絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【の】

野口 武彦 (のぐちたけひこ)
「『源氏物語』を江戸から読む」
(げんじものがたりをえどからよむ)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*262頁 / 発行 1995年

*カバー文
中世以来『源氏物語』の注釈は公卿の師弟間の口伝でなされてきたが、出版技術の確立した江戸期に多彩な源氏学が開花した。本居宣長「もののあはれ論」はじめ、国学者・儒学者・文人たちの江戸源氏学のの諸相と、井原西鶴『好色一代男』、柳亭種彦『田舎源氏』等のパロディ群出現で庶民に浸透した世俗化現象を分析。江戸文化が不滅の古典『源氏物語』をいかに享受し、消化したかを縦横に考察した意欲作。

*目次
まえがき
第一部 『源氏物語』を江戸から読む
一 最初の密通はいつおこなわれたか ―― 葛西因是
(かさいいんぜ)の『雨夜閑話(あめのよかんわ)
二 くもる源氏に光る藤原 ―― 村田春海
(はるみ)の『源語提要』
三 英才教育のイロニイ ―― 鈴木朖
(あきら)の『少女(おとめ)巻抄注』
四 都市文学としての田舎源氏 ―― 柳亭種彦の『偐紫田舎
(にせむらさきいなか)源氏』
五 江戸王朝の栄華の夢 ―― 正親町
(おおぎまち)町子の『松蔭(まつかげ)日記』

第二部 江戸源氏学入門
一 「もののまぎれ」と「もののあわれ」 ―― 萩原広道
(はぎわらひろみち)『源氏物語評釈』の「惣論(そうろん)」をめぐって
二 注釈から批評へ ―― 萩原広道『源氏物語評釈』をめぐって
三 「語り」の多声法 ―― 萩原広道の「構造」主義源氏学をめぐって
四 古典文学の通俗化 ―― 都の錦『風流源氏物語』をめぐって
五 江戸儒学者の『源氏物語』観 ―― 熊沢蕃山
(ばんざん)『源氏外伝』をめぐって
六 「語り手」創造 ―― 「ものがたり」という基層
初出一覧
学術文庫版あとがき


野口 冨士男 (のぐちふじお)
「しあわせ かくてありけり」
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*293頁 / 発行 1992年

*カバー文
母と別れた父親の“果たせぬ夢”であった慶応幼稚舎に入学。しかし母は芸者屋の主人でありみずから左褄もとっていたので、家業や住所は“秘匿”する習性がついていた。幼時・少年時に住んだ土地を訪ねるに始まり、時代を写し自らの来しかたを凝視して読売文学賞を受賞した表題作と短篇の名品と呼ぶべき「しあわせ」を併録した鏤骨の一冊。

*目次
しあわせ
かくてありけり
 著者から読者へ
 解説 川西政明
 作家案内 保昌正夫
 著書目録 保昌正夫


野口 冨士男 (のぐちふじお)
「わが荷風」
(わがかふう)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*328頁 / 発行 2002年

*カバー文
 もし誰かにあなたの好きな作家はと問われれば、躊躇することなく永井荷風とこたえるだろう……それは私のなかのいちばん奥ふかいところに、いつもあった。(本文より)
荷風の愛読者を自認した著者が、自らの青春への追憶を重ねながら、本所、浅草、小石川……など荷風の作品背景を丹念に踏査。荷風の生涯と作品の全貌を追究して荷風像を構築し、詳細な年譜等も付す画期的評伝。読売文学賞受賞。

*目次
1 明治四十二年十二月 / 2 順境のなかの逆境 / 3 九段坂・青春前期 / 4 深川と深川の間 / 5 麻布十番までの道 / 6 堤上からの眺望 / 7 画にならぬ場所 / 8 それが終るとき / 9 繁華殊に著しく / 10 人の命のあるかぎり / 11 また見る真間の桜 / 12 われは生れて町に住む / 年譜・参考文献 / 【参考資料】

 解説 坪内祐三 / 年譜 / 著書目録 保昌正夫

中公文庫版(サイト内リンク)


野坂 昭如+滝田 ゆう (のさかあきゆき・たきだゆう)
「怨歌劇場」
 (えんかげきじょう)


*カバー装画・滝田 ゆう
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*253頁 / 発行 1983年

*カバー文
敗戦後の混乱のなかで、だましあい慰めあって生きる滑稽でしたたかな庶民の悲喜劇、「火垂るの墓」「エロ事師たち」「娼婦焼身」「ベトナム姐ちゃん」など野坂昭如の“焼跡闇市派文学”の代表作に、異色の漫画家滝田ゆうが挑戦した! 同時代の二人の天才が描き出す、哀調切々、諧謔無類の人情紙芝居全十二景。

*目次
 まえがき 野坂昭如
火垂るの墓
エロ事師たち
とむらい師たち
あゝ水銀大軟膏
娼婦焼身
ベトナム姐ちゃん
人情ふいなーれ
マッチ売りの少女
軍歌
酎友無双
あゝ日本大疥癬
猥歌
 あとがき 滝田ゆう


野坂 昭如 (のさかあきゆき)
「色即回帰」 
(しきそくかいき)


*カバー装画・村上豊
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*193頁 / 発行 昭和51年

*カバー文
男の女遍歴を、浮気などといって非難するのは大間違い、そういう気持の強い男こそ、女陰回帰の志、母のもとへもどりたいという、いわば母を求めて三千里真実鈴ふり巡礼心の持主なのだ。 ― 山陰は皆生温泉、風呂番の老人が人生哲学を語った「色即回帰」他、野坂文学の真骨頂を発揮した作品七編を収録。

*目次
色即回帰
色指南
色法師
花のお遍路
プラス・マイナス
受胎さわぎ
猥本綺譚
色がえり
 解説 駒田信二


野坂 昭如 (のさかあきゆき)
「執念夫婦添い節」
 (しゅうねんめおとそいぶし)


*カバー装画・岡田嘉夫
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*222頁 / 発行 昭和53年

*カバー文
漫談家の昇仙にくどかれて夫婦になった福子は、石女だったが女盛りに卵巣を摘出し、益々情が薄れる。昇仙は妾をかこい、帰宅するのは月に数回。たまたま帰った時、昇仙脳溢血で倒れる。福子今はひもかわまがいの昇仙の一物を口にふくみ、ようやく亭主になったという実感を味わう。表題作ほか純情にして猥褻な女と男を描いた傑作5篇。

*目次
花街てまり唄
乱菊樽おけさ
浮寝鳥藻抜空床
南無阿弥マンボ
執念夫婦添い節
菊縁宝門柵
 解説 小中陽太郎


野坂 昭如 (のさかあきゆき)
「とむらい師たち」 (とむらいしたち)


*カバー装画・永田力
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*243頁 / 発行 1973年

*カバー文
人間、産むことはやめても、死ぬことはやめられぬ。死顔がもっている威厳と迫力に魅せられて葬儀産業に着手 ― 万国博に対抗して葬博の実現に賭ける隠亡の息子ガンめん、葬儀のレジャー産業化に狂奔する葬儀演出家ジャッカンたちの奇行愚行の笑いと哀しみ。表題作「とむらい師たち」他、異色快作四篇を収録。

*目次
とむらい師たち
あゝ水銀大軟膏
四面凶妻
ベトナム姐ちゃん
うろろんころろん
 解説 松原新一
 年譜


野坂 昭如 (のさかあきゆき)
「卍ともえ」
 (まんじともえ)


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*311頁
*発行 昭和50年
*カバー装画・村上豊

*カバー文
大阪・天満、油問屋の黄櫨屋(はぜや)は人骨を使っての精油法を秘伝とし、天運来福、殷賑をきわめていた。人骨は、墓をあばいて集められたゆえ、骨にまつわる幾百、幾千の男女の怨霊は、黄櫨屋一門にとりつき、狂乱の渦に投げ込む。近親相姦、墓あばき、骨集め、惨殺等、戦慄の地獄絵図が、著者独自の幻想世界を構築する。

*解説頁・大久保典夫


野尻 抱影 (のじりほうえい)
「星の神話・伝説」
 (ほしのしんわでんせつ)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・深山重樹
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*260頁 / 発行 1977年

*カバー文
科学の発展によって少しずつ解明されてきたとはいえ、宇宙はいぜんとして謎と神秘のベールに包まれている。本書は、その謎と神秘に満ちた四季の星空を、ロマンあふれるギリシアやローマの神話・伝説をとおしてやさしく説きあかし、星の神秘にせまる。読者は、星や星座を楽しく学びながら、いつのまにか天文学の世界へと導かれよう。星の研究家として知られる著者の、長年の蘊畜を傾けた名著のほまれ高い天体・宇宙の入門書である。

*目次
まえがき
T 春の星座
U 夏の星座
V 秋の星座
W 冬の星座
解説 宮本正太郎


野々上 慶一 (ののがみけいいち)
「高級な友情 小林秀雄と青山二郎」
(こうきゅうなゆうじょう)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*288頁 / 発行 2008年

*カバー文
昭和六年、本郷東大正門前に開業した古書店兼出版社・文圃堂。売り場面積三坪余り、主人は二十一歳になったばかりの青年。中原中也の『山羊の歌』、最初の『宮沢賢治全集』を出版、第二次「文學界」の発行所となったが、僅か六年にして廃業。しかし、若者は昭和文学史を彩る多くの文学者達に愛された。小林秀雄、青山二郎、河上徹太郎、そして吉田健一。昭和の知的青春に揉まれ成長した、個性際立つ一出版人の貴重な証言。

*目次
小林秀雄と「文學界」
小林秀雄の「中原中也の思ひ出」について
小林秀雄さんの墓
小林秀雄と青山二郎
高級な友情の表現
小林秀雄カラミ道場
小林秀雄服装考
小林さんとの飲み食い五十年
青山二郎の鑑賞眼
ある回想
懐しい「乞食王子」
吉田の健坊と飲み食い話
 解説 長谷川郁夫 / 年譜 野々上一郎 / 著書目録 野々上一郎


延広 真治 (のぶひろしんじ)
「江戸落語 誕生と発展」
(えどらくご)
講談社学術文庫


*カバー図版・初代桂文治(「臍の宿替」より)
 カバーデザイン・蟹江征治
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*323頁 / 発行 2011年

*カバー文
鹿野武左衛門、烏亭焉馬、三笑亭可楽、林屋正蔵……。江戸落語の立役者たち。元禄期に遡る落語は、始祖武左衛門の流罪で途絶。棟梁にして、熱狂的団十郎贔屓の焉馬が、「咄の会」を運営、中興の祖になるのが百年後。机から高座への移行、短い落とし咄の連結、狂歌との関連、寄席の登場、怪談の導入等々、落語形成過程を克明に活写。

*目次
学術文庫版まえがき
T
鹿野武左衛門
烏亭焉馬
 下町派の講頭 / 江戸落語中興の祖
U
『太平楽巻物』
咄の会
V
三笑亭可楽
林屋正蔵
あとがき
付 翻刻『太平楽巻物』
解説 上方落語史の視点から 荻田清