絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【よ】

吉岡 忍 (よしおかしのぶ)
「放熱の行方 ― 尾崎豊の3600日」
(ほうねつのゆくえ)


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*339頁
*発行 2001年
*カバー写真・田島照久 / カバーデザイン・川島進(スタジオ・ジム)

*カバー文
一九九二年四月二十五日、走りぬける風のように尾崎豊は突然逝ってしまった。彼はあの時代の寵児なのか、徒花なのか? 没後十周年を迎え、いまふたたび彼の軌跡を辿ることにより、現代の歪んだ相貌を浮き彫りにする。綿密な取材と豊かな表現で「時」と「人」の交錯を見事に描出した新しいノンフィクション。


吉川 潮 (よしかわうしお)
「江戸前の男 春風亭柳朝一代記 吉川潮芸人小説セレクション 第一巻」
(えどまえのおとこ)
ランダムハウス講談社文庫


*カバーデザイン・緒方修一
 カバーイラスト・森英二郎
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*567頁
*発行 2007年

*カバー文
粋でいなせで気風がよくて、高座は江戸前本寸法。野暮が嫌いで喧嘩っ早く、そのくせ大の寂しがり ―― 江戸っ子噺家五代目柳朝の一生を描く新田次郎賞受賞作。師匠八代目正蔵とその一門、一朝小朝ら弟子達との師弟愛、糟糠の妻ヨリとの夫婦愛を、昭和落語界のありようとあわせ活写する。

*目次
序章 夢の酒 / 第一章 くやみ / 第二章 代書屋 / 第三章 大工調べ / 第四章 寄合酒 / 第五章 五人廻し / 第六章 粗忽の釘 / 第七章 宿屋の仇討 / 第八章 天災 / 第九章 鮑のし / 第十章 浮世床 / 第十一章 看板のピン / 第十二章 らくだ / 第十三章 子別れ / 第十四章 火焔太鼓 / 第十五章 初天神 / 第十六章 火事息子 / 第十七章 三方一両損 / 第十八章 稽古屋 / 第十九章 牡丹灯籠 / 第二十章 ねずみ / 最終章 茶の湯 / あとがき / 解説 小沢昭一


吉川 潮 (よしかわうしお)
「浮かれ三亀松 吉川潮芸人小説セレクション 第三巻」
 (うかれみきまつ)
ランダムハウス講談社文庫



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*489頁 / 発行 2007年
*カバーデザイン・緒方修一 / カバーイラスト・森英二郎

*カバー文
あでやかな喉、撥捌き。三味線ひとつを相棒に、都々逸、新内、さのさ、声音――聴く者皆を魅惑する<ご存じ>三亀松の華やかな人生。深川生まれの男伊達の芸道一代を男女や師弟の情愛をからめて描く。かの立川談志が”最後の藝人書き”と絶賛した吉川潮による傑物伝。

*目次
序章 さのさ / 第一章 木遣りくずし / 第二章 深川節 / 第三章 縁でこそあれ / 第四章 貝づくし / 第五章 ひぐらし / 第六章 花づくし / 第七章 相惚れと / 第八章 罪じゃぞえ / 第九章 うたた寝の / 第十章 すきまもる / 第十一章 男純情の / 第十二章 英霊が / 第十三章 槍はさびても / 第十四章 やきもちを / 第十五章 明けの鐘 / 第十六章 浮気稼業 / 第十七章 俺の命と / 最終章 伊達男 / 書籍版あとがき / 文庫版あとがき / 解説 なぎら健壱


吉川 潮 (よしかわうしお)
「本牧亭の鳶 吉川潮芸人小説セレクション 第五巻」
(ほんもくていのとんび)
ランダムハウス講談社文庫


*カバーデザイン・緒方修一
 カバーイラスト・森英二郎
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*320頁 / 発行 2007年

*カバー文
若き講釈師と下足番の老人の淡い交流が涙を誘う表題作「本牧亭の鳶」、時代に乗れない声帯模写芸人の切なさを描く「九官鳥」、百面相一筋に生きた老芸人の滑稽な矜持をしるす「カラスの死に場」、下座三味線の女性の転変を写す「老鶯」など、芸人の愚かな優しさを紡ぐ傑作六篇。

*目次
声帯模写 九官鳥
コンビコント 借金鳥
百面相 カラスの死に場
トリオコント 梟の男
お囃子 老鶯
講釈・下足番 本牧亭の鳶

作家 あとがき
解説 出久根達郎


吉川 英明 (よしかわひであき)
「父 吉川英治」
 (ちちよしかわえいじ)


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*271頁
*発行 昭和53年
*カバー絵・軽井沢より先に帰京した著者に与えた吉川英治の色紙

*カバー文
著者、故吉川英治の長男。父の十三回忌を機に書き下された。偉なる人である父を良き文章で活写する ― 記憶の流れの中に、父が忽然と姿を現わす、吉野村へ疎開する日から、父の生命がフッと消えた瞬間、真上から父の顔を見下していた時まで、数々の印象的挿話が連なる。他に書きえず多分著者にも再び書けぬ名著。

*巻末頁 忘れ得ぬこと 英明氏の著に寄せて 星野哲次


吉田 敦彦 (よしだあつひこ)
「オイディプスの謎」
(Oedipusのなぞ)
講談社学術文庫


*カバー図版・オイディプスと娘アンティゴネ(cPPS)
 カバーデザイン・蟹江征治
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*320頁 / 発行 2011年

*カバー文
ギリシァ悲劇の白眉『オイディプス王』と『コロノスのオイディプス』。作者ソポクレスは二つの物語で深遠な問いを立てる。人間の本性とは何か? 苛烈な運命の下で、人間はいかに生きるべきか?  前五世紀、栄華を誇ったアテネはその後大敗戦、疫病の猖獗を経験する。大国難の中にあっても、人間は高貴なる魂を保持せねばならぬと訴えたのである。

*目次
学術文庫版まえがき
T 市の救いのための謎解き
   第一章 スピンクスの謎とオイディプス / 第二章 神託と新しい謎解きの始まり / 第三章 予言者との応酬 / 第四章 妃が口にした手掛かり

U 自己の正体の暴露
   第五章 神託への不信と恐怖 / 第六章 奴隷の子か、神の子か / 第七章 目を潰してもなお、けっして見ることを止めぬオイディプス / 第八章 劇の結末とオイディプスの名の両義

V オイディプスとアテネ人たち
   第九章 アテネの疫病との吻合 / 第十章 マラトンおよびサラミスの奇跡 / 第十一章 アテネ帝国の栄華 / 第十二章 「人間讃歌」と二篇のオイディプス劇

W 神霊への変化
   第十三章 驚くべき変化の始まり / 第十四章 エリニュスたちとの和解とアテネとの連帯 / 第十五章 クレオンおよび息子との対決 / 第十六章 神秘な結末とソポクレスの遺言
あとがき


吉田 健一 (よしだけんいち)
「乞食王子」
(こじきおうじ)
講談社文芸文庫 ― 現代日本のエッセイ


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*258頁
*発行 1995年

*カバー文
“その積りでいれば”世の中随分おもしろく眺められる“結構な御身分”のその時々を自由自在に生きる“乞食王子”。ロンドン、パリ、上海、カルカッタ、世界各地を歩き、古今東西の文明・文化の何たるかを知り尽した著者の、感性豊かな視線とウィットに溢れた独創の世界。「銀座界隈」「東京」「人の親切」「宮廷」「文士」「海坊主」等々、虚実入り混った七十九篇収録の限りなく優雅なエッセイ集。

*巻末頁
 人と作品 鈴村和成
 年譜 藤本寿彦
 著書目録 近藤信行


吉田 健一 (よしだけんいち)
「吉田健一対談集成」
(よしだけんいちたいだんしゅうせい)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*336頁 / 発行 2008年

*カバー文
言葉とともに、その優雅な言葉の世界に自在に生きた吉田健一。グラス片手に、文学のこと、文士のこと、父のこと、そして東京の昔や充実した人生のあり方について、徳川夢声、近藤日出造、河上徹太郎、池島信平、佐伯彰一、丸谷才一、佐多稲子、池田彌三郎の八名を相手に、時に饒舌に、時に、ユーモアとシニカルな批評精神をもって、語り合う抱腹歓談。 ―― あの高らかな笑い声が聞こえてくる。

*目次
問答有用 徳川夢声
『やァこんにちわ』 近藤日出造
文学・文壇・文士 河上徹太郎
恋愛小説のご注文ありませんか 池島信平
二十世紀と文学 佐伯彰一
世紀末を語る 河上徹太郎
読むこと書くこと 丸谷才一
東京の昔 佐多稲子 / 池田彌三郎
時代を生きる 河上徹太郎
 著者に代わって読者へ 吉田暁子
 解説 長谷川郁夫
 年譜 藤本寿彦
 著書目録 近藤信行


吉野 裕子 (よしのひろこ)
「天皇の祭り」
(てんのうのまつり)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*304頁 / 発行 2000年

*カバー文
古代天皇制を支える思想原理は何か。
天武朝に宗教改革が行なわれ、禊(みそぎ)が中心の古儀に対し、新儀には中国の易(えき)の思想と最新の天文学が導入された。
北極星は天皇、北斗は宰相と位置づけ、天空の星々(=人民)を支配し、四季を司り、民生の安定を保証する儀式が大嘗祭。
天皇即位式に潜む古代信仰の実態と論理を徹底解明する。

*目次
第一章 践祚大嘗祭
第二章 陰陽五行と伊勢神宮の祭りおよび大嘗祭
 T 伊勢神宮の秘神・太一と北斗 / U 荒祭宮考 / V 神衣祭と南斗 / W 伊勢神宮の祭祀構造 / X 伊勢神宮の祭屋構造
第三章 大嘗祭の実相
 T 大嘗祭の祭神 / U 大嘗祭の神座 / V 天皇の礼服 / W 枕言葉「御食向かふ」の推理 / X 大嘗祭における「数」の種々相 / Y 「造酒童女(サカツコ)」の推理
第四章 蒲葵と物部氏
後記


吉見 俊哉 (よしみしゅんや)
「万博と戦後日本」
(ばんぱくとせんごにほん)
講談社学術文庫



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*336頁 / 発行 2011年
*カバー写真・大阪万博会場 岡本太郎「太陽の塔」 / カバーデザイン・蟹江征治

*カバー文
戦後日本を画した五つの万博。高度成長の熱狂と「大阪万博」、沖縄返還と「海洋博」、研究学園都市と「科学博」、環境問題と「愛・地球博」。大衆の夢=「成長」と国家政策=「開発」は、所得倍増計画の下に癒着、そして乖離し、開発主義政策システムは破綻する。万博の裏で蠢く国家、官僚、地方、知識人、産業界、市民運動家の葛藤に、戦後政治の限界を看破する。

*目次
 序 もうひとつの一九七〇年
序章 戦後政治と万博幻想
 1 開発主義国家と「成長」の幻想
 2 万博ブームとしての戦後史 ―― 大阪万博から愛知万博へ
 3 本書の対象と視座
第一章 成長のシンボルとしての万博 ―― 東京五輪から大阪万博へ
 1 大阪に産業のオリンピックを
 2 人類の進歩と調和
 3 万博神話不在のなかの停滞
 4 未来都市としての万博会場
 5 一億人の「夢」の前で
 6 大衆の変容と知識人のゆくえ
第二章 沖縄海洋博という分身 ―― 「本土復帰」と万博幻想
 1 「本土復帰」と海洋博開催
 2 「海洋博」という渦のなかで
 3 「海 ―― その望ましい未来」
第三章 学園都市と科学万博 ―― つくば科学博と幻想のほころび
 1 研究学園都市で万博を
 2 科学技術のイメージ戦略として
 3 万博幻想のほころび
第四章 Beyond Development ―― 愛知万博の転変と選択
 1 成長のイデオロギーのなかから
 2 環境万博への方向転換
 3 対話への模索と閉塞
 4 混迷からラウンド・テーブルへ
 5 ラウンド・テーブルの達成と限界
終章 万博幻想と市民政治
 1 愛知万博から戦後の万博史へ
 2 戦後万博の終焉の後で
参考文献
あとがき


吉村 昭 (よしむらあきら)
「月夜の記憶」
(つきよのきおく)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*352頁 / 発行 2011年

*カバー文
死を賭して受けた胸部手術、病室から見た月、隣室の線香の匂い、そして人間の業……。終戦からほどない、二十一歳の夏の一夜を描いた表題作をはじめ、人間の生と死を見据え、事実に肉迫する吉村昭の文学の原点を鮮やかに示す随筆集。自らの戦争体験、肉親の死、文学修業時代と愛する文学作品、旅と酒について、そして家族のことなど、ときに厳しく、ときにユーモラスに綴る。

*巻末頁
 解説 秋山駿
 年譜 木村暢男
 著書目録 木村暢男


吉村 昭 (よしむらあきら)
「日本医家伝」
(にほんいかでん)


*カバー装画・村上豊

*カバーデザイン・緒方修一
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*275頁 / 発行 昭和48年
*新装版 377頁 / 発行 2002年

*カバー文
日本初の人体解剖を行った山脇東洋、『解体新書』の翻訳という偉業を達成した前野良沢、日本で最初の種痘法をロシヤ抑留中に習得した中川五郎治、ドイツ医学採用に狂奔し晩年は悲惨だった相良知安、自らの屈辱感をバネに医学の道を邁進した荻野ぎん等、近代医学の先駆者12人の苦難の生涯を描いた白眉の評伝。

*目次
山脇東洋
前野良沢
伊東玄朴
土生玄碩
楠本いね
中川五郎治
笠原良策
松本良順
相良知安
萩野ぎん
高木兼寛
秦佐八郎
あとがき
文庫版あとがき
年譜

*新装版解説頁・大河内昭爾


吉行 淳之介 (よしゆきじゅんのすけ)
「菓子祭・夢の車輪」
(かしまつり・ゆめのしゃりん)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*299頁 / 発行 1993年

*カバー文
単行本『赤い歳月』から2篇、『菓子祭』から13篇、さらに、文庫初収録の名篇『夢の車輪』から全12篇、計27篇の秀作集。現実と夢の壁を、あたかもなきがごとく自在に行きかい、男と女との“関係”などを鋭く透写する硬質な作家の“眼”。『砂の上の植物群』、『暗室』、『鞄の中身』の達成の上に立つ、短篇の名手、吉行淳之介の冴えわたる短篇群の“かがやき”。

*巻末頁
著者から読者へ
解説 川村二郎
作家案内 神谷忠孝
著書目録 青山毅


吉行 淳之介 (よしゆきじゅんのすけ)
「石膏色と赤」
 (せっこういろとあか)


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*220頁
*発行 昭和55年
*カバー装画・ほんめ としみつ(ねむの木学園)

*カバー文
坂の向うの空で沈みかけていた、大きな夕日。また、鈍い白い光が漂うその下にあった夕暮の野原。幼年期に見た、その赤と白のふたつの夕暮とは、何だったのだろう? 幼年期から成年期にかけて想起された心象風景や体験、あるいは人々の印象などを、独得の感性と語り口で構成した、余韻ゆたかな好エッセイ集。


吉行 理恵 (よしゆきりえ)
「記憶のなかに」
 (きおくのなかに)


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*180頁 / 発行 昭和56年
*カバー装画・南桂子 / カバーデザイン・栃折久美子

*カバー文
靖国神社に近い坂道のそばにあった母の美容院。皿の底を頭に叩きつけられて泣く病弱の姉。出征の演説を小さな声で三言しか喋らなかった兄。 ― 戦中から戦後へと、成長する童女の犀利な感性がとらえた生活の微妙な陰影と心の動きを、詩的な散文に凝結させた表題作ほか三篇を収録。新芥川賞作家の第一創作集。

*目次
記憶のなかに / 雲のいる空 / 薬子はどこへ / 背中の猫 / 解説 奥野健男 / 年譜