
*カバー画・正木ひろし
デザイン・池田拓
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*259頁 / 発行 1981年
*目録文
冤罪の救済に全人生を捧げた著者が、法医学鑑定の頂点にあった古畑鑑定を始めて告発する。
*カバー文
この殺人事件にわたくしが着手したのは、昭和三十年の夏であった。ちょうど拙著『裁判官』が“裁判批判”の書として、各方面に物議をかもしていたころである。
当時すでにこの事件は第一審の裁判がすみ、一高校生が犯人として無期懲役の判決をうけていた。しかし、第一審の弁護人はこの高校生の自供に不自然な点やアイマイな個所があると考え、黙々として本職の刑事も顔負けの地道な調査をつづけた。その結果、完全なアリバイを発見したのである。
何ゆえにアリバイの厳存する被告人が有罪とされなければならないのか。それは二名の法医学の権威である大学教授による鑑定があったからである。
事実は一つしかない。鑑定が正しければ、アリバイ証言は虚偽である。アリバイ証言が正しければ、鑑定書は虚偽となる。その中間は許されない。
わたくしはこの氷炭あいいれない重大な事実を前にして、いずれかに自分のなっとくのいく結論をえなければならない、強い知的興味と、弁護士としての正義感を燃やした。
わたくしは異常な情熱を傾けて真相の究明に没頭し、ついにその結論を得た。しかし、これを公判延で立証するためには、旧知の間柄である法医学者たちを相手とし、たがいにその良心と人格とをかけた苛烈なる論争をしなければならなかったのである。 正木ひろし
*目次
まえがき / 1 犯行現場 / 2 二つの新事実 / 3 逮捕された少年 / 4 三人の弁護人
/ 5 鑑定への疑問 / 6 アリバイ追求 / 7 物証をめぐる実験 / 8 これが人間業か
/ 9 凶器の謎 / 10 可能性という言葉 / 11 法廷での実演 / 12 意外な「結審」
/ 13 “地上”の現実と“紙上”の現実 / 14 犯行のストーリー / 15 真犯人はだれか
/ 解説 森長英三郎 / 法医学と人権 関原勇
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