絶版文庫書誌集成

中公文庫 【お】


大江 健三郎 (おおえけんざぶろう)
「二百年の子供」
(にひゃくねんのこども)


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*297頁
*発行 2006年
*カバー画・船越桂 / カバーデザイン・中島かほる

*カバー文
タイムマシンにのりこんだ三人の子供たちが、この国の過去と未来で出会う、悲しみと勇気、時をこえた友情。ノーベル賞作家がながい間、それもかつてなく楽しみに準備しての、ファンタジー・ノベル。新たに文庫の読者のためのあとがきを付す。


大岡 昇平 (おおおかしょうへい)
「堺港攘夷始末」
 (さかいみなとじょういしまつ)


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*440頁
*発行 1992年
*カバー・嘉永四年堺具足屋他五書林合梓『堺大絵図』(明治新増補)

*カバー文
慶応四年二月十五日、フランス水兵と土佐藩兵との間にその事件は起った。殺されたもの、切腹したもの、死は免れたもの ―
非運な当事者たちを包みこむ事件の全貌を厳密正確に照らし出そうとする情熱、歴史をみはるかす自由闊達な眼差し……
構想十年、歴史を文学に昇華させる夢を紡いだ偉大な作家の渾身の遺著。

*解説頁 歴史が小説になるとき 菅野昭正


大岡 昇平 (おおおかしょうへい)
「ザルツブルクの小枝」 
(ざるつぶるくのこえだ)


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*361頁
*発行 1978年

*カバー文
一九五三年十月、横浜港を出帆、アメリカ・ヨーロッパへの留学の旅に出る。
大峡谷、雪のサンタ・フェ、由縁のハイラインの塩坑下り、コモ湖畔の夕闇――瑞々しい感性で綴る新編の紀行文学。


大岡 昇平 (おおおかしょうへい)
「将門記」 (まさかどき)


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*240頁
*発行 1975年

*カバー文
天位を僭称し極悪人として糾弾された平将門。その波乱の生涯の心理と行動を精細に追究した「将門記」のほか、歴史小説に新境地を示した「天誅」「姉小路暗殺」「挙兵」「吉村寅太郎」「高杉晋作」「龍馬殺し」の六編を収める。

*解説頁・中野孝次


大岡 昇平 (おおおかしょうへい)
「ミンドロ島ふたたび」 
(みんどろとうふたたび)


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*257頁
*発行 1976年

*カバー文
戦後二十数年、一兵士として戦った現地を再び訪れて、自らの生と死との間の彷徘の跡を尋ね、亡き戦友への追慕と鎮魂の情をこめて詩情ゆたかに戦場の島を描く「ミンドロ島ふたたび」のほか、「比島に着いた補充兵」「忘れ得ぬ人々」「ユー・アー・へヴィ」「改訂 西矢隊始末記」の五篇を収める。

*解説頁・中野孝次


大岡 信 (おおおかまこと)
「青き麦萌ゆ」 (あおきむぎもゆ)


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*274頁 / 発行 昭和57年
*カバー・志村ふくみ「藍白緑黄段」部分(紫紅社『志村ふくみ作品集』より)

*カバー文
万葉秀歌から岡鹿之助まで ― 詩を語り、歌仙の世界に遊び、芸術の小径を逍遥する。言葉への大胆・果敢な探索と鋭敏な審美眼で独自の詩的宇宙を構築する著者が縦横に綴る豊饒なエッセイ集

*目次
 T 時のめぐり
「瞬間」が「時間」でないこと / 月のめぐりの記 / 少しあらたまって / 人それぞれの生れ月 / 青き麦萌ゆ / 露の命 / 五月の危機 / 水無月の / 夏の氷 / 死ね、そして成れ! / 雨期の羊 / 種子を運ぶ / 蝙蝠がきえて
 U 言葉のうちそと
どうもまったくものすごく / 語の履歴を気に病む / 漢字の制限について / 教育の国語・文学の国語 / 流行語・外来語について / 仙人が碁をうつところ / 好きな言葉はと問われて / 考えられないものに触る / 大槻玄澤のこと / 語に出会う
 V 詩・歌・句
万葉の歌いくつか / 無名の歌の魅力 / 私の中世 / 中世の精神の新しさ / 古典を訳する / 秋成の歌 / 「鬼の詞」の頃 / 三人の歌人 / 空穂の詩境 / 父の歌集 / 連句、その楽しみ / 連句、その苦しみ、そして楽しみ / 連句、そして連詩 / 芭蕉・蕪村・一茶の句いくつか / 七七と五七五と / ある詩人の話 / 「こちらは詩人の……」
 W 創られたもの・創る人
山門三章
書と芸術性 / 秋艸道人のことなど / わたしの写楽 / メード・イン・ジャパン / 一枚の絵を前にして / 岡鹿之助の世界 / 武満徹と私
 X また、時のめぐり
ある青春 / 寮生活よしなごと / 志賀直哉を読んだころ / 椎名麟三追悼 / 満十年目の喜劇 / 鵯のころ / 姿勢について
 解説 日野啓三


大岡 信 (おおおかしん)
「若山牧水 ― 流浪する魂の歌」 
(わかやまぼくすい)


*カバー画・前川千帆「伊豆南端」部分
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*161頁 / 発行 1981年

*カバー文
幾山河こえさりゆかば寂しさの
  はてなむ国ぞけふも旅ゆく
白鳥は哀しからずや空の青
  海のあをにも染まずただよふ

果てしない旅と美酒のなかから漂泊の哀しみと男の恋歌を謳い上げる若山牧水。歌人に深い想いを寄せる著者が、犬吠岬、上高地、軽井沢、小諸、伊豆などゆかりの地を行脚し、若き日の絶唱「別離」から晩年の「山桜の歌」まで、歌ひとすじの生涯を精細に探る。

*目次
一 幾山河こえさりゆかば
二 女ありき
三 露ともならぬわが命かな
四 晶玉のかなしみとくるわの恋
五 旅にあらば命光ると
六 水源に憧れて
七 若山牧水の旅異聞
八 牧水の酒と死 ― 稲玉医師の牧水臨終記
 解説 佐佐木幸綱


大川 周明 (おおかわしゅうめい)
「回教概論」 (かいきょうがいろん)


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*272頁 / 発行 1992年

*カバー文
北アフリカ、東アフリカ、西南アジア、中央アジア、インド、東南アジア等々、世界におけるイスラムの伝播は様々な宗教的政治的社会的事情によっていてその原因は単純でない。マホメット没後百年余で世界宗教となったイスラムの多様広範に亙る研究対象のなかから、信仰・儀礼・法学等、イスラムに関する基礎知識を概説する。

*目次
 はしがき
第一章 序説
第二章 アラビア及びアラビア人
 第一節 アラビア半島 / 第二節 「天幕の民」 / 第三節 「屋壁の民」 / 第四節 アラビア人の宗教的信仰
第三章 マホメット
 第一節 メッカに於けるマホメット / 第二節 メディナに於けるマホメット / 第三節 人間としてのマホメット
第四章 古蘭及び聖伝
 第一節 古蘭の成立 / 第二節 古蘭誦出の年代 / 第三節 聖伝の発生 / 第四節 聖伝の編纂
第五章 回教の信仰
 第一節 回教の信と行 / 第二節 アルラー / 第三節 天使 / 第四節 予言者と経典 / 第五節 来世 / 第六節 定命
第六章 回教の儀礼
 第一節 清浄 / 第二節 礼拝 / 第三節 損課 / 第四節 斉戒 / 第五節 参詣
第七章 回教教団の発達
 第一節 初代四カリーファ時代 / 第二節 ウマイヤ朝と回教教団の分離 / 第三節 シーア諸派の興亡 / 第四節 回教に於ける政権と教権 / 第五節 政治団体としての回教教団の特質
第八章 回教法学の発達
 第一節 回教法学の根本要素 / 第二節 回教法学の建設 / 第三節 回教法学の大成 / 第四節 回教法学及び法律の現在
  解説 村松剛


大熊喜邦 (おおくまよしくに)
「江戸建築叢話」 
(えどけんちくそうわ)


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*242頁 / 発行 1983年
*カバー・和田倉門 明治二十九年刊『江戸三十六城門畫帖』より

*カバー文
江戸研究の硯学がその専門的立場から究めた江戸時代における各方面にわたっての建築文化を物語る貴重な十篇。

*目次
 序
一 江戸の三十六見附
二 大岡越前守の南町奉行所
三 江戸のマーケット 江戸橋広小路の市場を語る
四 江戸の四宿
五 交通から見た街道の茶屋と休所
六 東海の御関所
七 伊万里の陶器蔵屋敷と津和野の紙蔵屋敷
八 大阪南難波村百文銭吹立所
九 家作に関する物価労銀と店賃地代の抑制
十 日光東照宮の造営
 解説 大熊喜英


大河内 正敏 (おおこうちまさとし)
「味覚」 
(みかく)


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*193頁 / 発行 1987年
*カバー原画・八百善『料理こんだてあはせ』(文政ごろ刊)より

*カバー文
江戸期の魚、すき焼と火鍋子、釣船の朝飯、フランスの鴨――。ビタミンA、アルマイトなどの研究を企業化して成功させ、世界的注目を集めた理研コンツェルンの総帥が、巣鴨プリズンの独房でかつて浸った味覚の世界を追想し、素材と調理、食と文化への想いをめぐらす。食糧難の戦後に今日の米過剰を予見し、栄養と美味を兼ね備えた調理学〈ガストロノミー〉を説く洞察に満ちた書。

*目次
料理通〈グールメー〉と栄養料理 / 甘藷と馬鈴薯 / 野鳥の味 / 御狩場焼 / 天ぷら / 鮪のトロ / 釣船の朝飯 / 江戸前の魚の味 / 魚の養殖 / 秋雑感 / 大鷭・小鷭 / 中金の豚鍋 / パリの虫料理 / 正陽楼の成吉斯干料理 / 甘味 / 羊の肋骨肉とアイリッシュ・シチュー / ウィーナーシュニッツェルとアイスパイン / すき焼きと火鍋子〈ホウコウツ〉 / 日本酒と合成酒 / 鰻とすっぽん / フランスの魚料理と牡蛎の養殖 / 臓物料理 / 味覚随筆 / 塩物干物 / 大河内正敏略年譜


大杉 栄 (おおすぎさかえ)
「大杉栄自叙伝」
(おおすぎさかえじじょでん)
中公文庫BIBLIO20世紀


*カバー写真:PANA通信社
 カバーデザイン:EOS Co.,Ltd.
 Art Direction:吉田悟美一 Design:山影麻奈
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*325頁 / 発行 2001年

*カバー文
はじめに行為ありきと唱え、美は乱調にありと謳って、閉塞した時代に真っ向から挑んだ大杉栄。あまたの愛と叛逆に彩られた生涯の起点を自ら語る「自叙伝」、そして精神の飛翔を記した「僕は精神が好きだ」などを収録。

*目次
僕は精神が好きだ
 無題 / 社会か監獄か / 秩序紊乱 / 道徳非一論 / 僕は精神が好きだ / 征服の事実 / 生の拡充 / 自我の棄脱 / 僕らの主義 / 労働運動の精神 / 最近労働運動批判 / いわゆる評論家に対する僕らの態度 / 政府の道具ども / おれたちの日 / トロツキーの共同戦線論 / そんなことはどうだっていい問題じゃないか / 石川三四郎におくる / 築地の親爺 / 久板の生活
自叙伝
 (一)〜(六) / お化けを見た話
解説 落合恵子


大竹 省二 (おおたけしょうじ)
「遙かなる鏡 ― 写真で綴る敗戦日本秘話」
 (はるかなるかがみ)


*カバー写真・大竹省二
 カバーデザイン・山田健二
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*291頁 / 発行 2000年

*カバー文
一九四七年、GHQの広報部嘱託のカメラマンという特異な職を得、米軍将兵のための慰安施設であったアーニー・パイル劇場で働くという貴重な体験に恵まれた著者がマッカーサー元帥、マリリン・モンロー、カラヤンなどの撮影秘話を交えながら、復興日本の足跡を秘蔵写真とともに綴る戦後日本の裏面史。

*目次
第一章 空襲、そして……
第二章 これからどうする
第三章 焦土の女
第四章 父の生きざま
第五章 出会い
第六章 ラッセル中尉
第七章 日本の中のアメリカ(アーニー・パイル)
第八章 樅の木伐採事件
第九章 来日女優たち
第十章 支配者
第十一章 ひばりとの出会い
第十二章 オペレッタ「ミカド」
第十三章 ストリップ取材
第十四章 パンパンの言い分
第十五章 アーニー・パイルの終焉
第十六章 スマイル・マック
第十七章 血のメーデー
第十八章 ヌード撮影事件
第十九章 モンローとユバ・ガードナー
 あとがき
 文庫版によせて


大城 立裕 (おおしろたつひろ)
「朝、上海に立ちつくす
小説東亜同文書院」 (あさしゃんはいにたちつくす)


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*340頁
*発行 1988年

*カバー文
近代日本の中国政策と深くかかわっていた東亜同文書院大学。敗戦へと向かう厳しい状況のもと、沖縄出身の日本人学生として同文書院で学ぶ主人公と国籍の異なる学友たち ―― 。「日中共存共栄」の架け橋であろうとした同文書院が歴史に果した役割は何であったのか……。矛盾と分裂のなかでせめぎあう自らの青春体験を投影しつつ、東亜同文書院の運命を追う、長篇大作。


大庭 柯公 (おおばかこう)
「江戸団扇」
(えどうちわ)


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*206頁 / 発行 昭和63年
*カバー 安藤広重・歌川豊国合作「東都三十六景 両国ばし」(団扇絵・東京国立博物館蔵)

*カバー文
維新の挿話、菓子の話、動物の芸、かわや考、カフェー、公園私園……。江戸の面影を残しつつも、西欧の高襟風俗の流入に活気あふれる明治・大正の東都の姿を、新聞人の広い視野で活写する世相風俗百話。

*目次
江戸団扇 / 占い / 楽天宗 / お伽噺 / 看板 / 維新史挿話 / 薫香 / 貧乏の棒 / 狂詩狂歌 / ハイカラ史 / 文身 / 釣り / 菓子 / 蝦夷 / 風俗詩 / 琉球 / 蚤と蚊 / 人相 / かわや / 五色 / 酒 / 動物の芸 / 書と鉄筆 / 妻妾 / 翻訳 / 裸 / 数 / 髭 / ゆかし味 / 衾枕 / 雅号 / 三時代 / 交通機関 / 路傍樹 / 対贅六 / カフェー / 桜 / 神信心 / 三越と白木 / 公園私園 / 芝と麻布 / 鳥影樹陰 / ポンチ / 日比谷大神宮 / 道路 / 聖堂と大学 / 見える山々 / 電車哲学 / 火事 / 郊外 / 警視庁 / 食通 / 臭い都 / 売り声 / 秋気春色 / 三都是非 衣装哲学・長短方円・官学私学・言葉尽し・風来山人・川魚川船・洒落気分・代表趣味 / 解説 尾崎秀樹


大庭 柯公 (おおばかこう)
「露国及び露人研究」
 (ろこくおよびろじんけんきゅう)


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*443頁
*発行 昭和59年
*カバー装画・笠鳥純二

*カバー文
大正十三年、革命ロシアを探訪中、忽然と消息を絶った稀有の極東記者が、日本人のために遺した記念碑的著書。

*解説頁・久米茂


大林 太良 (おおばやしたりょう)
「葬制の起源」 
(そうせいのきげん)


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*323頁 / 発行 1997年

*カバー文
死は人類にとって永遠の課題であり、死に直面した人類は、さまざまな習俗や他界観を発達させてきた。本書では世界各地の葬法の諸相を概観し、さらに日本の葬制の文化史を、日本文化の形成に参与したと考えられるいくつかの文化複合との関連において検討する。人類の精神史の重要問題=葬制をテーマに、日本民族文化の源流を探る画期的論考。

*目次
第1章 死と人間
第2章 先史時代の葬制
第3章 民族学的研究の歩み
第4章 葬制の諸形式
第5章 死後の幸福
第6章 日本の葬制
第7章 エピローグ ― ヴェラの挽歌
 あとがき
 増補版あとがき
 文庫版あとがき
 参考文献
 解説 小林達雄


大原 富枝 (おおはらとみえ)
「於雪 土佐 ― 條家の崩壊」
(おゆき)


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*228頁
*発行 昭和50年
*カバー・堀文子画

*カバー文
戦国乱世の土佐、ほろびゆく一條御所の側室となった於雪(おゆき)は数奇な運命をたどり、愛するもののためにキリシタンの信仰に生きようとする ―― 。
男たちの凄まじい野望と闘争。弥陀もデウスを救いえぬ女人の業。『婉という女』の著者が力をこめて描いた長編傑作!

*解説頁・矢代静一


大曲 駒村 (おおまがりくそん)
「東京灰燼記 ― 関東大震火災」
 (とうきょうかいじんき)


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*184頁 / 発行 1981年
*カバー・安政大地震の景(安政三年頃刊『安政見聞録』より)

*カバー文
大正十二年九月一日。午前十一時五十八分――突如関東一円を襲ったマグニチュード7・9の大地震は、空前の惨害を呼んだ。川柳・浮世絵研究の耆宿が被災直後に書き留めた生々しいドキュメント。貴重写真六葉・地図三点収載。

*目次
 自序
一 忘るべかざる日
二 大震来る
三 死屍を越えて
四 老母幸いに健在なり
五 第一夜 火の海
六 大都の死屍 その一
七 大都の死屍 その二
八 死中の生者
九 第二回向院の建立
十 大都の死屍 その三
十一 富豪は宝庫を開け
十二 大都の死屍 その四
十三 酸鼻を極むる踏査記
十四 地獄脱出の実話
十五 図書の行衛
十六 名士の安否
十七 救急事業一班
十八 復旧事業一班
灰燼余録
 地震の視察と中村博士 / 東京付近の災害 / 非常徴発令の公布 / 震火災日録 / 噴火山上の舞踏 / その日の水交社 / 隣大邦の友情 / 火災保険と天災 / 腐爛死体と人間愛 / 天晴れ引責の自殺 / 全滅した後楽園 / 日露戦争より多き災禍 / 江戸の三大地震 / 能楽界の打撃 / 花屋敷の大象小象 / 震災前後の小売物価 / 焼失の区域

 あとがき 斎藤浦子
 天災は人間と都市を試す 松山巌


大宅 壮一 (おおやそういち)
「青春日記(下)」
 (せいしゅんにっき)


*カバー画・谷内六郎
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*344頁 / 発行 昭和54年

*カバー文
天才批評家大宅壮一の原点を明かす茨木中学生徒日誌の全容。良き師、良き友に恵まれ、大正デモクラシーの息吹に接した少年大宅は次第に社会に対する的確な批評眼を養う。中学二年後半から四年半ばで退学するまでの日記を収録。 (上下二巻)

*目次
大正六年
大正七年
付録 作文
 我郷土の昔話
  1 普門寺の僧兵と毘沙門天
  2 紅屋池の由来
 私の好きな遊
 我が好む学科
 夏季休暇宿題
  東京に在る友に近況を報ずる文
  地震
  大正六年と我れ
  拝金熱について
   青地晨

   上巻目次
    大正四年
    大正五年


緒方 竹虎 (おがたたけとら)
「人間中野正剛」 (にんげんなかのせいごう)


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*266頁 / 発行 1988年
*カバー写真・講演中の中野正剛(一九三一年)

*カバー文
東条打倒を策して工作した中野正剛は、衆議院議員現職のまま昭和十八年十月、逮捕された。そして幽囚一週間後に帰宅したその夜、自刃した。のち自由党総裁となった無二の親友が、痛恨の思いをこめて追懐する。

*目次
 序に代えて
中野正剛の回想
 中野の碑文 / 現状打破の牢騒心 / 東洋的熱血児 / 竹馬の友 / 悍馬御し難し / 打倒東条の決意 / 自刃・凄愴の気、面を撲つ
 彼と英雄主義――精彩を放つ人物論
  「西郷南州」 / 「大塩平八郎を憶う」 / 「進藤喜平太翁」 / 「太閤秀吉」 / 「戦時宰相論」
彼の政治的立場
 アジア主義的傾向
  「孫逸仙、黄興両氏の風采」 / 「敢て対シ同憂の士に質す」 / 「蒋介石との会見」
 波瀾を極めた政界遍路
  「犬養毅氏」論
東条政府の一敵国――検挙から自刃まで――
 早暁の一斉弾圧 / 母堂への心遣い / 官邸日本間の大評定 / 松阪、東条の激論 / 東洋的諦観という印象 / いわく不敬罪、いわく造言蜚語 / 陰険な独裁者心理 / 従容たる中野君の最期
人間中野正剛
 魂の告白 / 「シッカリシロ・チチ」 / 残された父の心に
  解説 緒方四十郎


岡野 弘彦 (おかのひろひこ)
「歌を恋うる歌」
(うたをこいうるうた)


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*352頁
*発行 1994年

*カバー文
“歌こそは一期の病”と歌にすさまじい執着を示した師折口信夫との出会い。日本人の魂のあそび・すさびとしての歌にとりつかれ、明けても暮れても歌のことばかり思ってきたという著者が、万葉から現代までの名歌五百余首を選び、その魅力を挿話をまじえて縦横に語る。


岡野 弘彦 (おかのひろひこ)
折口信夫の晩年」 
(おりぐちしのぶのばんねん)


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*318頁
*発行 1977年
*カバー・折口信夫自筆短歌

*カバー文
直観と実証と独創にささえられた碩学の晩年を、その日常をともにした愛弟子が敬愛こめて描き、学問と詩につらぬかれた折口信夫の鮮烈な人間像を浮き彫りにする。

*解説頁・中野孝次


岡本 かの子 (おかもとかのこ)
「散華抄」
(さんげしょう)


*カバー画・竹久夢二 絵封筒画稿「赤い花」(竹久夢二美術館)
 カバーデザイン・中央公論新社デザイン室
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*170頁 / 発行 2011年

*カバー文
人間、芸術、宗教、この三つが独立を保ったまま、同時に密接に絡まり合う不即不離の関係であることを、大乗仏教を根底に多様な角度から語ったエッセイ集。

*目次
感想前篇
 生を悦ぶ心 / 春の縁にて 他19篇
論文
 宗教と芸術
 仏教と文学との照合 ―― 東京帝大青年会講演要項
  禅における象徴文学 他4篇
 歎異抄の文芸的解釈 ―― 本願寺真宗婦人会講演要項
  「善人なおもて往生を遂ぐいわんや悪人をや」 他11篇
訳偈
 春の偈頌を訳す
一色一香集
 表現は宗教である / 月見草 他25篇
感想後篇
 笑いの比較 / 一分の迷い 他21篇

 解説 日和聡子


岡本 かの子 (おかもとかのこ)
「仏教人生読本」
(ぶっきょうじんせいどくほん)
中公文庫BIBLIO


*カバーデザイン / EOS Co.,Ltd,
 Art Derection:吉田悟美一
 Design 山影麻奈
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*293頁 / 発行 2001年

*カバー文
仏心をもってすれば、どんな局面も切り抜けられる! 悲観と楽観、自分と他人、愛と憎から恋愛、結婚、死に至るまで、人生の機微にふれながら、しなやかにしたたかに生きる術を伝授する……かの子流人間讃歌。

*目次
この書を世に贈るについての言葉 / 第一課 悲觀と樂觀 / 第二課 誰でも持つたから / 第三課 飽くまで生き拔く力 / 第四課 苦勞に就いて / 第五課 たしなみ / 第六課 人情に殉じ人情を完うす / 第七課 性質を矯め過ぎるな / 第八課 あまり放縱でも困る / 第九課 人生の廣い道 / 第一〇課 人格完成 / 第一一課 世の中 / 第一二課 衣食住 / 第一三課 憂鬱と笑ひ / 第一四課 涙の價値 / 第一五課 無駄 / 第一六課 誤解された時 / 第一七課 誘惑 / 第一八課 勇氣 / 第一九課 好き嫌ひ / 第二〇課 試合の練習 / 第二一課 橋は流れて水は流れず / 第二二課 敵味方(一)(二) / 第二三課 不平の征服 / 第二四課 輕い考へ方・重い考へ方 / 第二五課 母性愛 / 第二六課 父性愛 / 第二七課 兄弟愛 / 第二八課 自分と他人(一)(二) / 第二九課 慈悲 / 第三〇課 愛憎 / 第三一課 性慾 / 第三二課 戀愛 / 第三三課 婚約の前に八方手を盡せ / 第三四課 結婚と夫婦愛 / 第三五課 家庭 / 第三六課 ハムレツト / 第三七課 お茶時(ティータイム) / 第三八課 懴悔 / 第三九課 入學試驗に臨んで / 第四〇課 僻み / 第四一課 體育 / 第四二課 虚榮 / 第四三課 時計と椅子と袴 / 第四四課 人間の味 / 第四五課 賞める・叱かる / 第四六課 他愛 / 第四七課 利己主義 / 第四八課 女のヒステリー / 第四九課 仕事 / 第五〇課 塹壕戰 / 第五一課 人間萬歳 / 第五二課 成功 / 第五三課 失敗 / 第五四課 金 / 第五五課 運命 / 第五六課 逹人の病苦觀 / 第五七課 死 / 第五八課 信仰に入る前の準備 / 第五九課 迷信の話 / 第六課 信仰(その一)(その二) / 第六一課 信仰生活のあらまし / 第六二課 佛、菩薩は染物屋に非ず / 第六三課 智慧の説明 / 第六四課 因果といふことの説明 / 第六五課 唯物と唯心 / 第六六課 現實と理想 / 第六七課 光明中のハイキング / 第六八課 差別と平等 / 第六九課 都會と田舍 / 第七課 知られざる傑作 / 第七一課 モダン極樂・モダン地獄 / 第七二課 さとり / 第七三課 佛陀 / 第七四課 聖徳太子仰讃 / 第七五課 日本の佛教 / 跋 / 解説 瀬戸内寂聴


岡本 文弥 (おかもとぶんや)
「芸流し人生流し」
 (げいながしじんせいながし)


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*205頁
*発行 1978年

*カバー文
当代きっての新内語りが、過ぎこしかたをふりかえり、忘れえぬ友人・女性・芸人たちの思い出をつづり、失われゆく江戸情緒をしみじみと語って、芸と人生の妙味を明かす珠玉の随筆集。

*解説頁・永六輔


本 柳之助 (おかもとりゅうのすけ) 平井 晩村編 (ひらいばんそん)
「風雲回顧録」 (ふううんかいころく)


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*257頁
*発行 1990年

*カバー文
幕末維新の時、十六歳で藩の歩兵隊長をつとめた“紀州藩の神童” ― 岡本柳之助。明治新政府の軍人となった彼は、天賊の軍才を縦横に発揮するも、西南戦争後の竹橋事件に座し、無位無官の身となり、やがて大陸浪人として東洋の舞台へ雄飛する……。
新政府を震撼させた竹橋事件、閔妃事件など、明治史の暗部に深く関わった著者が、長年の沈黙を破り、初めて数奇な生涯を語る。

*親本 『風雲回顧録』 大正元年八月 武侠世界社


小川 環樹訳注 (おがわたまき)
「老子」 (ろうし)


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*157頁
*発行 昭和48年
*カバー画・『老子出関図』(部分) 箱根美術館所蔵

*カバー文
道可道、非常道、名可名、非常名〈道の道(い)うべきは、常の道に非ず。名の名づく可きは、常の名に非ず〉にはじまる『老子』五千余言は、儒教思想・文化を否定し、社会の良識に挑戦した古代自由思想の巨星である。訳者の優れた日本語訳は、われわれ現代人に壮大な想像力と魂の安らぎを与えずにはおかない。


沖野 岩三郎 (おきのいわさぶろう)
「娼妓解放哀話」 (しょうぎかいほうあいわ)


*カバー・上西慶介
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*331頁 / 発行 昭和57年

*カバー文
自由廃業 ― 公娼廃止運動の足跡を掘り起こし、救世軍の事績に及んで女性解放史に位地を占める血涙の記念碑的名著。

*目次
 序にかえて
一 自由廃業の由来
二 初期の公娼廃止運動と無公娼県
三 自由廃業と米人モルフィ氏
四 自由廃業可能の判決例
五 司法権と行政権との衝突
六 日本人の観た公娼と外国人の観た公娼
七 興論の喚起
八 モルフィ氏の実際運動
九 ウイリヤム・ブース氏と救世軍
十 救世軍の第一戦
十一 東雲のストライキ
十二 再び来たれる困難時代
十三 娼妓自廃九百八十七人
十四 日本における救世軍
十五 文献
 解説 竹村民郎


奥野 健男 (おくのたけお)
「北杜夫の文学世界」
 (きたもりおのぶんがくせかい)


*カバー画・黒川淳子
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*207頁 / 発行 1982年

*カバー文
清冽な抒情とユーモア。近代日本文学の系譜には収まりきれない北文学の原風景を四十余年にわたる親しい友である筆者が、鮮やかに映し出す

*目次
原っぱの文学
昆虫の王国
「どくとるマンボウ追想記」
初期作品の魅力
笑いの質
 ※
「幽霊」
短篇について
 「岩屋根にて」「夜と霧の隅で」他 / 短篇集『羽蟻のいる丘』 / 短篇集『遥かな国 遠い国』
「どくとるマンボウ航海記」
「楡家の人びと」
「さびしい王様」
「月と10セント」
「酔いどれ船」
「木精」
「耀ける碧き空の下で」
 ※
鬱の一日
躁の一日
〈対談〉北杜夫 / 奥野健男
 あとがき
  掲載書誌紙一覧
  北杜夫初刊本年譜
文庫版へのあとがき


奥本 大三郎 (おくもとだいざぶろう)
「考えるごきぶり」
(かんがえるごきぶり)


*カバー画・題字 村上豊
 カバーレイアウト 丸山邦彦(CREATIVE MIND)
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*326頁 / 発行 1996年

*カバー文
人間は一匹のゴキブリにすぎない。自然のうちで最もしたたかなものである。しかしこれは、考えるゴキブリなのである ── 稀代の虫好きフランス文学者が、文学・昆虫・旅・自然保護、そしてライフワークのファーブルを語る、博物学エッセイ。

*目次
T
本に釣られて / 手塚治虫の昆虫学的想像力 / 好きこそものの…… / 私のとっておき〈イエナ書店〉 / 図書館と森林 / 書を焚いて暖を取る / 甘い駅弁、甘い本 / むやみやたらに称賛すべからず / 混沌の中で
U
子規の庭 / 「亡びるね」 / 内田百閧ニ小鳥 / 開高さんのテープ / スーヴニール・アントモロジック / 聖なるものを本当に見た人 / 天使にして怪物 / 『フローラ逍遥』
V
妻への詫び状 / 「三四郎通り」 / 「虫に食われた奥の歯は……」 / 虫のいる暮らし / 膝の上の王様 / 緑のゴミ / 時間ドロボー / 雪のシジフォス
W
生涯の採集記録 / 額の傷はおとといの / 楽園の余香 / 女房とブランデーは古いほど…… / 犬も食わない…… / 東京の自然と食べ物 / 心づけ
X
地上げ屋の自然保護 / 私のアフリカ / 当世蝶類憐みの令を憂う / 終末の色 / 考えるごきぶり
Y
ファーブル先生の墓前に捧げたい / 『昆虫記』 / 「ファーブルの日」 / 「荒地(アルマス)」を訪ねて / ファーブル先生はまだ散歩から戻らない
Z
南仏の旅
 一 カマルグ紀行 ── スカラベ・サクレを求めて / 二 アヴィニョンの三つのホテル
[
ラオス昆虫採集記
 あとがき / 文庫版あとがき

*注 「ごきぶり」=「蜚」と虫ヘンに「廉」


奥本 大三郎 (おくもとだいざぶろう)
「斑猫の宿」
(はんみょうのやど)


*カバーイラスト・奥本大三郎
 カバーデザイン・藤田ツトム
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*305頁 / 発行 2011年

*カバー文
虫にひかれて旅してみれば。日本全国縦横無尽に経巡った、鉄道好きの編集者との二人旅。虫と動物を追い求め、土地の文化と人情に触れ、うまいものを味わう。開発か自然保護か、ヒトと文明への洞察にあふれた、奥本版「阿房列車」。第一〇回JTB紀行文学大賞受賞作。

*目次
【第一章】西表・波照間の巻 / 電信柱のカンムリワシ
【第二章】小千谷の巻 / いざり機とルーズソックス
【第三章】富良野・大雪の巻 / 高貴な蝶は悪食家
【第四章】四万十・足摺の巻 / 叛逆者とトンボの楽園
【第五章】白馬・戸隠の巻 / 利権おいしかの山
【第六章】泉州・南紀の巻 / 微小な生命と神々の国
【第七章】岐阜の巻 / 束の間の蝶、超大粒の山椒魚
【第八章】横浜・東京の巻 / 珍獣奇鳥怪魚は街に棲む
【第九章】宮城の巻 / ほたるの宴 窓の雨
【第十章】長州の巻 / 防人の島と斑猫の宿
【第十一章】仏蘭西の巻 / コルシカの栗の樹の下で
【第十二章】日向の巻 / 石垣と孤高の外交官
 あとがき / 文庫版あとがき


奥山 景布子 (おくやまきょうこ)
「秀吉の能楽師」
(ひでよしののうがくし)


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*312頁
*発行 2018年
*カバー画・西のぼる / カバーデザイン・中央公論新社デザイン室

*カバー文
不可解な密命を帯び、太閤秀吉に接近、能の指南役となった、役者・暮松新九郎。目論見通り、秀吉は能楽に没頭するが、その狂気と妄執は新九郎を翻弄する。舞台の上では、家康・利家ら大名たちの思惑が交錯し、各座の役者たちの駆け引きも繰り広げられる。天下人と新九郎の運命が織りなす、桃山時代絵巻。『太閤の能楽師』改題。 解説・縄田一男


小倉 豊文 (おぐらとよふみ)
「絶後の記録 広島原子爆弾の手記」
(ぜつごのきろく)


*カバー画・向井潤吉
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*240頁 / 発行 1982年

*カバー文
一瞬の閃光、奔騰する巨雲塊、轟音、熱風。昭和二十年八月六日朝、広島市がなくなってしまった。城も、街も、人も、皆。
「亡き妻への手紙」として戦後最初に公刊された人文学者の原爆体験記。
人類の歴史における、願わくは人類にとって絶後の記憶たらんことを ――

*目次
 序 高村光太郎
 はしがき
第一信 雲と光のページェント
第二信 爆風と熱波
第三信 原子爆弾
第四信 焦熱の死都
第五信 母子叙情
第六信 妻子を探して
第七信 めぐりあい
第八信 八月八日
第九信 爆心地
第十信 「軍都」の最期
第十一信 原子爆弾症
第十二信 残された恐怖
第十三信 「考える人」
 あとがき ―― 現在と当時の広島、その他
 広島原爆情況図 / 爆心及び軍部中心図 / 亡き妻の遺書


尾崎 三良 (おざきさぶろう)
「尾崎三良自叙略伝 全三巻」 (おざきさぶろうじじょりゃくでん)

  
*カバー・田中有美筆「三条実美公履歴」挿図より / 題字・尾崎三良 (画像はクリックで拡大します)

*上360頁・中342頁・下337頁
*発行 昭和54年〜55年

*上巻カバー文
三条実美の側近として、幕末動乱以降の近代日本形成の中枢に参画した尾崎三良が、激動する歴史の日々を克明に記し、秘められた事実を明かす、波瀾と感動に満ちた稀有の自叙伝、全三巻。 上巻・天保十三年 ― 明治十四年

*単行本下巻帯文
明治25年(1892) ― 明治38年(1905)
日清・日露の戦争を契機に近代日本の成立に邁進する明治後半期、官を辞した筆者は京釜鉄道創設を初め実業の世界に雄飛する。他に貴重な歴史的資料『明治天皇崩御記事』を併録


尾崎 秀樹 (おざきほつき)
「デザートは死 ― 尾崎秀実の菜譜」
(でざーとはし・おざきほつみのさいふ)


*カバー・大竹雄介
(画像はクリックで拡大します)

*220頁
*発行 1998年

*カバー文
ゾルゲ事件で逮捕された兄・尾崎秀実(おざきほつみ)が、死刑確定ののち、獄中から家族に宛てて書き送った“食物考”。美食家だった兄が検閲をパスするため、食談を通して時事や人事を語ろうとした二十二通の書簡を手掛りに、著者は秘められた歴史のドラマを解き明かそうとする。多彩なエピソードを織り込みながら綴る鎮魂の昭和史。

*目次
1 虚構のメニュ / 2 ソプラノ歌手の自殺 / 3 ゾルゲ ―― 憑かれた男 / 4 グレープ・フルーツの味 / 5 チェヴァプチチの郷愁 / 6 暗号は皿の中 / 7 蟹の酔うとき / 8 粥の中の地図 / 9 朝食にはスパイスを / 10 机のうらの味噌 / 11 ヒートの背びれ / 12 バナナの皮はサイン / 13 最後の晩餐 / デザートの後に / 文庫版あとがき


尾崎 秀樹 (おざきほつき)
「夢いまだ成らず 評伝 山中峯太郎」
(ゆめいまだならず)


*カバー画・樺島勝一
 (『敵中横断三百里』挿画より)
 丸山邦彦(CREATIVE MIND)
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*592頁 / 発行 1995年

*カバー文
陸軍士官学校を出ながら、エリート軍人への道を棄てて新聞記者に転じ、?継竜(パンテイルン)の名で中国革命完成のために奔走した未成・山中峯太郎 ── 。『少年倶楽部』の王者として戦前の子供たちを魅了した人気作家の実像を明らかにし、波瀾に富む内面の歩みをたどる力作評伝。

*目次
序章 未成との出会い
第一章 出生の秘密
第二章 陸士時代と人生的煩悶
第三章 激動の大陸で
第四章 亡命計画
第五章 第三革命の渦中に
第六章 淡路丸偽電事件
第七章 宗教的な?徊(ていかい)
第八章 『少年倶楽部』の王者
 文庫版あとがき


大佛 次郎 (おさらぎじろう)
「四十八人目の男」
(よんじゅうはちにんめのおとこ)


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*593頁
*発行 1991年
*カバー画・佐多芳郎

*カバー文
吉良邸に討ち入った浪士たちの中に小山田庄左衛門の姿はなかった。主戦論の先鋒だった彼が“義挙”に加わらなかったのはなぜか。脱盟した男の眼を通して武士の不条理を抉った大佛文学の傑作。佐多芳郎初の挿画32点入り。

*解説頁・「『四十八人目の男』と私」 佐多芳郎


織田 淳太郎 (おだじゅんたろう)
「狂気の右ストレート ― 大場政夫の孤独と栄光」
(きょうきのみぎすとれーと ― おおばまさおのこどくとえいこう)


(画像はクリックで拡大します)

*319頁
*発行 1996年
*カバー写真・堂本正令 / カバーデザイン・鈴木成一デザイン室

*カバー文
大場政夫 ―― 。貧苦の生い立ちから栄光を夢見て帝拳に入門。名門ジムの期待を背にボクサーの階梯を駆け上り、昭和四十五年十月、WBA世界フライ級王座を獲得。並み居る強豪を相手にタイトルを防衛すること五度。史上最も凄惨かつ劇的な試合といわれるチャチャイ・チオノイとの対戦を制した直後、首都高速に散る。“永遠のチャンピオン”二十三年の生涯を、渾身の取材をもとに描く決定版評伝。

*解説頁・山本茂


尾上梅幸 六代目著 秋山 勝彦編 (おのえばいこう・あきやまかつひこ)
「女形の事」
(おんながたのこと)


*カバーデザイン・中央公論新社デザイン室
(画像はクリックで拡大します)

*281頁 / 発行 2014年

*カバー文
明治から昭和初期にかけて活躍した名優が、生い立ちや芝居の奥義を語る。十五代目市村羽左衛門と、長年、舞台を務めた『与話情浮名横櫛』のお富と与三郎、『十六夜清心』『三千歳直侍』や『土蜘』『四谷怪談』など時代物・世話物における苦心談や内幕話は、演劇史上貴重な記録である。七〇年の時空を超えて初文庫化。

*目次
私の身の上 / 團菊左逝く / 女形に就て / 平素の行状 / 役柄の分類 / 戻橋覚え書 / 戻橋苦心談 / 土蜘の略型 / 土蜘内幕話 / 茨木の老母 / 骨寄せ岩藤 / 播州皿屋敷 / 幽霊の秘訣 / 四谷怪異談 / お岩の変相 / 独吟菊の露 / 目の廻し賃 / 死神の工夫 / 死人草の花 / 茨木の趣向 / 即席急稽古 / 團菊の相違 / 古例仕初式 / 舞台の化粧 / 鬘の刳り方 / 女形の姿勢 / 衣裳の着科 / 女形百箇条 / 故人の格言 / 三?三婆ア / 政岡の演所 / 尾上と尾上 / 岩藤の人情 / 鼓の打ち方 / 東がしらむ / 桜丸の腹切 / 紅葉狩振附 / 借りた鳴物 / 死人の台詞 / 揚巻の心得 / 切られお富 / 三千?の役 / お紺の仕科 / 鞘当の六方 / ?燭の芯切 / おさんの簪 / 累の淨瑠璃 / 小判の重さ / 鬘髷と感覚 / 裾の中の足 / 女形の指先 / 獸類の挙動 / 名優の科白 / 相手の台詞 / 若という字 / 女性の匂い / 見学の修業 / 亭主の後見 / 年揩ニ処女 / 酒の飮み方 / 話の立聞き / 刀の持ち方 / 役に成切る / 乳房の動悸 / 手拭の模樣 / ?冠りの襞 / 明方の汐風 / 手先の白粉 / 癪の起し樣 / 腰元の心掛 / 衣裳の選択 / 襦袢の縫袖 / 切継と色気 / 芸者の風俗 / 左褄と右褄 / サワリの事 / 役柄と足捌 / 人形振演技 / 鏡の中の姿 / 座頭の権威 / 菊次郎の手 / 性格と樣式 / 楷草行書法 / いろは習字 / 泣き紙の事 / 菊之丞の詞 / 梅壽の襲名 / あとがき / 解説 ── 秋山勝彦


小原 直 (おはらなおし)
「小原直回顧録」 (おはらなおしかいころく)


*カバー画・宮川和子
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*272頁 / 発行 昭和61年

*カバー文
著者は、大逆、シーメンス、朴烈、帝人等の重大事件の捜査に関わり、美農部達吉の天皇機関説が政治問題化した時の、また二・二六事件当時の司法大臣であった。司法、検察界に大きな影響力をもった人物の貴重な回想秘話。

*目次
世に出るまで / 上京 / 司法省に入る / 日糖事件 / 大逆事件 / シーメンス事件 / 桐原集一殺人放火事件 / 大浦事件 / 阿部政務局長暗殺事件 / 大隈首相暗殺未遂事件 / 大森おはる殺し / 島倉儀平女中殺人事件 / 東京地方裁判所次席検事の頃 / 八幡製鉄所事件 / 米騒動 / 朴烈事件 / 佐分利公使自殺事件 / 司法次官、東京控訴院長時代 / 帝人事件 / 岡田内閣の法相となる / 国体明徴問題 / 二・二六事件 / 広田内閣に入閣せず / 阿部内閣に入閣 / 司法制度について / 陪審制度 / 解説 野村二郎


オーブリ・ビアズレー著・澁澤 龍彦訳 (Aubrey Vincent Beardsley・しぶさわたつひこ)
「美神の館」
(びしんのやかた)


*カバー・桃源社刊『美神の館』初版装本に拠る
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*230頁 / 発行 1993年

*カバー文
夭逝した世紀末の天才画家ビアズレーが遺した唯一の小説。諧謔の精神に根差した怪奇美と幻想的な頽廃美を、あくまで典雅に装飾的に、そして人工的に表現し、「ビアズレーの絵画的世界をそのまま言語に置き換えた、ピトレスクな世界そのもの」と評される奇作。訳者による詳密な註と解題を付す。

*目次
 献辞 オーブリ・ビアズレー
美神の館 オーブリ・ビアズレー
 オーブリ・ビアズレーについて アーサー・シモンズ
 訳注 澁澤龍彦
 解題 澁澤龍彦
 オーブリ・ビアズレー名作選


澤潟 久敬 (おもだかひさゆき)
「ベルクソンの科学論」 (べるくそんのかがくろん)


*カバー画・澤潟久敬
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*183頁 / 発行 昭和54年

*カバー文
デカルトと並ぶフランスの大哲学者ベルクソンの独創的な科学論をフランス哲学の権威澤潟博士が懇切に解説し、さらにその天才的な生命の哲学を平明に叙述する。本書は正にベルクソン哲学への秀れた入門書でもある。

*目次
第一章 生命論
  ― ベルクソン哲学のあらまし
第二章 生命論から科学論へ
第三章 科学一般について
第四章 特殊科学について
 一 数について ― 数学の問題
 二 物質について ― 物理学の問題
 三 精神について ― 心理学の問題
 四 身心の関係について ― 生理学の問題
 五 生命について ― 生物学の問題
第五章 哲学というもの
附録 ベルクソンの哲学論
 解説