絶版文庫書誌集成

新潮文庫 【こ】

小泉 信三 (こいずみしんぞう)
「共産主義批判の常識」
 (きょうさんしゅぎひはんのじょうしき)


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*225頁
*発行 昭和29年

*目録文
難解とされるマルクス・レーニン主義の原理を平易明快に解説批判した近代人必讀の名著


小泉 信三 (こいずみしんぞう)
「福沢諭吉 ― 人と書翰」 (ふくざわゆきち ひととしょかん)


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*250頁・旧仮名旧字体
*発行 昭和30年
*カバー画像・平成5年刊「新潮文庫の復刊」版カバー

*カバー文
中津奥平藩の下級武士の子として生まれ、明治維新の激動期にあって、言論を唯一の武器とし、独立国家日本の成立を導いた福沢諭吉。死後遺された膨大な書簡から百通を慶應義塾門下の小泉信三がセレクト、綿密な解題を付し、近代日本が生んだ巨大な思想家の全体像を浮かび上がらせる。


幸田 文 (こうだあや)
「黒い裾」
 (くろいすそ)


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*179頁 / 発行 昭和43年
*カバー題字・熊谷恒子

*カバー文
人生の機微を清新な文体で描いた第一創作集喪服に託して、女性の境涯の感慨を綴る「黒い裾」、蝸牛庵と周囲の人々を生き生きと弾みのある筆致で描き出す「糞土の墻」等、幸田文学の味わい深い佳品八篇収録

*目次
勲章 / 姦声 / 雛 / 髪 / 段 / 糞土の墻 / 鳩 / 黒い裾 / 解説 秋山駿


幸田 文 (こうだあや)
「北愁」
 (ほくしゅう)


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*平成5年刊「新潮文庫の復刊」版カバー
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*266頁
*発行 昭和47年

*カバー文
きかん坊のあそぎと優しく素直な順治。正反対のいとこ同士だったが、やがて、家族の不和や夫婦間のもつれなど、同種の辛労がそれぞれの人生に襲いかかり……。日々の生活に横たわるどうしようもない寂しさ、哀しさを、冷めた筆で描く。「流れる」「おとうと」につづく著者三作目の長編。

*解説頁・芹川嘉久子


幸田 露伴 (こうだろはん)
「太公望・王羲之」
(たいこうぼう・おうぎし)


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*177頁 / 発行 昭和31年 / 旧仮名旧字体
*カバー画像・平成6年刊「新潮文庫の復刊」版カバー

*カバー文
釣人の代名詞ともなっている太公望の実際の人となりを膨大な漢籍を渉猟して探索するユニークな史伝「太公望」。書聖と崇められた書家、王義之の書の実体の真偽を醒めた視線で問う「王義之」等、達意の筆を縦横に揮い、その博覧強記と慧眼で中国の先賢を闊達に評した論稿8編を収録。

*目次
太公望 / 王羲之 / 晋の僧法顯南アメリカに至る? 日本に來る? / 文字と秦の丞相李斯 / 畫題としての詩仙 / 楊貴妃と香 / 蘇子瞻米元章 / 蘇東坡と海南島 / 解説・鹽谷贊


河野 多恵子 (こうのたえこ)
「赤い唇・黒い髪」
(あかいくち・くろいかみ)


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*254頁 / 発行 2001年
*カバー装画・市川泰

*カバー文
紅茶の季節に、孫娘の赤いくちびるの色に魅せられる祖母の偏愛「赤い唇」。外国にいる恋人に、冷たい感覚の右半身をゆだねる女の幻想「片冷え」。誰かに言いたくてたまらないある言葉への欲望「大統領の死」。他人には言えない若い妻の妖しい願望「朱験」。老親の生への偏執「来迎の日」……。現実生活につなぎとめられた異常な感覚を軸に、大人の女のエロチシズムを描く短編集7編。

*目次
赤い唇 / 片冷え / 大統領の死 / 朱験 / 途上 / 黒い髪 / 来迎の日 / 解説 菅野昭正


河野 多恵子 (こうのたえこ)
「秘事・半所有者」
(ひじ・はんしょゆうしゃ)


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*375頁
*発行 2003年
*デザイン・新潮社装幀室

*カバー文
「幸福な結婚」に隠された秘密とは。三村清太郎と麻子は、大学で知り合った、昭和11年生まれの同級生カップル。夫は一流の商社で順調に出世し、妻は聡明で社交的な、周囲も羨む睦まじい夫婦だ。だが、この結婚にはある事故が介在していた。周到に紡がれた夫婦の日常の結晶(『秘事』)。亡くなった妻への夫の究極の愛を描き、川端康成文学賞を受賞した傑作短編『半所有者』を併録。

*解説頁・菅野昭正


河野 多恵子 (こうのたえこ)
「みいら採り猟奇譚」
(みいらとりりょうきたん)


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*413頁 / 発行 1995年
*カバー装画・柄澤齊

*カバー文
相良外科病院のひとり娘、比奈子は19歳で、38歳の内科医・尾高正隆と結婚した。昭和16年の初夏ふたりの生活が始まった。正隆は、今から少し遊ぼうと、比奈子に、真に生きることを教えはじめる。快楽死を至上の願望とするマゾヒストの彼は、妻をサディストに仕立てあげた……。グロテスクな現実と人間本来の躍動と日常生活のディテールの濃密な時空間に「快楽死」を描いた純文学。

*巻末頁
 『みいら採り猟奇譚』をめぐって 吉行淳之介 / 河野多恵子
 解説 蓮實重彦


小島 直記 (こじまなおき)
「一燈を提げた男たち」
(いっとうをさげたおとこたち)


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*418頁
*発行 2002年
*カバー装画・山本剛史

*カバー文
一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うることなかれ ── 。微かな光明を支えに信念を貫き、運命を切り開いた男たちがいる。「歴代首相指南役」四元義隆の人生、革命家・北一輝の素顔、「星の王子さま」の訳者・内藤濯の生い立ち、ド・ゴールと森鴎外の遺言書の類似性……。古典世界に学びつつ、東西の文人や思想家のメッセージを明快に伝え、生きる勇気を与える“男たち”シリーズ第五弾。

*巻頭頁 序に代えて 粕谷一希
*巻末頁 憂国のリベラリスト 持田鋼一郎


コナン・ドイル著 延原 謙訳 (Coban Doyie のぶはらけん)
「わが思い出と冒険 コナン・ドイル自伝」
(わがおもいでとぼうけん)


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*415頁 /
*発行 1965年
*カバー画像 平成6年発行「新潮文庫の復刊」版カバー / デザイン・新潮社装幀室

*カバー文
血気盛んで向こう見ず。「試験ではいつも六十点をとる」医学生ドイルが目指したのは〈小説家〉ではなかった。捕鯨船に乗り込み北極海を漂った二十代の日々、『緋色の研究』に始まるホームズとの複雑な付き合い。ボーア戦争への参加と、晩年の神霊研究までを冒険譚のスタイルで綴る一大回顧録。


古波蔵 保好 (こばくらやすよし)
「男の衣裳箪笥」
(おとこのいしょうだんす)


*カバー・穂積和夫
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*228頁 / 発行 昭和58年

*カバー文
男たる者、立派な心さえ持っていればナリフリなどはどうでもいいか? 否! 身だしなみ整ってこそオトナの男の価値がある。服装は心構えの現われ、心とナリフリは一致するのだ。いたずらに流行ばかりを追うことなく、ネクタイに、シャツに、ジャケットに、そして男の演出に蘊蓄を傾けつつ軽妙に展開する名エッセイ。ここには男にとって欠くべからざる衣裳哲学がある。

*目次
服装の美学
男の衣裳箪笥
 ネクタイ / シャツ / セーター / マフラー / スカーフ / ジャンパー / 帽子 / サングラス / ハンケチ / 手袋 / 装飾品 / ベルト、サスペンダー / アンダーウェア / クツ下 / クツ / スラックス ―― 替えズボン / ジーンズ / 変わりジャケット / ブレザー / ドレス・アップ / ポケット / オーバー・コート / レインコート / ブラック・タイ / 部屋着 / 和服 / ヘア・スタイル / ヒゲ
ウェル・ドレッサーへの道
ビジネスマンの世界
 解説 村松友視 / カット 穂積和夫


小林 信彦 (こばやしのぶひこ)
「世界の喜劇人」 (せかいのきげきじん)


*カバー・平野甲賀
写真上・ウディ・アレン
   中・ローレル=ハーディ
   下・マルクス兄弟
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*376頁 / 発行 昭和58年

*カバー文
チャップリン、キートン、ロイド、マルクス兄弟、アボット=コステロ、ダニー・ケイ、マーティン=ルイス、ボブ・ホープ、ウディ・アレン……。有名無名のコメディアンたちの目を疑うような恐るべきギャグ、笑い死ぬほどのナンセンスの数々。著者自らが体験した笑いの感覚に基づいて、コメディアンたちの姿を生き生きと再現する刺激的な二十世紀の喜劇映画史。写真版多数収録。

*目次
 はじめに
第一部 世界の喜劇人
第二部 喜劇映画の衰退
 序章 遥かなる喝采
 第一章 スラップスティック・コメディ
      マルクス兄弟 アボット=コステロ レッド・スケルトン ダニー・ケイ マーティン=ルイス
 第二章 スラップスティックを混ぜたパロディ
      〈珍道中〉映画 ボブ・ホープ
 第三章 その後のスラップスティック
      アメリカ フランス ソ連 日本
 終章 喜劇映画を作ろう!
 補章
第三部 喜劇映画の復活
 序章
 第一章 古典的喜劇の再生産の試み
 第二章 古典的喜劇・プラス・ワン
      ブレーク・エドワーズそのほか
 第三章 テレビ感覚派のスラップスティック
      リチャード・レスター
 第四章 恐怖と予感の喜劇
      ロマン・ポランスキイ
 第五章 ヨーロッパの現状
      チャップリン イギリス イタリア フランス ゴダール
 第六章 黒い哄笑の世界
      『毒薬と老嬢』 テリイ・サザーンの仕事 人間観の変化 『マッシュ』
第四部 幼年期の終り
 第一章 幼年期の終り
 第二章 フリドニア讃歌
      『我輩はカモである』作品分析
 あとがき
 解説 渡辺武信
 人名索引


小林 信彦 (こばやしのぶひこ)
「日本の喜劇人」 (にほんのきげきじん)


*カバー・平野甲賀
 写真上・古川緑波 下・渡辺篤
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*328頁 / 発行 昭和57年

*カバー文
エノケン、ロッパ、増田喜頓、森繁久弥、脱線トリオ、クレージー・キャッツ、渥美清、藤山寛美、萩本欽一、たけし、など〈おかしな世界〉にとりつかれた男たち。〈おかしい〉ものなら、舞台、映画、テレビを問わず貪婪に見てきた著者が喜劇人たちの素顔を、具体的に記述の積み重ねによって鮮やかに描きだす喜劇人の昭和史。エノケン、ロッパの私的交流を捉えた場面など写真を多数収録。

*目次
 はじめに
第一章 古川緑波
  丸の内喜劇の黄金時代
第二章 榎本健一
  THE ONE AND ONLY
第三章 森繁久弥の影
  伴淳三郎 三木のり平 山茶花究 有島一郎 堺駿二 増田喜頓
第四章 占領軍の影
  トニー谷 フランキー堺
第五章 道化の原点
  脱線トリオ クレージー・キャッツ
第六章 醒めた道化師の世界
  日活活劇の周辺
第七章 クレイジー王朝の治世
第八章 上昇志向と下降志向
  渥美清 小沢昭一
第九章 大阪の影
  『てなもんや三度笠』を中心に
第十章 ふたたび道化の原点へ
  てんぷつトリオ コント55号 由利徹
第十一章 藤山寛美
  伝統の継承と開拓と
第十二章 日本の喜劇人・再読
終章 高度成長の影
  萩本欽一 たけし
 あとがき
 解説 色川武大
 人名索引


五味 太郎 (ごみたろう)
「ときどきの少年」
(ときどきのしょうねん)


*カバー装画・五味太郎
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*231頁 / 発行 2012年

*カバー文
少年は見ることだけが仕事です ―― 。友人の家の薔薇色の通路はどこにつながっていたのか。体操競技で皮が剥けた手のひらは、なぜあれほど痛んだのか。今だに判らないこと、結末を憶えていないことほど、記憶に鮮やかな足跡を残す少年時代。世界中で愛される絵本作家が、謎めくエピソードや懐かしい風景を色彩豊かに書き留めた、ユーモアいっぱいの自伝的エッセイ。イラスト17点収録。

*目次
氷 / ハンカチ / 鉱石の熱 / 合唱 / カーテンの向こう側 / 砂の感触 / 映画の街 / クロス・プレー / 後ろの子供 / おじいさんの石鹸 / ひとさらい / レギュラー・ポジション / 包丁屋 / 桜の空地 / ぼくたちの収穫 / 若旦那の刺青 / 陽炎 / 色の庭 / 野球カード / 低速進行 / T君 / テレビの日 / 硬貨 / お山の大将 / 水色の高射砲 / 玩具の髑髏 / 蝉 / 金さんのこと / 雪 / 曇り空 / あとがき / 文庫版あとがき / 解説 椎名誠


小山 清 (こやまきよし)
「落穂拾ひ・聖アンデルセン」
(おちぼひろい・せいあんでるせん)


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*210頁 / 発行 昭和30年 / 旧仮名旧字体
*カバー画像・平成6年発行「新潮文庫の復刊」版

*「新潮文庫の復刊」版カバー文
古本屋の少女との交流を何気ない筆致で描いて、瀟洒な味わいを残す「落穂拾ひ」など、太宰治にその才能をこよなく愛され、日本のフィリップスと評された著者の傑作七編を収録。

*目次
聖アンデルセン / 前途なほ / をぢさんの話 / 夕張の宿 / 落穗拾ひ / 朴齒の下駄 / メフィスト / 解説 龜井勝一カ


小山 慶太 (こやまけいた)
「若き物理学徒たちのケンブリッジ ─ ノーベル賞29人 奇跡の研究所の物語」
(わかきぶつりがくとたちのけんぶりっじ)


*デザイン・新潮社装幀室
 (C)The Bridgeman Art Library/Getty Images
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*292頁 / 発行 2013年

*カバー文
驚嘆。感嘆。圧巻。ケンブリッジ大学には今日までに29人ものノーベル賞受賞者が輩出した研究所がある。20世紀前半、そこは若き天才科学者たちの熱気に包まれていた。中心にいるのは第四代所長ラザフォード。彼と門下生たちの独創的な実験は、物理学に革命をもたらし、研究所の黄金時代を築く。それは20世紀科学に起きた“奇跡”だった ―― 。『ケンブリッジの天才科学者たち』改題。

*目次
序章 キャヴェンディッシュ研究所の誕生
1章 ケンブリッジに昇ったラザフォード
2章 貴族の紋章となった実験
3章 魔法の弾丸と原子の心臓
4章 戦場に散った幻のノーベル賞
5章 ケンブリッジに帰ってきたラザフォード
6章 一九三〇年代の“ゴールドラッシュ”
終章 巨星墜つ
 あとがき / 文庫版あとがき



コールドウェル著・龍口 直太郎訳 (Erskine Presuton Caldwell・たきぐちなおたろう)
「神の小さな土地」
(かみのちいさなとち=GOD'S LITTLE ACRE)


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*313頁
*発行 1955年
*平成6年刊「新潮文庫の復刊」版カバー / デザイン・新潮社装幀室

*「新潮文庫の復刊」版カバー文
金鉱の発見を信じ、15年間も痩せた農地を掘り続ける老農夫タイ・タイ。彼の女婿で義理の姉妹に手を出すウィル。弟の美しい妻を奪おうとして射殺される長男ジム。アメリカ南部の一族間で展開される凄絶な愛欲図から、人間存在が持つ強烈な性本能の在り処を浮き彫りにした衝撃の長編。


今 東光 (こんとうこう)
「悪名」 (あくみょう)


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*833頁 / 発行 昭和39年
*カバー・向井潤吉

*カバー文
腕っぷしが強くて気っぷのいい、河内男の見本のような男、朝吉は、郷里の八尾を出奔し、ひょんなことから大阪は松島遊郭の地回り、モートルの貞やんに親分と呼ばれるようになった……。愛する女のために命を賭け、凶器に素手で立ち向かう朝吉。彼が、持前の力と義理人情に厚い人柄で、極道の世界に“悪名”を売っていく姿を、豊富なエピソードと生き生きとした河内弁で描く力作長編。

*解説頁・浅見淵


今 東光 (こんとうこう)
「お吟さま」 (おぎんさま)


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*164頁
*発行 昭和35年

*カバー文
戦乱の世、類い稀な美貌と気品をそなえた千利休の娘“お吟さま”は、万代屋(もずや)宗安に嫁ぎながら、キリシタン大名高山右近への思慕をたち切ることができず、密会が露顕して万代屋を離縁される。その美貌に目をとめ側妾に召そうとした豊太閤の権勢にも、キリシタン禁制にも屈せず、一途に右近への恋をつらぬいたために死に追いつめられていった“お吟さま”の悲劇的運命を描く。

*解説頁・十返肇


今 東光 (こんとうこう)
「春泥尼抄」 
(しゅんでいにしょう)


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*518頁
*発行 昭和36年

*カバー文
社会と人間生活を否定した尼寺にありながら、仏門の制度に抵抗し、しなやかな美しい女体を燃やして情事を重ねる春泥尼。ためらうことなく性に身を委ねるその生き方はきびしい戒律にとじこめられた女の人間主張であった。しかし、ひそかに慕情をよせていた初恋の人と再会し、不幸な偶然によって別れねばならなくなったとき、彼女ははじめて戒律の世界に生きよう、と決意する……。

*解説頁・十返肇