絶版文庫書誌集成

文春文庫
【せ】


関 容子 (せきようこ)
「勘三郎伝説」
(かんざぶろうでんせつ)


*写真・下村誠
 デザイン・石崎健太郎
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*284頁 / 発行 2015年

*カバー文
いまもなお記憶に残る、誰もが魅了されたあの声、あの笑顔 ── 人を愛し、芝居を愛した、十八代目中村勘三郎は、寝る間を惜しんで五十数年間、たくさんの人と出会い、多くのことを吸収し、人の何倍も生きた。幼いころから、その成長ぶりを見守り続けた著者による、人間・勘三郎の魅力をあますことなく綴った一冊。

*目次
 まえがき
第一章 初恋の人に銀の薔薇を
第二章 勘三郎スピリットと仁左衛門
第三章 超多忙な天才子役
第四章 中村屋極付『連獅子』誕生秘話
第五章 命あってのもの
第六章 二十二歳下でも海老蔵は友だち
第七章「わたしの若い友人」と書く作家
第八章 新しい世界への挑戦
第九章 夢の地図
 琴平町・金丸座 / 赤穂・『元禄繚乱』ロケ地 / スイス・氷の宮殿 / アリゾナの別荘 / ニューヨーク歌舞伎
第十章 勘三郎の出会った人々
 ピエール・カルダン / ロバート・デ・ニーロ / 宮沢りえ / 杉村春子 / 勝新太郎 / 三木のり平 / 古今亭志ん朝
第十一章 思い出走馬灯
 娘道成寺 / 忠臣蔵 / 盲目物語 / 身替座禅 / 俊寛 / 瞼の母 / カルメン / 魔神遁走曲 / 助六
 あとがき
 解説 紅潮した顔 出久根達郎


関川 夏央 (せきかわなつお)
「昭和が明るかった頃」
(しょうわがあかるかったころ)


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*463頁 / 発行 2004年
*カバー・日下潤一 / カバー写真・飯田鉄

*カバー文
昭和30年代。高度経済成長が緒についたとはいえ、巷には未だ貧しさが残り、社会は大規模な変質を強いられつつあった。こうした世相を最も色濃く反映していたのが映画であり、日活という映画会社と、石原裕次郎、吉永小百合というスターだった。現代社会の原型を形成したこの10年間の時代精神を描く長編評論。

*目次
序章 吉永小百合という「物語」 / 第一章 『キューポラのある街』以前 / 第二章 「私、家に帰りたくありません」 / 第三章 「日活的世界」の構造 / 第四章 高度成長前半期の時代精神 / 第五章 現状打破への意志 / 第六章 「純愛」という観念 / 第七章 吉永小百合の「全盛期」 / 第八章 「戦後」の終焉 / 第九章 「日活的思想」の自己否定 / 第十章 撮影所文化の落日 / 終章 「物語」の終わり / あとがき / 文庫版のための「あとがき」 / 解説 増田悦佐


関川 夏央 (せきかわなつお)
「白樺たちの大正」
(しらかばたちのたいしょう)


*カバー・日下潤一
 カバーイラスト・森英二郎
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*528頁 / 発行 2005年

*カバー文
「白樺派」はかねてから“能天気な理想主義者”の代名詞であった。いまや完全に忘れ去られ、顧みる人すらいない。しかし、と著者はいう。武者小路実篤は一時代の革命者であり、志賀直哉は最先端思潮の体現者だったのだ、と。「新しき村」運動を軸に、大衆化に向かう近代史上の一大画期を描き出す渾身の力作評論。

*目次
序章 明治十五年以後生まれの青年
第一章 「改造」への衝動
 ・「新しき村」の建設・「改造」への衝動
第二章 女たちの「大正」
 ・「村」が直面した問題・武者小路房子という女・大正的理想主義の蹉跌
第三章 学習院という空間
 ・大正三年の「こゝろ」・学習院という空間・大正的自我、大正的人間
第四章 「友情」のコスモポリタニズム
 ・「友情」のコスモポリタンニズム・人類、日本、および群衆・人嫌い、なのに友人に「耽溺」
第五章 シベリア出兵と日本社会の変質
 ・アムール河畔における石光真清・シベリア出兵への道程・白虹日を貫けり・「デモクラシー」の希望と実情・新しい人、新しい時代
第六章 彼らが思った「美しい町」
 ・新興資本家の「夢」・「コミューン」への傾斜・季節外れの花のような時代・現代では金こそが天分である・野心的な大正の娘
第七章 或る青年たちの夢
 ・周兄弟の場合・「小僧の神様」における経済的側面・「仙吉」の大正八年・現代の発端たる大正時代
第八章 「大水路」の建設
 ・待望の「大水路」・「宣言一つ」・大正的あまりに大正的な「或る女」・蝿のうるさいことはどうだ
第九章 夫、父、家長としての志賀直哉
 ・関西移住・古都の春・筆は一本、箸は九十本
第十章 実篤、村を去る
 ・実篤、村を去る・「浮気」と「自家用」文学・「大正文学」終幕
終章 ものみな「歴史」となる
 あとがき / 文庫版のための「あとがき」 / 解説 張競