絶版文庫書誌集成

新潮文庫 【お】

大岡 昇平 (おおおかしょうへい)
「酸素」 
(さんそ)


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*246頁
*発行 1979年

*カバー文
神戸の〈日仏酸素株式会社〉は海軍と結びついて造船用の酸素を納入していた。その会社にひとりの青年が翻訳係として採用されたが、彼は非合法活動のために特高に追われる身だった……。日ごとに緊迫の度を増す開戦前夜の暗い時代相の中に、実業家、軍人、地下活動家、女流画家などさまざまに入り乱れる多彩な人物像、幾多にもからまり合う恋愛心理を冷徹な筆に描く長編。


大崎 善生編 (おおさきよしお)
「棋士という人生 傑作将棋アンソロジー」
(きしというじんせい)


*カバー写真・中野英伴
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*371頁 / 発行 2016年

*カバー文
吹けば飛ぶような駒に人生を賭けた者たち。日々盤面に向かう彼らは何を追い求めるのか。大山康晴、升田幸三、中原誠ら往年の大棋士たちの横顔、才能空しく脚光を浴びずに消えた悲運の棋士の肖像、孤独に戦い続ける若手棋士の苦悩…作家、記者、そして棋士自身が綴った文章の中から二十余の名品を精選。将棋指しという職業の哀歓、将棋という遊戯の深遠さを写し出すアンソロジー。

*目次
守られている … 大崎善生
そうではあるけれど、上を向いて … 中平邦彦
将棋が弱くなるクスリ … 東公平
神童 天才 凡人 … 沢木耕太郎
京須先生の死 … 山田道美
忘れ得ぬひと、思い出のひと … 芹澤博文
愛弟子・芹澤博文の死 … 高柳敏夫
詰パラとの出会い … 若島正
九段 … 坂口安吾
棋士と寿命と大山さん … 内藤國雄
男の花道 … 色川武大
不世出の大名人 … 河口俊彦
わが友、森信雄 … 大崎善生
待ったが許されるならば…… … 畠山鎮
牛丼屋にて … 団鬼六
超強豪の昨日今日明日 … 炬口勝弘
『棋を楽しみて老いるを知らず』より … 二上達也
完璧で必然的な逆転劇 … 島朗
漂えど沈まず … 先崎学
4二角 … 小林宏
床屋で肩こりについて考える … 村上春樹
竜王戦 … 森内俊之
常識 … 小林秀雄
ボナンザ戦を受けた理由 … 渡辺明
退会の日天野貴元
「将棋世界」編集部日記 … 大崎善生
 編者あとがき
 著者紹介
 底本一覧


大崎 善生 (おおさきよしお)
「赦す人 団鬼六伝」
(ゆるすひと だんおにろくでん)


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*570頁 / 発行 2015年
*カバー写真提供・黒岩安紀子 / 肥沼由紀子 / 弦巻勝
 カバー撮影・広瀬達郎(新潮社写真部)


*カバー文
昭和6年。文士と親しく交流する女優の母と相場師の父との間に鬼六は生れた。純文学を志すが挫折、酒場経営で夜逃げ、一転中学教師を経て、SM作家として莫大な稼ぎを得る。しかし、映画製作や雑誌の発行に乗り出し破産。周囲は怪しげな輩が取巻いていた……。栄光と転落を繰返す人生は、無限の優しさと赦しに貫かれ、晩年に罹患した病にさえも泰然としていた。波瀾万丈の一代記。

*目次
第一章 御殿を追われて / 第二章 少年時代 / 第三章 はじめての夜逃げ / 第四章 純文学作家として / 第五章 教壇とSM小説 / 第六章 奇妙な隠遁生活 / 第七章 「エロ事師」開眼 / 第八章 鬼プロの興亡 / 第九章 不貞の季節 / 第十章 「新宿の殺し屋」現る / 第十一章 すべてを将棋に / 第十二章 最後の愛人 / 第十三章 遊びの果てに / 解説 ── 天国と地獄 若島正


大路 和子 (おおじかずこ)
「沖田総司を歩く」 (おきたそうじをあるく)


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*313頁
*発行 平成15年
*カバー装画・森英二郎

*カバー文
青雲の志をいだいた沖田総司は、江戸でどのように腕を磨いたのか。近藤勇、土方歳三らと共に、戦乱の京でいかにして戦ったのか。悲劇の剣士の出生からその死までを軸に、新選組の足跡を追う歴史紀行&史跡ガイド。出稽古に励んだ武州多摩、新選組を結成した京・壬生など、ゆかりの地を東西に訪ねる。史跡や遺品の写真、観光にも便利な地図も豊富に加えた「新選組入門」の決定版。

*目次
 まえがき
誕生 江戸篇
 白河藩下屋敷 ― 総司出生の地 / 試衛館 ― 必殺剣と師友たち / 小石川伝通院 ― 浪士たちの野望

青春 多摩篇
 甲州街道 ― 新選組のふるさとへ / 小島資料館 ― 総司の手紙 / 日野宿 ― 試衛館の後援者たち / 日野八坂神社 ― 奉納された武勇の額 / 佐藤彦五郎屋敷 ― 総司の指南術 / 井上源三郎屋敷 ― 盟友・井上源三郎 / 府中六所宮 ― 天然理心流の晴れ舞台 / 高幡山金剛寺 ― お不動さんと剣士たち / 石田寺 ― 土方歳三の墓所 / 土方歳三の生家 ― 洒脱な土方歳三

動乱 京都篇
 中仙道 ― 荒ぶる浪士たち / 壬生 ― 浪士組誕生 / 壬生寺 ― 京に眠る隊士たち / 八木邸 ― 新選組結成と粛清 / 旧前川邸 ― 拷問と池田屋騒動序曲 / 光縁寺 ― 沖田氏縁者の謎 / 二条城 ― 徳川将軍家の本拠 / 金戒光明寺 ― 会津藩と新選組の縁 / 京都守護職屋敷 ― 松平容保の苦悩 / 蛤御門 ― 新選組の初陣 / 島原 ― 夜の浪士たち / 池田屋 ― 地獄絵図の死闘 / 六角獄 ― 尊攘派志士惨殺の疑い / 大津 ― 総長山南の脱走 / 西本願寺 ― 敵中にあった屯所 / 三条大橋 ― 月夜の制札事件 / 月真院 ― 新選組分裂 / 本光寺 ― 七条油小路の死闘 / 泉湧寺塔頭戒光寺 ― 高台寺党壊滅 / 伏見 ― 近藤狙撃と激戦 / 寺田屋 ― 龍馬襲撃と薩摩藩同士討ち / 淀城址 ― 井上源三郎、千両松の死

乱刃 大坂篇
 大坂城 ― 将軍の夜逃げ / 蜆橋 ― 深夜の乱闘 / 天神橋 ― 大坂奉行所与力の暗殺 / 大坂新町九軒町 ― 総司と遊女 / 万福寺 ― 新選組大坂屯所 / 天保山沖 ― 新選組敗走

落日 江戸篇
 品川釜屋 ― 再起する新選組 / 神田和泉橋医学所 ― 奥医師・松本良順 / 浅草今戸神社 ― 二つの臨終の地 / 千駄ヶ谷池尻橋 ― 総司の最期 / 専称寺 ― 涅槃城 / 終章 ― 新選組の終焉
  「沖田総司・新選組」関係年表
  参考文献
 あとがき


大田 洋子 (おおたようこ)
「半人間」 (はんにんげん)


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*245頁
*発行 昭和30年

*目録文
原爆と敗戰……日本人の苦闘を、自らの體驗をとおして切々と綴る。《女流文學賞作品》


大貫 妙子 (おおぬきたえこ)
「私の暮らしかた」
(わたしのくらしかた)


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*272頁
*発行 2016年
*カバー写真・広瀬達郎(新潮社写真部)

*カバー文
大貫妙子 ── 凛とした楽曲と透きとおった声で多くのファンをもつ、シンガー&ソング・ライター。その飾らない生き方にも共感が寄せられている。葉山での猫との暮らし、年下のパリの友だち。コスタリカで出会ったナマケモノ。歌い手としてさまざまな土地を訪れ、歌わない某日は田植えに出かける。母なる自然と自らの内なる声に耳を澄ます。愛おしい日々をまっすぐ綴る、エッセイ集。


大野 晋 (おおのすすむ)
「日本人の神」
 (にほんじんのかみ)


*カバー写真・金子親一
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*212頁 / 発行 平成13年

*カバー文
私たちの祖先が考えた日本のカミとは、一体どのようなものか。八百万もいるという神たちは、マツリ(捧げ物をして祈る)を要求し、漂い動いてカミガカリし、ときに恐ろしい存在となってタタルこともある。インドのホトケや西欧のGodとの違いは? 日本語の(神)という言葉の由来を遡りながら、日本人の精神構造、暮し方までを考える。国語学の達人による日本人のルーツへの旅。

*目次
T 日本のカミ
U ホトケの輸入
V カミとホトケの習合
W カミとホトケの分離
X ホトケのぶちこわしとGodの輸入
Y カミの輸入
Z 日本の文明と文化 カミの意味は変わっていくか
 注
 あとがき
 解説 中村雄三郎
 索引


岡崎 宏司編 (おかざきひろし)
「NEW SKYLINE ― 世界の名車グラフィティ」



*カバー写真・鶴田義久
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*206頁 / 発行 昭和58年

*カバー文
流行の最先端を行くテールフィンを身にまとい、国産車最速の性能をひっさげてのデビューから30年、日本の風土と技術が生んだ名車スカイラインは7代目にしてその足跡に新たな一歩をしるした。新RB系エンジンに盛られた数々の新テクノロジー、究極のサスペンションHICAS、そして待望の2ドア・モデル。精悍な姿態に秘められた、スカイライン・スピリットのすべて。

*目次
SKYLINE IN ACTION スカイラインの世界
SKYLINE STORY スカイライン物語
DRIVING IMPRESSION 2ドアスポーツクーペドライビング
DEVELOPMENT PROCESS 開発プロセス
CONVERSATION クルマづくりの原点を求めて
GENEALOGY スカイライン30年の歩み


小川 国夫 (おがわくにお)
「アポロンの島」 
(あぽろんのしま)


*カバー・司修
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*223頁 / 発行 昭和53年

*カバー文
南ヨーロッパの白い光のなか、オートバイでひとり旅をする青年の姿を、徹底した即物的描写でゆるぎなく定着させた『アポロンの島』。日本の暗い土俗的雰囲気のなかで成長してゆく少年の感受性のドラマを、自伝的にあとづけた『動員時代』。ほかに、『エリコへ下る道』『大きな恵み』など、対照的な二つの世界を併存させながら、格調高い文体で、たぐい稀な文学的完成度を示す第一作品集。

*目次
エリコへ下る道
 枯木 / 貝の声 / エリコへ下る道 / 重い疲れ

アポロンの島
 ナフプリオン / 寄港 / スイスにて / シシリー等の人々 / エレウシスの美術館 / アポロンの島
動員時代
 海と鰻 / 箱舟 / 東海のほとり / 雪の日 / お麦 / 夕日と草 / 動員時代
大きな恵み
 海の声 / 遊歩道 / 大きな恵み / ボス / 大きな森
 自分の作品について
 解説 島尾敏雄


小川 国夫 (おがわくにお)
「或る聖書」 (あるせいしょ)


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*242頁
*発行 昭和52年
*カバー・柄沢斉

*カバー文
火のような呪いの言葉と武器をもってローマ帝国の支配に反逆したイシュア。愛と慰めの言葉によって救いを説く〈あの人〉。そして〈あの人〉の教えにどこまでも従おうとするユニアと、〈あの人〉を売る誘惑に身をまかすアシニリロムゾ。何ひとつ生きもののない荒野の衆会を背景に、旧約聖書的な闇の世界と、新約的な光の世界との相克を、陰影のつよい鮮烈な言葉で構築した長編小説。

*解説頁・上田三四二


小川 国夫 (おがわくにお)
「試みの岸」 (こころみのきし)


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*309頁
*発行 昭和55年
*カバー・司修

*カバー文
難破船を買い取ってひと儲けしようとするが、山家(やまが)出で不馴れなために船の付属品をすべて盗まれ、それを取り戻そうとして殺人を犯してしまう馬喰(ばくろう)の物語『試みの岸』。馬喰の甥で馬に変身する少年の物語『黒馬に新しい日を』。馬喰を愛しながらもその愛を果たしえずに自殺する女の物語『静南村(しずまみむら)』。試練に立たされた男を影りの深い雄勁(ゆうけいな)な文体で刻み上げ、現代文学に特異な位置を占める三部作。

*解説頁・大橋健三郎


奥野 健男 (おくのたけお)
「三島由紀夫伝説」
(みしまゆきおでんせつ)


*カバー装画・藤波理恵子
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*492頁 / 発行 2000年

*カバー文
敗戦によって「世界の終末」を見てしまった男。同世代の誰彼と並走しているかに見えて、実はトラックを一周速くまわっていた天才。戦後社会への、いやしがたい敵意と、ぬきんでた悪意の「象徴」でありつづけた唯一の作家 ── 。「文学の兄」と敬愛した三島由紀夫の、あまりに衝撃的な自裁。その日から二十余年の歳月をかけ「伝説」にまで醇化させた,ある「狂おしくも詩的な魂」の全貌。

*目次
不思議な共感 ── 昭和の昭和への復讐
三島由紀夫の生まれ育った時代 ── 近代から現代へ
異常な幼少年期
祖母奈津
学習院時代
再び祖母奈津及び母倭文重
処女創作集『花ざかりの森』の頃
敗戦まで
敗戦と新事実
高文・大蔵官僚・太宰治
『仮面の告白』 ── 三島文学の核
 *
『禁色』 ── 反世界の構築と破局
『潮騒』と『鍵のかかる部屋』の矛盾
『金閣寺』の狂気と成功
『鏡子の部屋』の不思議
『風流夢譚』事件
『美しい星』 ── 人類滅亡を議論する思想小説
『英霊の声』の呪詛と『荒野より』の冷静
大団円『豊饒の海』
肉体的完成と死
 『三島由紀夫伝説』を書き終えて
 文庫版の編集について

昭和の精神史に新しい地平を拓いた作家論 渡辺一民


尾崎 一雄 (おざきかずお)
「暢気眼鏡」 
(のんきめがね)


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*216頁
*発行 昭和25年

*カバー文
大の臆病者だが、すべてに対して無邪気なまでに明るく暢気な妻“芳兵衛”との、貧しいながらも心が通いあうほのぼのとした夫婦生活を描いた表題作のほか、『猫』『芳兵衛』『擬態』『父祖の地』『玄関風呂』『こおろぎ』『痩せた雄鶏』『華燭の日』『退職の願い』など9編を収録。苦しい借家住まいから徐々に向上してゆく二人の生活を連作風に描き、作者の人間味あふれる短編集。 

*目次
猫 / 暢気眼鏡 / 芳兵衛 / 擬態 / 父祖の地 / 玄関風呂 / こおろぎ / 痩せた雄鶏 / 華燭の日 / 退職の願い / 解説 山室静


尾崎 士郎 (おざきしろう)
「人生劇場 青春篇 上」 
(じんせいげきじょう)

*241頁 /発行 1947年

*カバー文
『人生劇場』は、大正初期から敗戦後に至る日本社会の動きを背景に、三州横須賀村をあとに上京した青成瓢吉のみずみずしい情感あふれる人生を謳いあげて、"人生意気に感ず"とはどういうことかを多彩な人物の点出のなかに語り伝えようとした人情と哀歓の一大絵巻である。本編はその序幕であり、多感な中学時代を送った瓢吉が、早稲田に進学し学園騒動とお袖との愛に悩むまでを描く。


尾崎 士郎 (おざきしろう)
「人生劇場 青春篇 下」 
(じんせいげきじょう)


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*246頁 / 発行 1957年

*カバー文
青春の可能性を内に秘めながらもお袖との同棲生活から脱け出せないでいる瓢吉のところへ、父瓢太郎がピス トル自 殺をとげた知らせが伝わる。混乱する社会に歩み出んとする瓢吉たちと対照的な黒馬先生や吉良常の落ちぶれた姿は、滅びゆく旧き日本への挽歌とも言えるであろう。ユーモラスな描写の底に流れる哀愁には、新旧日本の過渡期における切実な苦悩がにじみ出ている。


尾崎 士郎 (おざきしろう)
「人生劇場 愛欲篇 上」 
(じんせいげきじょう)


(画像拡大不可)


*211頁 / 発行 1952年

*カバー文
明治、大正の学生生活を背景とした『青春篇』は、一転して昭和に入る。主人公青成瓢吉、お袖、夏村大蔵、すべて『青春篇』から引続く人物たちが大震災を境に、大正の終りから悲劇的な昭和の日本の門をくぐろうとしている。文学の道を志した瓢吉は、友人吹岡とともに外房総の寺にこもり、創作の修行をしていたが、ある日、九州から上京した新進女流作家小岸照代と出会う。


尾崎 士郎 (おざきしろう)
「人生劇場 愛欲篇 下」 
(じんせいげきじょう)

*217頁 / 発行 1952年

*カバー文
一瞬の関東大震災は、旧い日本をことごとく葬り去ってしまった。郊外の一軒家に夢のような愛の生活をいとなみ始めた瓢吉と小岸照代ではあったが、照代の昔の恋人の上京や、照代のほうが一歩先んじて文壇に認められ、世間的名声を獲得したことから、やがて破綻を迎えようとする。不安定な過渡期日本の流れの中に、青成瓢吉の愛欲図は、息もつかせずくりひろげられる……。 (解説頁・檀一雄)


尾崎 士郎 (おざきしろう)
「人生劇場 残侠篇 上」 
(じんせいげきじょう)


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*287頁
*発行 1980年

*カバー文
男をかけて惚れこんだ親分の幻をいだいて放浪する吉良常。女ゆえに義理人情を賭して火と燃える飛車角。ただ一筋の恋に命を託して流転するおとよ。文筆家に成長した主人公青成瓢吉の身辺をめぐって『人生劇場』は舞台を侠客の世界へと移してゆく。出入りの夜、情婦おとよを売りとばされた飛車角は、その下手人を刺殺し警察の追跡を逃れるうち、瓢吉を尋ねて上京した吉良常に助けられる。


尾崎 士郎 (おざきしろう)
「人生劇場 残侠篇 下」 
(じんせいげきじょう)


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*284頁
*発行 1979年

*カバー文
七年の刑を終え前橋刑務所を出所した飛車角を迎えたのは、逃亡の際行きずりに出合った吉良常だけであった。飛車角が命を賭けたおとよは昔の弟分宮川のもとへ……。見えない糸に引かれるように吉良常の臨終につどいあった人々は、再び離ればなれの道をたどる。古い仁侠の世界の滅びゆく姿に悠久哀切な人生を見ながら、侠客精神とやくざ心理のニュアンスを描く。 (解説頁・井上友一郎)


尾崎 士郎 (おざきしろう)
「人生劇場 風雲篇 上」 
(じんせいげきじょう)


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*254頁 / 発行 1953年

*カバー文
時代は日華事変が始まる少し前、風雲に乗じて一旗挙げようとする夏村や高見らはすでに大陸に渡ってしまった。そんなある日、瓢吉のもとに岡崎中学の同窓会から講演の依頼が舞い込む。二十年ぶりに故郷に帰った瓢吉は、はからずも飛車角に再会し、またおりんに逢って一夜を語り明かす。偶然を必然の部分として随所にちりばめながら、生の感動を求めて『人生劇場』の舞台はめぐる。


尾崎 士郎 (おざきしろう)
「人生劇場 風雲篇 下」 
(じんせいげきじょう)


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*274頁 / 発行 1953年

*カバー文
日華事変の勃発は日本人全体の運命を根こそぎ変えてしまった。風雲に夢を託して去っていった夏村や高見に続いて、瓢吉もまた文学者数人とともに従軍記者として上海におもむく。さらに花火師となった飛車角や可憐なお袖とおとよら。『人生劇場』の登場人物たちは続々と大陸に渡り、それぞれの喜怒哀楽を刻んで鮮やかに行動しながら大河のごときロマンを展開する。

*解説頁・尾崎一雄


尾崎 士郎 (おざきしろう)
「人生劇場 離愁篇」 (じんせいげきじょう)


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*330頁
*発行 1954年

*カバー文
青成瓢吉の青春は早くも消え去ろうとしていた。おりから一片の徴用令書により南方の戦場に送られた彼は、戦場生活の日々の生々しい印象を、自らの人生の埋没してゆく過程とともにきわめて正確に記録した。この一巻における「青成瓢吉」は、文化人部隊としてフィリピン戦線に従軍した作者そのものであり、長編『人生劇場』にとっては外編と称すべきものである。


尾崎 士郎 (おざきしろう)
「人生劇場 夢現篇」 
(じんせいげきじょう)


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*250頁 / 発行 1954年

*カバー文
宣伝班員として徴用され、船でフィリピンに派遣される青成瓢吉ら文化人たちは、“将軍のおめざわり”になるというので船底におしこめられ、さらに小用と洗面を禁止される憂目に会う。しかもそれが問題にもならない不思議な時世だった。胃潰瘍をわずらい、病躯のまま内地へ帰還してみれば、祖国ははや街にも人にも敗色濃く、悪夢のような運命は憔悴した瓢吉の上にも迫っていた。

*解説頁・水野成夫


尾崎 士郎 (おざきしろう)
「人生劇場 望郷篇」 
(じんせいげきじょう)


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*194頁 / 発行 1954年

*カバー文
敗戦の混乱に乗じた第三国人の理不尽な暴力に、任侠の血は爆発する。瓢吉は、男の意地で死地におもむく飛車角や宮川などが織りなす任侠の世界をさまようが、その胸には、はかない過去への郷愁が深かった。昭和8年から19年間にわたって書き続けられた『人生劇場』は、太平洋戦争とその敗北という巨大な歴史の時期を通じ"日本的なもの"を活写した昭和の国民文学である。

*解説頁・火野葦平


尾崎 真理子 (おざきまりこ)
「ひみつの王国 評伝 石井桃子」
(ひみつのおうこくひょうでんいしいももこ)


*カバー装画
Henry J.Darger
“in the Realms of the Unreal”
Mixed media on peper
61cmx227cm(detail)
(C)Kiyoko Lerner 2018
協力:小出由紀子事務所
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*718頁 / 発行 2018年

*カバー文
ノンちゃん雲に乗る、クマのプーさん、ピーター・ラビットなど作家・翻訳者・編集者として幾多の名作を世に送り出し、溢れる才能のすべてを「子ども時代の幸福」に捧げた101年の生涯。200時間に及ぶインタビューや書簡、綿密な取材をもとに、戦前戦中の活動や私生活にも迫る。子どもの本で人々を勇気づけ、児童文学の星座で強い光をはなつ石井桃子の稀有な人生を描いた、初の本格評伝。

*目次
 序章
第一章 浦和の小宇宙 一九〇七〜一九二六年
 「生まれる自分」の記憶 / 三月ひなの国へ行く / 氷川様にまもられて / 平等の風が通り抜ける家 / 読書事始め / 姉たちの結婚を愁う / 女子大で英語を学ぶ / 自活への細道
第二章 文藝春秋社と『幻の朱い実』 一九二七〜一九三六年
 菊池寛との出会い / その頃、モダンガールたちは / 昭和六年の「社中日記」 / レインボーグリルのかげで / 『幻の朱い実』の頃 / 小里文子と「貞操問答」 / 女子の本懐
第三章 プーの降りてきた日 一九三三〜一九四十年
 犬飼家のクリスマス / 「日本少国民文庫」と山本有三 / シー・ヨードラーの若者たち / スキー場の恋 / 「白林少年館」に描いた夢 / 井伏さん、太宰さん
第四章 戦争から生まれた『ノンちゃん』 一九四〇〜一九四五年
 プーさんと言論統制 / 少国民と「菊の花」 / 北京の空、東京の空 / 労働科学研究所の秘書になる / 敗戦まで
第五章 子どもの本の開拓者へ 一九四五〜一九五四年
 女二人の開墾生活 / 「ノンちゃん」本になる / 戦犯になった作家たち / うるわしき鶯沢の過酷 / 諦めなかった吉野源三郎 / 「岩波少年文庫」創刊まで / 占領下の編集 / 児童文学の旅 ―― 米欧留学
第六章 家庭文庫とひみつの書斎 一九五五〜一九七五年
 瀬田貞二とISUMI会 / 読み聞かせから生まれた名訳 / かつら文庫を開く / 子どもの文学とは / 中川李枝子と松岡享子 / 本物の作家になるには / キャザー&ファージョン&ポター / 『ノンちゃん』はどこから来たのか
第七章 晩年のスタイル 一九七九〜二〇〇八年
 満ちたりた生活 / 私というファンタジー / もう一度、ミルンに学ぶ / 子どもの本に理屈はいらない / 友情の首飾り / 半世紀のちの告白 / 百年をかけた幸福

 あとがき
 引用・参考文献リスト
 石井桃子略年譜
 文庫版のためのあとがき
 解説 川本三郎


長部 日出雄 (おさべひでお)
「笑いの狩人 ― 江戸落語家伝」 (わらいのかりゅうど)


*カバー・山藤章二
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*296頁 / 発行 昭和58年

*カバー文
“江戸文化の華”といわれる落語 ―― 仕方咄で客を沸かせたが、幕府の怒りを買い島流しにされた創始者・鹿野武左衛門。得意の三題咄で落語を復興させた三笑亭可楽。怪談咄の元祖・林屋正蔵。名古屋生れのドドイツ節を江戸で開花させた都々一坊扇歌。江戸落語の完成者にして、近代落語の祖と称えられる三遊亭円朝。江戸落語を生み、育てた五人の芸人たちの凄絶・痛快な生き方を描く。

*目次
江戸落語事始
落語復興
幽霊出現
天保浮かれ節
円朝登場
 解説 矢野誠一

*注=1811年(文化8年)初代から4代目までは林正藏、1888年(明治21年)5代目から林正蔵となった。


大佛 次郎 (おさらぎじろう)
「帰郷」 (ききょう)


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*362頁
*発行 昭和27年

*カバー文
20年前、他人の罪をきて国外に失踪し異郷をさまよっていた元海軍将校守屋恭吾は、終戦とともに無国籍者として帰国する。だが、彼が求める日本の伝統は、荒廃しきった日常の中に埋没してむなしくこだまするだけだった。戦後の軽薄な風潮に対する憤りを燠火(おきび)のように紙背にひそめた文章が、一種の香気となって読む者の心をとらえ、新聞小説として異常な成功を収めた長編である。

*解説頁・山本健吉


大佛 次郎 (おさらぎじろう)
「宗方姉妹」 
(むなかたしまい)


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*394頁
*発行 昭和29年

*カバー文
敗戦ですべてを失い、満洲から帰国した宗方姉妹は、戦後の混乱のさ中で始めから生活を立て直さなければならなかった。活発な妹満里子に比べ古風で内向的な節子は、事業を失い虚脱状態の夫に代って生活を支えるため、反対を押し切って酒場を開くが、そこへ昔の恋人が現われ二人の間には古い恋心が蘇ってくる……。教養・感受性・気品など著者の特色が遺憾なく発揮された抒情小説。

*解説頁・山本健吉


小沢 昭一・大倉 徹也 (おざわしょういち・おおくらてつや)
「小沢昭一的 流行歌・昭和のこころ」 (おざわしょういちてきりゅうこうかしょうわのこころ)


*カバー装画・矢吹申彦
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*336頁 / 発行 平成15年

*カバー文
昭和歌謡史に燦然とかがやく、なつかしのスターと名曲の数々。藤山一郎「東京ラプソディー」、美ち奴「ああそれなのに」、杉狂児「うちの女房にゃ髭がある」、二村定一「私の青空」……。語りの名人・小沢昭一が心に響いた流行歌を、うれし楽しく軽く深く、知られざるゴシップも交えつつ時代の匂いとともに名調子で回顧する。激動の昭和が懐かしのメロディーといっしょに蘇る一冊。

*目次
柳青める日 藤山一郎について…考える
ああそれなのに 美ち奴について…考える
なぜか忘れぬ人故に 楠木繁夫について…考える
荒野の涯に日は落ちて 松平晃について…考える
パピプペパピプペパピプペポ 杉狂児について…考える
私の青空 二村定一について…考える
ハアー 小唄勝太郎について…考える
ほろほろこぼれる白い花を 灰田勝彦について…考える
花もあらしも踏みこえて 霧島昇・松原操夫妻について…考える
ダイナ 私の恋人 ディック・ミネについて…考える
口笛吹いたら小窓があいた 美空ひばりについて…考える
 小沢昭一さんについて…考える 山川静夫


小沢 昭一 (おざわしょういち)
「私のための芸能野史」
 (わたしのためのげいのうやし)


*カバー・山藤章二
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*308頁 / 発行 昭和58年

*カバー文
浪花節の広沢瓢右ヱ門、トクダシの一条さゆり、桐かおる、さらに万歳、足芸、女相撲、説教・絵解など、場末の観客を相手に、確実に喜ばせて金をとってきたクロウト芸のかずかず。かつては庶民の生活の喜びに密着して大勢の名人・上手がいたにもかかわらず、今まさに滅びようとしている諸芸能を訪ねながら、“シロウト俳優としての小沢昭一”を再考した情熱あふれる本。

*目次
T 万歳
U 足芸師
V 女相撲(上)
W 女相撲(下)
X 浪花節
Y 説教・絵解
Z トクダシ(上)
[ トクダシ(下)
\ 東京の大道芸人窟(上)
] 東京の大道芸人窟(下)
]T 漫才
]U ふたたび万歳
 あとがき
 新装版に寄せて
 解説 中村とうよう