絶版文庫書誌集成

未分類絶版文庫 【つ】

つか こうへい
「飛龍伝 神林美智子の生涯」
(ひりゅうでん かんばやしみちこのしょうがい)
集英社文庫


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*512頁
*発行 2001年
*カバー・山口はるみ / AD・安彦勝博

*カバー文
1968年春。神林美智子は高松から上京し、安保闘争の嵐吹きあれる東大に入学。全共闘斗士・桂木に恋した美智子は、突然、全共闘40万の委員長に指名される。さらに機動隊の計画をスパイするため、機動隊長山崎と同棲することを指令され ── 。いつしか山崎を愛するようになった美智子をめぐって、桂木と三つ巴の火花を散らしつつ、遂に決戦の日がやってきた。


つか こうへい
「娘に語る祖国」
(むすめにかたるそこく)
光文社文庫


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*212頁
*発行 1998年
*カバーデザイン・宇野亜喜良

*カバー文
現代演劇界の第一人者が、芝居の演出をするために訪問した祖国・韓国への旅を中心に、在日韓国人として体験したさまざまな葛藤、日本人女性との結婚、娘の国籍選択などを通して、祖国とは何かを考える。日本と韓国、ふたつの国のはざまで揺れ動く心の中を剥き出しにした、作家つかこうへいが辿った魂の奇跡。

*解説頁・梁木靖弘


司 修 (つかさおさむ)
「本の魔法」
(ほんのまほう)
朝日文庫


*カバー装幀・司修
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*320頁 / 発行 2014年

*カバー文
古井由吉、武田泰淳、中上健次ら、戦後を代表する文学者の装幀を手がけてきた司修が愛惜してやまない15冊の本。作品の奥にある獰猛なまでの欲望と底知れぬ優しさを、作家に寄り添いながら温かな眼差しで見つめてきた氏が語る、書物の舞台裏の物語。

*目次
T
 藍 ――『杳子・妻隠』古井由吉
 朱 ――『富士』武田泰淳
 闇 ――『埴谷雄高全集』『埴谷雄高ドストエフスキイ全論集』埴谷雄高
U
 鉛 ――『硝子障子のシルエット 葉篇小説集』『死の棘』島尾敏雄
 墨 ――『岬』中上健次
V
 肌 ――『なつかしい本の話』江藤淳
 緑 ――『癩王のテラス』三島由紀夫
W
 銀 ――『月山』森敦
 白 ――『白夜を旅する人々』三浦哲郎
 土 ――『修羅の渚 ― 宮沢賢治拾遺』真壁仁
 空 ――『明恵 夢を生きる』河合隼雄
X
 灰 ――『私のアンネ=フランク』松谷みよ子
 紅 ――『河原にできた中世の町 ― へんれきする人びとの集まるところ』網野善彦+司修
Y
 雪 ――『比良の満月』『寺泊』水上勉
 青 ――『小川国夫作品集』『弱い神』小川国夫
あとがき / あとがきのあとがき / 解説 堀江敏幸


塚本 邦雄 (つかもとくお)
「歌集 日本人霊歌」
 (かしゅうにほんじんれいか)
短歌新聞社文庫



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*104頁 / 発行 1997年

*カバー文
喜遊曲
日本民謡集
死者の死
日本人霊歌
ANNUNCIATION
出日本記
餌食
死せるバルバラ
 



解説 菱川喜夫


塚本 学 (つかもとまなぶ)
「生類をめぐる政治 ― 元禄のフォークロア」
(しょうるいをめぐるせいじ)
平凡社ライブラリー


*カバー・イラスト=水月千春、「江戸図屏風」をもとに作画
 カバー・マーブル=製本工房リーブル
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*357頁 / 発行 1993年

*カバー文
犬を、鷹と鉄砲を、牛馬と捨子をめぐって、政治は、人間と自然、人間と人間の関係をどのように編成し直そうとしたのか。〈生類憐みの〉の意味を決定的に読みかえる新しい政治史。

*目次
農具としての鉄砲
 一 ―― 綱吉の鉄砲改め
 二 ―― 村への鉄砲普及
 三 ―― 生類憐み政策のもとで
 四 ―― 村の鉄砲その後
御鷹と百姓
 一 ―― 鷹か鉄砲か
 二 ―― 綱吉の鷹政策
 三 ―― 鷹狩復興の条件
御犬様始末
 一 ―― 食犬習俗と鷹の餌
 二 ―― 「封建的犬所有」
 三 ―― 犬小屋か野犬か
捨子・捨牛馬
 一 ―― 捨馬禁令
 二 ―― 捨子の運命
 三 ―― 元禄という時代
生類概念と鳥獣害 ― 人獣交渉史断章

 参考文献
 あとがき
 平凡社ライブラリー版 あとがき
 解説 ―― 分類と支配 成沢光


辻 邦生 (つじくにお)
「樹の声 海の声 6 (第3部下)」
 (きのこえうみのこえ)
朝日文庫



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*367頁
*発行 1986年
*カバー・小泉淳作

*解説頁・自由を求める魂の力 菅野昭正


辻 邦生 (つじくにお)
「雲の宴〈上〉」 (くものうたげ)
朝日文庫


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*491頁
*発行 1990年
*カバー装画・平野敬子

*カバー文
大学新聞部の先輩と後輩、行動的な冴子と控えめな敦子は対照的な性格ながら、同じくジャーナリズムを志す者として深い友情に結ばれる。就職後、敦子はふとしたことから同じ会社の郡司薫を愛するようになり、冴子は夜中のバーでしか会えぬ謎めいた詩人・瓜生赤彦にひかれてゆく。やがて郡司と瓜生は同時にヨーロッパに旅立つことになるが……。二人の女の愛のかたちを、革命に賭ける男の生き方と重ねて描いた長編ロマン。


辻 邦生 (つじくにお)
「トーマス・マン」
同時代ライブラリー(岩波書店)



*カバー・本扉デザイン=鈴木堯
 カバー写真=内山勇

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*294頁・文庫本 / 発行 1994年

*カバー文
詩的情感に包まれたリアリズムとイロニー、官能的な音楽性、北方的な憂愁感、観念的な叙述、精緻な文体 ―― トーマス・マンの重層的で濃密な文学の創造の秘密は何か。激変の時代を生きた文豪の波瀾の生涯と精神のドラマを辿り、内面に潜むドイツ的魔神性と戦闘的ヒューマニズムに光をあて、創作原理の謎に迫る。若き日に耽読したマンを創作上の師とも仰ぐ辻邦生の真摯の評論。

*目次
第一篇 トーマス・マンへの道
第一章 小さなプロローグ
第二章 トーマス・マンとの出会い
第三章 複眼構造のエクリチュール
第四章 初期の小説技法と主題
第五章 マンにおける物語形式の意味
第二篇 主題深化から見たトーマス・マン
第一章 世紀末の苦悶
第二章 精神と生のドラマ
第三章 時代と小説のあいだ
第四章 フランスへの一暼
第五章 小説と小説家のあいだ
第六章 市民たちのなかで
第七章 『魔の山』まで
第八章 生の根底にあるもの
第九章 ふたたび『魔の山』へ
第十章 『魔の山』を越えたあと
第十一章 最後の旅の日々
 参考文献
 年譜
 新版へのあとがき


辻 邦生 (つじくにお)
「夜ひらく」 (よるひらく)
集英社文庫


*カバー・日比野光希子
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*277頁 / 発行 1996年

*カバー文
扉をひらけば、そこは惑溺の世界 ― 。ガラス絵のアンドロメダ、大理石のヴィーナス、ウィーンの宮廷に出没するサロメ ― 様々な姿を借りて現し世に立ちあらわれる“運命の女”。男たちは、“致命的な美”の前でただ色蒼ざめ、滅んでいく ― 。パリ、ウィーン、グラスゴウ、ペテルブルグ、ミラノ ― 19世紀末ヨーロッパに花咲いた都市を舞台に繰りひろげる連作綺譚小説集。

*目次
パリ 十月の死の匂い
ウィーン 狩人たちの午後の歌
グラスゴウ ガラスの帽子と赤い薔薇
ペテルブルグ 吹雪の夜のヴィーナス
ミラノ 星空のメリーゴーラウンド
彼方へ 逃亡者たちの砂時計
 文庫版『夜ひらく』あとがき
 解説 南條竹則
 初出一覧


辻 征夫著 清水 哲男編 (つじゆきお・しみずてつお)
「辻征夫詩集」 (つじゆきおししゅう)
芸林21世紀文庫(芸林書房)


*装画・池田満寿夫「聖なる手1」
 装幀・高林昭太
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*128頁 / 発行 2003年

*目次
学校の思い出
 沈黙 / 学校の思い出
いまは吟遊詩人
 ある都市で / 池袋 土曜の午後 / 株式会社夕日 / 嘆き / 野犬 / 牧歌 / 海水浴場で / 帰郷 / きみがむこうから…… / 食事の時間 / 世界は一瞬のまに
隅田川まで
 地球儀を眺めながら / 隅田川まで / 友達へ葉書の詩 / 窓のあけたて / 抹香鯨 / 棒論 / 弟に速達で / 隣家の庭の眺め / 春の問題 / 電車 / 花 / 仕事 / 夜道 / 婚約 / 挨拶 / 風 / 渚
落日
 子守唄の成立 / みずはつめたい / 鳩 / 睡眠
俳諧辻詩集
 吾妻橋 / 夏の川 / 断崖 / 落葉 / 床屋

詩人・辻征夫 清水哲男


辻合 喜代太郎 (つじあいきよたろう)
「日本の家紋」 (にほんのかもん)
カラーブックス(保育社)


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*152頁
*発行 昭和49年
*カバー・剣酢漿草紋と大漁衣に施された中輪木瓜紋

*目録文
日本人の心と美を今に伝える家紋。その起源から構成、用途、将来までを。


筒井 清忠 (つついきよただ)
「近衛文麿 ― 教養主義的ポピュリストの悲劇」
(このえふみまろ)
岩波現代文庫



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*375頁 / 発行 2009年

*カバー文
戦前の人気政治家は、戦争の時代にいかなるリーダーシップを発揮したのか。三度も宰相を務めながら、なぜ日本を破局の淵から救えなかったのか。近衛の栄光と挫折を、教養主義とポピュリズムとの連関から究明し、大衆社会状況下のマスメディアのイメージ戦略に注目して考察した待望の書き下ろし。岩波現代文庫オリジナル版。

*目次
1 はじめに ── 近衛文麿の「悲劇」とは何か
2 誕生と学習院
3 一高と教養主義
4 京都大学「白川パーティ」
5 「英米本位の平和主義を排す」とパリ講和会議随員
6 貴族院議員としての活動T ── 「左傾化する貴族たち」
7 貴族院議員としての活動U ── 二大政党対立時代と「グレーの風格」
8 貴族院副議長・議長 ── 満州事変、五・一五事件
9 訪米と近衛ファミリー
10 二・二六事件前後
11 第一次近衛内閣と「近衛型ポピュリズム現象」
12 第一次近衛内閣の展開 ── 盧溝橋事件から「東亜新秩序声明」まで
13 枢密院議長 ── 平沼・阿部・米内内閣期
14 第二次近衛内閣 ── 三国同盟から松岡洋右外相との確執まで
15 第三次近衛内閣 ── 南部仏印進駐・頂上会談構想・九月六日御前会議
16 太平洋戦争下の近衛 ── 東条内閣打倒工作と「近衛上奏文」
17 戦後の近衛 ── 東久迩宮内閣・マッカーサーと新憲法・戦犯指名と自殺
18 まとめ
 注 / 索引


筒井 清忠 (つついきよただ)
「時代劇映画の思想 ノスタルジーのゆくえ」
(じだいげきえいがのしそう)
ウェッジ文庫


*題字・国分佳代
 装丁・関原直子
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*238頁 / 発行 2008年

*カバー文
 『丹下左膳』『鞍馬天狗』『大菩薩峠』…、人々はなぜあれほど時代劇映画に熱狂したのか。急速に都市化・産業化する社会のなかで、日本人の生活様式と意識は大きく変容して行く。大衆は喪なわれて行く古いものを愛惜する「ノスタルジー装置」として時代劇を必要としたが、その装置が機能しなくなるとともに時代劇映画も衰退する。
 膨大な作品群の考察を通して時代劇映画の真髄に迫る ── 。

*目次
第一章 戦前の時代劇映画史
 1 時代劇の誕生
   日本映画発祥の地・京都 / 最初の時代劇映画 ── 『本能寺合戦』 / 「松之助映画」の功罪 / 『実録忠臣蔵』と新国劇 / 「反逆的ヒーロー」の登場 / 「旧劇」から「時代劇」へ / サイレント時代劇の技法と伝統的演劇形式の連続性
 2 昭和前期時代劇の諸相 ── 「反逆」から「国策」まで
   反逆時代劇から偏向映画へ / 明朗時代劇の台頭 / 鳴滝組映画の明るさ / 歴史映画のリアリズム / 「軍国日本」の映画政策 / 国策的映画と時代劇映画へ / エンターテインメント時代劇の意義

第二章 戦後の時代劇映画史
   CIEの時代劇統制 / 占領下時代劇の苦悶 / 講和条約と時代劇映画の復興
 1 東宝時代劇と黒澤明
   黒澤時代劇の特質 / 稲垣浩と五味康祐 / マキノ雅弘の「共同性」の美学
 2 新東宝時代劇と「幽玄美」の空間
   溝口健二の「冷徹なヒューマニズム」 / 中川信夫の「幽玄美」
 3 日活と松竹の時代劇
   『江戸一寸の虫』の魂 / 松竹京都時代劇の悲劇
 4 大映時代劇の世界性
   菊池寛・川口松太郎・永田雅一 / 『羅生門』と「青い瞳の留学生」 / 溝口・衣笠が培った美術水準 / 『薄桜記』と『斬る』の世界 / 奈良・平安時代から「アジア」まで
 5 東映時代劇とスターシステム
   内田吐夢の『大菩薩峠』 / 昭和初期時代劇の精神を継ぐもの / 沢島忠によるエンターテインメント時代劇の完成 / 黒澤的リアリズムの衝撃 / 大量生産方式のスターシステム / 「様式・遊び」と「リアリズム」の反撃

第三章 幕末維新映画の思想
 1 非命の倒幕派と「権力悪」 ── 倒幕派映画の系譜
   架空のヒーローの背後にあるもの / 非命の倒幕派志士たち / 戦後の幕末維新映画に見る「権力悪」 / 「結局は権力者の交替に過ぎない」
 2 「反抗」と「敗北」の群像 ── 佐幕派映画の系譜
   佐幕派映画の伝統 / 官軍に反抗した群像 / ジョン・フォード映画の「南軍」と「旧幕臣」 / 新選組映画の「魅力」 / 敗北者・非命の人々への鎮魂歌

第四章 時代劇ジャンル論
 1 時代劇の諸ジャンルと大衆意識の諸相
   大衆意識の歴史社会学へ / 時代区分が示すセシル・B・デミルの不在 / ヒーロー像の諸相 / 怨恨感情と平等主義 / 武士のロイヤリティと自立 / 「修養する剣客」 / 浪人・「下郎」の反逆とニヒリズム / 生業をもつ庶民像への着眼 / 時代劇における恋愛
 2 時代劇映画とは何か
   ノスタルジー装置としての機能 / 欧米に時代劇はないのか / 自然環境を考える視点 / ライフスタイルのモデルとしての時代劇映画

エピローグ 時代劇映画の危機
   時代劇映画研究の困難性 / 「スター研究」の欠落 / 観客研究の不在 / 黒澤明と内田吐夢 ── 時代劇映画の内と外 / 日本における「文化」としての映画 / テレビ・京都・時代劇 / 時代劇をいかに支援するか

 参考文献目録 / 主要幕末維新映画リスト / あとがき / 文庫版あとがき / 解説 鹿島茂


都築 響一 (つづききょういち)
「TOKYO STYLE」
 (とうきょうすたいる)
京都書院アーツコレクション



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*433頁 / 発行 平成9年
*デザイン・木下勝弘 / 株式会社デザイン倶楽部

*カバー文
マスコミが垂れ流す美しき日本空間のイメージで、なにも知らない外国人を騙すのはもうやめにしよう。僕らが実際に住み、生活する本当の「トウキョウ・スタイル」とはこんなものだと見せたくて、僕はこの本を作った。狭いと憐れむのもいい、乱雑だと哂うのもいい。だけどこれが現実だ。そしてこの現実は僕らにとって、はたから思うほど不快なものでもない。コタツの上にみかんとリモコンがあって座布団の横には本が積んであって、ティッシュを丸めて放り投げて届く距離に屑カゴがあって……そんな「コックピット」感覚の居心地の良さを、僕らは愛している。 (序文より抜粋)

*目次
序 / 美は乱雑にあり / かわいさというたからもの / アトリエに布団を敷いて / 安いは和風 / モノにくるまって / 子供の王国 / 住まいの必要十分条件 / 街のなかに隠れる / 後記


都築 政昭 (つづきまさあき)
「黒澤明と『七人の侍』」
(くろさわあきらとしちにんのさむらい)
朝日文庫


*カバー装幀・安彦勝博
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*305頁 / 発行 2006年

*カバー文
黒澤明の代表作であり、ルーカス、スピルバーグら後世の映画人に多大な影響を与えた「七人の侍」。撮影日数148日、予算の五倍の費用を投じた大作の製作過程には、いかなるドラマがあったのか。豊富な資料をもとに、日本映画界の至宝とも言うべき作品の誕生を追った迫真のドキュメンタリー。

*目次
プロローグ 映画の中の映画
第一章 「侍」の雄渾な叙事詩
 ビフテキの上に蒲焼き / 百姓に雇われた侍のはなし / 天意がはたらいた映画
第二章 「彼等こそ侍だ!」
 名利を顧みない七人の侍 / 「利他」の侍と「利己」の百姓 / ベースにトルストイの『戦争と平和』 /侍と百姓と野武士の集団 / 密室の四十五日間
第三章 時代劇に活劇のリアリズム
 カツラから時代劇を革新 / 戦場の村はモンタージュ / 撮影も新機軸 ── 望遠レンズと複数カメラ / アクションは火と水と土の合戦 / ドボルザークの「新世界」が響いた
第四章 一杯の白いめし
 「侍、雇うだ!」 / 勘兵衛のあわれみ / 侍探しと『本朝武芸小伝』 / ニセ侍菊千代の闖入
第五章 クサビ役の菊千代
 「鋏は使いようで切れる」 / 百姓の代弁者菊千代の苦衷
第六章 リーダー勘兵衛の魅力
 勘兵衛の用兵と戦略 / 「戦とはそういうものだ」
第七章 デッドロックで撮影中止
 体調を崩した黒澤 / 製作中止の中で太公望 / 焦らず一歩一歩
第八章 活劇の底にある人間の実感
 緊張と笑いでリズム / 山塞の奇襲と利吉の悲劇 / 水車小屋の炎上と菊千代の悲劇 / ロケは毎夜、車座の酒宴
第九章 雨と泥と汗と血と
 「あの人こそ、本当の侍です」 / 「後はワン・カットも撮ってありません」 / みぞれの中で死に物狂いの撮影 / 決戦前夜の恋の炎 / 「決戦はこの一撃で決まる!!」 / 勇壮な侍たちの散華 / 「また負け戦だったな」 / 黒澤の迷い / “至宝”のスタッフ
エピローグ これが本物の映画だ!
あとがき / 文庫版あとがき / スタッフとキャスト一覧 / 主要参考文献


都筑 道夫 (つづきみちお)
「はだか川心中 ― 自選傑作集」
 (はだかがわしんじゅう)
ケイブンシャ文庫(勁文社)



*カバー・中野高生
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*362頁 / 発行 1986年

*カバー文
平凡な一組の男女がぶらりと訪れた温泉宿。だが、三軒ある宿は、なぜか、彼らの宿泊を拒絶。住人は住人で、おびえと底知れぬ恐怖のまなざしで二人をじっと見つめていた。過去の心中事件の亡霊にとり憑かれた、温泉宿の戦慄の一日を描いた表題作をはじめ、怪談から本格推理まで、短篇の名手が精選した傑作集。

*目次
退職刑事
  写真うつりのよい女 / 四十分間の女
十七人目の死神
  はだか川心中 / ハルピュイア / 風見鶏
怪談ショートショート
  人形の家 / かくれんぼ / 古い映画館
なめくじ長屋捕物さわぎ
  天狗起し / 小梅富士
春色なぞ暦
  羅生門河岸 / 藤八五文奇妙! / 花川戸心中
自作解説/私の推理小説作法


都筑 道夫 (つづきみちお)
「幽鬼伝」
 (ゆうきでん)
大陸文庫



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*301頁
*発行 1988年
*カバーイラスト・レオ澤鬼

*カバー文
駒形の岡っ引“念仏の弥八”は、元八丁堀同心の稲生外記と、強い霊感を持つ盲目の美少女・涙の力をかりて、天草四郎の末裔と名乗り江戸市中で次々と怪事件をひきおこす、妖術師・天草小天治に立ち向かうが……。

*解説頁・戸部新十郎


常石 敬一 (つねいしけいいち)
「医学者たちの組織犯罪 関東軍第七三一部隊」
(いがくしゃたちのそしきはんざい)
朝日文庫


*カバー装丁・田村義也
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*343頁 / 発行 1999年

*カバー文
石井部隊の人体実験、そして中国での細菌戦研究の中核にあった陸軍軍医学校防疫研究室の実体。石井が作り上げたネットワークを、防研を軸にして見ると、これまで明らかにされなかった構図が浮かび上がってくる。その集団の体質は戦後日本の医学界に脈々と受け継がれていることを解きあかす。

*目次
 はじめに
序章
第1章 アメリカ軍の調査
 闇の中の石井機関 / サンダース・レポート / トンプソン・レポート / 戦犯免責 / フェル・レポート / ヒル&ヴィクター・レポート
第2章 石井機関
 防疫研究室 / 東郷部隊 / 部隊正式発足
第3章 科学者たち
 石井機関の医学者たち / 人材供給システム / 嘱託研究員制度 / 人体実験の業績
終章
 文庫版のための補遺 ── あとがきに代えて

*図版 スタジオトンボ、吉沢スタジオ


坪内 稔典 解説・仁平 勝
「坪内稔典句集」
 (つぼうちとしのりくしゅう)
芸林21世紀文庫(芸林書房)


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*128頁 / 発行 2003年
*カバー装画・池田満寿夫「スフィンクス・森のなか」 / 装幀・高林昭太

*目次
朝の岸
春の家
わが町
落花落日
猫の木
百年の家
人麻呂の手紙
ぽぽのあたり
月光の音
なんでもありの俳句 仁平勝


坪内 稔典 (つぼうちとしのり)
「俳句のユーモア」
(はいくのゆーもあ)
岩波現代文庫



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*288頁 / 発行 2010年

*カバー文
俳句はいろいろな読み方をしていい。秀れた俳句であればあるだけ、その句はユーモアを湛えている。作者の恣意性から生み出された五七五の音は、読者のいろいろな読みの場に出されることによって、作者の内を離れ、あらたな輝きを得ることになる。ネンテン先生が説く、俳句の楽しみ、その広がり。

*目次
第一章 俳句的発想
1 発句の自立まで / 2 時代の詩歌としての俳諧 / 3 芭蕉と言葉遊び / 4 子規の革新
第二章 口誦と片言
1 言葉の演技へ / 2 片言の詩 / 3 言葉遊びの地平 / 4 季語の本意とずらし
第三章 句会の文芸
1 共同の創造 / 2 自己を開く場
第四章 ユーモアの詩
1 写生の力と技法 / 2 こわばりをほぐす
 ブックガイド / あとがき / 岩波現代文庫版あとがき / 俳句索引 / 人名索引


津村 節子 (つむらせつこ)
「娼婦たちの暦」 (しょうふたちのこよみ)
集英社文庫


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*268頁 / 発行 1988年
*カバー・村上昂

*カバー文
さまざまな事情から、夜ごと男たちに身を委ね、弄ばれ、肉体を切り売りしなければ生きていけない、哀れな女たち。外人相手の私娼お七、吉原に売られ、初めて客をとるかな、前借金二千円、年季五年で港町の廊に売られたちよ、進駐軍の客をとる女たち。悲惨な女たちの哀歌を、やさしい目で歌いあげた珠玉の短篇集。

*目次
相川心中 / チャブ屋のお七 / キセル貝 / 金魚鉢 / 春の哀れ / 乾いた花 / 夜の水槽 / 単行本あとがき / 解説 小松伸六


鶴見 俊輔 (つるみしゅんすけ)
「戦時期日本の精神史 1931〜1945年」 (せんじきにほんのせいしんし)
岩波現代文庫


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*296頁 / 発行 2001年

*カバー文
カナダの大学で学生に向け語られた、広い視野からの現代日本思想史前篇。ファシズム支配下の日本知識人の軌跡を通して「転向」の事実と意味を問い直し、それが日本の精神史を貫く「文化の鎖国性」という特質と通底することを明らかにする。知識と思想のあり方に反省を迫る独自の日本文化論でもある。

*目次
一九三一年から四五年にかけての日本への接近 / 転向について / 鎖国 / 国体について / 大アジア / 非転向の形 / 日本の中の朝鮮 / 非スターリン化をめざして / 玉砕の思想 / 戦時下の日常生活 / 原爆の犠牲者として / 戦争の終わり / ふりかえって / あとがき / 解説 加藤典洋