絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【こ】

小泉 信三 (こいずみしんぞう)
「私の福澤諭吉」
(わたしのふくざわゆきち)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・島田拓史
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*221頁 / 発行 1991年

*カバー文
近代日本第一等の思想家福澤諭吉。その思想と行動は日本社会の専制を痛打し人間の尊厳・自由・平等を育んだ。彼なかりせば私達の国の迷蒙はいつまでも深く暗かったに違いない。この偉人の直近にあって親しく謦咳に接し居常に触れ、その精神を最も良く体現した碩学小泉博士が、敬愛をこめて綴る等身大の福澤諭吉像。最高の理解者によって語られる福沢の先見と洞察・高潔な出処進退は不滅の光輝を放つ。

*目次
福澤研究の方向について
福澤諭吉
 第一章 福澤先生 / 第二章 実学の精神 / 第三章 学問のすすめ / 第四章 福澤の歴史観
福澤諭吉書翰解題(福澤諭吉の人と書翰』解題)
 福澤の生涯 / 福澤書翰 / 「理を棄て禄を取ること能はず」 / 福澤と維新変乱 / 学者と政治家 / 明治十四年の政変 / 福澤書翰と慶應義塾 / 福澤書翰と時事新報 / 福澤書翰と福澤の著述(一) / 福澤書翰と福澤の著述(二) / 福澤書翰と福澤の著述(三) / 福澤書翰と福澤の著述(四) / 福澤の怒り / 父として、弟としての福澤 / 福澤とその友
福澤諭吉『愛児への手紙』(解題)
発見
解説・師弟のPiety(敬愛) 土橋俊一


耕 治人 (こうはると)
「一条の光・天井から降る哀しい音」
(いちじょうのひかり・てんじょうからふるかなしいおと)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*252頁 / 発行 1991年

*カバー文
脳軟化症の妻は“私”を認識できない。 ―― 何度目かに「御主人ですよ」と言われたとき、「そうかもしれない」と低いが、はっきりした声でいった。五十年余連れ添った老夫婦の終焉近い困窮の日常生活。その哀感極まり浄福感充ちる生命の闘いを簡明に描く所謂“命終三部作”ほか、読売文学賞受賞「一条の光」、平林賞「この世に招かれてきた客」など耕治人の清澄の頂点六篇。

*目次
詩人に死が訪れるとき
この世に招かれてきた客
一条の光
天井から降る哀しい音
どんなご縁で
そうかもしれない

 解説 川西政明
 作家案内 保昌正夫
 著書目録


講談社文芸文庫編 (こうだんしゃぶんげいぶんこ)
「戦後短篇小説再発見A 性の根源へ」
(せんごたんぺんしょうせつさいはっけん)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*296頁 / 発行 2001年

*カバー文
人間の内奥に潜む性の魔力 ――戦時下の性から現代の突端の光景まで、エロスとしての人間に肉迫する十一篇

*目次
序 井口時男 / 川村湊 / 清水良典 / 富岡幸一郎
戦争と1人の女 〔無削除版〕 坂口安吾
鳩の街草話 田村泰次郎
もの喰う女 武田泰淳
寝台の舟 吉行淳之介
明くる日 河野多恵子
マッチ売りの少女 野坂昭如
蜜の味  田久保英夫
赫髪 中上健次
遠い空 富岡多恵子
OFF 村上龍
セミの追憶 古山高麗雄
 解説 井口時男
 著者紹介


講談社文芸文庫編 (こうだんしゃぶんげいぶんこ)
「戦後短篇小説再発見 C 漂流する家族」
(せんごたんぺんしょうせつさいはっけん ひょうりゅうするかぞく)
講談社文芸文庫


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*288頁
*発行 2001年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
日々繰りかえされる我儘、甘え、反発 ── 夫婦、親子の心理の葛藤を深く掘り下げ、人と人の絆に迫る十二篇
安岡章太郎「愛玩」 久生十蘭「母子像」 幸田文「雛」 中村真一郎「天使の生活」 庄野潤三「蟹」 森内俊雄「門を出て」 尾辻克彦「シンメトリック」 黒井千次「隠れ鬼」 津島祐子「黙市」 干刈あがた「プラネタリウム」 増田みず子「一人家族」 伊井直行「ぼくの首くくりのおじさん」

*解説頁・富岡幸一郎


講談社文芸文庫編 (こうだんしゃぶんげいぶんこ)
「戦後短篇小説再発見 D 生と死の光景」
(せんごたんぺんしょうせつさいはっけん せいとしのこうけい)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*288頁 / 発行 2001年

*カバー文
刻々と近づいてくる老いと死 ―― 日常の中での避けがたい死との関係を通して、生きている現在を直視する十二篇
正宗白鳥「今年の秋」
島比呂志「奇妙な国」
遠藤周作「男と九官鳥」
結城信一「落葉亭」
島尾ミホ「海辺の生と死」
高橋昌男「夏草の匂い」
色川武大「墓」
高井有一「掌の記憶」
川端康成「めずらしい人」
上田三四二「影向」
三浦哲郎「ヒカダの記憶」
村田喜代子「耳の塔」


講談社文芸文庫編 (こうだんしゃぶんげいぶんこ)
「戦後短篇小説再発見 G 歴史の証言」
(せんごたんぺんしょうせつさいはっけん れきしのしょうげん)
講談社文芸文庫



*デザイン・菊地信義
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*272頁 / 発行 2002年

*カバー文
戦争、敗戦を経て繁栄の時代へ ―― 苛烈な状況下でも挫けず生きる個人を描き、時を超えて光彩を放つ十一篇。

*目次

盲中国兵 … 平林たい子
年年歳歳 … 阿川弘之
おどる男 … 中野重治
礁湖 … 三浦朱門
帝国軍隊に於ける学習・序 … 富士正晴
雪の峠 … 佐多稲子
リヤカーを曳いて … 水上勉
麦と松のツリーと … 吉野せい
岩塩の袋 … 田中小実昌
馬山まで … 李恢成
短い一年 … 坂上弘
解説 井口時男


講談社文芸文庫編 (こうだんしゃぶんげいぶんこ)
「戦後短篇小説再発見 I 表現の冒険」
(せんごたんぺんしょうせつさいはっけん ひょうげんのぼうけん)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*288頁 / 発行 2002年

*カバー文
既成の通念を乗り越えようとする果敢な試み ―― 言葉の生命力を生かして、新しい文学表現の可能性を追求した十二篇。

*目次
ゆうべの雲 内田百間
アルプスの少女 石川淳
澄江堂河童談義 稲垣足穂
馬 小島信夫
棒 安部公房
一家団欒 藤江静男
箪笥 半村良
遠い座敷 筒井康隆
ダイダロス 澁澤龍彦
連続テレビ小説ドラえもん 高橋源一郎
虚空人魚 笙野頼子
お供え 吉田知子
解説 清水良典
著者紹介


講談社文芸文庫編 (こうだんしゃぶんげいぶんこ)
「戦後短篇小説再発見 13 男と女 ― 結婚・エロス」
(せんごたんぺんしょうせつさいはっけん)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*264頁 / 発行 2003年

*カバー文
性の淵に沈んだ男女の悦楽と懊悩 ―― 夫婦の葛藤や不倫など、愛憎に彩られたさまざまなエロスの情景を描く十篇。

*目次
序 … 井口時男 / 川村湊 / 清水良典 / 富岡幸一郎
アンゴウ … 坂口安吾
ある女の死 … 伊藤整
耳瓔珞(みみようらく) … 円地文子
魔に憑かれて … 北原武夫
冬の日 … 永井龍男
只見川 … 曾野綾子
なぎの葉考 … 野口冨士男
野守(のもり) … 三枝和子
青い儀式 … 八木義徳
五十猛(いそたけ) … 佐藤洋二郎
 解説 … 清水良典
 著者紹介


講談社文芸文庫編 (こうだんしゃぶんげいぶんこ)
「日本の童話名作選 戦後篇」
(にほんのどうわめいさくせん・せんごへん)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*352頁 / 発行 2007年

*帯文
戦争の傷跡と底抜けの希望が共に在った“戦後”名作童話21篇!
*カバー文
戦後、「少国民」は「子ども」にかえり、民主主義という新しい価値観のもと、童話も本来の明るさを取り戻した。子どもの視点に立つ成長物語、幼児の心を発見する幼年童話、異世界への扉をあけるファンタジーが一斉に花ひらくいっぽう、空襲、集団疎開等の記憶を語り継ぐ戦争童話も数多書かれた。そして草創期のテレビは童話を含めた子ども文化に大変化をもたらした。戦後すぐから60年代までを俯瞰する名品21篇。

*目次
ノンちゃん雲に乗る … 石井桃子 / 原始林あらし … 前川康男 / 一つの花 … 今西祐行 / 風信器 … 大石真 / おねえさんといっしょ … 筒井敬介 / ぞうのたまごのたまごやき … 寺村輝夫 / くじらとり … 中川李枝子 / きばをなくすと … 小沢正 / ちょうちょむすび … 今江祥智/ 神かくしの山 … 岩崎京子 / ちいさいモモちゃん … 松谷みよ子 / ぐず伸のホームラン … 山中恒 / ひょっこりひょうたん島 … 井上ひさし・山元護久 / そこなし森の話 … 佐藤さとる / 焼けあとの白鳥 … 長崎源之助 / 夜のかげぼうし … 宮川ひろ / さんしょっ子 … 安房直子 / おにたのぼうし … あまんきみこ / ウーフは、おしっこでできてるか?? … 神沢利子 / 白い帆船 … 庄野英二 / 花かんざし … 立原えりか / 解説 三木卓 / 著者紹介


河野 多恵子 (こうのたえこ)
「骨の肉」
 (ほねのにく)


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*251頁 / 発行 昭和52年
*カバー装画・坂東壮一

*カバー文
牡蠣の肉を食べる男と向い合い、骨の肉を削りとって食べることに、女は仕合せを感じていた。いま、男は去って荷物だけが残った。女はその処分に戸惑い、過ぎ去った“幸福”な日々を追う。哀れなまでの執着をみせて屈折する女の心理を見事に捉えた表題作。ほかに、「雛形」「胸さわぎ」など5編を収めた秀作短編集。

*目次
骨の肉 / 見つけたもの / 魔術師 / たたかい / 雛形 / 胸さわぎ / 解説 田久保英夫 / 年譜


小島 信夫 (こじまのぶお)
「月光・暮坂 小島信夫後期作品集」
(がっこう・くれさか)
講談社文芸文庫


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*388頁 / 発行 2006年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
かつての作品の引用から、実在する家族や郷里の友人らとの関係のなかから、ひとつの物語が別の物語を生み出し、常に物語が増殖しつづける〈開かれた〉小説の世界。〈思考の生理〉によって形造られる作品は、自由闊達に動きながらも、完結することを拒み、いつしか混沌へと反転していく。メタ・フィクションともいえる実験的試み九篇を、『別れる理由』以降の作品を中心に自選。

*目次
返信 / 月光 / 合掌 / 白昼夢 / 落花の舞 / ブルーノ・タウトの椅子 / 暮坂 / 天南星 / その一週間 / 解説 山崎勉 / 年譜 / 著書目録


児玉 数夫 (こだまかずお)
「MGM ― アメリカ映画黄金時代」 (えむじーえむ)


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*331頁
*発行 1988年
*カバーデザイン・道信勝彦

*カバー文
“天上の星以上の星を持つ”と豪語した世界最大の映画会社メトロ・ゴールドウィン・メーヤーは、グレタ・ガルボ、クラーク・ゲイブルなどの大スターを続々と送りだしていった。一九二〇年代から六〇年代にかけてのアメリカ映画黄金時代を中心にMGM映画の代表的作品123本を採り上げ、貴重な写真とともに紹介した、映画ファン必読の一冊!


後藤 正治 (ごとうまさはる)
「奇蹟の画家」
(きせきのがか)


*カバー装画・石井一男
 カバーデザイン・小室杏子
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*296頁 / 発行 2012年

*カバー文
絵を見て、泣いたことがありますか? 「女神像」が多くの人の心を捉え、今や個展に人が押し寄せる画家・石井一男は、50代まで画家として世に出ることはなかった。石井の清貧の暮らし、彼を世に出した画商、そして彼の絵に救われた人々。「本当の豊かさ」とは何かを教えてくれる、珠玉のノンフィクション。

目次
第一章 画廊
第二章 発掘
第三章 最期の一枚
第四章 見守る像
第五章 炎
第六章 その日々
第七章 レストランの絵
第八章 変容と深化
第九章 静かな波紋
第十章 呼んでくれるものを
 あとがき
 文庫版あとがき
 解説 白石一文


小西 甚一 (こにしじんいち)
「中世の文藝 ― 『道』という理念」
(ちゅうせいのぶんげい)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*235頁 / 発行 1997年

*カバー文
幽玄・優艶・有心など、日本的美意識の多くは、変転つねなき動乱のさなかに和歌・能・笛・琴などの「道」に精進を重ねた中世人によって生み出された。風流の極致に我が身を解放することにより、有限の生のなかで永遠を求めんとした「道」の理念を説き、宗紙の連歌と世阿弥の能を楕円の両焦点とした中世文藝の深遠豊饒な世界を明確に論述する。全五巻の大著『日本文藝史』に先行して執筆された珠玉作。

*目次
まえがき / 再刊にあたって
第一章 中世の曙光
 一 中世的理念
 二 中世への前段階
  1 和歌の世界と雅 / 2 物語の世界と擬古典主義 / 3 散文の世界と俗
第二章 中世の形成
 一 雅の世界
  1 新古今的表現 / 2 多響的統一 / 3 連断的表現
 二 擬古典主義の世界
  1 和歌の道と家 / 2 和文作品の懐古性
 三 俗の参加する世界
  1 歌謡における雅と俗 / 2 和漢融合文の展開 / 3 日常感覚への接近
第三章 中世の達成
 一 雅の世界の深化
  1 連歌の展開 / 2 能の展開
 二 反表現の世界
  1 京極風と禅林詩 / 2 「破」から「妙」へ
 三 俗の世界の近世化
  1 「道」と「理」 / 2 語りと通俗性 / 3 「俳」から「狂」へ
壮大な構想を支える確かな批評眼 向井敏
年表 / 索引


小林 勇 (こばやしいさむ)
「惜櫟荘主人 一つの岩波茂雄伝」
(せきれいそうしゅじん)
講談社文芸文庫 現代日本のエッセイ


*装幀・菊地信義
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*510頁
*発行 1993年

*カバー文
「低くくらし、高く思う」を精神の支柱に据え、処女出版・漱石の『こゝろ』以来、本作りの全てに最高を求め、先見の明と強い信念で多くの優れた全集・叢書等を上梓、出版事業に激しく情熱を燃やした人間味豊かな岩波茂雄。十七歳で入店以来“岩波文化”の黄金時代を共に築き上げ、互いに最も信頼しつつ、強烈な個性をぶつけあった著者が肌身を通して語る、追慕の情溢れる偉大な出版人の記録。

*巻末頁
 人と作品 高田宏
 年譜 小林堯彦 / 小松美沙子
 著書目録 小松美沙子


小林 勇 (こばやしいさむ)
「彼岸花 追憶三十三人」
(ひがんばな)
講談社文芸文庫 現代日本のエッセイ


*デザイン・菊地信義
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*282頁 / 発行 1992年

*カバー文
その生涯を通して、優れた才気と誠意で学者、芸術家ほか多彩な人々の信頼を得、驚嘆すべき多くの出会いと豊かな交流を持った名編集者・小林勇。幸田露伴、寺田寅彦、小宮豊隆、安倍能成、野呂栄太郎、名取洋之助、中谷宇吉郎、斎藤茂吉、小泉信三、渋沢敬三等々、一筋に生きた人々の美しさ、勁さ弱さを尊重し、愛惜する。三十三人の偉大で慕わしい人々への鮮やかなレクイエム。

*目次
哀惜名取洋之助
夕庭の桜 ── 中谷宇吉郎博士の死
李杜の詩を書く人 ── 長與善カ先生の追憶
真実の人 ── 小宮豐隆先生
堂々たる人生 ── 小泉信三先生
安倍能成先生
断片・明治の人々
 ある座談会 / 寺田寅? / 安井曾太カ / 狩野亨吉 / 兒島喜久雄 / 野呂榮太カ / 永井荷風 / 小泉丹 / 兼常C佐 / 鈴木大拙 / 幸田露伴
折り折りの人
 高見順 / 佐佐木茂索 / 中谷宇吉郎 / 澁澤敬三 / 岡田武松 / 高村光太カ / 初代中村吉右衞門 / 馬場一路居士 / 齋藤茂吉 / 名取洋之助
旅の楽しみ
いびき
ちちははの記
教員 ── 一人の兄
画家の妻 ── 一人の姉
農村の人 ── 一人の兄
祖母
終焉の記 ── 岩波雄一カ
 あとがき
 人と作品 瀧悌三
 年譜 小林堯彦 / 小松美沙子
 著書目録 小松美沙子


小林 秀雄 (こばやしひでお)
「古典と伝統について」 
(こてんとでんとうについて)


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*418頁
*発行 昭和46年

*カバー文
透明な感性と鋭敏な知性の見事な融合、柔軟な批評精神によって、考えることの喜びと極まりを示す日本近代批評の先達、小林秀雄。 ― 批評をゆるぎない芸術にまで高めた氏の永年に亙る東西の古典や芸術、歴史に関する評論活動より、精選された三十四編を収録。

*解説頁・吉田?生(よしだひろお)


駒田 信二 (こまだしんじ)
「一条さゆりの性」 
(いちじょうさゆりのせい)


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*カバー装画・村上豊

*339頁 / 発行 1983年

*カバー文
ほかの踊り子には真似できない“演技”を彼女は見せた。舞台のはしにしゃがんだ彼女の花弁のあいだから、ひとすじの流れがするするとあふれ出す。照明の光をあびて、それは感動的な光景だった。……ストリッパー一条さゆりの性と生を、舞台と日常を、暖かいまなざしで共感こめて描く異色の傑作小説集。

*目次
一条さゆりの性の深渕
一条さゆりの性の秘密
一条さゆりの性の虚実
一条さゆりの性の宿命
一条さゆりの性の波瀾
一条さゆりの性の休日
一条さゆりの性の迷路
一条さゆりの性の終宴
一条さゆりの性の受難
 解説 清水信
 年譜


小松 左京 (こまつさきょう)
「(続)妄想ニッポン紀行」
 (ぞくもうそうにっぽんきこう)


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*発行 1974年
*カバー装画・栗津潔

*カバー文
東日本各地を訪れてその歴史的イメージを探り、神話的世界との奇妙な暗合を衝いた異色ルポ「日本イメージ紀行」。変貌する地域社会を、都市デザイン・交通・情報化問題など未来的位相で把えた文明批評「日本タイムトラベル」。ユーモアと知的バイタリティ溢れる珍道中記2編、併せて「妄想ニッポン紀行」の続編とする。

*解説頁・川添登 / さしえ・秋竜山


小松 英雄 (こまつひでお)
「徒然草抜書 ― 表現解析の方法」
(つれづれぐさぬきがき)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*404頁 / 発行 1990年

*カバー文
『徒然草』といえば余りに名高い古典、研究し尽され最早疑問の余地などないかに見える。だが果してそうだろうか。例えば「つれづれ」とは何か。「ものぐるほしけれ」とは? また「うしのつの文字」とは。次々問いを発するとき通説は急にその安定を失う。博大な学殖によるテキストの読み、重厚な論理的追究、著者の驚くべき炯眼は、見過されてきた真実を紙背から鮮明に炙り出す。真に独創的な現代の名著。

*目次
はしがき / 謝辞 / 前言
序章 文献学的解釈の基礎
第一章 つれづれなるままに
第二章 うしのつの文字
第三章 土偏に候ふ
第四章 蜷といふ貝
第五章 いみじき秀句
結語 / 引用文献



小山 冨士夫 (こやまふじお)
「徳利と酒盃・漁陶紀行 小山冨士夫随筆集」
(とっくりとしゅはい・りょうとうきこう)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*272頁 / 発行 2006年

*カバー文
静かでうれいに満ちた美しさをもつ李朝彫三島扁壷、端正で気品のある中国陶磁の至宝、北宋汝官窯青磁輪花碗、枯淡なうちにほのぼのした明るさをたたえた信楽の壷、わが愛すべきやきものに寄せた『骨董百話』をはじめ数々の名随筆をのこした陶磁研究の第一人者、小山冨士夫。みずからもすぐれた陶芸家であった、その美への探究心をあますところなく伝える随筆集。

*目次
月見の宴 / 徳利と酒盃 / 正倉院三彩 / やきもの紀行 / 日本六古窯の思い出 / 北支だより / 朝鮮の旅 / 漁陶紀行 / イスタンブールの古陶博物館 / 波山先生について / 北大路魯山人 / 石黒宗麿 / 骨董百話(抄) / 陶磁の世界 / 解説 森孝一 / 年譜 森孝一 / 著書目録


ゴロウニン著 徳力真太郎訳
「ロシア士官の見た徳川日本 ― 続・日本俘虜実記」
 (ろしあしかんのみたとくがわにっぽん)
講談社学術文庫



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*392頁
*発行 昭和53年

*カバー文

露国使節レザノフの「蝦夷地乱妨(えぞちらんぽう)」の結果、日本人の対露感情は急激に悪化。ゴロウニンらが奸策によって松前藩吏に捕えられ、二年余の抑留生活を送ったのは、そんな緊迫した状況下であった(「日本俘虜実記」)。彼はその異常な体験を通じて、鎖国下日本の実情を克明に記憶し、わが国の国民性を高く評価して世界に紹介した。他方、ゴロウニンらの救出に努めたリコルド少佐の勇気と、彼と高田屋嘉兵衛の廉潔な友情は、本書後半の圧巻である。


権田 萬治 (ごんだまんじ)
「日本探偵作家論」 
(にほんたんていさっかろん)


*カバー装画・国分正夫
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*283頁 / 発行 昭和52年

*カバー文
旧探偵作家の業績を抜きにして、今日の推理小説を語ることは出来ない。戦前の厳しい政治弾圧をかい潜り、辛酸をなめながらも一筋の流れを涸らすことなく、推理小説興隆への道を拓いてきた先人作家18人、小酒井不木から横溝正史までの足跡をたどり、作品を論じた初の本格的評論集。昭和51年度日本推理作家協会賞。

*目次
深海魚の夢――序説=戦前の探偵小説の特質
解剖台上のロマンチシズム=小酒井不木論
閉じ込められた夢=江戸川乱歩論
理化学実験室の悪夢=甲賀三郎論
残酷な青春の鎮魂曲=大下宇陀児論
田園の夜の恐怖=横溝正史論
黒き死の讃歌=水谷準論
美しき錯覚の詩学(ポエジー)=葛山二郎論
美女と野獣の残酷劇=橘外男論
漆黒の闇の中の目撃者=山本禾太郎論
宿命の美学=夢野久作論
秘められた科学恐怖の夢=海野十三論
三角関係の殺人劇=浜尾四郎論
廃墟の美=小栗虫太郎論
探偵小説と詩的情熱=木々高太郎論
蒼き死の微笑=大阪圭吉論
死霊の群れを呼ぶ風景=蒼井雄論
海底散歩者の未来幻想=蘭郁二郎論
 あとがき
 解説 島崎博


近藤 富枝 (こんどうとみえ)
「花蔭の人矢田津世子の生涯」
 (はなかげのひと・やだつせこのしょうがい)


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*246頁
*発行 昭和59年
*カバーデザイン・熊谷博人

*カバー文
矢田津世子は昭和十九年、満三十七歳の若さで逝った。文壇一の美女とうたわれ、トイフェル(悪魔)と噂されながらの短い生涯であった。坂口安吾の永遠の恋人と目されながら、文学ひとすじに激動の昭和前期を生きた津世子の生涯に、周辺に集散する多感な男女作家の心の遍歴を重ねあわせたノンフィクション

*解説頁・稲葉暁