絶版文庫書誌集成

ちくま文庫 【あ】

青山 二郎 (あおやまじろう)
「青山二郎全文集(上下)」
(あおやまじろうぜんぶんしゅう)
ちくま学芸文庫


*上巻カバーデザイン・間村俊一
 写真・林朋彦
 青山二郎画「愛陶品目録」より井戸茶碗
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*上441頁・下480頁 / 発行 2003年

*カバー文

青山二郎は、小林秀雄、白洲正子の骨董の師匠としてだけでなく、河上徹太郎、中村光夫、宇野千代といった周囲の人たちにも大きな影響を与えた。その青山の信仰とは、知識に依らず、眼を頭から切り離して、純粋に眼に映ったものだけを信じるという「眼の哲学」であった。やきものから学んだ眼力によって、骨董はもちろん、人間の真贋から社会批評まで、ズバリとその本質を言い当てる。青山の文章は、独特な比喩とともに難解なところもあるが、知識ばかりが横溢する現在、もっとも辛辣な文明批評となっている。上巻は、「梅原龍三郎」「北大路魯山人」「小林秀雄と三十年」「贋物と真物について」など、美術と人物に関する文章43篇を収録。

青山二郎は、小林秀雄、白洲正子の骨董の師匠としてだけでなく、河上徹太郎、中村光夫、宇野千代といった周囲の人たちにも大きな影響を与えた。その青山の信仰とは、知識に依らず、眼を頭から切り離して、純粋に眼に映ったものだけを信じるという「眼の哲学」であった。やきものから学んだ眼力によって、骨董はもちろん、人間の真贋から社会批評まで、ズバリとその本質を言い当てる。青山の文章は、独特な比喩とともに難解なところもあるが、知識ばかりが横溢する現在、もっとも辛辣な文明批評となっている。下巻は、「眼の引越」や「陶経」をはじめ、文芸作品や初期文集53篇と貴重な未刊行手記を含む9篇を補充。



青山 拓央 (あおやまたくお)
「新版 タイムトラベルの哲学」
(たいむとらべるのてつがく)


*カバーデザイン スタジオ・ギブ
 川島進
 (C)orion/amanaimages
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*261頁 / 発行 2011年

*カバー文
タイムトラベルといえば、その実現可能性や、矛盾(パラドックス)の有無ばかりが話題にのぼる。しかし、そもそもタイムトラベルとは何かを、私たちは理解しているだろうか。過去や未来に行くとは、正確にはどういうことだろうか。タイムトラベルの思考実験を通じて「流れる時間」という常識を疑う、独自の視点からの時間論入門。文庫化にあたって加筆増補。

*目次
 文庫版まえがき
 序章 タイムトラベルとは何か
第T部 タイムトラベルの理解可能性
 一章 私の時間・前後の時間
 二章 向きと流れに関する対話
 三章 なぜ今だけが存在するのか
 四章 タイムトラベルと二つの今
第U部 時間モデルとタイムトラベル
 五章 過去の自分を殺せるか
 六章 未来の自分とはだれか
 七章 空間化とSFの破たん
第V部 だれが時間を語るのか
 八章 アキレスと亀の遺産
 九章 タイムトラベルと同一性
 十章 それでも時は流れる
 終章 失われた時を求めて
文庫版補章 時間対称的タイムトラベル
文庫版あとがき
解説 時間旅行と人物旅行 永井均


赤瀬川 原平 (あかせがわげんぺい)
「じろじろ日記」
(じろじろにっき)


*カバー装画・赤瀬川原平
 カバーデザイン・南伸坊
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*254頁 / 発行 1996年

*カバー文
路上観察のじろじろまなこでいろいろな「物件」をながめまわすと、世の中はなんと奇妙なことがらに満ちていることか。カメラ、望遠鏡、銭湯、動物たち、外国旅行……。見なれた物や事の意外な真相に、意表をつかれる面白さ。

*目次
T
頭上の宝石 / 南海の二宮金次郎 / 韓国の緑の事情 / 韓国で見た猫と魚 / α-7700iでのぞく植物ワイパー / カラスが黒くなる原理 / 日本風景界に突入せるインコ / 函館の建物のペンキの年輪 / わが脳内の記憶観察 / パーマネントに火がついて…… / 買えるものなら買ってみろ! / 可愛いネコあげます
U
ヒドロナリューム合金に触る / クエスターを手に持つ感触 / 国道四一一号線 4WDの放流 / 結構なお点前 / 沖縄の路上に出合う石敢當(せきかんとう) / オリンパスのアルミニュームカメラ / 宝石売場のカメラ男 / かなり毛の生えた「パオ」 / 英語の質問の飛んだ記者会見 / 重要人物の集まった日 / 命日にクランクイン / 純粋日本酒協会でのおいしい出来事
V
国宝を訪ねて / 五千トンの鉄の嬉し恥ずかし初体験 / 快感と哀愁の西伊豆写生旅行 / 東京港から横浜港への船旅 / ブリキ時代のモーションディスプレイ / 十七歳のカンフーテニス / 東京最高齢銭湯の最期 / グィーンと走ってビューン / 打ち上げ花火を根元から見る / 色彩の不思議体験 / 川一族のシンポジューム / カタン、カタンのクギ抜き地蔵
W
街を転がる目のつけどころ / 猫の行き交う尾道 / 恐竜のサファリパーク / 小川には底力が流れている / 可愛くて食べちゃいたい / 青年よ大志を抱け / ベイブリッジを渡る / 屋内の戸外空間の都内の外国 / 日本のお酒です / お手本つきカメラの登場 / 物件某と笑顔の持続 / 狩猟のための狩猟がはじまる / 春うらら、幻のじろじろ気分 / あとがき
 解説 赤瀬川さんを解く鍵 林丈二
 挿画 赤瀬川原平


秋山 忠彌 (あきやまちゅうや)
「大江戸浮世事情」 (おおえどうきよじじょう)


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*317頁 / 発行 2004年
*カバーデザイン・倉地亜紀子 カバーイラスト・与謝野蕪村筆 「又平花見図」より浮世又平

*カバー文
江戸の世の庶民も、今とかわらぬさまざまな問題を抱え、悩み、また楽しみを味わいつつ暮らしていた。性愛と結婚の問題。出世に関わる処世術の問題。避けられない病と老い、趣味風俗…庶民の生活から幕府の裏事情まで、表舞台には出てこない、小さな歴史を集めた薀蓄集。読めば江戸の庶民の暮らしのありさまがいきいきと浮かんでくる。

*目次
まえがき
性愛と結婚
出世術と処世術
幕政と刑罰
文人趣味に流行あり
庶民風俗あれこれ
避けがたき病と老い
あとがき
解説 どうでもよいこと 出久根達郎


天野 祐吉 (あまのゆうきち)
「広告の本」 (こうこくのほん)


*カバー装画・高砂太夫
(「繪葉書世界」第4集、明40,8)
 カバーデザイン・天野祐吉
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*253頁 / 発行 1986年

*カバー文
よくも悪くも大衆の文化になってしまった〈広告〉、ヘタをすると文化的暴力になりかねない〈広告〉、同時代の人びとの想像力を切り拓く〈広告〉……こうした〈広告〉のもつ功罪と可能性を、「広告批評」編集長が、世間囃のスタイルで軽快に批評した、ふだん着の広告の本。

*目次
はじめに、ひとこと。
〈しゃべる〉
現代広告噺
〈聞く―1〉
広告表現とことば
 詩を書くこととコピーを書くこと ― 谷川俊太郎
 映像至上主義がテレビをこわす ― 和田勉
 語ることを忘れた時代 ― 林光
〈書く―1〉
もうひとつの広告
 政府広報入門
 意見広告案内
〈聞く―2〉
広告を見る目・作る手
 ブラック・アングルから ― 山藤章二
 もうひとつの現実に形を与える ― 横尾忠則
 誰でもコピーライターになれるわけではない ― 糸井重里
〈書く―2〉
履歴書ふうの広告論
おわりに、ひとこと。
 解説 “タダの人”の広告哲学 島森路子


天野 祐吉 (あまのゆうきち)
「もっと面白い廣告」 (もっとおもしろいこうこく)


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*276頁 / 発行 1989年
*カバー装画・新版引札見本帖(明治37年版)より

*カバー文
人間は広告する動物である。元始より人間は、PRをおこたることがなかった。だから、広告はもっとも人間らしい営みなのだ! と著者はいう。最近の広告はなかなか面白くなってきた。しかし、ムカシの広告はもっと面白かった。しんみり気持にうったえる広告、抱腹絶倒させて心をつかむ広告etc.……“何しろ面白い”広告170点を紹介しながら、社会・世相を縦横に描出するユニークな本。

*目次
 はじめに
第一部 もっと面白い広告の話
 0章 人間は広告する動物である / 1章 私についておいで / 2章 求む南極探検隊員 / 3章 欲しがりません、勝つまでは / 4章 結婚とは何ぞや / 5章 医者が飲んでるカゼ薬 / 6章 イチジク浣腸と書いてないのは イチジク浣腸ではありません / 7章 一粒三百メートル / 8章 三倍泣かせます / 9章 愛人宅急便 / 10章 勿驚(驚くなかれ) / 11章 エース、歯磨はスモカ! / 12章 外○○骨○の広○○告
第二部 もっと面白い広告集
 人には言えぬ悩みあり / 良薬は耳に甘し / 珍案特許 / あなたは美しくなれる / おんな専科 / キミのは細い / 新しきことはよきことなり / 明かるい暮しの必需品 / よく学びよく遊べ
で、面白いってなんだろう
 おわりに


天野 礼子 (あまのれいこ)
「萬サと長良川 『最後の川』に生きた男」
(まんさとながらがわ)


*カバーデザイン・田淵祐一
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*205頁 / 発行 1994年

*カバー文
長良川は、本流にダムを持たぬ本州唯一の大河である。この川のほとり岐阜県郡上八幡で70年もアマゴを釣り、暮しを立てていた男がいた。古田萬吉 ── 、通称萬サ。彼の人生そのものである魚影濃き清流は、いま河口堰の建設によって大きな危機をむかえている。長良川に生きた一人の漁師の人生をたどりつつ、自然とは何か、何が生命にとって大切か、をあらためて問う。

*目次
序章 古田萬吉、人呼んで萬サ
第1章 川に育つ
第2章 職漁師となる
第3章 山本素石とサツキマス
第4章 永い夏
終章 「最後の川」に生きた男
文庫版のためのあとがき
解説 なっとく出来ない! 近藤正臣


嵐山 光三郎 (あらしやまこうざぶろう)
「おとこくらべ」


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*298頁 / 発行 2004年
*カバー装画・沢野ひとし / カバーデザイン・南伸坊

*カバー文
樋口一葉が極貧の中、家を訪れる男たちを値踏みして書きとめていた「おとこくらべ」一覧は、没後出された全集には入らなかった。「怪談」を生んだ小泉八雲は、「紫の一本、見ました」と言っては妻の躯を求めた。夏目漱石、有島武郎、芥川龍之介、北原白秋…ユーモアと博識で綴る明治の文豪の性と死。男女の深遠がのぞく一冊。表題作「おとこくらべ」の他、5篇を収録。

*目次
おとこくらべ / 紫の一本 / つばめ / 葡萄 / 葬儀 / りんごさくさく / 文壇血風宴会録 あとがきにかえて / 解説 清水義範


嵐山 光三郎 (あらしやまこうざぶろう)
「昭和出版残侠伝」
(しょうわしゅっぱんざんきょうでん)


*カバーデザイン・南伸坊
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*248頁 / 発行 2010年

*カバー文
1981年、経営危機に陥った平凡社の希望退職に応じた著者。スッタモンダの挙句、七人の仲間で貧乏長屋編集室「青人社」を設立。ときはメディアの躍動する時代。雑誌創刊が相次ぎ、「軽薄短小」ブーム、ビニ本ブーム、写真週刊誌創刊、テレビではお笑いブームが起こる。それらの作り手が多数登場し、世相が著者の身近なところから描かれる。疾風怒涛、悪戦苦闘の嵐山版出版風雲録。

*目次
昭和五十六年、平凡社をやめ、「仁義礼編集屋兄弟」の八字を見た夜
貧乏長屋編集室「青人社」が雑誌の海原に漕ぎ出した
新雑誌「ドリブ」 ──創刊前夜の決戦
「なにかと判評の悪い雑誌です!」疾風怒涛悪戦苦闘の日々
あとがき / 解説 岡崎武志


荒俣 宏 (あらまたひろし)
「目玉と脳の大冒険 ― 博物学者たちの時代」
(めだまとのうのだいぼうけん)


*カバー装画・GEORGE BARBIER
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*372頁 / 発行 1992年

*カバー文
博物学黎明期、それは怪物や神々が跳梁跋扈する時代でもあった。ナチュラリストたちの使命は、単に地球の財産調べを行うために世界を歩き廻るだけではなく、人間の詩的想像力の源泉をさぐる旅でもあった。人びとは失明するまで目玉を酷使し、頭脳を絞り尽して、あらゆる謎に挑戦していった。本書は博物学の成立に与った偉大な想像力の持ち主たちのその壮大な偉業と愚行の物語である。

*目次
序 五歳の好奇心
T コレクターの冒険、コレクションの運命
 ビン詰め地獄
 博物学 ―― 事物の闇に投じた光
 水族館の視線
U 博物誌の正しい作り方
 発想をめぐって ―― 〈類推の鬼〉
 発想をめぐって(続) ―― セビリャの司教の書いた百科
 発想をめぐって(続々) ―― 道徳動物学
 文体をめぐって ―― 植物の閨房哲学
 文体をめぐって(続) ―― 植物歪像学
 図像をめぐって ―― 寓意扉絵の秘密
 分類をめぐって ―― 数と愛
V ナチュラリストの業績と意見
 シャルル・ボネ ―― 見えない博物学者
 博物学をきずいた人々
 博物学の熱中時代
W ヤマト舶来本草博物
 植物図鑑が育てた洋画
 植民地の恍惚 ―― 早すぎた渡来科学
 日本の大博物学時代
終 生命とは何ぞや? ―― PowerとForce

 あとがき ―― 晩年
 文庫版のためのあとがき
 解説 メタ博物学という博物学 養老孟司


安西 水丸 (あんざいみずまる)
「春はやて」
 (はるはやて)


*カバー・安西水丸
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*214頁 / 発行 1987年

*カバー文
静かな祈りのような風のなかで、麦笛が泣いている。草むすあぜ道には名のない草花が咲きみだれ……人気絵師の繊細で華麗な描線がえがき出す、少年と女たちの乾いたリリシズムの世界。単行本未収録の短篇まんが作品を収録したオリジナル版。収録作品「春はやて」「ひきしおの頃」「黄トンボ」「冬町」「キツネ狩り」「野火」「麦笛」他。

*目次
西風の吹く町
  *
ひきしおの頃
野火
春はやて
  *
まがり道
雪どけの頃
黄トンボ
終夏鉄道
停滞前線
冬町
キツネ狩り
  *
麦笛
花物語

 あとがき


安藤 鶴夫 (あんどうつるお)
「巷談 本牧亭」
 (こうだんほんもくてい)


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*366頁
*発行 1992年
*カバー装画・田代光

*カバー文
東京・上野の本牧亭は、落語や講談の中心地として、人々に親まれていた。そこにつどう、落語家、講談師そしてなじみの客たち。客席、舞台、そして楽屋うらが一体となっての、ちょっと哀愁をただよわせて人間模様。直木賞受賞作。

*解説頁・小沢信男


アントン・パーヴロヴィチ チェーホフ著・松下 裕訳 (まつしたゆたか)
「チェーホフ全集 全12巻」
(ちぇーほふぜんしゅう)


*第12巻カバー / 表画・金森宰司
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*発行 2009年

*チラシ文
 ◎特色
 *わが国初の文庫版全集
  小説、全戯曲、記録文学をジャンル別、年代順に収めた(初期の膨大なユーモア小説は精選して四冊に集めた)初めての文庫版チェーホフ全集。
 *いっそう充実した個人全集
  小社既刊の「チェーホフ全集」(一九八七−八八年刊、全十二巻)に、新たに四千五百枚の新訳を加えて(総計一万一千枚)再編集した決定版。
 *読みやすい訳文
  最新のソ連科学アカデミー版三十巻本全集をテキストにした、簡潔、正確、清新な個人全訳。

*全巻構成
1 遅れ咲きの花々 喜び / 2 狩場の悲劇 悪党 / 3 子どもたち 聖夜 / 4 幸福 くちづけ / 5 曠野 退屈な話 / 6 決闘 六号室 / 7 黒衣の僧 女の王国 / 8 かわいい女 谷間 / 9 父なし子 白鳥の歌 / 10 熊 結婚申しこみ / 11 三人姉妹 / 12 シベリアの旅 サハリン島

*チラシ画像(画像はクリックで拡大します)





安野 光雅 (あんのみつまさ)
「君は大丈夫か ― ZEROより愛をこめて」
(きみはだいじょうぶか)


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*366頁
*発行 2008年
*カバーデザイン・安野光雅 / カバー装画・勝尾正子

*カバー文
「世の中はいろんな立場、いろんな考え方が入り混じって、とても複雑にできてるんだ。その中を君は生きて行かねばならぬ、やっと君は山道にさしかかったんだ。その道のりを苦しいと思うか、楽しいとみるかも、自分の感じ方次第だ。」 ―― 悩み多き年頃を迎えた少年への44の手紙を通じて語られる若者への熱いメッセージ。