絶版文庫書誌集成
ちくま文庫 【も】
森 於菟 (もりおと)
「父親としての森鴎外」 (ちちおやとしてのもりおうがい)
森 まゆみ (もりまゆみ)
「昭和ジュークボックス」 (しょうわじゅーくぼっくす)
*カバーデザイン・南伸坊
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*270頁 / 発行 2008年
*カバー文
「おれの心臓を悪くするのはいつもお前だ」と嘆く父で思い出すのは「七つの子」であり「スーダラ節」。歌謡曲は下品だという母が口ずさんでいたのは「水色のワルツ」。感動的だったお湯をかけて食べるラーメンの出現、テレビ、洗濯機の登場。町に流れていた歌と共に、時代の手ざわり・空気、人々の暮らしがフラッシュバックする昭和30〜40年代の東京アルバム。
*目次
七つの子 / 水色のワルツ / スーダラ節 / アカシアの雨がやむとき / 潮来花嫁さん / 銀座の恋の物語 / 君の名は / 月がとっても青いから / テネシー・ワルツ / 明星とエースコックの即席ラーメン / こんにちは赤ちゃん / 下町の太陽 / ウナ・セラ・ディ東京 / お座敷小唄 / 雪山讃歌 / 君といつまでも / 恋のハレルヤ / ラ・ノヴィア / モナリザの微笑 / 悲惨な戦争 / 青い山脈 / 女ひとり / わたしの城下町 / そして神戸 / 人生劇場 / 翳りゆく部屋 / ラヴ・イズ・オーヴァー / 岬めぐり / ひと夏の経験 / メランコリー / 勝手にしやがれ / 愛の讃歌
カラオケとジュークボックス ── エピローグ / 文庫版あとがき / 解説 桃の樹に 桃の花咲く 中谷健太郎
森 まゆみ (もりまゆみ)
「樋口一葉の手紙教室 『通俗書簡文』を読む」 (ひぐちいちようのてがみきょうしつ)
*カバーデザイン・多田進
カバー装画・松本孝志
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*270頁 / 発行 2004年
*カバー文
樋口一葉は『通俗書簡文』という手紙の書き方の実用書を書いた。病の床での執筆で、生前に刊行された唯一の本である。年始の文、歌留多会のあした遺失物をかえしやる文、猫の子をもらいにやる文、離縁を乞わんという人に、などなど掌編小説さながらのストーリーが展開する〈手紙文例集〉を森まゆみが味わい深く読み解く。手紙を楽しみたい人、必読の書。(『かしこ一葉』改題)
*目次
ことばの自由への道
新年の部
年始の文◎同じ返事 としの始友におくる◎同かえし 歌留多会のあした遺失物をかえしやる文◎同返事
春の部
余寒見舞の文◎同じ返事 初午に人を招く文◎同じ返事 初雛祝いの文◎同じ返事 小学校の卒業を祝う文◎同じ返事 春雨ふる日友に◎同じ返事 花見誘いの文◎同じ返事 花の頃都にある娘に◎同じ返事娘より
夏の部
花菖蒲見に誘う文◎同じ返事 新茶を人におくる文◎同じ返事 人の新盆に◎同じ返事 暑中見舞の文◎同じ返事 雷鳴はげしかりし後友におくる◎同じ返事
秋の部
草花に添えて人のもとに◎同じ返事 野分見舞の文◎同じ返事 人の家に菊植たりけるを聞て◎同じ返事 紅葉見に誘う文◎同じ返事
冬の部
かりたる傘を時雨ののちかえす文◎同じ返事 冬のはじめ仕立物の手伝いをたのむ文◎同じ返事 雪の日人のもとに◎同じ返事 歳暮の文◎同じ返事
雑の部
祝いの文
婚礼祝いの文◎同じ返事 開業祝いの文◎同じ返事
依頼の文
媒酌たのみの文◎同じ返事 猫の子をもらいにやる文◎同じ返事 書物の借用たのみの文◎同じ返事 留守中たのみの文◎同じ返事
忠告の文
愛犬の行衛なく成しを友につぐる文◎同じ返事 友の驕奢をいさむる文 離縁を乞わんという人に◎同じ返事 事ありて仲絶えたる友のもとに◎同じ返事
あやまりの文
留守中来たりし人のもとに◎同じ返事 人の家の盆栽を子のそこないつるに◎同じ返事
お礼の文
雇人の周旋を受けし人のもとに◎同じ返事
招きの文
法事に人を招く文◎同じ返事
お見舞の文
試験に落第せし人のもとに◎同じ返事 不縁に成し人をなぐさむる文◎同じ返事 愛子をうしないし人のもとに◎同じ返事 火事見舞の文◎同じ返事 地震見舞の文◎同じ返事 死去を弔う文◎同じ返事
唯いささか
手紙を書く際の注意いくつか
・
半井桃水への手紙
・
一葉の実像をさがして ―― 文庫のためのあとがき
解説 優雅で人情ゆたかな時代 福原義春
森 まゆみ (もりまゆみ)
「『谷根千』の冒険」 (やねせんのぼうけん)
*カバーデザイン・南伸坊
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*287頁 / 発行 2002年
*カバー文
コンクリートと鉄とガラスの東京で、いまだ古き良き面影をのこす台東区谷中、文京区根津・千駄木。経験もお金もないけれど情熱と好奇心だけは誰にも負けない4人の若い母親が、この愛する自分たちの町のために、地域雑誌を創刊した。歴史を掘り起こし、自然を守り、お祭りを盛りたて、地上げと闘い東奔西走。多くの読者に支持される地域雑誌『谷中・根津・千駄木』のちょっと早すぎる自叙伝。
*目次
1 雑誌つくりたいね
野望の四者会談 / 谷中スケッチブック / 会議は踊った / 売れる雑誌?
2 『谷根千』創刊す
谷中菊まつり / 思いがけない反響 / もっと勉強しなくちゃ / かけそばを食べる助教授 / 銭湯特集 / タウン誌のイロハ手習い
3 町にアクセス!
売り込みはツライよ / マスコミと読者 / 郷土史家はむくわれない? / 井戸端会議 / 犬も歩けば棒にあたる / 味のグランプリと円朝まつり
4 実りの秋
鴎外が歩く / 自筆広告 / 奏楽堂パイプオルガン/ 大失敗 / 第一塊タウン誌大賞
5 赤ン坊のいる事務所
『谷根千』はこうしてできる / なんとか軌道にのってきた / 事務所みつかる / 赤ン坊ぞくぞく
6 町並みを守るには
谷中いいとこさがし / 地上げとのたたかい
7 つくって配って日は暮れる
地域雑誌を続けるには / 『谷根千』がゆく!
あとがき / 文庫本のためのあとがき / 地域雑誌「谷中・根津・千駄木」年表
森 茉莉著・早川 暢子編 (もりまり・はやかわのぶこ)
「マリアのうぬぼれ鏡」 (まりあのうぬぼれかがみ)
*カバーデザイン・金田理恵
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*253頁 / 発行 2000年
*カバー文
「女というものにとって、うぬぼれ鏡と、褒め手とは絶対に必要なものである」「濃い薔薇色の、縞のある敷布と、深いオリイヴに薄茶の小もようのある掛けぶとんとの中に、私の天国が、あった」……
毒舌とユーモアだけにあらず、好悪の精神とそれを表現しきるレトリックの芸は追随を許さない。どこから読んでも刺激的な、極めつきの森茉莉語録。文庫オリジナル。
*目次
贅沢
私は上に赤のつく貧乏をしながら、その貧乏の中で贅沢をした。
食い道楽
何かを美味だと思うこと、それをくって楽しむことは、一つの才能である。
幸福
「幸福」は毎日帰って行く部屋の中にだけ、あった。
恋愛
女というものにとって、 / うぬぼれ鏡と、褒め手とは / 絶対に必要なものである。
小説家
マリアはやけになってごろつき、 / 天から何か降ってくるのを待つ人のように、 / 空想の湧くのを、待っている。
お洒落
成人の日に / ロクな趣味でもない振袖に / 白の毛皮の襟巻で短かい首を一層短かくして / 三三五五練り歩く女の子達は / ウンザリである。
想い出
昔の記憶は、夢のように淡い、遠い、白い昔の夢は、底に熱でもあるように、幸福な想いを内にひそめて私の胸の中に、満ちて来る。
巴里
巴里は人間に、どこかで人生をおしえる。人生というより、人生の歓びをおしえる。
空想
花々は藁の中で、秘密のように香り、紅や薄紅色の細かな襞を幾重にも重ねて、ひとかたまりになり、はにかんだ恋人のようだ。
日本人
人前に出る機会の多い首相は もう一寸どうにかした顔でないと困る。
人生
人間の苦しみ、と、そうして喜び。この二つのものは人間の生きて行く道端へ、かわりがわりにやって来る。
編者あとがき 早川暢子
森村 泰昌 (もりむらやすまさ)
「美術の解剖学講義」 (びじゅつのかいぼうがくこうぎ)
ちくま学芸文庫
*カバー作品・森村泰昌
カバーデザイン・木庭貴信
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*259頁 / 発行 2001年
*カバー文
マネやベラスケス、レンブラントらの作品を名画たらしめている意外な事実、美術における「真と偽」あるいは「よし悪し」、愛ある写真を撮るための「アーネスト・サトウの写真術」、そして21世紀の美術のゆくえとは……美術を面白味のないものとお考えのあなたのために、古今東西の名作に自分自身を侵入させる作品を発表しつづける著者がわかりやすくレクチャー。美術を通してあなたの生き方はもっと変わるはず。退屈・難解な芸術とはサヨナラです。
*目次
朝礼
一時間目 人生論
正しい信号の渡り方とは?
そして、笑いあり涙ありの私たちの人生とは?
誰もが持っている難問を、「シャボン玉方程式」によって一気に解決してしまいます。
二時間目 写真論
誰が撮っても「写ルンです」けれど、やっぱり写真は難しい。でも「アーネスト・サトウ先生の写真術」さえ知っておけば、目からウロコが落ちて写真の楽しみが倍増すること間違いなし。
三時間目 大発見論
「かっぱえびせん」の名前から、マネの名作絵画まで、世の中いたるところ不思議だらけ。
大発見はいつも隣近所でまっています。
ゴミ箱からとび出してくることだってあるのです。
四時間目 真贋論
水の垂れる安手の「はてなの茶碗」。展覧会に出された「はてなの便器」。時計がふたつ仲良く並んでいるだけの作品「はてなの電話」。
作品の値打ちはいったいどこにあるのでしょう。
真贋を見きわめるふたつのモノサシを駆使して、それをはかります。
五時間目 セルフポートレイト論
整形手術をしたら素顔はどこにいく?
男がお化粧をしてパスポートを取りにいったら「『顔』を洗って出直してください」といわれる?
「私」っていったいなんなのか。「私探し」の三〇〇年の歴史を、鏡との対話を通して駆け抜けます。
六時間目 女優論
映画女優の光と影。
それは二〇世紀の光と影でもあった。
映画と女優に「堕天使譚」をからませて、二一世紀的美のゆくえに迫ります。
あとがき
文庫版あとがきにかえて 「確からしさ」と「おもしろさ」
解説 深井晃子