絶版文庫書誌集成
中公文庫
【ま】


前坂 俊之編 (まえさかとしゆき)
「阿部定手記」
(あべさだしゅき)


*装幀・渡辺和雄
 カバー画・岸並千珠子
(画像はクリックで拡大します)

*293頁 / 発行 1998年

*カバー文
「愛する男の身も心も自分のものにしたいのは、世の女の方も私も同じ」 ―― 世間を賑わせた事件から十二年を経て、マスコミに作られたエログロのイメージを払拭しようと阿部定自身が心境を綴った『手記』をはじめ、予審訊問調書、坂口安吾対談、事件当時の記事を全収録。時を越え多くの人の心を揺さぶった女性の一生を浮き彫りにする決定版資料集

*目次
はじめに 前坂 俊之
 事件発生から逮捕まで ―― 新聞報道に見る昭和十一年五月
 誌上緊急特集 『婦人公論』昭和十一年七月号より
  畳屋のお定ちゃん 久保久美
  彼女の場合
   【批判】家庭教育の立場から
       「母親」の反省 平塚らいてう
   【批判】愛と本能の問題
       恋愛の怯懦の戒め 石原純
   【批判】社会的立場から
       一つの標本として 杉山平助
 『艶恨録』―― 予審訊問調書
 判決全文 ―― 昭和十一年一二月二十一日
 出所そして戦後
   ―― 新聞報道に見る昭和十六年・二十二年
 二度目のブームの中で
  阿部定・坂口安吾対談 / 阿部定さんの印象 坂口安吾
 『阿部定手記 ―― 愛の半生』
   一 なぜ訴えたか / 二 生家にありし頃の思い出 / 三 死より強い恋 / 四 かくれた私への愛護者 / 五 吉蔵の魂を抱いて / 六 女囚生活四年間 / 七 獄中に迎える吉蔵の一周忌 / 八 出獄してから今日までの六年間 / 九 これからの私の生きる途
 解説 前坂俊之


牧 羊子 (まきようこ)
「金子光晴と森三千代」
(かねこみつはるともりみちよ)


*カバー画・篠崎美保子
 装幀・鈴木正道
(画像はクリックで拡大します)

*239頁 / 発行 1996年

*カバー文
時とともに新しい金子光晴の詩のエスプリを誰よりも愛し、吸収した妻森三千代。中国から東南アジア、ヨーロッパへと、夫婦別々に、あるいは手をたずさえての放浪生活 ── ひとびとが戦争に疲弊しきっていた中で、時代に流されることなく、個として生きつづけたふたりの深い絆を、鮮烈な詩人の眼で描く。

*目次
第一章 気がつけば大詩人の女房
第二章 “あしながおじさん”を捜す
第三章 古典を読む
第四章 森三千代仏語詩集『詩集インドシナ』
第五章 男と女の象
第六章 “道行南方洋”
第七章 光晴の「令嬢」志向(講演録)
追記 ── あとがきにかえて
 森美千代略年譜
 途轍もないペア 佐伯彰一


牧野 武夫 (まきむらたけお)
「雲か山か出版うらばなし」
 (くもかやまか)


(画像はクリックで拡大します)

*279頁 / 発行 1976年

*カバー文
「西部戦線異状なし」の大ベストセラーをひっさげて書籍出版に乗り出した雑誌社の内部はどんなものであったか。 円本革命時代、広津和郎と菊池寛のからんだ女給事件、四大取次や雑誌協会の思い出、食べる話でうずまる九州書店紀行等々、昭和初期の出版史を熱情的に生きた著者の興味深い出版うらばなし。

*目次
はしがき
歴史の一こま ― 中央公論回顧録 ―
 一 西部戦線異状なし / 二 円本革命時代 / 三 円本合戦のこと / 四 駿馬は悍馬のこと / 五 棚からボタ餅のこと / 六 出版部開設のいきさつ / 七 嶋中社長、ハッタリのこと / 八 百花繚乱、賑やかなこと / 九 読者訪問のこと / 一〇 お小遣い一千円のこと / 一一 菊池寛氏と喧嘩のこと / 一二 女給事件 / 一三 牧逸馬の思い出 / 一四 「アホかいな」ということ / 一五 君子わいだんすること / 一六 「源氏」異聞 / 一七 入社試験のこと / 一八 電通回顧 / 一九 煙草銭からパチンコへ / 二〇 講演旅行の思い出 / 二一 屁合戦のこと / 二二 吉田絃二郎氏 / 二三 映画鑑賞会 / 二四 橘高広氏の思い出 / 二五 高田保氏の思い出 / 二六 四大取次のころ / 二七 ここらで一理屈 / 二八 大野孫平氏のこと / 二九 雑誌協会の思い出 / 三〇 長生きのこと / 三一 下村千秋氏のこと / 三二 金文会 ― 金文社のこと / 三三 鹿児島事件 / 三四 山本弥助氏の思い出 / 三五 「生きている兵隊」事件
雲か山か ― 九州紀行 ―
 一 水だき ふぐ / 二 生うに / 三 鯉の生づくり / 四 北原家の悲劇 / 五 久留米から佐賀へ / 六 小城羊羹 / 七 嬉野の湯豆腐 / 八 カキのどて焼き / 九 柔道家の腰 / 一〇 艦隊入港 / 一一 雨の長崎 / 一二 雲仙 / 一三 島原のちくわ / 一四 雲仙へ物申す / 一五 雲か山か / 一六 田吾作の田楽 / 一七 細君大いに踊る / 一八 阿蘇登山 / 一九 東浜屋の川魚料理 / 二〇 鹿児島へ / 二一 普どん、もうこの辺でよか / 二二 日向の国へ / 二三 日豊線 / 二四 お猿さま / 二五 別府のお告げ / 二六 瀬戸内海 / 二七 金比羅さん / 二八 岡山へ渡る
解説 杉森久英


牧野 伸顕 (まきののぶあき)
「回顧録」 上下巻
 (かいころく)


*カバーの筆跡は牧野伸顕自署
(画像はクリックで拡大します)

*上巻340頁・下巻258頁 / 発行 上巻昭和52年・下巻昭和53年

*カバー文
上巻
 維新の功臣大久保利通を父に生まれた伸顕は少年時アメリカに学び、長じてヨーロッパに使し、のち、大臣、重臣として近世日本そのものの生涯を送った。政治・外交の表裏にわたる貴重な証言を収める。

下巻
 ウィーン公使の勤務を了えた伸顕は、文部大臣、枢密顧問官、農商務大臣等を経て外務大臣となる。日本外交の黎明期ともいうべき時期に敏腕をふるい、第一次大戦後のパリ講和会議にのぞむ。

*目次
上巻
一 幼年時代
二 アメリカ行き  ― 岩倉使節一行の欧米視察
三 開成学校  ― 西南戦争
四 英国在留
五 制度取調局  ― 天津談判
六 兵庫県時代
七 総理大臣秘書官、記録局長  ― 条約改正問題、大津事件
八 県知事の思い出
九 文部次官時代
十 伊太利在留
十一 ウィーン在勤
  一 墺太利の国情、バルカン半島の情勢
  二 瑞西行、義和団事件、日英同盟
  三 カイゼルとエドワード七世、セルビア皇帝暗殺事件、日露交渉の経過
  四 日露交渉(続)、ルーマニアとの条約締結問題、バルチック艦隊、宣伝戦
  五 土耳古との条約締結問題について
  六 露国大使との儀礼問題その他
  七 日露戦争の余波
下巻
十二 文部大臣時代
  一 組閣当時に関する所感
  二 就任当時の所感
  三 美術展覧会のこと
  四 外国語のこと
十三 枢密顧問官時代
十四 農商務大臣時代
十五 明治天皇の崩御
十六 外務大臣時代
  一 山本内閣成立の事情について
  二 日英同盟について
  三 支那における不祥事件
  四 加州の土地問題について
  五 シーメンス事件 ― 内閣総辞職
  六 日本の外交の黎明期について
  七 外交団と国際聯合について
十七 第一次世界大戦
  一 二十一ヵ条の条約の締結について 
  二 臨時外交調査委員会の設置、及び出兵問題について
  三 第一次世界大戦の終結
十八 巴里講和会議について
 後記 / 年譜 大久保利謙 / 人名索引


マーク・オーレル スタイン著 松田 寿男訳 (Mark Aurel Stein・まつだひさお)
「コータンの廃墟」
(こーたんのはいきょ)
中公文庫BIBLIO


*カバーデザイン・EOS Co.,Ltd
 Aet Direction:吉田悟美一 Design:山影麻奈
(画像はクリックで拡大します)

*220頁 / 発行 2002年

*カバー文
中央アジア探検の巨人スタインによる第一回遠征の旅行記から最も興味に富む部分を訳出。天山南路コータン付近の砂漠に埋もれた遺跡を発掘調査し、古代文書や仏像、陶器、貨幣など多くの貴重な遺物を発見する。

*目次
砂漠にいどむための準備
古代コータンのみやこあと
ダンダーン・ウィリークの発墟をめざして
仏教寺院の発掘
最初の古文書発見
紀年ある文書の発見
砂漠を通過しケリヤまで
ニヤの町とイマーム・ジャーファル・サーディクの聖廟
最初のカロシュティ木簡の出土
古代住宅の発掘
古代の塵芥の山からの初発見
木管と皮革文書の意味するもの
 解説 金子民雄


正宗 白鳥 (まさむねはくちょう)
「今年の秋」 (ことしのあき)


(画像はクリックで拡大します)

*215頁 / 発行 1980年

*カバー文
永遠の青年・白鳥の円熟玲瓏の作品 ―― 「今年の春」以下、肉親の死を子としてまた兄として凝視した三部作ほか「生残りの記」「人生孤独」「世紀への遺書」など、枯淡の筆にのせた随筆文学の妙味を満喫させる二十三篇。

*目次
今年の春 / 今年の初夏 / 今年の秋 / 私の顔 / 軽井沢と私 / 生残りの記
日露戦争時分の文壇 / 今の文壇は才女時代か / 小山内薫の遺したもの / 文学的自尊と自卑 / 舞台で見た自分
花より団子 / 文明地獄 / すべて物憂し / ペンクラブと芸術院 / 近頃長篇小説論 / 迫られたる感想 / 文学賞の銓衡 / 黄白相違弁 / 人生孤独 / 世紀への遺書
一つの秘密 / 文学生活


本書は、昭和三十四年五月、中央公論社刊行の『今年の秋』に、
 「一つの秘密」(「中央公論」昭和三十五年十一月)
 「文学生活の六十年」(「同」昭和三十七年十ニ月)
の二篇を加えたものである。


増田 義郎 (ますだよしお)
「太陽と月の神殿 古代アメリカ文明の発見」 (たいようとつきのしんでん)


(画像はクリックで拡大します)

*440頁 / 発行 1990年

*カバー文
16世紀のスペイン人征服者の侵入による社会変動のなかでも生きつづけた新大陸の原住民文化。メキシコからペルーにかけて、神殿を核に、文明形成をはたしたアステカ、マヤ、インカなどの巨大文明の謎を解明し、滅亡した民族の悲劇を語りつつ、考古学における発見の魅力とその歴史的真実に迫る。

*目次
1 プロローグ
 政治的に生きる / アダムの形成 / 言語年代学は語る / マンモスを追って / 1粒のトウモロコシから / はじめに神殿ありき
2 発見された都市文明
 神殿と文明 / 聖都テオティワカン / マヤ地域への侵入 / メキシコのヒクソス / 古典マヤ文化の終焉 / ククルカン王とはだれか / 新しい征服説 / アマディスの都
3 マヤ文字の解読
 最古の文字 / 古典マヤ文化の日付 / マヤ文字とはなにか / 「黒い石」の解読 / マヤ記念碑の性格
4 アンデス古代帝国の没落
 発見 / 征服 / マン コの反乱 / 征服者の死闘 / 秘境の新インカ帝国 / 350年ののちに / マチュ・ビチュの発見 / クシの都
5 インカ帝国は実在したか
 ヨーロッパ人のインカ観 / 神権的社会主義帝国 / インカ帝国は存在しなかった? / 考古学上の証拠 / 史料の新しい解釈 / 3つの水平面 / 遺跡と文書の発掘


町田 三郎訳注 (まちださぶろう)
「孫子」 (そんし)


(画像はクリックで拡大します)

*119頁 / 発行 1974年
*カバー画・矛と盾を持つ兵士と弓を持つ男。(漢 武梁 画像石)

*カバー文
孫子の思想の特色は、徹底した現実主義、合理主義につらぬかれていることである。『孫子』が兵書の域をこえて読みつがれてきた理由もそこにあり、現代のわれわれの社会にひき移してみても、適切な示唆を投げかけずにはおかない普遍性を備えている。

*目次
第一 計篇 / 第二 作戦篇 / 第三 謀攻篇 / 第四 形篇 / 第五 勢篇 / 第六 虚実篇 / 第七 軍争篇 / 第八 九変篇 / 第九 行軍篇 / 第十 地形篇 / 第十一 九地篇 / 第十二 火攻篇 / 第十三 用間篇 / 解説 金谷治


松岡 正剛 (まつおかせいごう)
「遊学T」
(ゆうがく)


(画像はクリックで拡大します)

*372頁
*発行 2003年
*カバーデザイン・松田行正

*カバー文
ピタゴラスからマンディアルグまで、古今東西より選ばれた巨人たち一四二人の消息を、著者自らの体験をまじえ融通無碍に綴った空前の人物譜。六〇〜七〇年代のカルチャーシーンに多大な影響を与えた伝説の総合誌『遊』より生まれた幻の大著。T巻にはピタゴラスからエジソンまでを収録。


松崎 天民 (まつざきてんみん)
「銀座」 (ぎんざ)


*カバー・井上安治「銀座夜景」
(画像はクリックで拡大します)

*351頁 / 発行 1992年

*カバー文
一九二〇年代、モダン都市銀座に醸し出されていた魅力。銀ぶら人、流し芸人、カフェーの女給たちの人生の断面を温かく叙情的に綴りながら、自ら銀ぶらする著者が、銀座の惹きつけてやまない陶酔的惑溺性の謎を記者の眼で探る。懐かしい銀座通りの店舗案内「銀ぶらガイド」併載。

*目次
 巻頭小言
銀座
 一 洋服の対話 (カフェー銀ブラ) / 二 金座と銀座 (三百年の昔から) / 三 銀座の人々 (山東京伝の以後) / 四 煉瓦地古調 (江戸から東京へ) / 五 新橋花街誌 (田舎者の勢力圏) / 六 銀座の持味 (銀ブラ懇話会で) / 七 銀ブラ情調 (銀座の魅力は何) / 八 流れる人波 (東西両側の店々) / 九 北銀座の店 (東西で百十四軒) / 一〇 賑わう南銀座 (百三十九軒の店) / 一一 対照的興味 (銀座の有つ魅力) / 一二 夜店の繁昌 (路店二百八十一) / 一三 歓楽の対象 (界隈の特殊営業) / 一四 銀座覚え帳 (大正十年の銀座) / 一五 震災前二年 (銀座覚え帳から) / 一六 破壊と復興 (大正後期新銀座) / 一七 近代的色調 (銀座に見る男女) / 一八 東京の心臓 (電車の中央集注) / 一九 歓楽の夜色 (銀座から終電車) / 二〇 プランタン (第一期女給時代) / 二一 頬杖ついて (カフェーの今昔) / 二二 姿見の前に (カフェー女の話) / 二三 世帯の匂い (ライオンの女達) / 二四 扇情的空気 (タイガーの女給) / 二五 若き日の歌 (アルプス女歌人) / 二六 酒食大銀座 (ロシヤのニーナ) / 二七 露西亜の女 (銀座に異国の花) / 二八 秘密の扉を (女給と私娼問題) / 二九 居酒屋気分 (加六の思い出よ) / 三〇 流芸人夫妻 (末広の下町気分) / 三一 文芸縄暖簾 (男自慢の若主人) / 三二 酒色流転相 (君万歳の旅心地) / 三三 ビール人種 (銀座ビヤホール) / 三四 銀座の牛鍋 (松喜に見る風味) / 三五 享楽者の群 (土曜から日曜へ) / 三六 未来派の絵 (近代的化物行列) / 三七 騒音の中に (この哀趣と哀音) / 三八 百貨店の窓 (先ず万引の話を) / 三九 一日三万人 (大百貨店の魅力) / 四〇 松屋の半日 (興味ある分類法) / 四一 銀座一丁目 (佐々木の店にて) / 四二 銀座巡礼行 (北から南へ歩く) / 四三 尾張町界隈 (今を昔に懐しむ) / 四四 南銀座の色 (日本カフェー史) / 四五 異色竹川町 (大衆的の魅力) / 四六 明暗の交錯 (この流れを見よ) / 四七 裏銀座夜色 (オアシスの姉妹) / 四八 めぐりあい (人の世の起伏よ) / 四九 病める銀座 (都会病者の錯覚) / 五〇 罪の囁きに (大銀座と環境と) / 五一 浪花節の夕 (紅葉デーの初夜) / 五二 銀座女人伝 (その一は妖婦型) / 五三 月岡小夜子 (銀座女人伝の一) / 五四 悪夢の一夜 (月岡小夜子の家) / 五五 疑問の女怪 (失える百円紙幣) / 五六 新橋演舞場 (舞台美と建築美) / 五七 隅田川の夕 (銀座で逢った女) / 五八 四年目の女 (お妾になる前に) / 五九 男から男へ (銀座女人伝の二) / 六〇 姿見の前に (思い上る女の群) / 六一 菊水のすき (支那の友に逢う) / 六二 極彩色の絵 (銀座小路の夜景) / 六三 昔の銀座色 (明治初期の珍談) / 六四 旧い銀座人 (昔の銀ブラ人種) / 六五 シネマ銀座 (界隈の若い妓達) / 六六 第三者の心 (雨の夜のキリン) / 六七 通り魔の声 (深夜十二時前後) / 六八 金ぷら白雪 (男自慢と東朝座) / 六九 東朝座夜興 (五九郎のダイヤ) / 七〇 新聞社の町 (銀座界隈の盛観) / 七一 文化的先駆 (銀座と出版事業) / 七二 文化発祥地 (政治文学新聞に) / 七三 河内家の雨 (梅菊の死を聞く) / 七四 美作路の女 (書生節のリズム) / 七五 銀座茶話会 (新銀座を中心に)

銀座の女
 邂逅の夕 / 女人哀史 / 第二の性 / 病める町 / 流転一如 / 頽廃気分 / 中心興味 / 誘惑魅力 / 移る世態 / 漂泊の心

銀ぶらガイド

 解説 海野弘


マッシモ・グリッランディ 米川 良夫訳 (よねかわりょうふ)
「怪僧ラスプーチン」
 
(かいそうらすぷーちん)


(画像はクリックで拡大します)

*458頁
*発行 1989年

*カバー文
シベリヤ出身の修道僧ラスプーチンは、ロマノフ朝最後の皇帝ニコライ2世の皇太子アリョーシャの難病を不思議な祈祷療法で癒して、絶大な信頼を得た。とくに皇后の寵は常軌を逸しており、宮廷内で権力をほしいままにしたラスプーチンは、妖しい魅力で貴婦人たちを淫楽に誘い、高官の任命権をも掌中にした。貴族や軍人に諸悪の根源と見なされ暗殺されるが、普通人なら一口で死ぬほどの毒を飲まされても2時間余りも平然としており、ピストルで心臓を撃ち抜かれてもまた息をふき返すという、怪物のような男の生涯を克明に描く。


松田 毅一 (まつだきいち)
「黄金のゴア盛衰記欧亜の接点を訪ねて」 (おうごんのごあせいすいき)


*カバー・川上澄生
(画像はクリックで拡大します)

*325頁 / 発行 昭和52年

*カバー文
かつて南蛮人らが東方進出への拠点としたゴア、マカオ、マニラ、長崎の史跡をつぶさに踏査して、栄光と悲惨に彩られた港市のドラマを目のあたりに再構築する。

*目次
 まえがき
黄金のゴア盛衰記
 戦跡に立って / ゴアの名称 / アルブケルケの占領 / 栄光と悪徳 / マンドビ河岸 / 競売通り / 中心部の主要建築 / キリスト教の伝道 / 総督と兵士 / 婦人と市場 / ボン・ジェズ教会 / 廃墟の聖パウロ学院 / 夢と現実

歴史の博物館 マカオ
 東洋のモンテカルロ / 地誌と名称 / ポルトガル人の定着 / マカオと日本 / 市民とカピタン / 巨大な遺跡 / 教会・学院の繁栄 / 中国伝道の端緒 / 布教の根拠地 / 運命の鍵 ― 日本貿易 / 聖パウロ学院の変遷 / 宿命の植民都市 / 澳門・独り歩きの記

悲劇の舞台 マニラ城
 イントラムーロス / フィリピンの征服 / マニラへの進撃 / 征服者と被征服者 / フィリピン原住民 / 中国人とスペイン人 / マニラの中国人 / 日本人とスペイン人 / 独立への道 / マニラを訪ねて

長崎 欧亜の接点
 長崎私観 / 「南蛮」について / 大村純忠と横瀬浦 / 長崎の起源と開港 / 教会領の出現 / 長崎譲渡状 / 関白秀吉による没収 / 南蛮文化の興廃 / 殉教と背教 / オランダ商館 / 回想

引用文献一覧
解説 三浦哲郎


松田 毅一 (まつだきいち)
「南蛮巡礼」
 (なんばんじゅんれい)


(画像はクリックで拡大します)

*262頁 / 発行 昭和56年
*カバー写真・原城址出土の「黄金の十字架」(南蛮文化館所蔵)

*カバー文
キリシタン時代の遺跡を九州に訪ね、あるいは南蛮人宣教師のふるさと南欧各地を巡り、往時の受難と苦闘を偲ぶ。失われゆく史跡・史料を愛惜してやまぬキリシタン史家の史的情緒あふれる紀行。

*目次
 まえがき
南蛮巡礼
 豊後の旅 / 長崎の旅 / 天草の旅 / 大隅・薩摩の旅
南蛮史話
 屏風と鎧 / バテレン・フロイスの足跡 / ハビエル城紀行 / マラッカの史蹟を訪ねて / 回想のマカオ / 史実のフェレイラ
南蛮夜話
 ルイス・フロイスの日本報告書 / 天正遣欧少年使節
 あとがき


松長 有慶 (まつながゆうけい)
「密教 ― インドから日本への伝承」 (みっきょう)


*カバー画・金森比呂尾
(画像はクリックで拡大します)

*278頁 / 発行 1989年

*カバー文
インドで壮大な哲学と宇宙観をつくりあげた密教は、シルクロードや仏教南伝の道を通って中国へ渡る。そして、弘法大師・空海により、日本にもたらされ、日本人の精神の地下水になった。密教学会の最高権威が、その密教の宇宙を語る

*目次
T 密教の世界
 一 秘密の教え / 二 密教の展開
U 密教の相承
 一 インド密教の相承 / 二 真言密教の相承 / 三 天台密教の相承
V 真理の具現者
 一 大昆盧遮那如来 / 二 金剛薩?
W 神話的な伝承をもつ開祖
 一 龍猛菩薩 / 二 龍智菩薩
X 金剛頂経の相承
 一 金剛智三蔵 / 二 不空三蔵
Y 大日経の相承
 一 禅無畏三蔵 / 二 一行禅師
Z 両部の相承
 一 恵果和尚 / 二 真言と天台

主要参考文献 / 密教関係年表 / 文庫版のあとがき / 索引


松長 有慶 (まつながゆうけい)
「理趣経」 (りしゅきょう)


*カバー・般若菩薩画像(補陀洛院蔵)
(画像はクリックで拡大します)

*300頁 / 発行 1992年

*カバー文
インド密教から日本の真言宗まで、密教の範囲は実に広く奥深い。真言宗のなかで長い間秘伝にされてきた理趣経 ― セックスの本質はバイタリティ、その生命力を積極的に生かし、人類に奉仕する立場にふり向ける。無我の境地に立つとき、欲望は浄化され清浄となる、と説き、現代を生きる我々に、何を目ざして生きるべきかを平易明快に示す密教入門の書。

*目次
第一章 理趣経とはどんなお経か
第二章 理趣経ができあがるまで
第三章 理趣経の構成
第四章 序分の内容
第五章 理趣経の全体像
第六章 八如来の教え
第七章 理趣経の総まとめ
 あとがき
 解説 平川彰


松原 一枝 (まつばらかずえ)
「大連ダンスホールの夜」 (だいれんだんすほーるのよる)


*カバー写真・大連大広場
 (共同通信社提供)

(画像はクリックで拡大します)

*215頁 / 発行 1998年

*カバー文
アカシヤの街路樹が美しい日本統治下の大連。著者自身、少女時代を過ごしたこの街には、無数の陰謀が渦まいていた。川島芳子男装の理由、阿片王といわれた男の素顔、ダンスホールをめぐる不倫殺人など、謎の真相を描き出す大連秘史。

*目次
大連阿片事件
阿片王・石本竭セ郎
男装の麗人・川島芳子をめぐるある誤解
張学良の抗日決意を知った男
もう一つの関東軍謀略事件
ダンスホールをめぐる医博児玉誠邸殺人事件の怪
碧山荘・苦力(クーリー)たちの夢のあと
大連のパトロンとテロリスト
敗戦前夜の大連
あとがき
文庫本の刊行に際して


松本 一男 (まつもとかずお)
「張学良 忘れられた貴公子」 (ちょうがくりょう・わすれられたきこうし)


(画像はクリックで拡大します)

*291頁
*発行 1991年

*カバー文
中国人民の人望を一身に集め、ナショナリズムに燃える張学良は、抗日のための国共合作を計り蒋介石を監禁、所謂西安事変の立役者となる。だが、事変の終結と共に歴史の表舞台から忽然と姿を消す。その波を再び私たちが目にするのは、一九九〇年の九〇歳の誕生パーティ、実に五四年ぶりのことである。
生い立ちから父張作霖の死。そして近代中国の命運を変えた西安事変まで、周恩来が「ロマンチックな貴公子」と称した張学良の数奇な半生を描く好読物。


松本 健一 (まつもとけんいち)
「評伝 北一輝 T 若き北一輝」
(ひょうでんきたいっき)


*カバーデザイン・細野綾子
(画像はクリックで拡大します)

*389頁 / 発行 2014年

*カバー文
日本近代史上最も危険な革命思想家、北一輝。 その特異な人間像と強靭な精神を描き切る全五巻。 近代日本の思想のドラマに向き合ってきた著者による圧倒的な達成。 本巻では、北の生い立ち、思想形成が佐渡の生々しい歴史と風土、濃密な人間関係の中に立ち現れる。 天皇制国家と社会主義を連結する浪漫的革命家はいかに生まれたか。 毎日出版文化賞受賞。

*目次
 まえがき ── 五巻本の構想にふれつつ
第一章 記憶の底
第二章 理想と現実の亀裂
第三章 現実の拒絶および世界創造の予兆
第四章 吾人の帝国とその社会主義
第五章 浪漫的革命への旅立ち
北一輝と佐渡ヶ島 ── 補足的に
 初版あとがき / 増補版あとがき


松本 健一 (まつもとけんいち)
「山本覚馬 付・西周『百一新論』」
(やまもとかくま)


(画像はクリックで拡大します)

*286頁 / 発行 2013年
*カバーデザイン・細野綾子
 カバー写真・〈山本覚馬〉三沢市先人記念館蔵

*カバー文
会津藩士山本覚馬は、佐久間象山に学んだ幕末・維新期の最重要人物である。藩主松平容保について上京、新撰組を配下に置き、禁門の変では砲術家として活躍した。また、新島襄を支援し、日本初のキリスト教学校同志社を設立に導いた。覚馬の生涯と事績を多彩な人間関係の中に描き出した先駆的評伝。覚馬が刊行に尽力した西周著『百一新論』を付す。

*目次
第一部 目あかし伝 ― 盲人・山本覚馬のこと
 序章 会津武士のゆくえ
 第一章 幕末の洋軍学者
 第二章 盲いたるひと
 第三章 泰西の風
 終章 京都東山の山麓で
第二部 山本覚馬とその周辺
 1 伝統と近代の人間的相剋 ―『黒い眼と茶色の目』にふれて
 2 近代日本をつくった会津の人々
付録 西周『百一新論』(山本覚馬序文)
あとがきにかえて 山本覚馬と新島襄 ―― 日本の近代化について



松本 清張 (まつもとせいちょう)
「五十四万石の嘘」 (ごじゅうよんまんごくのうそ)


(画像はクリックで拡大します)

*222頁
*発行 1980年

*カバー文
武士道という不条理な封建制度の掟から逸脱した者たちの運命をたどり、平穏な人生に用意された無気味な陥穽に焦点をあてた、清張文学初期の傑作集、全八篇。

*目次(収録作品)
二すじの道 / 五十四万石の嘘 / 疵(きず) / 白梅の香 / 蓆(むしろ) / 酒井の刃傷 / 武士くずれ / くるま宿


松本 清張 (まつもとせいちょう)
「乱雲」
 (らんうん)


(画像はクリックで拡大します)

*318頁
*発行 1984年
*カバー装画・村上豊

*目録文
甲信の野を彩る千世と弥平太。興亡盛衰ただならぬ世に抱く野望と愛を描く戦国ロマンに疾風乱陣の武田一代記。「信玄軍記」を併録する。

*解説頁・尾崎秀樹


松山 巖 (まつやまいわお)
「群衆 機械のなかの難民」
(ぐんしゅう)


*カバー写真・『東京騒擾画報』
 (明治38年9月18日号)より
 カバーデザイン・中央公論新社デザイン室
(画像はクリックで拡大します)

*515頁 / 発行 2009年

*カバー文
二十世紀は「群衆」の時代だった。日露戦争以後、漱石、啄木、大杉栄、夢野久作らが見た新しい群衆。その本質と変容を色彩豊かに描き出し、戦後大衆社会論を超克する視座を提示した画期的論考。読売文学賞(評論・伝記部門)受賞作。

*目次
第一章 二十世紀の群衆の貌
第二章 「坊っちゃん」たちの怒り
 1 日比谷焼き打ち事件
 2 根なし草の群れ ── 電車賃値上げ反対運動のさ中に
第三章 性急な人々
 1 大戦場・東京の失敗者たち
 2 鶴嘴を打つ群れ ── 凱旋門としての東京駅
第四章 機械人の群れ
 1 民衆の発見 ── 米騒動
 2 米騒動前夜 ── 成り金時代の諸相
 3 米騒動、その後 ── 一人と千三百人
第五章 狂える歯車
 1 新しい大都会の貌 ── 関東大震災後の東京人
 2 精神病棟のなかの群れ ── 『ドグラ・マグラ』の世界
 3 自己喪失者の群れ
 4 家の喪失 ── 子殺しの時代
第六章 消耗品の群れ
 1 総動員体制
 2 戦争という人体実験
 3 奇蹟を待つ群れ ── 戦時統制の戦後への流れ
第七章 磨滅する群れ
 1 群衆社会の成立 ── 高度成長へ向けて
 2 機械のなかの難民
第八章 ノリのような建築のなかで

 あとがき / 文庫版あとがき / 参考文献 / 解説 猪木武徳 / 人名索引


マリオ・バルガス=リョサ著 西村 英一郎訳 (Mario Vargas Llosa・にしむらえいいちろう)
「ドン・リゴベルトの手帖」
(LOS CUADERNOS DE DON RIGOBERTO)


(画像はクリックで拡大します)

*425頁
*発行 2012年
*カバーデザイン・鈴木正道 Suzuki Design
 カバー画・クリムト『ダナエ』 (C)Bridgeman/PPS通信社


*カバー文
美少年フォンチートの無邪気な奸計のため別居を余儀なくされたリゴベルト夫妻。夫は夜ごと幻想と追憶のはざまで美しい妻を追い求め、妻は少年によってオーストリア絵画の眩惑世界へ誘われる。『継母礼讃』に続き、さらに巧緻に、さらに奔放に描かれる多彩な物語。そしてすべては意外な大団円へ。



マーリヤ大公女著 平岡 緑訳 (まーりやだいこうじょ・ひらおかみどり)
「最後のロシア大公女 革命下のロマノフ王家」 (さいごのろしあだいこうじょ)
中公文庫 BIBLIO20世紀


(画像はクリックで拡大します)

*437頁
*発行 2002年
*カバーデザイン・BOS.Co.,Ltd. / Art Direction:吉田悟美一 / Design:山影麻奈

*カバー文
アレクサンドル三世の姪としてロシア革命という今世紀最大の歴史的事件に遭遇し、危うく難をのがれてアメリカに亡命した波瀾の生涯を綴る。革命とロマノフ家の崩壊を、王家の側から描いた貴重な革命秘話。