絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【は】

梅亭金鵞作 (ばいていきんが) 興津 要校注 (おきつかなめ)
「妙竹林話 七偏人 (下)」
 (みょうちくりんわ しちへんじん)


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*204頁
*発行 昭和58年
*カバーデザイン・市川英夫

*カバー文
花のお江戸の七人の浮かれ者が、あいもかわらずくりかえすドジと失敗。百談話(ものがたり)の趣向をこらし、化けものに変装したまではよかったが……。原典の挿絵をすべて収録。必要に応じて語注を付し、原文を生かして江戸期滑稽本の雰囲気を尊重。読みやすさの工夫を縦横にこらした笑い横溢の書。詳細丁寧な解説付き。


芳賀 徹 (はがとおる)
「みだれ髪の系譜」 (みだれがみのけいふ)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・蟹江征治
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*398頁 / 発行 1988年

*カバー文
くろ髪の千すぢの髪のみだれ髪……与謝野晶子が謳いあげた女の黒髪、その官能の源流を追って、著者は蕪村、新古今へと溯行し、さらに西欧に目を転ずる。流れる髪の妖艶美は、東西の十九世紀末画家達の好んで描くところでもあった。日本人の心に受け継がれた、切々たる情緒の流れを縦糸に、西洋との邂逅を横糸に、あでやかに織りなす詩と絵画の比較文化史。晶子論に新境地を拓く表題論文ほか、荷風、浮世絵等をめぐる論考を収録する。

*目次
T 詩の十字路
 みだれ髪の系譜 ― 蕉村・晶子・アールヌーヴォー
 かなしい遠景 ― ビアード博士と朔太郎
 淡青い空 ― 立原道造の手紙から
 六月のユートピア ― 茨木のり子の詩一篇
U 訳詩のなかの日本
 秋の歌 ― 日本と西洋
 「ぴあの」の詩 ― 永井荷風とヴェルレーヌ
V ヨーロッパをこえて
 ルソーの桃源郷 ― サン・ピエール島の「間適」
 ズライカ讃歌 ― ゲーテの『西東詩集』より
W 異郷の日本美術
 コネティカットの大正版画
 オクラホマの若沖
 ライデンの川原慶賀
X 夜半亭のほとり
 パクス・トクガワーナ〔徳川の平和〕
 徳川日本を映す小さな詩群
 おもたき琵琶 ― 蕪村の発句
 夜半亭蕪村の手紙
 蕪村とラルボー ― 夜明けの詩
 蕪村・大祇・白雄 ― 俳諧を「読む」
 口腹の俳諧・幸福の文藝
あとがき
解説 加納孝代


萩原 葉子 (はぎわらようこ)
「輪廻の暦」
(りんねのこよみ)
講談社文芸文庫


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*248頁
*発行 2002年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
離婚を戦いとり、一人息子と妹を抱えた生活は窮迫するが、嫩(ふたば)は書くことに生きる光明を見出していく。そんな折り、かつて幼い嫩を捨てて駆け落ちした母を捜して引きとった。こんどは母のわがままと気紛れに翻弄され、執筆時間を奪われる日々が始まる ―― 。凄絶な苦闘の半生を毅然と描き切った自伝的長篇三部作「蕁麻の家」「閉ざされた庭」につづく完結篇である。


橋本 治 (はしもとおさむ)
「雨の温州蜜柑姫」
(あめのおみかんひめ)


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*421頁
*発行 1993年
*カバー装画・高野文子

*カバー文
榊原さんと磯村くんと木川田くんと一緒にやってきた青春大河小説「桃尻娘」シリーズもとうとう完結します。でも青春が終わったってことじゃなくて、いつだってそこにあるかもしれないっていうことなの。最後の主役は醒井さんねっていう橋本さんのとっても長いあとがきもあるので、ぜったい読んでくださいね。



橋本 克彦 (はしもとかつひこ)
「日本鉄道物語」 (にほんてつどうものがたり)


*カバー写真・田澤善郎
 カバーデザイン・安彦勝博
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*422頁 / 発行 1993年

*カバー文
鉄道に賭けた父子二代の熱き技術者魂を描く。草創期の蒸気機関車・磨墨からC53、D51を経て新幹線まで、島安次郎・秀雄の情熱は、燃えに燃えた。彼らが取り組んだ鉄道の仕事は、日本の近代技術史上の一大エポックとなった。外国の技術を日本の条件のなかへ移殖し、さらに発展させた父子のドラマを追う。

*目次
序章
第一章 黎明期
 「磨墨」が走る / ピンチ式ガス灯 / 駿足機「早風」 / 薬種のなかで / 巖谷小波との出会い / 工学士の悲哀
第二章 鉄路五〇〇〇マイル
 ドイツへ / 議会乱闘下の国有鉄道誕生 / 工作課長 / 五〇〇〇マイル達成祝賀会 / 広軌の守護神登場
第三章 近代化の見取図
 国産標準機関車六七〇〇形 / 広軌改築案と秘密指令 / 広軌改築への第一歩 / 政治的妥協 / 新鋭機関車 / さらなる広狭の闘い
第四章 弾丸列車から新幹線へ
 父子継承 / 機関車疾走 / 弾丸列車 / 混乱の中の予言 / 新幹線構想
終章
 あとがき / 参考文献 / 文庫化にあたって


花田 清輝 (はなだきよてる)
「アヴァンギャルド芸術」
(あヴぁんぎゃるどげいじゅつ)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*355頁 / 発行 1994年

*カバー文
常に時代を“転形期”として捉え、前近代的なもの、B級の芸術を否定的媒介にして“モダニズム”を超える思考の提出。世界の秀れた前衛の思想をラジカルに踏んだ強力な視座、常にダイナミックな“変革”を志す世界的発信性の獲得。21世紀へ向けて生き残る思想の追尋者・花田清輝の代表作。

*目次
ユーモレスク / 芸術家の制服 / 仮面の表情 / ドン・ファン論 / サルトビ・レゲンデ / 奴隷の言葉 / 魔法の馬 / 境界線の移動について / マザー・グース・メロディー / 林檎に関する一考察 / 鏡の国の風景 / 機会と薔薇 / 回帰運動 / レオナルドの本職 / ビィヴァ / ギルブレスの方法序説 / ジャーナリスト / 文体変革についての試案 / 二〇年代の「アバンギャルド」 / 鉄斎の挫折 / 笑い猫 / レトリックの精神 / 空間人間 / 『アヴァンギャルド芸術』未来社版あとがき / 解説 沼野充義 / 作家案内 日高昭二 / 著書目録



花田 清輝 (はなだきよてる)
「鳥獣戯話」 (ちょうじゅうぎわ)


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*168頁
*発行 昭和52年
*カバー装画・村上豊

*カバー文
甲斐の国を統一しながら、我が子信玄に国を逐われた武田信虎は、駿河に行って今川・武田の離間を策し、京に上っては将軍義昭の御伽衆となって、時の権力者信長を嘲弄する。新しい戦略をあみだし、口舌をもって権力に抗した信虎の波瀾の生涯。転形期における生き方を示唆した新機軸の歴史小説。毎日出版文化賞受賞。

*解説頁・杉浦明平


花田 清輝 (はなだきよてる)
「七・錯乱の論理・二つの世界」
(なな・さくらんのろんり・ふたつのせかい)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*426頁
*発行 1989年

*カバー文
常に世界に開かれている透徹したリアルな眼。文学・思想の至高を終生求めつづけた強靭な芸術家魂。ブリリアントな論理と秀抜この上ないレトリック。真の前衛・花田清輝の初期小説・「七」「悲劇について」、『復興期の精神』と比肩する初期エッセイ集『錯乱の論理』、「沙漠について」「動物・鉱物・植物」等の名篇を含む『二つの世界』を合わせて収録。

*巻末頁
著者に代わって読者へ 佐々木基一 / 解説 池内紀 / 作家案内 日高昭二 / 著書目録


羽仁 五郎 (はにごろう)
「教育の論理 ― 文部省廃止論」 (きょういくのろんり)


*カバーデザイン・田村義也
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*387頁 / 発行 昭和56年

*カバー文
いま日本の教育を荒廃と腐敗に陥れているのは文部省である。官僚主義のはびこる文部省の関心は、管理監督取締りにあり、教育の自主性は皆無の現状なのだ。だが輝ける未来は、教育の自由なくしてはありえない。ここに文部省廃止の必然性が生じるのである ― 教育の自由にささげられた羽仁五郎の文部省廃止論。

*目次
序にかえて
第一章 なぜ、文部省廃止か
第二章 これが文部省の体質だ
第三章 戦後文部省罪悪史(一)
第四章 戦後文部省罪悪史(二)
第五章 教育現場の環境を考える
第六章 荒廃する教育の現状
第七章 荒廃と腐敗のなかの光明
第八章 未来の教育を求めて
 解説 黒田秀俊


羽仁 五郎 (はにごろう)
「都市の論理 〈第二部〉 現代の闘争」 (としのろんり)


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*288頁
*発行 1982年

*カバー文
深刻な住宅不足、公害問題、環境の破壊、自治体財政の破綻など、切迫した今日の都市問題は、どうしたら解決できるのか。無用な公社公団を廃せ! 独占資本の軍事政策を阻止せよ。……ひとつひとつ例をあげて論じつつ、真の行政改革は、都市自治体の連合にあることを説く、大いなる予言と警鐘の書第二部。


馬場 あき子 (ばばあきこ)
「式子内親王」
 (しきしないしんのう)


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*261頁
*発行 昭和54年
*カバーデザイン・中島かほる

*カバー文
後白河皇女として生を享け、斎院として華やかな時を過ごしたはずの式子内親王。しかしその歌は、〈忍ぶる恋〉に特色づけられるように、耀きに満ちたものではない。なぜ激しく熱い心を深い鬱情のうちに閉じ込めざるを得なかったか。――歌と生涯を辿り、一つの時代の終焉を詠めざるを得なかった女の姿を浮彫りにする。

*解説頁・野口武彦


浜田 廣介 (はまだひろすけ)
「浜田廣介童話集」
 (はまだひろすけどうわしゅう)


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*252頁
*発行 1981年
*カバー装画・三国よしお

*カバー文
浜田廣介は、小川未明とともに、大正、昭和の日本の童話文学を代表する作家である。廣介の真心こもる数多くの作品は、「ひろすけ童話」の名で、大人から子供までの幅広い層に親しまれ,今日もなお読みつがれている。本巻は、代表作である「よぶこ鳥」「むく鳥のゆめ」「花びらのたび」「りゅうの目のなみだ」「泣いた赤おに」など、28篇を収録。

*解説頁・村松定孝
*さしえ・三国よしお


浜野 卓也 (はまのたくや)
「新美南吉の世界」
 (にいみなんきちのせかい)


*カバー装画・谷中安規
 デザイン・舟橋菊男
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*264頁 / 発行 昭和56年

*カバー文
「ごん狐」「おじいさんのランプ」「百姓の足・坊さんの足」「和太郎さんと牛」「牛をつないだ椿の木」など、数々の名作を生んだ、宮沢賢治につづく天才的童話作家新美南吉の真の姿を明らかにした気鋭の評論。精緻な作品解釈と犀利な新資料の分析とにより、これまでの南吉の虚像を批判して研究を前進させた労作。新美南吉文学賞受賞作。

*目次
一 南吉文学の概念
 1 南吉文学の出発 / 2 現実の投影と郷愁の投影 / 3 南吉作品と改作の問題
二 幼年童話
 1 南吉童話の「善人性」とは / 2 「ごん狐」
三 南吉の小説
 1 南吉小説の特徴 / 2 南吉と継母 / 3 挫折の青春 / 4 自照文学としての小説
四 生活童話
 1 南吉の生活童話に見る特徴 / 2 主人公の挫折的心情をテーマとした生活童話 / 3 こどもに取材した生活童話
五 民話的メルヘン
 1 民話的メルヘン / 2 「百姓の足・坊さんの足」 / 3 「和太郎さんと牛」 / 4 「牛をつないだ椿の木」

南吉の生涯
 一 みどりの知多半島 / 二 南吉の誕生 / 三 半田中学時代 / 四 代用教員の時代 / 五 東京外語時代 / 六 失業と病苦の時代 / 七 安城高女時代 / 八 作家の時代 / 九 南吉の死

新美南吉略年譜 / あとがき


早川 孝太郎 (はやかわこうたろう)
「花祭」
(はなまつり)
講談社学術文庫


*カバー図版・愛知県豊根村下黒川の
「朝鬼」(撮影:渡辺良正)
 カバーデザイン・蟹江征治
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*400頁 / 発行 2009年

*カバー文
修験者たちによって天龍川水系に伝えられ、中世に始まるとされる民俗芸能「花祭」。湯を沸かし神々に献じ、すべてを祓い清める冬の神事に、人々は夜を徹して舞い続け、神と人と鬼とが一体となる。信仰・芸能・生活・自然に根ざした祈りを今に伝える奥三河地方の神事を昭和初頭、精緻に調査し、柳田や折口にも影響を与えた、日本民俗学の古典的名著。

*目次
序文 三隅治雄
花祭概説
 問題の地域 / 各種の祭り / すべて二十三ケ所 / 二ツの系統 / 行事の概觀 / 冬の夜の祭り / 祭りの場所 / 祭りの形式 / 祭祀説明上の区分
祭祀の構成
祭場と祭具
 祭場 / 祭場に要する祭具 / 衣裳 / 舞道具
儀式的行事
 記述の順序 / 第一日の祭祀 / 第二日の祭祀 / 儀式開始より舞いにはいるまで / 舞いと、これにともなう儀式 / 舞いおわって後の儀式
舞踊
 舞ひの種目 / 舞?による区分 / 市の舞 / 少年の舞 / 面形による舞い / 魚釣りと「なかとばらい」
音樂と歌謠
 楽と拍子 / 歌謠
祭りにあずかる者 / 主体となるもの / 禰宜 / みやうど / 一般参与の者 / 祭りにそえて / 461 (0292.jp2)
解説 久保田裕道


林 京子 (はやしきょうこ)
「無きが如き」
(なきがごとき)
講談社文芸文庫


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*246頁 / 発行 1989年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
原爆投下から三十数年後、〈女〉は長崎を訪れた。坂の上の友人の家で、人々と取止めない話を交わしながら死んでいった友たちや、十四で被爆した自らの過去を回想する。日々死に対峙し、内へ内へと籠り、苦しみを強いられ生きる被爆者たち。老い。孤独。人生は静まり返っているが体験を風化させはしない。声音は低く深く響く。原爆を凝視する著者が被爆者の日常を坦々と綴る名篇。

*巻末頁
 著者から読者へ
 解説 川西政明
 作家案内 中山和子
 著書目録 金井景子


林 京子 (はやしきょうこ)
「やすらかに今はねむり給え | 道」 (やすらかにいまはねむりたまえ | みち)
講談社文芸文庫


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*216頁 / 発行 1993年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
昭和二十年五月から原爆投下の八月九日までの日々 ―― 。長崎の兵器工場に動員された女学生たちの苛酷な青春。一瞬の光にのまれ、理不尽に消えてしまった〈生〉。記録をたずね事実を基に、綿密に綴った被爆体験。谷崎潤一郎賞受賞作「やすらかに今はねむり給え」のほか恩師・友人たちの最期を鮮烈に描いた「道」を収録。鎮魂の思いをこめた林京子の原点。

*巻末頁
 著者から読者へ
 解説 川西政明
 作家案内 林淑美
 著書目録 金井景子


林 丈二 (はやしじょうじ)
「イタリア歩けば…」
 (いたりああるけば)


*カバー写真・林丈二
 カバーデザイン・南伸坊

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*271頁 / 発行 2001年

*カバー文
「猫のなる木」をヴェネツィアで発見! 自分の目と足をアンテナにイタリア中を歩いて出会った、どこか気になる物・モノ・者。カフェでの使用カップ調査、街のあちこちに生息する(?)動物を模した装飾品集めなど、観光ガイドではわからない魅力たっぷり路地裏めぐりの旅へ、豊富なイラストと写真でご案内します。

*目次
◆僕のメモ帳から
 ローマのホテル / ローマからフィレンツェ / フィレンツェ / アレッツォ / バドヴァ / ヴィチェンツァ

◆ヴェネツィアからの玉手箱
 猫街 / 猫小屋「満員御礼」 / トイレはどこ? / 魚の街 / コーヒーブレイク / ライオンづくし / ライオン悲喜こもごも / 幸福の白い洗濯物 / 落書き“ヴェネツィア派” / 「旅情」観察 / 「水の都」の水の味 / 犬との付き合い / 装飾金具の謎解き / レースの玉 / 歩行者の天国 / ショーウインドウの誘惑 / 壁面美術館 / ……のない世界 / クロウタドリと太陽 / ゴチャゴチャ / 装飾動物 / 土産屋マリアに犬の糞 / 渡しゴンドラ / 龍宮城の亀

◆ローマのことなど
 大きな顔 / 泉の都 / 鬼は外!

 棒に当たる / 解説「玉手箱の国、イタリア」杉浦日向子


林 青梧 (はやしせいご)
「満鉄特急あじあ物語」 (まんてつとっきゅうあじあものがたり)


*カバー装幀・秋山法子
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*316頁 / 発行 昭和61年

*カバー文
昭和九年十一月一日午前九時、「あじあ」第一号列車が大連駅から新京に向けて出発した。展望一等車、食堂車など六輌の豪華客車を牽引する2C1流線形過熱テンダ機関車パシナ形。時速百二十キロ、動輪径二メートル。満鉄が世界に誇る超高速列車であった……。栄光の蒸気機関車の誕生から最期までを描く。

*目次
第一章 満州に夢を
 事変 / 調査団 / 決断 / 気魄 / 出発 / 挑戦
第二章 世界一への驀進
 会議 / 期待 / 設計 / 誠意 / あじあ / 門出
第三章 「あじあ」の落日
 暗雲 / 降納 / 邂逅 / 末路
 「日中関係の新しい視点」 ― あとがきにかえて


林 芙美子 (はやしふみこ)
「茶色の眼」
(ちゃいろのめ)
講談社文芸文庫


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*330頁 / 発行 1994年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
結婚生活十四年になる中年のサラリーマン中川十一は、“茶色の眼”をした気の強い妻との潤いない生活の中で、同じ会社の子持の女性タイピストに心魅かれていく。敗戦直後の庶民の混乱した生活、男と女の愛の姿を映して、多くの読者の深い共感を得た〈随筆的家庭小説〉。円熟した芙美子の書くことへの意気込みと楽しみが伝わり、比類ない資質と新しい作風を予感させた晩年の名篇。

*巻末頁
 解説 中沢けい
 作家案内 今川英子
 著書目録 今川英子


早船 ちよ (はやふねちよ)
「キューポラのある街 1 ジュン」
 (きゅーぽらのあるまち)


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*317頁
*発行 1977年
*カバー装画・宮本忠夫

*カバー文
鈴木ジュンは、キューポラのある街、埼玉県川口市の中学3年生。一家は貧乏な鋳物職人の父辰五郎、いつも生活費の工面でイライラしている母トミとひねくれ者の弟タカユキ。そんな生活の中で自我に目ざめ、進学か就職かに悩むジュンの姿を心とからだの両面から鮮烈に描いた異色大河小説の第1巻。


早船 ちよ (はやふねちよ)
「キューポラのある街 2 未成年」


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*380頁
*発行 1977年
*カバー装画・宮本忠夫

*カバー文
映画に、演劇に話題を呼んだ大河小説の第2巻。定時制の女子高に進学したジュンは、働きかつ学ぶ悩みに直面する。工場の労働組合の集会に出席すると授業に遅れるし、集会は賃金のベース・アップのためのものだ。勉学も生活もジュンにとっては両方とも大切なのだ。悩みながら明日への希望を抱いて生きていく17歳。 (全5巻)


早船 ちよ (はやふねちよ)
「キューポラのある街 3 赤いらせん階段」


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*310頁
*発行 1977年
*カバー装画・宮本忠夫

*カバー文
十七歳の誕生プレゼント「赤いらせん階段」は津村ノブ子にとって、思想と行動の自由の象徴のはずだった。ところが、長髪禁止の問題、高校生の横のつながりを求める動き、その連帯を断ち切ろうとするもの……がノブ子たち高校生を「よういならぬ時間と空間」の危険な状況の中に捲きこんでいく。話題を呼んだ異色大河小説の第3巻 (全5巻)


早船 ちよ
「キューポラのある街 4 さくらさくら」



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*345頁
*発行 1977年
*カバー装画・宮本忠夫

*カバー文
19歳になったジュン。進む道はそれぞれちがうが、キューポラの街の仲間とともに恩師の教壇復帰運動に若いエネルギーをぶつけていく。それは、地下室に職場を移され、過重な労働をさせられているジュンにとって自らを脱出させるものなのだ。懸命に生きる若者たちを描いた異色大河小説の第4巻(全5巻)。


早船 ちよ
「キューポラのある街 5 青い嵐」



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*425頁
*発行 1977年
*カバー装画・宮本忠夫

*カバー文
職業病にかかり製糸工場をやめたジュンは、工員寮のママさんとしてキューポラのある街に帰ってきた。もう20歳だ。「沖縄の歴史の変わるべき日にジュンの歴史も変わる」 ― 沖縄返還デモに参加した日から、一人の労働者として仲間とともに考え、明日へはばたこうと決意する。嵐の時代を生き抜く若者たちを活写した異色の大河小説の第5巻(全5巻完結)。

*解説頁・小宮山量平


原 勝郎 (はらかつろう)
「東山時代に於ける一縉紳の生活」 (ひがしやまじだいにおけるいちしんしんのせいかつ)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・寺沢彰二
(画像はクリックで拡大します)

*126頁 / 発行 昭和53年

*カバー文
本書は明治・大正を代表する歴史学の泰斗原勝郎博士の手になるものの一つで、京都大学文学部の機関紙『芸文』に発表せられた当時から傑作とうたわれ、博士のもう一つの論文「日本中世史」とともに、歴史を志す人にとって必読の名著といわれている。三條西実隆(さんじょうにしさねたか)という一公卿の生活描写をとおして、東山時代そのものの姿を明らかにした本書は、単に歴史の記述というに止まらず、その格調高い名文は、歴史記述の文学的古典ともいえよう。


*目次
例言
東山時代に於ける一縉紳(しんしん)の生活
解説 今枝愛眞
原勝郎著書目録


半村 良 (はんむらりょう)
「講談 碑夜十郎〈上下〉」
 (こうだんいしぶみやじゅうろう)


*カバーデザイン・安彦勝博
(画像拡大不可)

 

*上巻463頁・下巻386頁 / 発行 1992年

*カバー文
〈上〉
お十夜の晩に千住の在、西新井の石碑の前で全裸のまま眠っていた美男子は、名づけて碑夜十郎で剣の達人。記憶を失ったまま女白浪のお絹に拾われた美男剣士夜十郎が、河内山宗俊らご存知天保六花撰のメンバーとともに、江戸の町を走りまわり、悪人どもと庶民の敵をこらしめる講談タッチの痛快長編時代小説。
〈下〉
己れの名も過去も知らぬ謎の美剣士碑夜十郎だが、人情あつく正義感は人1倍。囚われの友を救出せんと今宵も危険を覚悟で敵地に乗り込んだが、さて。一肌脱いだ河内山はいかに。天保六花撰プラス美男剣士が江戸の町を痛快に暴れまくる。物語の名手が講談と小説をジョイントさせた傑作長編時代小説。全二巻。