絶版文庫書誌集成

新潮文庫 【さ】

斎藤 綾子 (さいとうあやこ)
「結核病棟物語」
(けっかくびょうとうものがたり)


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*231頁
*発行 1997年
*カバー装画・平野敬子 / カバー装幀・緒方修一

*カバー文
大学生活はあんなに楽しかったのに、まさか、二十歳の私が、化石みたいな病気にかかるなんて…。どこか歪んだ老人ばかりの病棟で、毎日薬漬けの生活が始まる。病院は異常な出来事の連続で、ゲンナリしてしまうけど、私の性欲はいまにも炸裂しそう。不倫相手の小田島を思うと、子宮が疼いてしまう。いますぐにでもきて欲しい……。結核体験をユーモアでくるんだパンクラスな自伝的長編。

*解説頁・黒川創


佐藤 春夫著 島田 謹二編 (さとうはるお・しまだきんじ)
「佐藤春夫詩集」 
(さとうはるおししゅう)


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*254頁 / 発行 昭和26年
*カバー画像・「新潮文庫の復刊」版(平成6年刊)カバー

*カバー文
〈しんじつこひしきものゆゑに血をながしてもともおもへども〉遥かなる恋人への思いを訴える哀しみの歌『殉情詩集』他、「秋刀魚の歌」で有名な『我が一九二二年』、戦後の『抒情新集』等、代表的な詩集を収録。多彩な才能を発揮して日本の近代文学を支えた文人春夫の、浪漫的詩魂の軌跡。

*目次
初期詩集 / 殉情詩集 / 我が一九二二年 / 佐藤春夫詩集 / 佐藤春夫詩集(補遺) / 車塵集 / 魔女 / 閑談半日 / 東天紅 / 小杯余瀝集 / 奉公詩集 / 佐久の草笛 / 玉笛譜 / まゆみ抄 / 抒情新集 / 春夫詩存 / 解説 島田謹二


佐藤 春夫 (さとうはるお)
「わんぱく時代」
 (わんぱくじだい)


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*337頁
*発行 1986年
*カバー・北沢夕芸

*カバー文
困ったやつがきた。「僕」の第一尋常小学校とは仇敵の間柄の第二からの転校生崎山栄だ。案の定、崎山とクラスのがき大将ポンチャンとの大喧嘩が始まった。ポンチャンたちの参謀になった「僕」は計略をめぐらせ、乱暴しあうのではない遊びとしての戦争を提案した。さあ、「わんぱく戦争」の始まりだ―生き生きとした少年たちの姿をとおして、自我の形成史を描いた自伝的小説。大林宣彦監督映画化「野ゆき山ゆき海べゆき」原作


早乙女 勝元編著 (さおとめかつもと)
「写真版 東京大空襲の記録」
(しゃしんばんとうきょうだいくうしゅうのきろく)


*カバー写真提供・WWP
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*213頁 / 発行 1987年

*カバー文
昭和20年3月10日。一夜のうちに東京の下町一帯を焼け野原に変え、10万人にのぼる死者で街や河を埋めつくした東京大空襲。自身被災者でもある編者は「東京空襲を記録する会」の仲間と共に、戦後長らく埋もれていた資料を発堀し、空襲当時の模様を正確に再現した。元警視庁カメラマン石川光陽氏らの貴重な写真を得て、一般庶民にとって戦争とは何であったのかを訴える文庫版写真集。

*目次
第1章 被災者は今も地中に眠る
 中学生が人骨を発見 / 小さな公園に四千五一五人を埋葬 / 被災者は今なお地中に眠る / 平和公園も記念館もなく
第2章 はじめての東京空襲
 「リメンバー・パールハーバー」 / 防空・防火体制の強化 / ボーイングB29 / 無差別爆撃のはじまり
第3章 東京大空襲の夜
 B29、房総半島沖から侵入 / わずか半時間たらずで火の海に / 炎の夜 / 疎開先からの帰郷 / 焼けた空 / 焼死体の山 / 病魔に倒れた妹 / 手はあるか、足はあるか
第4章 大空襲の惨禍
 一〇万体以上を仮埋葬 / 大本営発表 / 第二次大規模爆撃 / 山の手地区にも焼夷弾の洗礼 / 最期の東京大空襲
第5章 空襲被害の全貌
 くいちがう調査資料 / 広島の原爆被害に匹敵 / 戦術作戦任務報告 / 超低空で侵入 / 人口密集地域への無差別爆撃 / 日本軍の中国爆撃
夜間空襲……吉村昭
空襲資料収集の旅……土岐島雄
空襲記録運動と早乙女勝元氏……松浦総三
資料提供 ── 石川陽光 / 関口照治 / WWPINC
       ロイター・UPI・サン 米国立公文書館
本文レイアウト ── マツダオフィス


里見 ク (さとみとん)
「多情仏心」 
(たじょうぶっしん)


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*657頁
*発行 昭和43年

*カバー文
紀尾井町の旦那藤代信之は光源氏か世之介の現代版ともいうべき人物で、財と暇にまかせ紅燈の巷に惑溺するが、彼にも一片のまごころがある。さまざまな女性との恋愛にもまごころが賭けられている。人間精神の純粋を求めてやまぬ理想がある――著者の"まごころ主義"がみごとに具現された作品であり、遊蕩児の生涯を通して、まごころからしたいと思うならば何をしてもかまわないと説く。

*解説頁・本多秋五


佐野 眞一 (さのしんいち)
「阿片王 満州の夜と霧」
(あへんおう)


*カバー写真・松本榮一
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*579頁 / 発行 2008年

*カバー文
アヘンを制するものは支那を制す。中国人民の尊厳と国力を奪うアヘン密売の総元締めとして、満州における莫大な闇利権を一手に差配し、関東軍から国民党までの信を得た怪傑・里見甫。時代の狂気そのままの暴走を重ね、「阿片王」の名をほしいままにしたその生涯を克明に掘り起こし、「王道楽土」の最深部にうごめく闇紳士たちの欲望劇のなかに描き出す構想十年、著者の最高傑作!

*目次
序章 団子坂の怪人 / 第一章 異形の人脈 / 第二章 男装の麗人 / 第三章 魔都放浪 / 第四章 秘密工作 / 第五章 アヘンの国 / 第六章 不逞者 / 第七章 風雲の上海 / 第八章 孤高のA級戦犯 / 第九章 女人変転 / 第十章 家系図の迷路 / 終章 石つぶて
 あとがき / 文庫版あとがき / 主要参考文献 / 里美甫・略年譜 / 主要人名索引


佐野 眞一 (さのしんいち)
「甘粕正彦 乱心の曠野」
(あまかすまさひこらんしんのこうや)


*カバー写真・松本榮一
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*613頁 / 発行 2010年

*カバー文
大杉事件の主謀者として“主義者殺し”の汚名を負い入獄。後年、満映理事長に着任後は一転、満州国の「夜の帝王」として君臨した、元憲兵大尉・甘粕正彦。趣味は「釣りと鴨撃ち、そして謀略」と公言し、現代史の暗部を彷徨した甘粕が、自死と共に葬ろうとしたものは何だったか? 講談社ノンフィクション賞受賞の衝撃作に、新事実を大幅加筆。通説を大きく揺さぶる満州巨編評伝。

*目次
序章 “主義者殺し”
第一章 幕末のDNA
第二章 憲兵大尉の鳴咽
第三章 鑑定書は語る
第四章 獄中の臣民
第五章 浴衣の会見記
第六章 暗鬱のルーアン
第七章 謀略人脈
第八章 満州ひとりぼっち
第九章 人は来りて見よ
第十章 満映という王国
終章 八十五年目の真実
 あとがき / 文庫版あとがき / 主要参考文献 / 「甘粕正彦」略年表 / 主要人名索引


佐野 眞一 (さのしんいち)
「遠い『山びこ』 ― 無着成恭と教え子たちの四十年」
(とおいやまびこ)


*カバー写真・芦澤明子
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*514頁 / 発行 2005年

*カバー文
昭和23年、山形の寒村に赴任した新任教師が世に問うた、作文集「山びこ学校」。そこに描かれたそのひたむきな子たちの姿は、大反響を呼び、戦後民主主義教育の金字塔とまで讃えられた ── 。20代で教育界の寵児となった男と43人の教え子たちのその後40年。高度成長、教育変革、そして日本人の意識の変化……。昭和という時代に翻弄されながらも懸命に生きた、それぞれの人生の証を追う。

*目次
 プロローグ
第一章 「そらはら」の子供たち
第二章 ジャーナリスト人脈
第三章 「母の死とその後」
第四章 檀那寺の跡とり
第五章 翻弄される山村
第六章 素足の卒業式
第七章 幻の「きかんしゃ」発掘
第八章 谷間の英雄
第九章 村からの追放
第十章 都会に出た十一人
第十一章 江一の沈黙
第十二章 藤三郎の闘い
第十三章 明星の無着成恭
 エピローグ
 あとがき / 新潮文庫版へのあとがき / 取材協力者一覧 / 参考文献一覧
 解説 ── 水蜜桃の種 出久根達郎


佐野 眞一 (さのしんいち)
「東電OL殺人事件」
(とうでんおうえるさつじんじけん)


*カバー写真・南慎二
 題字・藤田重廣
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*541頁 / 発行 2003年

*カバー文
彼女は私に会釈して、「セックスしませんか。一回五千円です」といってきました ── 。古ぼけたアパートの一室で絞殺された娼婦、その昼の顔はエリートOLだった。なぜ彼女は夜の街に立ったのか、逮捕されたネパール人は果たして真犯人なのか、そして事件が炙り出した人間存在の底無き闇とは……。衝撃の事件発生から劇的な無罪判決までを追った、事件ノンフィクションの金字塔。

*目次
第1部 堕落への道
 第一章 迷宮 / 第二章 幻聴 / 第三章 富士 / 第四章 証拠 / 第五章 否定 / 第六章 遺骨

第2部 ネパール横断
 第一章 山嶺 / 第二章 公判 / 第三章 検証 / 第四章 夜気 / 第五章 帰郷 / 第六章 落涙 / 第七章 供述 / 第八章 暴行 / 第九章 調書 / 第十章 幻影

第3部 法廷の闇
 第一章 目撃 / 第二章 実検 / 第三章 拘置 / 第四章 精液 / 第五章 墓地 / 第六章 顧客 / 第七章 路上 / 第八章 肉声 / 第九章 遍歴 / 第十章 部屋

第4部 黒いヒロイン
 第一章 求刑 / 第二章 結審 / 第三章 陰毛 / 第四章 閉廷 / 第五章 拒食 / 第六章 滑落 / 第七章 対話

 エピローグ / あとがき


佐野 洋子 (さのようこ)
「私の息子はサルだった」
(わたしのむすこはさるだった)


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*138頁
*発行 2018年
*デザイン・新潮社装幀室

*カバー文
何でもやってくれ。子供時代を充分子供として過ごしてくれたらそれでいい ―― 。本を読んで、お話をして、とせがんだ幼い息子。好きな女の子が「何考えていたのかなあ」と想像する小学生の息子。中学生になり、父親を亡くした親友に接する息子……。著者は自らの子を不思議な生き物のように観察し、成長していく姿に驚きつつ慈しむ。没後発見された原稿を集めた、心あたたまる物語エッセイ。

*解説頁・窪美澄


更科 源蔵 (さらしなげんぞう)
「北海道の旅」
 (ほっかいどうのたび)


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*321頁 / 発行 昭和54年
*カバー・小野具定

*カバー文
北海道はさまざまな顔を持つ。異邦的な風土、広大な自然、最果ての旅情、アイヌの伝説、屯田兵以来の開拓史、酪農や北方漁業の街など。これらの魅力のすべてを、北海道に生れ育った詩人が、小説や詩に描かれた各地の表情を紹介しながら、質朴な筆であますところなく伝えてくれる。あまたのガイドブックでとりあげられた北海道とは、いささか異なった北海道の素顔がここにある。

*目次
異邦的な風土 / 道南の旅 / 道央の旅 / 道東の旅 / 道北の旅 / あとがき


澤地 久枝 (さわちひさえ)
「琉球布紀行」
(りゅうきゅうぬのきこう)


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*330頁 / 発行 2004年
*カバー装幀・島田隆
 カバー写真 / 著者愛用の芭蕉布の帯(平良敏子作) / 撮影 田村邦男(新潮社写真部)

*カバー文
琉球の布への夢に憑かれて、著者は島から島へと旅をし、沖縄本島でも南から北まで歩いた。そして染織の根気のいる仕事を成し遂げ、その生活を支えてきた女たちの手仕事の実際を知り、問わず語りに、沖縄戦の苛酷な体験を聞く。琉球の布を訪ねて旅することは、作り手たちが背負っている人生を訪ねることだった ── 琉球の布と作り手の物語を、きものを愛する著者が愛情をこめて綴る。

*目次
はじめに / 首里の紅型一 / 首里の紅型二 / 読谷山花織と手巾 / 奄美大島紬 / 久米島紬 / 宮古上布 / 喜如嘉の芭蕉布 / 八重山上布 / 琉球藍 / 与那国織 / 琉球絣 / 首里織 / 逢えなかった人 大城志津子 / あとがき / 文庫版あとがき / ゆうなの木のしたで 渡辺一枝


サン・テクジュペリ著 / 堀口 大學訳 (ほりぐちだいがく)
「戦う操縦士」 
(たたかうそうじゅうし)


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*204頁
*発行 1956年

*堀口大學「あとがき」より引用
『戦う操縦士』は、彼が、司令部附偵察飛行隊に、陸軍大尉操縦士として一九三九年――四〇年の対ナチス戦争に参加し、フランス軍の全面的崩壊に至るまでの艱苦の戦闘体験から得たモラルの文学的結実であり、実戦記である。