絶版文庫書誌集成

角川文庫 【つ】

つか こうへい
「つかこうへいによるつかこうへいの世界」



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*309頁 / 発行 昭和60年
*カバー装画・和田誠

*カバー文
 生まれは、昭和23年4月、福岡。(どういう幼少期であったかは、本文で読まれたい!)大きくとんで、大学時代、〈見合いは4回した。いずれも「大勝」〉! 本当のところは詩を書き、早くも演劇活動を開始していた。慶応大学文学部哲学科を、結局、中退。その後は ― 「VAN99」「紀伊國屋ホール」での、もはや伝説的な大熱狂。「熱海殺人事件」「ストリッパー物語」「蒲田行進曲」「寝盗られ宗介」。直木賞受賞、「つかこうへい事務所」解散……。
 別役実、風間杜夫、平田満氏のエッセイ等に、戯曲・ラジオドラマ、さらに、みずからを語ることの少ない著者の「(秘)演出日記」「自作年譜」までを収めた、魅力の「つかこうへいへの招待」!

*解説頁・松田和子


都筑 道夫 (つづきみちお)
「都筑道夫ひとり雑誌 第2号 掘出珍品大特集」
(つづきみちおひとりざっし)


*カバー・山藤章二
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*470頁 / 発行 昭和58年

*カバー文
 さあて、みなさん、お待ちかね! 話題沸騰、人気絶大、内容豊富な“ひとり雑誌”第2号。今回もひきつづき鬼才・都筑道夫が、大出血サービスで御披露!
―― 世の男性を悩ませ、恐れさせる妖婦、悪婦、毒婦づくしで綴る新講談。怪奇凄艶に展開する維新史秘話。
 恐怖と戦慄の一大絵巻からユーモア時代小説。ハードボイルド、サスペンス、抱腹絶倒のショート・ショートを活字にできる、面白さ、楽しさをいっぱいに詰めて贈るシリーズ第2冊。

*目次
奇怪凄艶維新秘話 妖説横浜図絵 都筑道夫
傑作時代小説
 小万源五兵衛 都筑道夫
 明暗すみだ川 都筑道夫
 三ン下時雨 都筑道夫
変身と妖幻の大ロマン
 昔噺羅生門 都筑道夫
 竜 都筑道夫
 くろがね武右衛門 淡路龍太郎
妖婦・毒婦・女の闘い
 艷色からくり狐 淡路龍太郎
 無惨絵めがね 都筑道夫
 滝夜叉姫 都筑道夫
罪の意識 フィリス・マクゴワン
クリスマス・プレゼント ジェフ・エヴァンス
殺した女の顔が腫れ物になった話 都筑道夫
辛抱づよい母 都筑道夫
好評二大講談
 女自来也
  第一話 地獄船 大島一鳳
  第二話 大江戸草紙 柴田梅玉
  第三話 けだもの囃子 小金井芦燕
  第四話 無惨絵肌 松林桃園
  第五話 しがらみ峠 伊東映昌
 妖婦五人女
  緋牡丹お蝶 小金井芦燕
  陸蒸気のお鶴 伊東映昌
  夜嵐お絹 松林桃園
  鬼神のお松 柴田梅玉
  霞のお千代 大島一鳳
翻訳長篇一挙掲載
 ハード-ボイルド 接吻は血を拭いてから アラン・リード / 結城勉訳
 スパイ-スリラー 恐怖飛行 ツウサン・サマ / 淡路瑛一訳

 解説 伊藤文八郎


土屋 文明 (つちやぶんめい)
「新編 短歌入門」
(しんぺんたんかにゅうもん)


*平成元年「リバイバルコレクション」版カバー
 カバーデザイン・鈴木一誌
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*212頁 / 発行 昭和30年

*カバー文
短歌の理論を実作に密接に結びつけて展開し、また和歌史的叙述を、直接に現代の問題に触れて解明する。世に氾濫する入門書とは類を異にした、「昭和期アララギ」の事実上の指導者であった著者の十五年の労作。

*目次
短歌手ほどき
 一 三十一文字への執着
 二 思うがままを言うこと
 三 実際の作例の二三
 四 参考書
 五 歌を作るに適せざる人々
 短歌の味わい方作り方
添削と批評
初心者のために
和歌のおおよそ
短歌小径
短歌の現在および将来について
 解説 近藤芳美


常光 徹 (つねみつとおる)
「学校の怪談 ― 口承文芸の研究T」
(がっこうのかいだん)
角川ソフィア文庫


*装幀者・杉浦康平
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*234頁 / 発行 2002年

*カバー文
誰もいない音楽室から流れてくるピアノの音。真夜中の校内を歩き回るガイコツ模型。さまざまな怪異が語られるトイレ空間……。活気に満ちた昼間の学校も、子どもたちの下校後は不気味な様相をおびた闇の空間を演出する。異界への想像力をかきたてる場といってもよい。児童・生徒の間で語られる怪談や不思議話は、つねに彼らをとりまく現代を映し出しながらも、同時に、類型的な口承の伝統のなかに息づいている。従来、あまり注目されなかった子どもたちのうわさ話を、民俗学的な手法を用いて研究の俎上にのせた意欲作。

*目次
 はじめに ― 学校の怪談のこと
第一章 学校の怪談
 一 よみがえる民俗的感覚
 二 トイレと怪異
    赤い紙・青い紙 赤いはんてん 便器からでる手 のぞいていた顔 トイレの非日常性
 三 特別教室と移動教室
    夜の校舎と怪談 恐怖の心的体験
 四 学校周辺の異界的空間
    辻・墓地・踏切 口さけ女のうわさ 家のなかの不思議
 五 うわさとしての怪談
    妖怪さわぎの行方 校長先生の死
 六 子どもたちにとっての怪談・妖怪・異界
    文化装置としての妖怪 伝承の背景とひろがり
第二章 現代のハナシ
 一 予兆譚と事実
    カラス鳴きとハナシの創造 むしの知らせ 死の同時体験 予兆の構造と意味
 二 異人殺し伝承譚の創造
    タクシーの怪談から 近世の異人殺し 因果応報の原理 現代の異人殺し
 三 ハナシの変容と現代性
    山小屋の怪 人面犬と件(クダン)の予言 噂ばなしの現代性
第三章 笑話と世間話の背景
 一 笑話の主人公
    能登の三右衛門 意味のコントラスト 笑いの機能 巧みな話術
 二 世間話の担い手
    二人の話し手 情報を求めて はなし上手の本領
 三 ツッパリと学級共同体
    制服のなかの個性 ツッパリの深層
文庫版あとがき
参考文献


常光 徹 (つねみつとおる)
「伝説と俗信の世界 ― 口承文芸の研究U」
(でんせつとぞくしんのせかい)
角川ソフィア文庫



*カバー絵・天保七年の瓦版「件(くだん)と云獣(いうけもの)」の件(徳川林政史研究所蔵)
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*246頁 / 発行 2002年

*カバー文
「夜、口笛を吹くとヘビが来る」「朝のクモは吉、夜のクモは凶」「長居の客には箒を逆さに立てるとよい」 ―― 。私たちのまわりには迷信とか俗信と呼ばれる言い伝えが、まるで網の目のように張りめぐらされている。気にとめていないようでも、具体的な生活の場面では、意外に人びとの行動に影響を与えている。本書は、一見、取りとめもなく散在しているかにみえる俗信を素材に、なにげない日常のなかに染み込んでいるものの見方や心性に注目し、その論理的な思考と構造を解き明かす。

*目次
第一章 昔話の構造と形態
 一 「たにし長者」の形態論
   主人公の誕生 結婚相手の獲得 変身と結婚 異話の生成 たにし長者と一寸法師
 二 「猫と南瓜」の構造
   物語の構造と展開 モティーフ複合の契機 伝播者と話の分布 猫の属性と蛇・瓜・南瓜
 三 「猿聾入」の地域的変化
   東北型と西南型 新潟県守門村の場合

第二章 伝播の背景
 一 伝説と年中行事 ―― 田村麻呂の悪竜退治をめぐって
   六月一日と尻あぶり 田村麻呂の悪竜退治 物語と行事の意識構造
 二 伝説と俗信
   長者の没落と枡 伏せるということの意味 鍋被せ伝説と民族
 三 地すべり伝説の背景

第三章 俗信の世界
 一 禁忌と連想
   禁忌の形態 忌まれる庭木
 二 蜘蛛の俗信と説話
   朝グモ夜グモの吉凶 夜のクモは殺せ 虫と霊魂 クモの怪異譚と笑話
 三 境界の呪具 ―― 箒
   妊婦と箒 死者と箒 正月と箒 俗信の多様性 長居の客を帰す呪い 逆さまの民俗
 四 生活のなかの俗信 ―― 新潟県古志郡山古志村
   新たな視線で読む俗信的世界 天候と自然暦 動物・植物 衣食住など

 おわりに / 文庫版あとがき / 参考文献


壺井 栄 (つぼいさかえ)
「あしたの風」
 (あしたのかぜ)


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*昭和38頁
*発行 昭和38年
*カバー・矢野暁子

*カバー文
 「今日をせい一ぱい生きれば、それによって明日生きる道は開ける」 ―- あしたの風とはそういう意味である。母の恋を遂げさせようと、希望にもえて入学した神戸の高校をやめ、家業を手伝うために小豆島へ船に乗る百合子。素直にのびやかに生きてゆく娘を中心に女のさまざまな愛情の姿をえがき、しみじみと心温まる物語。

*解説頁・大原富枝

壷井 栄 (つぼいさかえ)
「草の実」 
(くさのみ)


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*234頁
*発行 1962年
*カバー絵・脇田和「鳥寄せ」

*カバー文
「さあ、あなたも、勇気をもって…」若い人々には、そう語りかけ、年配の人や母親たちには、まっすぐ伸びようとする若ものたちの明かるい希望を、理をつくしてやさしく話しかけているような小説。それが、この「草の実」ではないだろうか。人間はだれでも、自分の幸福をかちとる権利があるのだ。

*解説頁・畔柳二美


坪田 譲治 (つぼたじょうじ) 大石真編
「せみと蓮の花・坪田譲治作品集V」 (せみとはすのはな)




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*266頁
*発行 昭和51年
*カバー装画・井上洋介

*カバー文
 恩師鈴木三重吉との出会いや、小川未明との交流。故郷にあって、折りにふれ、身体のこと・生活のことなどこまごまと面倒をみてくれた母のこと、兄弟のこと。自らの過去をふりかえって、ユーモラスに淡々とした筆致で坪田文学に新境地を拓いた小説集。
 芸術院賞を受賞した昭和30年前後の、作家活動のもっとも活発な頃にかかれた格調高い坪田文学の代表的短編十篇を収録。

*目次
せみと蓮の花 / 二十の春 / 母 / 三重吉断章 / 昨日の恥 / こわがり屋 / 昨日の恥 今日の恥 / 老年の歌 / 遠い昔のこと / 秋の夜ながに
 解説・水藤春夫
 年譜・水藤春夫
  さし絵 井上洋介

*この文庫は全4巻で刊行されました。


坪田 譲治 (つぼたじょうじ) 大石真編
「びわの実・坪田譲治作品集W」 
(びわのみ)


*カバー・井上洋介
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*215頁 / 発行 昭和51年

*カバー文
 鈴木三重吉主宰の雑誌「赤い鳥」に初めて童話を発表した昭和2年以来、その文壇的地位を不動のものとした「お化けの世界」「風の中の子供」「子供の四季」などの小説群と並行して創作された童話の世界にも、ほのぼのとしたユーモアがあふれ、さわやかな余韻がただよう。
 重箱を食い荒らして逃げた親キツネを捕えた晩、親を慕って庭先に現われた子ギツネの寝姿がかわいい孫にみえてきて、ふとんでもかけてやりたい、生け取って、だいじに飼ってやりたいと思うタカつかいの名人だったおじいさんの話「キツネ狩り」など代表的童話22篇を収録。

*目次
 川はながれる / ガマのげいとう / リスとカシのみ / ネズミのかくれんぼ / ニジとカニ / キツネとブドウ / 小川のアシ / 村の子 / おかあさん / 魔法 / キツネ狩り / 異人屋敷 / お馬 / どろぼう / 雪ふる池 / 石屋さん / 雪という字 / 枝の上のカラス / サバクのニジ / ナスビと氷山 / 夢 / ビワの実 / 解説 水藤春夫 / 年譜 水藤春夫 /  さし絵 井上洋介


ツルゲーネフ著 中山 省三郎訳 (なかやましょうざぶろう)
「猟人日記」 (上下巻)
 (りょうじんにっき)


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*上巻347頁・下巻217頁・旧仮名旧字体
*発行 昭和31年
*カバー画像・平成2年刊「リバイバル・コレクション」版カバー

*カバー文
田園小説二十五篇からなる本書は、驚くべき自然観照と透徹したヒューマニズムでロシア民衆の姿が詩情豊かに描かれ、今なお色あせることを知らない。

*解説頁・中山省三郎


鶴見 祐輔 (つるみゆうすけ)
「母」
〈上下巻〉 (はは)


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*上巻228頁・下巻218頁・旧仮名旧字体
*発行 昭和30年

*紹介文(講談社学術文庫版より)
日本の母のあり方を小説に托して書下ろした実用的教養書。大正期の混乱の世を生きぬく母と子の姿を主題とする、この本のもう一つの魅力は、全篇にちりばめられた人生の名言格言であり、読書開眼へと導く古今東西の人物や名作の紹介であろう。逆境に立ち向かう古い女の生きざまが、真の女の強さと、真事の英知と勇気とは何かを示唆する人間修養の書でもある。