絶版文庫書誌集成

ちくま文庫 【ま】

正岡 容 (まさおかいるる)
「明治東京風俗語事典」
(めいじとうきょうふうぞくごじてん)
ちくま学芸文庫



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*350頁
*発行 2001年
*カバーデザイン・間村俊一 / カバー図版 小林清親「駿河町雪」(町田市立国際版画美術館蔵)

*カバー文
「あいきゃく」からはじまって「かれこれし」「こたつべんけい」「さざえのしり」「しらみひも」「しわのばし」「ふかがわのはんだい」……「○○をみたよう」まで、ついつい読みふけってしまう絶妙な言葉の数々。明治ははるか遠くなり、かつて息づいていた暮らしも言葉も幻となった。本書は、明治から昭和の東京の市井文化に生きた異才・正岡容が、いまはなき言葉たちを愛着を持って集め、漱石から円朝、黙阿弥、忠臣蔵まで自在に引きつつ編集した、貴重な労作。図版多数。

*解説頁・「正岡容という人」池内紀


正延 哲士 (まさのぶてつし)
「昭和の侠客 ― 鬼頭良之助と山口組二代目」 (しょうわのきょうかく)


*カバーデザイン・渡辺千尋
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*319頁 / 発行 2002年

*カバー文
『鬼龍院花子の生涯』のモデルといわれる土佐の侠客・鬼頭良之助。その鬼頭を渡世上の叔父と敬慕しつづけた山口組二代目・山口登。“人は一代名は末代”といわれる通り、その名は広く知られながらも、語られることの少なかった二人の侠客の姿が関係者の証言などにより明らかになる。激動の人生を駆けぬけた男たちの群像をいきいきと描き出す。

*目次
 はじめに
第一章 鬼頭売り出す
第二章 弱きを助け強きを挫く
第三章 男の意地
第四章 侠客の美学
第五章 光と陰の狭間
第六章 浅草の死闘
第七章 男の散り際
 後記
 解説 ―― 猪野健治


正村 公宏 (まさむらきみひろ)
「図説戦後史」 (ずせつせんごし)
ちくま学芸文庫


*装幀・安野光雅
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*435頁 / 発行 1993年

*カバー文
混迷をつづける現代にあって、21世紀の「成熟社会の時代」を迎えるためには「戦後」を乗り越える道筋が明らかにされなければならない。15年戦争・敗戦・占領・復興・高度経済成長・石油危機・経済大国など、戦後日本の政治と経済の事実を、つねに世界史に関連づけながら、170枚の統計図表と40点の歴史資料を駆使しつつ丹念に、正確に把握する。

*目次
T 敗戦から占領へ
 1第二次世界大戦 / 2日本の降伏 / 3占領と改革
U 日本経済の再建
 4廃墟からの出発 / 5戦後インフレーション / 6戦後政治への模索 / 7傾斜生産と産業復興
V サンフランシスコ体制
 8ドッジ・ライン / 9朝鮮戦争と日本再軍備 / 10サンフランシスコ平和条約 / 11産業の合理化と経済の自立
W 国際社会への復帰
 12戦後政治の再編成 / 13技術革新と経済の近代化 / 14アジア外交の選択 / 15日米安保条約の改定
X 高度経済成長の時代
 16国民所得倍増計画 / 17経済構造の大変動 / 18高度経済成長への対応 / 19社会的不均衡の拡大
Y 経済大国・日本
 20転換期の世界と日本 / 21沖縄返還と通貨危機 / 22日中国交回復と石油危機
Z 二一世紀に向けて
 23経済の回復と政治の混迷 / 24財政再建と行政改革 / 25二一世紀に向けて
  あとがき / 索引


増田 四郎 (ますだしろう)
「都市」
(とし)
ちくま学芸文庫


*カバーデザイン・熊谷博人
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*228頁 / 発行 1994年

*カバー文
西ヨーロッパにおける近代資本主義の幕開けのきっかけともなった「市民」とは、どのような概念なのだろうか。古代・中世・近代の「都市」という現象を、広く世界史的な視野のもとに眺めるとともに、ヨーロッパの都市と東洋、特に日本の町との本質的な相違を社会的に比較研究し、市民意識の根源を浮き彫りにする先駆的名著。

*目次
 序
T 都市とは何か
U 市民とは何か
V 東洋になぜ市民という意識が発達しなかったか
W ギリシア・ローマの都市国家
X 西洋中世都市の二つの型
 @ 成立事情による相違 / A 中世都市の経済的背景
Y 近代社会への転換について
Z 近代都市の成立
 結び
附論一 ヨーロッパ都市の伝統 / 附論二 「市民」の概念とその変遷
 あとがき / 解説 増田史学の根柢にあるもの 阿部謹也


松本 健一 (まつもとけんいち)
「われに万古の心あり ― 幕末藩士 小林虎三郎」
(われにばんこのこころあり ― ばくまつはんし こばやしとらさぶろう)
ちくま学芸文庫


*カバーデザイン・渡辺千尋
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*365頁 / 発行 1997年

*カバー文
戊辰の戦いに敗れた長岡藩に、その窮状をみかねた支藩三根山藩から百俵の米が届いた。河井継之助亡きあと文武総督となった小林虎三郎は、その米を金に換え国漢学校を建てることで、「敗戦国」の復興を企てる。「みんなが食えないというから、おれは学校を立てようと思うのだ。」幕末には、佐久間象山門下で吉田松陰(寅次郎)とともに「両虎」と謳われ、長岡藩にあっては河井継之助のライバルとして戊辰戦争非戦論を展開、維新後もその「遠望するまなざし」「万古の心」でナショナルなものを思考し続けた小林虎三郎の生涯を、歴史の闇のなかから救出する力作評伝。

*目次
第一章 小林虎三郎の時代
第二章 常在戦場という精神
第三章 河井継之助と小林虎三郎
第四章 象山と松陰を繋ぐもの
第五章 精神のリレー
第六章 幕末のパトリオット
第七章 戦わない論理
第八章 遠望するまなざし
第九章 小林一族の戊辰戦争
第十章 敗戦国の復興
第十一章 後から来るものへ
第十二章 終焉
第十三章 ながい影
 プレスハムと田中角栄(坪内祐三)


松本 清張 (まつもとせいちょう)
「北一輝論」
(きたいっきろん)


*カバーデザイン・間村俊一
 カバー写真・鬼海弘雄
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*411頁 / 発行 2010年

*カバー文
北一輝は1883年、新潟県佐渡島に生まれ、2・26事件に連座して1937年、処刑された。外見的には社会主義者として出発し、国家主義を掲げて非業の最期を遂げた異色の思想家として語られるが、その思想の実体についてはなお多くの論議を呼んでいる。『昭和史発掘』を通じて2・26事件の全体像を精密に描き出した著者が、ヤヌスのような「革命家」の肖像を浮き彫りにする。

*目次
T 北一輝解釈と時代背景
U 「国体論」の粉本
V 史的「乱臣賊子」論
W 明治天皇と天智天皇
X 「改造法案」の自注
Y その行動軌跡の示すもの
Z 北一輝と西田悦
[ 決行前後
\ 断罪の論理
対談 ある国家主義者の原像 久野収・松本清張
解説 北一輝と二・二六事件をめぐる想像力と真実 筒井清忠


松山 巌 (まつやまいわお)
「乱歩と東京 1920 都市の貌」
(らんぽととうきょう)
ちくま学芸文庫


*カバーデザイン・神田昇和
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*283頁 / 発行 1994年

*カバー文
探偵小説作家・江戸川乱歩登場。彼がその作品の大半を発表した1920年代は、東京の都市文化が成熟し、華開いた年代であった。大都市への予兆をはらんで刻々と変わる街の中で、人々はそれまで経験しなかった感覚を穫得していった。乱歩の視線を方法に、変貌してゆく東京を解読する。

*目次
序章
T章 感覚の分化と変質
 探偵の目 / 目と舌と鼻、そして指
U章 大衆社会の快楽と窮乏
 高等遊民の恐怖 / 貧乏書生の快楽
V章 性の解放、抑圧の性
 姦通 / スワッピング
W章 追跡する私、逃走する私
 追跡する写真 / 逃走の実験
X章 路地から大道へ
 もう一つの実験室 / 大道芸人たち
Y章 老人と少年〔30年代から60年代へ〕
 埋葬 / 少年誘拐
 年譜 / あとがき / 参考文献 / 解説・種村季弘


間宮 陽介 (まみやようすけ)
「増補 ケインズとハイエク 〈自由〉の変容」
(KeynesとHayek)
ちくま学芸文庫



*カバーデザイン・神田昇和
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*235頁 / 発行 2006年

*カバー文
計画経済の提唱者と自由主義経済の旗手、融通無碍な進歩主義者と真正の保守主義者として対照的に語られる二巨匠。だが二人は、あらゆる思想と倫理が崩壊に瀕した両大戦間の同じ課題と対決し、新時代の自由の意味を探求するところから出発した。近年、ケインズ主義は過去の遺物、ハイエクこそ新・新自由主義の源泉とされがちだが、それが自由放任主義に転落し、経済倫理が消滅しつつあるかに見える今、新たな“自由の技法”が問われている。本書では自由主義の系譜をたどりつつ両者の思想に新鮮な照明を当てる。文庫化に当たりグローバリズムの拡大とネット社会到来後の“自由”を問い直す補論を増補。

*目次
 まえがき
第一章 喪われた世界
 1 ムーア倫理学とブルームズベリー・グループ / 2 ケインズの回想記にある二つの視線 / 3 ツヴァイクの遺書 / 4 世紀末ウィーンの真空 / 5 自由のユートピアアン、ハイエク
第二章 自由主義と自由放任主義
 1 二つの画法 / 2 自由主義の終焉 / 3 二つの自由主義 / 4 実証主義の興隆と自由の解体 / 5 体系としての自由
第三章 ハイエクの自由論
 1 自由の条件 / 2 不在の体系 / 3 民主主義論
第四章 自由のディレンマ
 1 経済の投機化 / 2 「市場経済」から「貨幣経済」へ / 3 貨幣経済のディレンマ / 4 自由の技法
終章 大衆社会の中で
補論 ケインズとハイエク ── その後
 1 ハイエク自由論の二分法モデル / 2 中間団体モデルによる自由論の展望
 文庫版あとがき


丸田 祥三 (まるたしょうぞう)
「鉄道廃墟」
(てつどうはいきょ)


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*219頁
*発行 2004年
*カバーデザイン・中山銀士

*カバー文
野ざらしとなった車両、草むした中に伸びる線路など、カメラマン自らが「棄景」と呼ぶ光景を捉えた写真&エッセイ。かつて近代化の響きを地上に轟かせた列車たちの痕跡がなまなましく残る風景や、幻想のかなたに甦る人間の記憶ともいうべき画像の数々。70年代以降、東京を含め日本各地に残っていた鉄道廃墟を写しとった、危険な魅力に満ちた一冊。


丸谷 才一 (まるやさいいち)
「快楽としてのミステリー」
(かいらくとしてのみすてりー)


*カバーデザイン・和田誠
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*475頁 / 発行 2012年

*カバー文
探偵小説を愛読して半世紀。ミステリーの楽しみを自在に語る待望のオリジナル文庫。ミステリー批評の名作として名高い『深夜の散歩』から最新の書評まで。ポー、ドイル、チェスタトンからクリスティー、フレミング、チャンドラーまで、そして、グリーン、バルガス=リョサ、エーコまで、さらには、松本清張から大岡昇平、大沢在昌まで、あっと驚く斬新華麗な名篇揃い。

*目次
T ハヤカワ・ポケット・ミステリは遊びの文化
 〔鼎談〕丸谷才一×向井敏×瀬戸川猛資
U 深夜の散歩 ―― マイ・スィン
V 女のミステリー
W ミステリーの愉しみ ―― ホームズから007、マーロウまで
X ミステリー書評29選
Y 文学、そしてミステリー
 解説 文学と恋愛する方法 三浦雅士