ジャン・デ・カール  三保 元翻訳 (みほもと)
「狂王ルートヴィヒ ― 夢の王国の黄昏」
 
(きょうおうるーとヴぃっひ)




*2002年刊中公文庫biflio版カバー
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*418頁
*発行 1987年
*カバー・青木拓磨

*カバー文
太陽(ルイ14世)に憧れながら月光(狂気)に冒され、オーストリア皇妃を慕いつつも美しい青年の肉体に惑い、中世の夢想に耽る一方で19世紀末の政治的現実に倦む、バイエルンの青年君主ルートヴィヒ2世。壮大なワーグナーと絢爛たる城に暗い情熱を傾け、夢の王国と運命をともにした美貌の王の劇的生涯とその謎の最期。

*目次
 まえがき
メルヘンの王子
后なき王
鳩と鷲
 訳者あとがき 三保元

庄野 潤三 (しょうのじゅんぞう)
「早春」 (そうしゅん)


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*348頁
*発行 1986年
*カバー・川島羊三

*カバー文
青春の地、神戸を旧友、叔父夫婦の案内で妻と再訪する――。都市と人間、そして時の移ろいを、確かな筆致で描いて、静かな感動を誘う長篇

*解説頁・奥野健男


ジョージ・R・マレック 伊藤 欣二訳 (いとうきんじ)
「ワーグナーの妻コジマ」 
(わーぐなーのつまこじま)


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*556頁 / 発行 1988年

*カバー文
リストの次女コジマは、名指揮者フォン・ビューローと結婚するが、新婚旅行の途上、天才ワーグナーと逢い、一目惚れし、ついには夫を捨て彼のもとに奔ってしまう。
ワーグナーの恋人となり、やがて妻となったコジマは、世間の非難、妨害に立ち向い献身的な愛を捧げ、数々の名曲を生み出す創作の活力となった。――奔放に、そしてひたむきな愛に生きた女性の生涯を活写する伝記長篇。

*目次
緒言
第1章 両親のある孤児
第2章 不安な花婿
第3章 親密な仲
第4章 「われは国王の友」
第5章 愛と陰謀
第6章 日記
第7章 「もう沢山だ」
第8章 コジマ変貌
第9章 『パルジファル』に向けて
第10章 「モーゼに仕えるアロンなりき」
第11章 沈黙と音
第12章 館の女主人
第13章 『パルジファル』の逃亡
第14章 コジマ、舞台を下りる
第15章 思い出にひたって
 コジマの演出による公演
 訳者あとがき


白川 静 (しらかわしずか)
「中国の古代文学(一) 神話から楚辞へ」
(ちゅうごくのこだいぶんがく しんわからそじへ)
中公文庫BIBLIO


*カバーデザイン・EOS Co.,Ltd.
 吉田悟美+山影麻奈
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*423頁 / 発行 2003年(改版)

*カバー文
 中国文学の原点である『詩経』と『楚辞』の成立、発想、表現を、『記紀万葉』と対比し考察する。
 古代共同体的な生活が破壊され、封建制が根付いたとき、人々はそれぞれの運命におそれを抱き、そこに古代歌謡が生まれた。
 この巻でとり扱った時期は、古代中国人が神を発見し、また失う過程を示すものである。

 斬新で美しい論の展開、すべてを網羅した知識、知的興奮が味わえる白川静の世界へようこそ。

*目次
第一章 文学史の方法
第二章 神話と経典
第三章 発想と表現
第四章 古代歌謡の展開
第五章 詩篇の諸相
第六章 物語について
第七章 思想と文学
第八章 楚辞文学
 参考文献 / 図版解説


白崎 秀雄 (しらさきひでお)
「鈍翁・益田孝〈上下巻」
(どんのうますだたかし)




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*上巻402頁 / 下巻424頁 / 発行 1998年
*カバー・鈴木成一デザイン室

*カバー文
上巻
文久三年、十六歳の益田少年は、幕府遣欧使節団の一員として、パリを訪れた……。維新後、世界で初めての綜合商社・三井物産を設立し、更に中外物価新報を創刊、後の日本経済新聞の生みの親ともなった。幕臣から商人に転じ、草創期の日本経済を動かし、「千利休以来の大茶人」と称された、巨人鈍翁の生涯を描く。

下巻
第一次大戦後の好景気に酔う産業界を襲った関東大震災、昭和大恐慌。そして団琢磨の暗殺と高まる財閥批判。三井合名理事長の座を退いた後も、三井グループの総帥としてあった鈍翁は、この危機から組織をどう守ろうとしたのか。英知あふれる経済人であり超一級の古美術蒐集家であった文化人、鈍翁の生涯。

*目次
上巻
序章 伝説の中の巨影 / 一章 一葉の写真 / 二章 日日是茶事 / 三章 最後の幕臣 / 四章 海の向うを見た / 五章 御殿山碧雲台 / 六章 三井物産と三池炭鉱 / 七章 ライバルの死 / 八章 奔流の日月 / 九章 風狂・紅艶 / 十章 ヴィ事件の痛恨 / 十一章 畏友・原三渓

下巻
十二章 井上馨の死 / 十三章 御殿山大茶湯 / 十四章 鈍阿焼をつくる / 十五章 小田原掃雲台 / 十六章 関東大震災 / 十七章 箱根を拓く / 十八章 軽井沢の休日 / 十九章 ハリス顕彰 / 二十章 琢磨暗殺 / 二十一章 炉辺の孤独 / 二十二章 暗雲の中で / 二十三章 愛孫の抵抗 / 終章 空に還る
 資料提供 増田泰子


神西 清 (じんざいきよし)
「灰色の眼の女」
 (はいいろのめのおんな)


*カバー表紙・扉 白井晟一
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*291頁 / 発行 昭和51年

*カバー文
世俗になじまず、美の孤塁を守って孤高の生涯を終えた著者が、詩情あり、ロマンスありの、独自の文学世界を構築した秀作集。
 □ 灰色の眼の女
    船首像
    跫音
    雪の宿り
    聖痕
    白樺のある風景
    ローザムンデ舞曲
    ハビアン説法  全八編

*解説頁・三島由紀夫