絶版文庫書誌集成

中公文庫 【ひ】

樋口 修吉 (ひぐちしゅうきち)
「東京老舗の履歴書」 (とうきょうしにせのりれきしょ)


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*300頁 / 発行 2001年

*カバー文
「ボルドー」「竹葉亭」「空也」「壱番館洋服店」「いせ辰」「大坂家」「羽二重団子」「銀座くのや」「まつや」 ― 変わりゆく時代の中でも変わらずに、多くの人たちに愛される味がある、信頼される技がある。丹念な取材に基づき、今なお輝き続ける東京の老舗九店の秘密に迫った貴重な一冊。

*目次
はじめに
三十間堀のボルドー
旧木挽町八丁目の竹葉亭
元黒門町の空也
銀座五丁目の壱番館洋服店
谷中三崎坂のいせ辰
三田三丁目の大坂家
根岸芋坂の羽二重団子
旧尾張町二丁目の銀座くのや
神田須田町一丁目のまつや


久生 十蘭 (ひさおじゅうらん)
「肌色の月」
 (はだいろのつき)


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*183頁
*発行 昭和50年

*カバー文
たまたま見上げた月が肌色に見えたことから自分の病疾を知り、死を思って旅立つ変装の宇野久美子 ―― 奇しくも同じ病いに逝った著者の絶筆遺作推理。「予言」「母子像」を併載。

*あとがき・久生幸子 / 解説頁・中井英夫


日夏 耿之介 (ひなつこうのすけ)
「風雪の中の対話」
 (ふうせつのなかのたいわ)


*カバー装画・谷中安規
(昭和八年「半仙戯」所載「自刷版画」より)

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*244頁 / 発行 1992年

*カバー文
稀有の詩人批評家=黄眠道人、その学識は東西古今にわたる。内面性を追求して断乎言い切る見解、こまやかな洞察、一貫した批評的見識は歯切れがいい ― 。“明治の春”“万葉教義問答”“半世紀後の対話”等、戦後まもない政治的文化的激動期の世相時評、文化時評を試みる、想像上の対話集。

*目次
 風雪の中の対話 叙
明治の春 / さびの行方 / 詩榻茶談 / 月寂鐘細 / 季節会談 / 舞と句と雪 / 時雨風流 / 春と夏 / 舞曲法楽 / 冬の夜ばなし / 茶の湯 テンプラ 着物 / 万葉教義問答 / 聊斎小説その他 / イドラ・テアトリ / レヴュウ源氏 / 怪談問答 / 言葉と文字とのアマルガム / 左平次時代 / 巷の対話 / 葉茶屋政談 / 法・笑劇・宗教 / Yの悲劇 / 日本蛮人 / 浮世談義 / 半世紀後の対話 / スノップ / 床の間 / エラカンシャク / 豚の安楽 / 代表人物 / 三十五年 / 煤はらい / トソ危言 / 旅絵師の富士 / 死後の名 / トリオ / 痩せた雑誌 / 赤血球 / 柿の本の叛逆談 / 浪人会議 / 母校
 日夏批評の骨法 佐伯彰一


日野 啓三 (ひのけいぞう)
「風の地平」 (かぜのちへい)


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*227頁
*発行 1980年
*カバー・司修

*カバー文
韓国女性を妻とした一新聞記者のささやかな家庭の〈影の起伏〉を、朝鮮戦争、ベトナム戦争の遠い砲声の記憶のなかに描き、それぞれが見送った死とみずからの生の行方を凝視する連作。

*解説頁・川崎洋


日野 啓三 (ひのけいぞう)
「砂丘が動くように」 (さきゅうがうごくように)


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*268頁
*発行 1990年
*カバー画・黒崎俊雄

*カバー文
日本海側の小さな町はずれにある砂丘。防砂林でかこまれた砂丘は、砂の流れをせきとめられ、少しずつ死にかけている。その砂丘の奥深いところで静かに進行している砂の動き、砂の意識……。そして、砂丘が発信する何かを感じとる人たち。盆栽を作る少年、盲目のその姉、美しい女装の男など。宇宙の新しい意識への夢想、自然と人間の意識の関係を戦慄的に描く長編。 谷崎潤一郎賞受賞作。

*解説頁・池澤夏樹


日野 啓三 (ひのけいぞう)
「夢を走る」 (ゆめをはしる)


*カバー画・黒崎俊雄
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*219頁 / 発行 昭和62年

*カバー文
別の世界から発信される濃密な気配を感知する青年。異次元と交信する息子を感じとる父親。古屋敷に棲む老いたネコの精神を包む孤独、崩れゆく世界への恐怖感を共有する男……。
目に映る世界のほかの外界、互いに作用しあう重層的な世界を、身近に感受する者たちをとらえる、不安と戦き、そしい至福の感覚を、美しく描き出す都市幻想の名作七篇。

*目次
カラスの見える場所
星の流れが聞こえるとき
ふしぎな球
砂の街
石の花
孤独なネコは黒い雪の夢をみる
夢を走る
 解説 池澤夏樹


日比野 士朗 (ひびのしろう)
「呉淞クリーク / 野戦病院」 (うーすんくりーく / やせんびょういん)


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*183頁
*発行 2000年
*カバーデザイン・菊地信義

*カバー文
日中戦争有数の激戦だった上海戦線での戦闘をルポした「呉淞クリーク」は、戦記文学に要求される皇軍意識とは無縁のところで、戦争の実態を描いた佳篇である。際限ないクリーク、一面の泥沼、トーチカによる中国軍の頑強な抵抗。著者はこの熾烈な戦場のすがたを、戦友への鎮魂をこめて綴る。

*解説頁・半藤一利


ヒュー・コータッツィ
「東の島国 西の島国」
 (ひがしのしまぐににしのしまぐに)


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*270頁 / 発行 昭和61年
*カバーデザイン・秋草孝
 カバー地図・Pieter van der An :William Adams Reystogt na Oost Indien,1707(著者蔵)より

*カバー文
官界・財界で話題の元駐日英国大使の世界的視野に立つ日本論 ― 在任中、真の英国理解を訴えて北海道から沖縄まで、日本全国をかけ巡った行脚の記録と、日英交流のながく深い歴史をふまえて、世界における日本の現在と将来を語る数々の講演を収める。

*目次
英国大使のTOKYO日記 / ダイエルズ夫人おトメさん ― 北海道 / イザベラ・バードの旅 ― 青森 / 芭蕉との出会い ― 岩手 / 魅力的な町 ― 秋田 / わが友ドア教授のこと ― 山形 / 因縁浅からぬもの ― 宮城 / 医官ウィリスと会津 ― 福島 / 佐渡の夜の思い出 ― 新潟 / 偉大な陶芸家 ― 栃木 / 原子力の平和利用 ― 茨城 / 開港資料館の開館によせて ― 神奈川 / 懐しい信州 ― 長野 / ワインと絹と ― 山梨 / 家康とセーリス船長 ― 静岡 / 歴史的建築物の保存継承 ― 愛知 / 松林と白い城壁 ― 石川 / 俳聖芭蕉のふるさと ― 三重 / 湖国と英国人 ― 滋賀 / 雪の高野山 ― 和歌山 / 英国人の見た昔の大阪と神戸 ― 大阪・兵庫 / 心ひかれる備前焼 ― 岡山 / 博文とアーネスト・サトウ ― 山口 / 人と風土を懐しむ ― 中国地方 / パークス公使と後藤象二郎 ― 四国地方 / リーフデ号のアダムズ ― 大分 / もうひとつの神風 ― 佐賀 / ネルソン提督の遺髪 ― 長崎 / 薩摩の西洋医学の父ウィルス ― 鹿児島 / 触れてみたい素顔 ― 沖縄 / 日本の旅、英国の旅 / 日本と英国 ― 陶磁器を通じての結びつき / ロマンの刻印日本古地図 / 日本と英国を比較して / 英国は階級社会か / 期待される日本の国際化 / アジアにおける日本と英国の役割 / 今後の日英関係を考える / 世界、日本そして英国 / あとがき / 初出一覧 / 参考文献リスト


平尾 道雄 (ひらおみちお)
「坂本龍馬 海援隊始末記」
 (さかもとりょうまかいえんたいしまつき)


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*277頁 / 発行 昭和51年

*カバー文
討幕をめざす脱藩浪士のささやかな集合から、開国通商・海上発展の「世界の海援隊」にまで進めるのが龍馬の夢であった。彼は慶応三年京都近江屋の襲撃で落命するが、その雄図と組織の消長を、史料の正確な分析と理解の上に立つ平易な語り口で説き明かす。

*目次
世界の海援隊
 一 龍馬の夢 / 二 町人郷士・坂本龍馬 / 三 剣術修行 / 四 河田小龍の通商航海論
時勢に立つ
 一 土佐勤王党 / 二 坂龍飛騰 / 三 吉田東洋の暗殺
海洋への道
 一 勝海舟と大久保一翁 / 二 航海術練習生 / 三 広井磐之助の復讐 / 四 神戸海軍操練所
渦を巻く政海
 一 勤王党瓦解 / 二 長崎出張と熊本訪問 / 三 望月亀弥太と池田屋騒動 / 四 安岡金馬と忠勇隊 / 五 神戸海軍操練所解散
長崎の結社
 一 亀山社中 / 二 汽船ユニオン号 / 三 上杉栄次郎の自殺 / 四 薩長連合成立 / 五 寺田屋の危難 / 六 お登勢とお龍
難航する経営
 一 ワイル・ウェフ号沈没 / 二 下関海峡戦 / 三 商社経営 / 四 大極丸と蝦夷開発計画
土佐藩海援隊
 一 長崎清風亭 / 二 海援隊と陸援隊 / 三 いろは丸沈没事件 / 四 船中八策
英艦イカルス号事件
 一 海援隊士への嫌疑 / 二 長崎裁判 / 三 長崎江戸町の異人斬り
戦争と平和
 一 ライフル銃購入 / 二 大政奉還 / 三 近江屋の凶変 / 四 天満屋の夜襲
明治維新と海援隊
 一 長崎奉行所始末 / 二 天草島鎮撫 / 三 讃岐諸島開発 / 四 海軍創設案建白 / 五 海援隊解散
龍馬遺詠
坂本龍馬関係年表
 解説 松浦玲


平島 二郎 (ひらしまじろう)
「世界建築史の旅」 
(せかいけんちくしのたび)


*カバー写真・エアフォース アカデミー礼拝堂(米国 コロラド・スプリングス)
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*319頁 / 発行 1992年

*カバー文
国際人としての会話に建築の話題は欠かせない。また、その国が誇りとしている建物についての知識があると、海外旅行もだんぜん面白くなる。世界四七ヵ国を旅行した建築家が、人類共通の遺産である歴史的建造物をはじめ、庶民生活と家屋との関わり等を、わが国との対比をまじえ生きいきと語った一冊。建築設計に興味を持つ人にとっては、恰好の入門書である。

*目次
1 原始の知恵 ―― 兎の耳  アルタミーラの旅
2 仏塔 ―― 金色の幻想  香港・タイの旅
3  葡萄酒と唐草  西アジアの旅
4  わが家は七〇〇万トン ―― 王の墓  エジプト・ギリシアの旅
5 石・石・石 ―― 古代ローマ  イタリアの旅
6 ビザンティンの栄光  トルコ・ヴェネツィアの旅
7 サラセンの華麗  南スペインの旅
8 ロマネスクの天使とゴシックの論理  スペイン・フランスの旅
9 ルネサンスの天才たち  イタリアの旅
10 水と十字架の絆  北欧の旅
11 魔術師ガウディ ―― シェル構造  北スペインの旅
12 未来の都市ブラジリア  南米の旅
15 古くて新しい国  メキシコの旅
14 世界は一つ ―― 木造平家の国  アメリカの旅
15 スラベシ島  トラジャへ
 あとがき / 文庫版あとがき


広瀬 和雄 (ひろせかずお)
「前方後円墳国家」 (ぜんぽうこうえんふんこっか)


*カバーデザイン・鈴木正道
 カバー写真・保渡田八幡塚古墳(読売新聞社提供)
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*347頁 / 発行 2017年

*カバー文
三世紀半ばから約三五〇年間、日本列島の各地で前方後円墳が造営され続けた。その数はおよそ五二〇〇基にのぼる。大山(仁徳陵)古墳を頂点とする巨大古墳が、共通する墳形と歴然たる規模の階層性をもって造られたのはなぜか ── 。「国家」という視点から古墳時代の歴史像を捉え直す試み。

*目次
 はじめに
第一章 首長はいかにして首長たりえたか
 一 政治権力のなりたち
 二 首長の出現と形成された首長層
第二章 分業生産と交易の地域センターだった弥生都市
 一 弥生社会は分業生産にささえられていた
 二 弥生都市は社会のセンター
  コラム1 異質な文化が共存した弥生・古墳時代
第三章 東アジア世界とカミ観念の形成
 一 東アジア世界へ参入した弥生社会
 二 弥生・古墳時代のカミ観念
第四章 前方後円墳祭祀―国家をささえた共同幻想
 一 カミと化して共同体を守った亡き首長
 二 前方後円墳祭祀はどのように創られたか
  コラム2 東アジアのなかの前方後円墳
第五章 〈もの・人・情報の再分配システム〉で成立した中央と地方
 一 中央を構成した大和政治勢力
 二 前方後円墳と前方後方墳
  コラム3 王権誕生のもうひとつのコース ── 交易による富の集積
第六章 前方後円墳国家の誕生
 一 前方後円墳国家は首長層の利益共同体
 二 前方後円墳国家の特徴
第七章 前方後円墳国家を運営した大和政権
 一 有力首長が共同統治した大和政権
 二 大和政権に統治された地方の首長

 あとがき / 参考文献 / 図版出典一覧 / 前方後円墳に関する五つの断章 ── 文庫版へのあとがきにかえて / 遺跡名索引