絶版文庫書誌集成

河出文庫 【き】

菊村 紀彦 (きくむらのりひこ)
「読む仏教百科」
(よむぶっきょうひゃっか)


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*269頁
*発行 1984年

*帯文
手のひらに乗せてみませんか仏教
世間、油断、奈落など仏教に由来することばの解説を通して深遠な世界を案内する入門百科。

*目録文
仏教ってなんだろう? 現代に生きる仏教語や地獄極楽の話など、読むにつれ安らぎの得られる入門書


岸田 秀 (きしだしゅう)
「フロイドを読む」
(ふろいどをよむ)


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*228頁 / 発行 1995年
*カバー装幀・山西秀市

*カバー文
中学生の折、古本屋で見つけた「フロイド」の本。その中には、“わたし”と同じように、実際には借りていない金を返そうとする患者が、強迫神経症の一例として描かれていた……。
自分の生い立ち、母親との愛憎、恋愛体験などを素材にしながらユニークな「自己分析」を展開。フロイドの新しい読み方や著者核心の“唯幻論”を、自らの生きた体験を通して語る話題作。

*目次
フロイドとの出会い / 強迫観念と行為化 / 目立ちたがり / 自己分析 / 反復強迫と転移 / 恩着せがましさ / 対象選択 / 現実喪失 / 現実喪失と固着 / あとがき / 解説 ― 竹田青嗣


木村 一郎著・城 市郎監修 (きむらいちろう・じょういちろう)
「お定色ざんげ ― 阿部定の告白」
(おさだいろざんげ)


*カバー装幀・伊藤由樹緒
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*244頁 / 発行 1998年

*カバー文
愛人を殺し、男根を切りとって持ち歩くというセンセーショナルな事件をひき起こした女・阿部定。半世紀以上を経た今も関心を集めつづけ、ベストセラー小説『失楽園』の下地ともなった事件を、お定はなぜひき起こすことになったのか。生い立ちから33歳で事件を起こすまでのお定の歩みを、彼女の立場に立ち、彼女に寄り添うようにして描いた告白体小説。

*目次
はじめに

第一章 愛慾+独占=殺人
 私は「愛する」と云う言葉より、平俗に、「惚れる」とか「好きだ」と云う方が好きなのです。 ―― 里見ク「多情仏心」
第二章 捨てられた男
 まず彼女のプロフィルを……荒淫か、多淫か、変態か
 人間の本能とは
第三章 生い立ち
 処女を奪われた乙女!!
 自棄 ―― 不良少女へ
第四章 流転
 環境が彼女を支配したか
 生れつきの浮気娘であったか
第五章 愛慾巡礼
 芸妓→娼妓→女給→淫売婦→妾→女中
第六章 娼妓時代
 一生の重荷に代えて購(あが)なえる一夜の妻の美しさかな
第七章 高等淫売時代
第八章 希望への道へ!
 かけまくも月は流転をかけそらしわが越し方を何と跳むる
 上京商業の校長さんの出現
第九章 邪恋地獄
 清元の保名の恋の一と節を涙ながして聴くは誰が子ぞ
 吉田屋の主人=石田吉蔵
第十章 焦燥・懊悩
 仮名屋小梅の大川端の殺し場 ―― 刃物の魅力
第十一章 惑溺の世界
 爛れ行く愛慾生活
 尽きざる性の饗宴
第十二章 楽しき殺害
第十三章 逃避行
 落人 ―― 五月雨煙る中を……
第十四章 恋愛論
 彼女の恋愛論
 解説 鈴木敏文


京都新聞社編 (きょうとしんぶんしゃ)
「京都・伝説散歩」
(きょうと・でんせつさんぽ)


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*357頁
*発行 1984年

*目録文
古都の片隅に、今なお生き続ける知られざる名所115ヶ所を足で探ねて掘り起し、写真と文で案内する


ギヨーム アポリネール著・窪田 般彌訳 (Guillaume APPOLLINAIRE・くぼたはんや)
「若きドン・ジュアンの手柄ばなし」
(わかきどんじゅたんのてがらばなし)


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*170頁
*発行 1997年
*カバー装幀・菊地信義

*カバー文
二十世紀初頭、彗星のごとく登場した天才アポリネールは、比類のない散文の名手として名高い。シュルレアリスムへの時代方向を決定づけた珠玉の詩篇や小説をはじめ、《愛の巨匠》叢書の編集への傾倒が、豊饒な詩的エロティシズムの世界へと彼を昇華させた。本編収録のJ・コクトーが指摘するように、天衣無縫なエロス的人間の前衛性と精神性の系譜を、彼はこの作品で見事に著したのである。

*解説頁・訳者


吉良 竜夫 (きら たつお)
「生物学からみた自然」
(せいぶつがくからみたしぜん)


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*278頁
*発行 1983年

*帯文
発狂する地球の病理解剖
危機は、地球的規模で進行している。その病理の解明をになって登場した新しい学問とその思想 ── 生態学は、全地球の自然システムと人間の関係を考え、時代の質問にこたえようとする。
環境破壊、公害問題を考える現代人へおくるもっとも根本的な発想


キリンビール編
「ビールと日本人 ― 明治・大正・昭和ビール普及史」
 
(びーるとにほんじん)


*カバーデザイン・広瀬郁
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*334頁 / 発行 昭和63年

*カバー文
ビールが日本へ渡来したのは明治以前、幕末維新期である。それから百三十年程の普及の足跡を綴った本書は、日本人とビールの密接な関係を見事に描き出している。各階層のビールの普及順序は、新しい文化の担い手の変遷と対応しており、現在は国民的支持のもとに大量消費時代をむかえている。アルコール飲料の多様化の中で、根強い人気を維持している秘密を、本書は教えてくれる。

*目次
口絵(ポスターと燐寸ラベルのカラー写真)
第一章 日本人のビール初体験
 1 大君の使節と留学生の体験
  玉虫左太夫の一喫 / ビールのオンザロック / 岩倉大使の飲酒文明論
 2 西眼に映じた日本人
  紐育(ニューヨーク)の新聞評 / エゲレス公使の鋭い洞察 / 日本人の物真似趣味 / 薩長の侍、ビールに酔う
 3 オランダ帰りのドロンケン
  オランダ留学生 / 獄中からの手紙
 4 ビールと酌交わすサムライ兄弟
  人気者トミー / 貴重な一枚の写真
 5 辞書に見るビールの足どり
  “ベール”と読まれたBeer / オランダ語から入ったビール / 漢字では“?(口に卑)酒”と“麦酒” / “むぎざけ”と“ばくしゅ” / “ばくしゅ”から“ビール”、“ビヤ”へ / “なま”ビールか“き”ビールか
第二章 文明開化の波に乗って
 1 飲まれ始めたビール
  開港直後から輸入 / 赤い△印のバス・エール / 人気の証拠 / 横浜ビールの東京請売一手捌所 / 缶詰ビールと樽ビール / 「一壜たりとも御届申す」 / コップ売りの流行
 2 “西洋御料理”とビール
  西洋料理事始 / 西洋料理とビールの価格 / 蝙蝠傘、山高帽、麦酒 / 野村胡堂の盛岡時代 / 『三四郎』の文明体験
 3 鉄道とビール
  新橋駅の売店 / 鉄道と酒屋 / 駅を舞台にした広告 / 食堂車 / 車中の飲み食い
 4 イギリス風からドイツ風ビール
  ストックビール / 国産ドイツ風ビールの誕生 / 国産イギリス風ビールの衰退
 5 ビヤホール繁盛
  横浜のビヤハウス / 大阪のビール会 / 東京のビヤホール / いろいろのビヤホール / キリンのビヤホール
 6 軍人とビール
  ドイツ帰りの軍人たち / 乃木将軍の号令一下 / 酒保のビール
 7 手土産とお中元
  一橋徳川家の場合 / 庶民のお中元 / “平民社”にビール到来
 8 大衆化の始まり
  夜会 / 園遊会のビール店 / 開通式 / 冷蔵函の普及 / ビール会社の工夫 / 楽隊の余得 / 広島の大相撲 / 『田舎教師』のビール
第三章 二つの大戦の間
 1 大正、昭和初期の漫画に見るビール風俗
 2 “ビール党”の誕生
  新中間層の出現 / カフエーとビール / しかし一般家庭では / “モボ”“モガ”と大型カフエー、新興喫茶店 / 家庭でも飲み始める
 3 地方でもビールが飲まれ始めた
  鉄道の発達とともに / 中央志向と地方のビヤホール / 大戦景気に乗って
 4 兵隊とビール
  兵食 / 酒保 / サラリー考 / 軍旗祭 / ヤブ入りと正月 / 出征前日
 5 王冠栓の功績
  「抜クニ困難ナク」 / 壜に問題あり / 王冠栓時代到来
 6 広告とビールの普及
  引札からポスターへ / 日本のポスターと外国人 / 屋外広告 / カフエーの出現とマッチ広告 / 多彩な広告媒体 / マス大衆雑誌の出現 / 漫画広告の登場
第四章 戦争とビール
 1 都会の配給
  京浜地帯の配給 / “暗い谷間”の乾杯
 2 東京近郊農村の配給
  配給品あれこれ / 酒とビール
 3 海軍とビール
  ビールの購入 / 「酒保開け」 / 太平洋上のビール
 4 終戦前のビヤホール、国民酒場
  「かどえび」と「かどきり」 / 行列と殺気と / 国民酒場 / 敗戦直前のビヤホール
第五章 戦後の展開
 1 進駐軍
  米第八軍の要請 / 進駐軍の消費量
 2 戦後漫画に見るビール風俗
 3 ヤミビールと特価酒
  庶民と特価酒 / 内田百閧フ場合 / 闇値と公定価格 / ヤミビールの出所と消滅 / 明治以来の減税
 4 大衆化時代の展開
  消費本数の伸び / 戦後のビール党 / 女性とビール / 大衆化のおくれ / ビール税の影響
 5 ビールの味
  明治初期のビール / 糖度高く苦味強し / コハク色で呑口良し / 淡白で飲み飽きず
 ビール普及年表 / ビール小売価格表 / 主要使用文献 / 執筆者・おもな資料提供者 / あとがき / 文庫版あとがき
 鼎談解説 見事なビール文明論 丸谷才一・木村尚三郎・山崎正和