絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【や】

矢島 渚男 (やじまなぎさお)
「白雄の秀句」
(しらおのしゅうく)
講談社学術文庫



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*264頁 / 発行 1991年
*カバーデザイン・志賀紀子

*カバー文
江戸中興期、加舎白雄(かやしらお)ほど蕉風復帰の精神にそって理論と実作を統一して展開した作家はなく、また彼ほど芭蕉の生き方を慕い、俳諧に孤独で真摯な生活を生き切った作家もなかった。古典への造詣の深さ、伝統の骨法にたつ格調の厳しさ、奔放な情動を統べる詩精神の高さにおいて、江戸後期、白雄に比肩する俳人を見ない。白雄は最も古典的であることによって、最も近代的なのである。(著者まえがきより)

*目次
「学術文庫版」まえがき / まえがき(原本) / 凡例 / 冬 / 春 / 夏 / 秋 / 白雄五百句 / 解説 井本農一


安岡 章太郎 (やすおかしょうたろう)
「私説聊斎志異」
 (しせつりょうさいしい)


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*241頁
*発行 昭和55年
*カバー装丁・田村義也

*カバー文
中国清朝初の幻想的怪奇譚「聊斎志異(りょうさいしい)」の作者蒲松齢は、官吏の登龍門科挙の本試験に挑戦すること数十回、落第しつづけたまま未練を残して世を去った。その生きざまに心ひかれた著者が、自身の劣等感に塗りこめられた青春の自画像を重ね合わせ、人間を支配している大きな力を探って鋭い文明批判に結晶させた名作。

*解説頁・鳥居邦朗


安岡 章太郎 (やすおかしょうたろう)
「走れトマホーク」 (はしれとまほーく)


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*222頁
*発行 昭和52年
*カバー装丁・田村義也

*カバー文
みずみずしい感性と強靭な知性の接点にきらめく人生への深いまなざし ― 「質屋の女房」以来十余年、安岡文学の豊饒な成果と芸術的円熟を示す傑作短編集。「瀑布」「走れトマホーク」「珠の行方」「木の上の生活」「野の声」「テーブル・スピーチ」「埋まる谷間」「聊斎志異」など8編を収録。 〈読売文学賞受賞〉

*解説頁・坂上弘


安岡 章太郎 (やすおかしょうたろう)
「僕の昭和史(全三巻)」
 (ぼくのしょうわし)

  
*カバーデザイン・田村義也 (画像はクリックで拡大します)

*T・259頁 / U・258頁 / V・266頁
*発行 1991年

*カバー文
T
大正天皇崩御を聞いた朝鮮京城の記憶に始まって、落第生、浪人生活、軍隊の戦中生活から敗戦まで。昭和とともに生きた作家の若き時代をきわめて私的なエピソードで綴りながら、激動期の日本と世界が鮮やかに浮かび上がる記念碑的作品。もて余す若さと襲いくる病魔、時代を超えて胸に迫る野間文芸賞作品。

U
昭和二十年八月十五日、僕は新宿駅にいた。父の復員、脊椎カリエス……混乱の戦後を死ぬこともできず、原稿用紙に向かいはじめ「第三の新人」と呼ばれ、芥川賞を受賞するころには時代も大きく変わりつつあった。作家の眼と確かなものを求め続けた文章が「あの時代・昭和」を問い直す。野間文芸賞受賞作。

V
昭和三十五年、アメリカ南部へ留学した「僕」は人種差別の実態を知り、敗戦国民として日本の戦後の意味を外から考える眼を得る。ソ連、チェコ、フランスを回り、経済成長、学園紛争と日本が初めて経験する変動をあくまで個人の実感に支えられた冷静な筆で描き昭和を把え直した記念碑的名作。全三巻完結。野間賞受賞。


安岡 章太郎 (やすおかしょうたろう)
「もぐらの言葉」 
(もぐらのことば)


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*368頁
*発行 昭和48年
*カバー装丁・田村義也

*カバー文
その柔軟な感性と、したたかな批評眼で文壇唯一の文明批評家と定評のある著者が身をひそめて人の世の動向を鋭敏に察知する“もぐら”的人間への憧憬と共感をこめて贈る軽妙洒脱な随想集―― 《私の鑑賞席》《わがまち東京》ほか、ルポルタージュ・文学論・人生断想など、多彩でユニークなエッセイ四十五編を収録。

安岡 章太郎 (やすおかしょうたろう)
「流離譚 上下」
(りゅうりたん)
講談社文芸文庫



*デザイン・菊地信義
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*上520頁 / 下560頁 / 発行 2000年

*カバー文

父親を主題に名作「海辺の光景」を書いた安岡章太郎が、土佐の安岡一族のルーツを遡って、幕末の藩士達に辿り着く。その一人安岡嘉助は文久二年、蕃の参政吉田東洋を刺殺、脱藩、天誅組に入って京に上るが、志半ばにして刑死する。(上巻)日記や書簡を手掛かりに、自分の実感を大切にしながら臨場感あふれるスリリングな語り口で、歴史のうねりに光を当てる長篇歴史小説。日本文学大賞受賞。全二冊。

安岡文助の次男嘉助は天誅組に入り京都で刑死するが(上巻)、一方長男覚之助は勤王党に関わって、入牢、出獄の後、討幕軍に従って戊辰戦争に参戦、会津で戦死する。戦いの最中に覚之助が郷里の親族に宛てた書簡を材に、幕末維新の波に流される藩士らの行く末を追って、暗澹たる父文助の心中を推し測りつつ物語る。土佐の安岡一族を遡る長篇歴史小説。全二冊完結。

*解説頁・小林秀雄(上巻)


保田 與重郎 (やすだよじゅうろう)
「日本の橋」
(にほんのはし)
講談社学術文庫


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*230頁 / 発行 1990年
*カバーデザイン・蟹江征治

*カバー文
日本の橋は、道のはてに、流れの上を静かに渡る。何かに勝とうとする人工の企てではなく、それは、自然と融け合い、彼岸に至るすなおな思いのあらわれであった。心と心を架け渡す相聞の歌に、時代のはざまで亡びていった人びとの物語に、日本人は、やがて朽ちゆく橋の哀しい調べを聞く。鮮烈な意識と文体で評壇を一撃した名著に、後年さらなる彫琢を施した保田與重郎の代表作。表題作以下四篇収録。

*目次
はしがき / 誰ケ袖屏風 / 日本の橋 / 河原操子 / 木曾冠者 / 解題 谷崎昭男



安原 喜弘著・編 (やすはらよしひろ)
「中原中也の手紙」
(なかはらちゅうやのてがみ)
講談社文芸文庫


*装幀・菊地信義
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*256頁 / 発行 2010年

*カバー文
中原中也を取り巻く青春群像の中で例外的に安定した温かい交友を持続させた安原喜弘。その手元に遺った一〇〇通は、現存する最多の中也書簡である。同人誌を共に立ち上げ、詩集『山羊の歌』出版のために献身、小林秀雄、大岡昇平、富永太郎等すべての仲間が中也と諍い去って行った後も、傍らに寄り添い、傷ましい魂の遍歴を見守りつづけた。中也の書簡と自身の回想で織りなす稀有なる友情の証。

*目次
一九四〇年の序文
再刊にあたって
T
 中原中也の手紙
U
 「山羊の歌」など
 中原中也のこと
 詩人との出会い
 年譜 ―― 中原中也
  著者に代わって読者へ 安原喜弘
  解説 秋山駿
  安原喜弘略年譜 安原喜弘


柳田 國男 (やなぎだくにお)
「口承文芸史考」
 (こうしょうぶんげいしこう)
講談社学術文庫



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*233頁
*発行 昭和51年
*カバーデザイン・平野甲賀

*カバー文
本書は、わが伝統文化の一形態としての昔話の本質を明確に把握し、高度の一貫した理論をもってその発展を説かれたものである。わが昔話研究者で、昔話をいかに研究し、その結果をいかに理論化し、つぎの研究の発展を意図するものは、本書の行間に秘められた著者の言わんとするところを十分に汲みとらなければならない。この本は、同じ著者の『桃太郎の誕生』とともに昔話研究の古典として長く残るであろう。 (本書解説より)

*解説頁・関敬吾


柳田 國男 (やなぎだくにお)
「明治大正史 世相篇」(上下) (めいじたいしょうしせそうへん)
講談社学術文庫




*カバーデザイン・平野甲賀
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*上222頁・下248頁 / 発行 1976年
*上巻カバー画像・川上音次郎の「おっぺけぺー歌」(都立中央図書館蔵)
*下巻カバー画像・東京停車場之図(東京史蹟研究会蔵)

*カバー文
上巻
毎日われわれの眼前に出ては消える事実のみによって、立派に歴史は書けるものだという信念をもった著者が、明治大正の六十年間のあらゆる新聞を渉猟して描き出した世相史。著者は、在来の伝記式歴史に不満なところから、故意に固有名詞を掲げることを避け、国に遍満する常人という人々が、眼を開き耳を傾ければ視聴しうるもののかぎり、そうしてただ少しく心を潜めるならば、必ず思い至るであろうところの意見だけを述べた、という。
下巻
柳田國男が本書を執筆したのは、一九三〇年後半、五十六歳の時。民俗学的方法によって、近代日本人のくらし方、生き方の横断面を描き出そうとした意欲的な作品であり、著者が一気に書き下した著作としては最大のものである。明治大正の人々が意識することもなく繰り返していた日常的な事柄が、著者の豊富な体験と鋭い内省を通して再び掲示されると、われわれ日本人の心をゆさぶられ、変転きわまりなかった過ぎた時代が蘇ってくる。

*目次
上巻
自序
第一章 眼に映ずる世相
第二章 食物の個人自由
第三章 家と住心地
第四章 風光推移
第五章 故郷異郷
第六章 新交通と文化輸送者
下巻
第七章 酒
第八章 恋愛技術の消長
第九章 家永続の願い
第十章 生産と商業
第十一章 労力の配賦
第十二章 貧と病
第十三章 伴を慕う心
第十四章 群を抜く力
第十五章 生活改善の目標
 解説 桜田勝徳
 索引


矢野 健太郎 (やのけんたろう)
「幾何の発想」 (きかのはっそう)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・菊池薫
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*221頁 / 発行 1990年

*カバー文
ナイル河、そしてチグリス、ユーフラテス。大河氾濫後の現状回復の要請による測量術から、幾何学は誕生したという。やがて〈数学の父〉ターレスの登場、さらにピタゴラス、ユークリッドへと受けつがれ、アポロニウスの円錐曲線へ。達意の名文家として知られる著者が、数学の面白さを第一義にまとめた幾何学の歴史。ソフィストの三大難問・一筆書き問題など知的好奇心に溢れる挿話を満載。

*目次
エジプトとバビロニア
ターレス
ターレス U
ピタゴラス
ピタゴラス U
ソフィストと三大難問
ソフィストと三大難問 U
不可能の証明
不可能の証明 U
ユークリッド
アルキメデス
アポロニュウス
 あとがき
 解説 茂木勇


矢野 誠一 (やのせいいち)
「落語手帖 ― 梗概・成立・鑑賞・藝談・能書事典」 (らくごてちょう)
講談社+α文庫


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*519頁 / 発行 1994年
*カバーデザイン・鈴木成一デザイン室

*カバー文
初心者から落語通までに対応できる落語事典の決定版! 現在、口演される機会の多い238作品を網羅。名人の語り口を彷彿とさせる梗概(こうがい)、個々の作品の成立、個性溢れる鑑賞、名人ならではの藝談(げいだん)、そして、蘊蓄(うんちく)たっぷりの能書までを紹介。聴く前に読み、読んでから聴く、落語ファン必読の一冊!


山内 昌之 (やまうちまさゆき)
「瀕死のリヴァイアサン ― ロシアのイスラムと民族問題」
(ひんしのLeviathan)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*443頁 / 発行 1995年

*カバー文
現代の「リヴァイアサン」ソ連の解体の後、〈民主国家ロシア〉によるチェチェンへの無差別攻撃は、全世界の人々に大きな衝撃をもたらした。このことはロシアの民主的な民族国家の建設が、きわめて困難な状況にあることを物語っている。国内に複雑な民族と宗教問題をかかえて苦悩するロシア。本書はその激動するロシアのイスラムと民族問題を、斯界の第1人者が確かなる史眼で捉えた刮目の書である。

*目次
はじめに

エスノクラシーとカタルシス
第1部 ソ連研究と中東研究のパラメーター
T ホメイニーとゴルバチョフ
U 中央アジアから見たソ連
V 中央アジアの革命と伝統
W ソ連の中東外交 ―― ゴルバチョフの登場まで
第2部 民族問題と危機の構図
X 中央アジアとバルト三国
Y 中東とソ連を横断する民族問題
Z 社会主義体制下の民族解放運動 ―― クリミア・タタール人
[ 忘れられた異議申し立て者 ―― メスへティア・トルコ人 PARTT
\ 中央アジアのいちばん暑い夏 ―― メスへティア・トルコ人 PARTU
第3部 ホモ・イスラミクスとホモ・ソビエティクス
] ゆりかごの復讐 ―― ソビエト・ムスリムの人口ダイナミズム
]T エトノスとイスラム
]U トルキスタンの聖者 ―― トルクメンにおけるイシャーン信仰
]V ソ連のイスラム復興現象とホメイニー
 おわりに / あとがき / 講談社学術文庫版あとがき


山岡 荘八 (やまおかそうはち)
「豊臣秀吉 異本太閤記」(全六巻) (とよとみひでよし)


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*発行 1977年

*カバー文
応仁の乱以来百年も続く戦乱の世のただ中、天分五年正月、尾張中村郷の三反百 姓の子に生れた日吉丸は、十二歳で志を立て、清洲へ出て紺屋の小僧をふり出しに十幾つもの職を転々、野武士蜂須賀小六の仲間に加わり武芸を身につけた後木下藤吉郎と名をかえて旅に。風雲児秀吉の生涯を描く歴史ロマンの巨編。


山川 方夫 (やまかわまさお)
「親しい友人たち」 
(したしいゆうじんたち)


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*239頁
*発行 昭和47年

*カバー文
〈青春〉のさなかの〈愛〉、そこにひそむ残酷さ、哀しさ、虚しさをリリシズム溢れる文章で描きあげ、不慮の事故に夭折した山川方夫の代表作品集――二十三歳のとき書かれた青春の神話にも似た「昼の花火」、米ライフ誌に掲載された「お守り」等、ショート・ショート23編。

*解説頁 金子昌夫
*カット 藤松博


山口 正介 (やまぐちしょうすけ)
「正太郎の粋 瞳の洒脱」
(しょうたろうのいき ひとみのしゃだつ)


*カバー写真・講談社写真部
(池波正太郎氏〈右〉と山口瞳氏
一九七三年一〇月四日、小社応接室で)
 カバーデザイン・間村俊一
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*240頁 / 発行 2013年

*カバー文
下町育ちの池波正太郎と都会派の山口瞳。ほぼ同年代のふたりは東京人として好対照だった。吉原に通いつめた正太郎、妻にも敬語を使った瞳。食・着こなし・仕事・時間術……二大人気作家を間近に見て育った、瞳の長男だからこそ書けた秘話満載のエッセイ。瞳が正太郎に送った弔辞も全文掲載。(文庫書下ろし)

*目次
 まえがき
T
 1 瞳から正太郎へ
 2 一九九〇年五月五日
U
 1 旅する人
 2 旅は自分を映す鏡
 3 ふたりが育った東京
 4 女について、母について
 5 ふたりにとっての家庭とは
 6 山口瞳の建てた「変奇館(へんきかん)」
 7 池波さんが愛した下町の風情
 8 ふたりの身体論と健康法
 9 死生観
V
 1 人生の師・生涯の友
 2 仕事に対する心構え
 3 時間の無駄
 4 試写室の池波さん
 5 芝居という魔物
 6 和物の着こなし
 7 男のダンディズム
W
 1 食べるということ
 2 すき焼き比べ
 3 寿司屋での失態
 4 トロと三島由紀夫
 5 常連客入門心得
 6 「すみません」の使い方
 7 「旦那」と「幇間」
 あとがき


山口 昌男 (やまぐちまさお)
「道化の宇宙」
 (どうけのうちゅう)


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*286頁
*発行 昭和60年
*カバーデザイン・道信勝彦

*カバー文
祝祭的な宇宙=世界を司る道化。「道化は、日常語に属する等身大の思想に対しては、その本来の姿を現さない。……彼は真昼間の世界では錯乱を装い、黒い仮面を通して闇の世界から出現する何者かであったのだ」 ― 単一価値的で合理主義的に、異端として現れる豊饒な存在者を、実例的に分析する名著


山口 瞳 (やまぐちひとみ)
「血涙十番勝負」
(けつるいじゅうばんしょうぶ)


*カバー装画・柳原良平
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*272頁 / 発行 1980年

*カバー文
大の将棋ファンである著者が、"6五歩位取り"の新戦法をかかげて挑む画期的な飛落戦十番勝負。果してプロを相手に何勝できるか。豊かな個性に類いまれな資質をそなえる専門棋士との対局の中に、著者は、勝負に賭ける男たちの厳しさと優しさをみる。棋士たちの人間的魅力を活写しつつ、男の人生を追求した快作。

*目次
第一番 八段 二上達也
第二番 九段 山田道美
第三番 二段 蛸島彰子
第四番 八段 米長邦雄
第五番 十段・棋聖 中原誠
第六番 八段 芹沢博文
第七番 六段 桐山清澄
第八番 名人・王将・王位 大山康晴
第九番 八段 原田泰夫 
第十番 五段 山口英夫
 解説 米長邦雄
 文庫のためのあとがき


山口 瞳 (やまぐちひとみ)
「続 血涙十番勝負」
(ぞくけつるいじゅうばんしょうぶ)


*カバー装画・柳原良平
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*274頁 / 発行 1980年

*カバー文
10戦3勝1分で飛落戦を卒業、ついで一ランク上の角落戦十番勝負に挑戦する。プロの壁はさらに高くけわしくなる。悪戦苦闘の連続、勝利を目前にして悪手をはなち、勝ちきることの至難さを知らされる。純粋で男らしい専門棋士たちの必死の姿。せめぎあう盤上。将棋の棋士の魅力を縦横に描いた待望の続編である。

*目次
第一番 白面紅顔、有吉道夫八段
第ニ番 神武以来の天才、加藤一二三九段
第三番 東海の若旦那、板谷八段
第四番 疾風迅雷、内藤国雄棋聖(九段)
第五番 江戸で振るのは大内延介八段
第六番 泣くなおっ母さん、真部一男四段
第七番 屈伸する名匠、塚田正夫六段
第八番 岡崎の豆戦車〈タンク〉、石田和雄六段
第九番 振飛車日本一、大野源一八段
第十番 天下無敵、木村義雄十四世名人
 〔解説〕 新旧・江戸っ児気質 大内延介


山口 瞳 (やまぐちひとみ)
「単身赴任」 
(たんしんふにん)


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*256頁 / 発行1982年
*カバー装画・大歳克衛

*カバー文
金銭に細かく、徹底した仕事第一主義のビジネスマン。そんな上司の人間味と悲哀を部下の好意の目でとらえた表題作。偏執的なパトロンの籠から翔びたとうとするバーのマダムの重い人生を描いた「三宅坂渋滞」。他に、「時雨るゝや」「逃げの平賀」など、男と女の出会いと別れの人生を描く七編を収めた傑作短編集。

*目次
単身赴任 / 三宅坂渋滞 / 靴と蒟蒻 / 木犀 / 時雨るゝや / 恋愛論ふうに / ママ / 南瓜 / 逃げの平賀 / 初版本あとがき / 解説 本田靖春


山崎 庸佑 (やまざきようすけ)
「ニーチェ」
 (Nietzsche)
講談社学術文庫



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*503頁
*発行 1996年
*カバーデザイン・蟹江征治

*カバー文
近代の精神状況についての鋭い分析や、徹底した文明批判を通じて、現代思想全般にわたり強い影響をあたえた知の巨人ニーチェ。「知的誠実」さを根底にすえつつ人間の究極の拠りどころを求め苦闘し、根源の生を「ディオニュソス的」なものとして提示した哲学者ニーチェの思索と、狂を発して歿するまでの生の軌跡をあざやかに描出。多様な側面からニーチェの人と思想の全容を解明してみせた意欲的労作。


山中 恒 (やまなかひさし)
「ボクラ少国民」 
(ぼくらしょうこくみん)


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*446頁 / 発行 1989年

*カバー文
皇室を崇め、天皇のために死ぬことを絶対の忠義と教えられた戦時下の少年達は、滅私の軍人となって戦地で死んでいった。無謀な侵略戦争を美化し、彼らの心を皇国少年に染め上げていった軍国主義教育の核心はどこにあったのか。豊富な資料で再現された当時の人々の姿は今も変わらぬ日本人の自画像である。

*目次
1 天皇陛下ノ赤子タルコト
2 紀元ハ二千六百年
3 われら大日本青少年団
 単行本あとがき
 文庫版あとがき
 解説 高橋隆治


山本 有三 (やまもとゆうぞう)
「波」
 (なみ)


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*370頁
*発行 昭和46年

*カバー文
憐れな境遇にある教え子きぬ子と結婚した小学校教師見並行介は、妻の不貞、生れた子に対する疑惑など、「永遠回帰」の波にも似た生の悩みの繰返しに直面する。 ― ヒューマニズムと理想主義を貫いて生きる真摯な人間像を追求した名作として海外でも大きく評価される。

*解説頁・高橋健二


山本 健吉 (やまもとけんきち)
「俳句の世界」
(はいくのせかい)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊池信義
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*304頁 / 発行 2005年

*カバー文
〈自己の文学観の最も大切な部分を折口信夫から受けている〉と語った山本健吉が、現代文学を基軸にして古典文学を探求。俳句固有の性格や方法を明確にする一方「日本の詩の歴史」のうち、俳句が占める位置を示して複眼的な批評を展開、文学の根本問題に迫る。表題作のほか「挨拶と滑稽」「純粋俳句」「芭蕉と現代」「時評的俳句論」など著者の俳句・俳諧についての考察を網羅した名著。

*目次
俳句の世界
挨拶と滑稽
純粋俳句
芭蕉と時代
俳諧についての十八章
時評的俳句論
 解説 勝又浩
 年譜 山本安見 / 山本静枝
 著書目録


山本 七平 (やまもとしちへい)
「日本人の人生観」
 (にほんじんのじんせいかん)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・菊池薫
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*152頁 / 発行 昭和53年

*カバー文
戦後三十数年を経た今日、外部の何ものかによって生き方が決定され、人々は敷かれたレールの上を走っておればよい時代は終わったはずである。しかし日本人は依然として画一的な生涯をめざす傾向から脱け出せないでいる。その背景には、われわれ日本人が無意識の内に従っているある種の共通の人生観があるのではなかろうか。本書は、そういう「日本人の伝統的な人生観」を再把握し、新しい生き方への出発点を示すことを目標としている。

*目次
日本人の人生観
「さまよえる」日本人
日本人の宗教意識
文化としての元号考察
あとがき