絶版文庫書誌集成

河出文庫 【は】
ホーム | 河出文庫目次

パウル・フリッシャウアー著・関 楠生訳 (Frischauer.Paul・せきくすお)
「世界風俗史A 古代ローマから恋の時代ロココまで」
(せかいふうぞくし)


*2005年新装版カバー
カバーデザイン・渋川育由
(画像はクリックで拡大します)

*349頁 / 発行 2005年

*カバー文
ネロやメッサリナの悪徳と狂宴に象徴される帝政ローマの風俗、キリスト教、イスラム教の強い影響のもとで抑圧され、屈折した性の意識、騎士道華やかなりし中世ヨーロッパ、きらびやかなルネサンス、バロックを経て、「大革命の勃発するまえ、愛をもてあそび、絶えず恋をしていたヨーロッパの男女の時代」ロココまでを描く、興趣尽きない性風俗の絵巻。

*目次
1 「悪徳の頂点」 帝政時代のローマ
2 「悪霊の門」 初期キリスト教とビザンティウム
3 「人間は弱い被造物である」 ムハンマドとイスラム
4 「女性は生まれつき従属的地位にある」 中世
5 「世界でもっとも飢えたけもの……」 中世からルネサンスへ
6 「恋する人々にはどんなことでも許されている」 宗教改革からロココへ
 訳者あとがき


白鴎遺族会 (はくおういぞくかい)
「雲ながるる果てに
戦歿海軍飛行予備学生の手記」 (くもながるるはてに)


(画像はクリックで拡大します)

*303頁
*発行 昭和60年
*カバー装幀・荒川じんぺい

*カバー文
ほんとうに
俺を忘れないでいてくれる奴が一人……
第二次大戦の末期、神風特別攻撃隊他の一員として、大空の彼方、海原の果てに散っていった若き海軍飛行予備学生たち。母に、妻に、愛児に、肉親に、恋人に、そして祖国の未来に、熱い想いをこめて書き遺した手記、遺書、手紙など青春の絶唱を集成 ― 映画化され感動をよんだ不滅の名著、戦後四十年目に初の文庫化。


橋本 治 (はしもとおさむ)
「’89 (上下)」 橋本治コレクション
(はちじゅうく)


*カバー装画・杉田比呂美
 カバー装幀・渡辺和雄
 フォーマット・粟津潔
(画像はクリックで拡大します)

*上巻323頁・下巻391頁 / 発行 1994年

*カバー文
昭和が終わり、天安門事件が起こり、リクルート事件がピークを迎え、美空ひばりが死亡し、東西の壁が崩壊し、宮崎勤事件が発覚した一九八九年。さまざまな時代の亀裂を見せたこのとんでもない一年に真向からぶつかり、体を張ってラジカルに問いかけ、問題の中心をひっぱり出す。“いま”という歴史をどう読み解くかをすべての人に示してくれる恐るべき89年の総括。

*目次
上巻
第一部
T 90年安保がやって来た!
 こんなん、出ましたけど…… / 「昭和」が向こうへ飛んでいく / 中村鴈治郎の「富士山」 / もう「怖いもの」がなにもない / 総理大臣秘書が死んだ日
U オジサンたちの89
 他人の不幸 / オジサンて、ホントによく分からないな / 昔風の権力者(五月の天安門) / 「父」が死んでアジアの民主主義が始まる / もしも、美空ひばりがまた「お父っつあん」と言ったなら…… / 国家は会社である
V ジャーナリストたちの89
 一体日本に言論の自由はあるのかPART1 / 橋本流は独断人生相談術 / 一体日本に言論の自由はあるのかPART2 / 「おめえら、何やってんだ」が言えない ―― 新聞編 / 情報を総合化できないで空洞化する ―― 雑誌編 / 最大公約数的な一般常識はだれが作る ―― 出版編 / 信条の自由
W オバサンたちの89
 消費税のおかげで、自民党が消える / みんな「土井たか子」になっちゃった / 「女はバカだ!」と、遂にかつての女性週刊誌編集長は怒った / おばさんになら政治が出来る / 自信がすべて / さっさと本当にしてほしいよ / 知性ゼロのすごさ
第二部
X 青年たちの89
 徹底分析 日本国参議院選挙89 / “我々”とは一体なんだ? / セクハラしない男っているのか? あるいは、さまよえる欲望の論理
 
下巻
Y 男の子たち89
 おたくのための人生相談 / みんな“オタク”になっちゃうぞ / どう? / コミケット1989 / ウチの『MOTHER』の主人公はイナリズシの好きなケンシローで、ガールフレンドはドイタカコだ
Z 海の向こうの89
 エッフェル塔下のブルボン王家 / 阿片戦争時の清朝と酷似してきた米国 / 国がつまらないから家出した難民たち / 92年EC大統合、あるいはベルマン民族とローマ教会の関係について
[ 終わってしまった89
 人力エネルギーで“快適”生活を / 封印されたマンションがスラム化する / 労働の意味と世界史の展開について / 人はなぜ死ぬのか、そして、自然は生きている
\ 女の子たちの89
 さる筋の結婚 / 山瀬、井森が知的になったら……(デビ夫人特別参加版) / 島国社会に訣別して女性が進化する / 女王の孤独、オバサンの行進、少女の不可解、あるいは、十年後の桃尻娘たち
エピローグ きみだけに贈るつもりの89
 十九歳の男の子から89年の終わりにこんな手紙がやって来た / 昔“女の子”は存在しなかった、“男の子”だって / きみだけに贈るつもりの『89』

NOTES
関連年表


橋本 治 (はしもとおさむ)
「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」〈前後編〉
 (はなさくおとめたちのきんぴらごぼう)


*カバー装画・大島弓子
(画像はクリックで拡大します)





*前編222頁・後編327頁 / 発行 1995年

*カバー文
まったく新しい「ひょうろん」の世界を拓く初めての「少女マンガ」論。この世にしっかり存在しているのに存在していないように扱われている世界を、存在してはならない言葉だと思われているのに、しっかり現実の言葉として生きている文章で明解にこの世に存在させてしまった恐ろしい本。少女マンガの天才たちがいかに現代日本文化の中心にかかわっているか。

*目次
前編
 第T章 失われた水分を求めて 倉多江美論
 第U章 眠りの中へ 萩尾望都論
 第V章 世界を変えた唇 大矢ちき論 付、猫十字社論
 第W章 妖精王國女皇紀 山岸涼子論
後編
 第X章 九十九里坂の海賊の家 江口寿史論+鴨川つばめ論
 第Y章 優しいポルノグラフィー 陸奥A子論
 第Z章 それでも地球は、廻っているのだ! 土田よしこ論
 第[章 全面肯定としての笑い 吾妻ひでお論
 第\章 ハッピィエンドの女王 大島弓子論
 ・あと描き・
 解説 柳沢健(会社員)
 ●作品リスト(掲載順)



蓮實 重彦 (はすみしげひこ)
「陥没地帯」
(かんぼつちたい)
河出文庫 文芸コレクション


(画像はクリックで拡大します)

*171頁
*発行 1995年
*カバーデザイン・菊地信義
 カバー装幀・山西秀市
 カバー装画・Van Melckebeke

*カバー文
「物語」はとうの昔に始まっているのだし、とうの昔に「事件」は終わっている。風景の中心はからっぽのまま、西風が砂塵を巻き上げ、群生植物の茂みは斜面にしがみついている……。著者が初めて書いた伝説の小説、待望の文庫化。

*解説頁・武藤康史


八代目 桂 文楽著・聞き手 暉峻 康隆 (かつらぶんらく)
「文楽の落語藝談 長生きするのも芸のうち」
(ぶんらくのらくごげいだん)


*カバーデザイン・水上英子(シルシ)
 カバー写真提供・共同通信社
(画像はクリックで拡大します)

*167頁 / 発行 2015年

*カバー文
時間に糸目をつけず、ゆっくりと修業の苦心談や芸談を聞いてみると、まことに楽しかったというよりも、一芸に達するには、遠くはるかな道をうまずたゆまず歩き続けなければならないということがよくわかった。近道をしては、本物にはなれないのだ。落語界の新人たちへの置土産のつもりであります。(暉峻康隆)

*目次
一 おしゃべり小僧時代
 八代目文楽とは / はなし家になろうとは / 横浜へ奉公に / おしゃべり小僧と芸にきびしい母 / 芝居と京浜電車とお暇(ひま) / ヤクザの家に居候 / ヤクザの親分になっていたかも / 色ばなしと所払い
二 はなし家入門 ── 芸と修業
 桂小南に弟子入り / 名人小金井蘆洲と「雪月花」 / 旅回りと芸のくずれ / 芸人は芸だけじゃだめ ── さん馬師匠との別れ / 円喬・円右・小円朝の心持 / 人生の師匠 ── 五代目左楽 / 円馬師匠にくいついて / 芸で、芸で、芸で夢中 / 大師匠三代目円馬と芸のきびしさ
三 はなし家の生き方
 はなし家は死ぬまで修業 ── 小さん・正蔵・円生 / つらいことがあったら芸だと思いな ── よくなった馬生 / 「長生きするのも芸のうち」
四 庶民の芸 ── 「咄」を創ること
 人の噺をよく聞くこと / 「廏火事」が大好き ── おなじみの髪結いさん / 「寝床」を生地でいく / 「明烏」の苦心
五 寄席が芸をささえる
 きょうは暉峻先生が見えている / 常連のきびしさ ── 足裏の顔向ける / ホール落語と小娘の人気 / 高座の雰囲気をつくる / 人気にたよらず / このごろの聴衆 ── 聞くほうも腕をみがいたら
六 これからの落語界
 芸と客と渡り合え
付録 廏火事


パトリック ワルドベルグ著・巌谷 國士訳 (Patrick Waldberg・いわやこくし)
「シュルレアリスム」
(Chemins du surrealisme)


*カバー写真・Rene Magritte:LA GRANDE FAMILLE
 (C)ADAGP,Paris&SPOA,Tokyo,1998
 カバー装幀・菊地信義
(画像はクリックで拡大します)

*338頁 / 発行 1998年

*カバー文
二十世紀初頭に斬新で革命的な運動として芸術界を席巻し、あらゆる既成概念を打破しつづけながら新しい思想を追い求めたシュルレアリスム=超現実主義。本書は、その完全な入門書であり、かつ「宣言」をはじめとする重要なテクストを網羅し、貴重な図版を豊富に収録した決定版である。夢、無意識、存在、生 ── 現代のラディカルな出発点を再認識し、新たな躍動へ誘なう衝撃の古典。

*目次
序文
シュルレアリスムの道
シュルレアリスム資料集
 アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言集』より
 『シュルレアリスム革命』誌(一九二四-二九年)より
 アンドレ・ブルトン『シュルレアリスムと絵画』より
 マックス・エルンスト『絵画の彼方』(一九三六年)より
 ポール・エリュアール『見せる』(一九三九年)より
シュルレアリスム詩選
シュルレアリスム人名解説
シュルレアリスム略年表
 訳注 / 訳者後記 / 文庫版あとがき


林 美一 (はやしよしかず)
「艶色 江戸の瓦版」
 (えんしょくえどのかわらばん)


*デザイン・広瀬郁
(画像はクリックで拡大します)

*277頁 / 発行 1988年

*カバー文
江戸時代の庶民のありのままの生活を知ろうと蒐書しているうちに、片々たるかわら版や摺物、写本などの戯文類が山をなすに至った。こうした小品、いわば屑本で、文学の枠内にはなかなか入らないものだが、そこには庶民の飾らぬ喜怒哀楽が横溢している。江戸と大阪の路地裏を彷徨する気持ちで、ここに収録した“ガラクタ”を、お好きなところから読んでいただければ幸いでいる。

*目次
 はじめに
 お読みになる前に
天明の浅間噴火と江戸洪水の瓦版
瓦版の唄本『へそのあなくどき』
松平外記刃傷事件と『冥途道中無陀栗戯』
大坂の瓦版大板元、本安の「大わらひ三十六開仙」
虎とらくだの日本初上陸
鶏に化けたとうもろこし
瓦版の軍談もの『花山大合戦』ほか
腹中パノラマ図「飲食養生鑒」と「房事業養生鑑」
経木摺の珍版「木曽名所図会」ほか
屁の放りかたにも裏表『屁生物語』
稿本『首切噺』と鴎外の名作『高瀬舟』
「座薬子宮温」効能書と龍?(かくしじょうこ)
吉原細見の珍板『仮宅細見尻取伊呂波短歌』
明治の珍板『春窓情史』
弥次北艶本の稀本『道中千話栗毛』前編の発見
「膝栗毛」の作者十返舎一九の自画作艶本
英泉画作艶本『閨中紀聞枕文庫』の参考書
文指南もの艶本ひかえ
あとがき


林 美一 (はやしよしかず)
「芸術と民俗に現われた性風俗 ― 王城の春篇」 (げいじゅつとみんぞくにあらわれたせいふうぞく)


*カバー絵・中世の絵巻断簡より、作者不詳
 カバーデザイン・天野誠

(画像はクリックで拡大します)

*189頁 / 発行 1998年

*カバー文
「人間という生物は、実に飽きもせず、元始から今日まで、自分たちの性の記録を遺しつづけてきたものだ」(はしがき)。
性美術・性風俗研究の第一人者が、『古事記』『万葉集』から安土桃山文化に至る日本人の豊潤多彩な性表現を追求した傑作。併せて、乱交・獣姦・男色など、およそ考えうるすべての性風俗を採取し、遂に日本版・性の百科全書を完成させた。

*目次
はじめに 人間は性の記録者
第一章 神の時代の性風俗
 『古事記』の性描写に驚く / 美富登によせる情熱 / 果して神代は女尊男卑か? / 多情のなかの倫理 / 乱交・獣姦・男色 / 芸術は女陰から生まれる / 男性器崇拝と金精様 / 巫女は売笑婦の第一号か? / 遊女は朝鮮からやってきた / 中国の房中術の影響 / 不便だった閨房生活
第二章 王朝時代の性風俗
 男形使用第一号は女帝か? / 婿取り婚と女性の七法 / 堕落僧と売笑婦の発生 / 『萬葉集』の遊行女婦 / 『遊女記』に見る江口の遊女 / 傀儡子、帰化する / 男装の美姫、白拍子の登場
第三章 鎌倉〜室町時代の性風俗
 遊君別当の設置 / 遊女から営業税徴収 / 黴毒、日本国に上陸 / 悲惨なる黴瘡の症例 / 嫁入りと寝室の風俗 / 女性は戦国の犠牲者
第四章 文芸に現われた性風俗
 『偃側図』と春宮詩文 / 分に過ぎたそのものの寸法 / 中国春画と鳥羽僧正 / 魔羅の讃、鉄槌伝
第五章 安土・桃山時代の性風俗
 秀次の愛妾に見る早婚ぶり / 日本最初の遊廓、柳町の誕生 / 秀吉・家康の都市繁栄政策

*全二冊。二冊目は「江戸開花篇」。


原 武男 (はらたけお)
「江戸時代諸国奇談」
(えどじだいしょこくきだん)


(画像はクリックで拡大します)

*251頁
*発行 昭和62年
*カバーデザイン・林佳恵

*カバー文
江戸時代の知識人たちが、折りにふれて書きとめた数多くの記録や随筆がある。そこには当時の人々が不可思議に思ったさまざまな出来事が誌され、江戸時代人のふしぎ感覚世界を語り残している。
本書は、その厖大な文献の世界を渉猟した碩学が、94の話題を選び、わかりやすく語ったもの。江戸時代人の素朴な感覚・生活感情があふれた、江戸ワンダーランド案内の好著である。